規制があったらソーシャルゲームじゃない! KLab社が反旗

新たな段階に入ったソーシャルゲーム市場。タイトルの内容に入る前に、コンプガチャ規制後のソーシャルゲームのトレンドを見てみましょう。
 
■「パッケージガチャ(ボックスガチャ)の正体

コンプガチャの規制が始まって、各社が広く導入したのが「パッケージガチャ(ボックスガチャ)」というシステムです。コンプガチャに比べて、システムは簡単。昔のガチャポンのようにカードの枚数が決まっていて、いずれはSRR(スーパーレアレア)カードがゲットできると言うもの。ただ、ガチャポンが総数30個ぐらいなのに対して、総数255個と桁レベルで大きい点が違います。最後まで出なかった場合、1回300円×255回=76,500円かかるわけですね。
ところが、さっそく事件が起きています。6月に起きた、モバゲー「ガンダムカードコレクション」の事例を見てみましょう。
左の説明には、ちゃんとガチャを回せば回すほど、中身のカードが減って、確率がアップしていくと説明されています。実際にシステム的にそうならないとおかしい。

キャプチャしてくれた人が、わざわざ色違いで強調してくれてますが、説明部分の一番下にあり得ない文章が入っていたのです。
なんとですね。一番減っていかなければならない「C(コモン)カード」、「UC(アンチコモン)カード」が、無制限と書いてあるのですね。ということは、減っているのはレアカードだけで、いわゆるゴミカードは減っていないから、確率は全く高くなっていないわけですよ。むしろ低くなっている。
まるで詐欺、というか詐欺そのものでしょ、これは。最初の説明文は、明らかにユーザーに錯誤を与えますよね。最後の説明文に小さく、1文入れておけば済むって問題じゃないわけですよ。
まぁ、さすがにこっそりメンテナンスが入りましたけど、こういう危ないことを未だにやってしまうのが、ソーシャルゲーム業界の姿であります。
 
さて、この「パッケージガチャ(ボックスガチャ)」は、大当たりしています。いずれ必ずSRRカードが出るという期待感から、ガチャを回してしまう人が出ているのですね。
ただ、新たに導入されたガイドラインにより確率表示が基準化されました。255枚のうち通常1枚しか入っていないSRRカードの出る確率は、約0.39%。この確率に目が覚めて、かつてのように猛烈に課金する人は、ぐっと減ったのです。これが原因で、ソーシャルゲーム業界の不協和音が聞こえてくることになりました。
 
■KLab社長、大いに吠える

15日、KLab が決算を発表。
12年8月期の経常利益(非連結)は前々期比3.0倍の28.1億円で着地したが、従来の計画28.7億円に届かなかったことが嫌気された。前期は携帯電話向け交流ゲームの開発・運営事業が順調だったが、売上高、利益の全項目で僅かに計画未達となった。特に直近3ヵ月間の実績である第4四半期(6-8月)の経常利益が86.1%減の0.8億円に大きく落ち込んだことで、業績の先行きに対する不透明感が強まった。
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201210160062

計画未達もニュースですが、上期(9月-13年2月)の経常損益が、400万円の赤字ですよ。上場したのに、いきなりゼロ配当です。KLab真田社長が、ついにぶちまけました。

中堅開発会社・KLabの真田哲弥社長は、6社の連絡協議会が定めたガイドラインは「ソーシャルゲームを完全否定するもの」と憤慨する。そのため「既存のプラットフォームも大事だが、今後はゲームの性能が上がり、業界の自主規制が及ばない『アップストア』(アップル)や『グーグルプレイ』(グーグル)向けに提供タイトルを増やす」と語る。連絡協議会のガイドラインは、あくまで国内プラットフォームにおける決めごとだ。アップストアやグーグルプレイは規制の空白地帯となるため、開発会社にとって自由度が高い。
たとえばガチャ課金を行う際の「確率表示」。9月1日からガイドラインが運用されているが、各社の対応はまちまちだ。「透明性確保のため、確率表示はできるだけ行うべき」(6社連絡協議会の副座長を務める英知法律事務所の森亮二弁護士)。
http://money.jp.msn.com/news/toyokeizai-online/article.aspx?cp-documentid=251092115&page=3

真面目に確率表示すると、収益が下がっちゃうっていう業界は、はたして健全な業界なのか。確率表示は以前からソーシャルゲームの重要な問題ですが、今でも真面目に0.39%などという明らかに当たら無そうな表示をする、ソーシャルゲームベンダーは少ないです。各社は、どこかで錯誤を生みやすい表示をしています。
ユーザーの錯誤がなければ、商売にならないと言うんじゃ、産業としての根本がおかしいのでしょう。なのに、この業界の人たちは、そうは思わないのが問題です。おかげで、どんどん足並みが乱れている。これじゃあ、消費者センターへの相談も減りませんよ。なんの規制もないアップルストアに行けばオッケーという問題でもないでしょう。
業界の自浄能力が、いまこそ求められています。