谷川岳一の倉沢一の沢滑降

teradaya2011-04-30


谷川岳東尾根はマチガ沢と一の倉沢の間を区切る尾根であり、2〜3月頃に雪稜ルートとして登られている。下部のシンセン岩峰を回避するためにシンセンのコルまでは一の倉沢の左端の一の沢が登路として使われており、「日本登山大系」では残雪時には快適と記されている。毎年の入山禁止期間が今年は4月28日までであったので、事前に登山条例に従い届出をし、スキー滑降にでかけた。
この春シーズンの一の倉沢一番乗りのようで、帰りの温泉と蕎麦も含めて充実した山行であったが、上部は40度オーバーの狭い斜面、中部より下はデブリの嵐。スキー向きではないようだ。シールは一切つかわず、アイゼン前爪が大活躍。

前夜に関越道を一路水上へ。谷川岳登山指導センターの先が通行禁止ゲート。センターの仮眠所はだれも先客はおらず、Y君とふたりで軽く寝酒を飲みKさんの到着を待ちつつ25時過ぎに就寝。風が強いが星も出始めている。

29日(祝)
天候はどうやら晴れ。雨男伝説は返上である。6時20分、兼用靴で舗装道を歩き始める。除雪が進み一の倉沢出合までまったくスキーの出番はなし。マチガ沢を経て1時間で到着。出合では3m程の雪壁ができていた。
一の倉沢が見渡せる

国境稜線はガスがかかっているが久々に一の倉沢の全貌を見渡す。衝立岩を始め主要ルートはすでに黒々としている。朝の雪は堅く、アイゼンでいくこととし、40分に出発。15分ほどで左に一の沢が別れるが、すぐに茶色のデブリの山ですでに全層雪崩が落ちきっている感じである。大きなブロックをつなぐように乗り越えてさらに単調な登りである。白い雪の部分と青白く溶け固まった氷状部分が混ざったルンゼであり、なるべく白をつないで登る。落石も小雪崩もなく谷は静かであるが、北面で日が当らず寒いくらいだ。中間部で右股を分けS字状に登っていくがここもデブリの重なった状態でスキー滑降意欲は湧きそうもない。安全地帯はないので、真上に見えるシンセンのコルまで一気に登るが、振り返れば変わった角度から烏帽子岩が見えてなかなかの景観である。
一の沢を登る
結構な傾斜である
氷も交じる斜面

堅い部分はキックステップ2度、3度重ねてもつま先しか入らず、時にはアイゼンの前爪頼りで登り、またピッケルステップカットなどもしつつ進む。大滝のあたりはシュルンドができているが、雪はつながっている。どんどん傾斜を増し両手両足で這うようにして、最後は雪渓が切れたところからブッシュを掴んで小さなシンセンのコルに10時20分到着。
シンセン岩峰
シンセンのコルにて
マチガ沢を覗き込む
樹氷越しに一の倉尾根、正面に烏帽子岩

ザックをようやくおけば、3人で座る場所もないほど小さなスペースである。見上げれば東尾根の岩峰がオキの耳に向かって伸び、振り返れば白毛門から笠が岳のスキー意欲をそそるたおやかな稜線が見える。尾根の反対側はスパッ切れ落ちておりマチガ沢を覗き込める。
木々には北西風でできた樹氷がついているが、今は一の沢の雪渓から冷たい風が吹き上げてきて寒いが、ようやく沢筋に日光があたり始めており、雪面が緩んでくるのを期待して待機。ガスもかかり始めてなかなか願いどおりにはいかないが。

一の沢上部を見降ろす
コルから滑るYさん 
Kさんが行く

立ったままの休憩で小一時間過ごした後、滑降に移る。数メートル藪を掴んで雪渓の端まで下り、スキーを装着。5m程の堅い雪の帯が40度程の角度で続き、両側は岩が迫る。下部はデブリ帯であり安心感を得る材料はほぼないが、50mほどで谷は広がってくるのでそこを目指して一人ずつ慎重に滑ることとする。まず私から横滑りで数メートル、意を決してジャンプターン1回。エッジは効くので一安心だが連続ターンにはならない。さらに1回、2回と何とかターンをして、Y君を待つ。慎重に高度を下げてきて、最後はKさん。さすがのスキーさばきで数度のターンをこなしている。続く斜面は幅が広がるが、例の氷混じり雪が増えてくる。お日様のお陰でどうにかターンを繰り返せる程度にはなっており、ようやくスキーらしくなるが、それもデブリ帯まで。でこぼこの雪面と巻き込まれた石や枝を避けつつのスキーである。それでも何とか滑りを続け、最後は真っ茶色な全層雪崩帯で行き止まり。一の沢出合までの100mは再びスキーを担ぐ。本流に戻るとようやくほっとするが、一の倉沢出合の林道までいってから荷を下ろした。
最上部を滑りきったところ。
こんなのは滑りたくないが...。
仕方ないので滑る。

写真を撮ったり、訓練をしたりする人たちが数名。私は、幽の沢に向かって少しいったところにある、学生時代のクラブの慰霊碑にごあいさつしてくる。急に雨が降ってきたが、再び林道を歩いてマチガ沢を通る頃にはまた晴れてきた。
谷川温泉で桜の花びらの浮かぶ露天風呂につかり、Kさんお薦めの「坪の庵」で、昔ながらの太くて黒い蕎麦を5種の山菜のてんぷらとともにいただいて満足。窓の外は春の里と天神尾根を正面に谷川連峰
木曽御岳に転戦するKさんとわかれ、渋滞のない関越道を戻った。

山菜と蕎麦で復活。

[メンバー・装備]
K下、Y氏&私 (ガルモントアドレナリン、ディアミールXP、バンディットB2)

[コースタイム]
登山指導センター先ゲート 0620
一の倉沢出合(870m) 0720/0740
シンセンのコル(1500m) 1020/1110
一の倉沢出合 1200/1300
ゲート 1340

[登下降高度]630m
[滑降高度差]約500m
[地図&GPS]