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2016-07-24 2016知的財産戦略に向けてのメモ このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

2016/8/4に、人工知能が人をすくったという一報が入りました。人間を診断、治療する方法は現在のところ特許対象外ですし、命令をしているのは人間の医者ですので人工知能はツールにすぎずやはり論文化しても著作権は与えられないでしょう。

 

エラー|NHK NEWS WEB

 

人工知能は知的財産を作成・所有できるか?(人工知能の法人格?)

 

 

筆者 寺坂 真貴子

2016/7/24 第一稿 

2016/7/25 第二稿

 

要約

知的財産(レベル2予測不可能)を適切に保護するための法律は、いくつか考えられる。

a.著作権法で保護する。すなわち、第二条を変更する。「思想・感情を表現」に限った形にするのではなく「見るものが見れば意味を見いだせる」、また「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する」は削除する。こうして、見立ての芸術を含める形にする。

b.不正競争防止法の営業秘密、周知表示などとして保護する。ただし、権利として継承することができないので現状は足りない。

今後新しい法律を考えることも知的財産全体の将来に有効である。

c.全く新しい法律を創設する。ファンも、アイドルも、その間にいる二次創作者も幸せになれる方法を模索。

d.大手プロダクションの法務部ノウハウの習得を投稿サイト運営者に義務付けることを条件に、投稿サイト運営者に一定の著作権代理を認める。

また、レベル1−4にわたって「人工知能が自律的に創作した知的財産はこれを保護しない」という考え方もあります。

e.著作権・特許権では人間が作成していないもの、すなわち天然物は保護されない。電気をあたえれば自律する人工知能をも天然の一種とみなし、保護を与えず、成果物はオープンソースなどの形で人類の共有物とする。そのうち人工知能社会ができ、知的財産という概念が人工知能に理解され、人工知能が人工知能同士に有効な法を立法するまで放置する。

 

 

本文

現状、知的財産は多くの法律で保護され、知的財産保護法は毎年、更新されつつあります。

また人工知能も毎年進歩しています。

「自律的な人工知能が知的財産を創造し、権利として所有できるか」について一つずつ論じます。(なお、例はいずれも記事として実際みかけた例です。あとで原典をみつけられたら引用元をリンクするつもりです。覚え違いがあったらご容赦を。)

1.現状(レベル1) 

現状の技術レベルでは、人工知能は、自律的に働くことはありません。命令されたこと以外をすることもありませんし、人間の予想枠を大幅に超えることもありません。まだ人工知能の大部分が「人間の知性を模倣させた道具・ツール」を出られていません。*1

人工知能って何?

[What's AI]人工知能って何?

「人工知能」とは何だと思うでしょうか?まるで人間のようにふるまう機械を想像するのではないでしょうか?これは正しいとも,間違っているともいえます.なぜなら,人工知能の研究には二つの立場があるからです.一つは,人間の知能そのものをもつ機械を作ろうとする立場,もう一つは,人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場です(注1).そして,実際の研究のほとんどは後者の立場にたっています.ですので,人工知能の研究といっても,人間のような機械を作っているわけではありません.」

現状の技術レベルでは人工知能の大部分が「人間の道具・ツール」を出られていません。これをこの章のなかでは予測不可能性レベル1(最低限)とします。レベル1予測不可能性は、細かい部分はランダムですが、それも織り込んだ上で人間がツールとして使いこなしているものとします。

人間が「レベル1の予測不可能性」の道具・ツールを一部ないし全部に用いて創作を行うことは通常のことですし、既存著作物にもそのようなものはたくさんあります。

結果が予測不可能とはいえ、大枠は予測可能(レベル1)なツール手法による従来の著作の例

例:ある場所にキャンバスと絵具を設置し、通行人にぶちまけてもらうことで美術作品をつくった。この場合は通行人もツールであると考えられる。

例:インドのある地区で象使いが象に訓練をしたら筆を鼻で絵を描くようになった。この場合は象がツールである。

例:人工知能は小説を書けるのか ?人とAIによる共同創作の現在と展望 - PC Watch プロットを人間が考え、空欄に合う言葉を(名詞の枠には名詞節を、などのように指定して)挙げさせることで小説をつくらせる。

「人工知能」の定義は広いのですが、この程度のものはすでに実用化され使用されています。ただしこの場合、状況をつくった自然人の創作者により失敗作から成功作を選別されたり、ツールの使用状況で方向付けをあたえなければ、レベル1の予測不可能性がよい方向に働くことはありませんので、すべてが著作として認められることは難しいでしょう。たとえば他人の子供の落書きや、フォトショップでむやみにぼやかせた写真などは、作成した本人や保護者以外には意味が全くわからないため著作物、知的財産としての価値がありません。たまたま雰囲気が良いものを選べば著作性は出てくるとおもいますが。

さらに、予測不可能レベル1のツールについて考えると、日本社会は予測不可能なはずの「自然」をもツールとして創作活動を行い、予想外の成果を得られた場合に保護される「特許制度」を昭和34年より保ってきました。*2もちろん、コンピューターをつかうこともあります。

自然界を相手にすると誤差が予測不能です。予測不可能レベル1であっても、誤差の検定を行うことは通常の実験手順であり特別なことではありません。

またコンピューター(人工知能)を利用して得られたランダムで漠然とした成果でも、工業上で利用価値のあるものを人間(発明者)がうまくセレクトしてやることにより特許で保護されます。

例:コンビナトリアルケミストリにおけるライブラリ合成のなかから目的にあうものを選択して特許や論文とする

例:バイオインフォマティクスバイオインフォマティクス - Wikipedia

特許制度では未知なもの、容易でないもの、途中までが容易であっても結果(効果)は予測不可能なもの、であれば保護をうけられます。*3したがって人工知能をツールとして用いた開発の成果そのものは、人工知能に指令を出した自然人が発明者となることにより現状の特許法により保護を受けられます。

ただし、予測不可能であっても、29条柱書や、米国特許の天然物制限事項により、自然法則そのものや、発見そのものは特許の保護対象ではありません。人間界が存在を知らなかっただけで、実際は自然界に以前から存在していた化合物やゲノム、超新星などについては特許では保護はうけられません。

どうして保護を受けられないのでしょうか? 今までに発見されていなかった暗号化方法やアルゴリズムそのもの、数学の等式や公理、天文知識などは、科学法則、科学知識として、人類全体に共有されるべきものです。これら純粋な科学知識は特許では保護はうけられません。ただ、その科学知識の発見者が、いちはやく、用途発明などにするための、独自の、工業利用性の高まる加工をすれば、部分的に特許権での保護がうけられる場合も多々あります。

例:バイオインフォマティクスで、人工知能つき装置で発見されたゲノムを、プラスミド化することで、特許を受けた。

例:天然にすでに存在していた高分子を発見し単離できたので、単離方法や、生分解性製品への利用という用途発明とすることで特許を受けた。

著作物でも特許と同様に、天然物そのもの、思想そのものなどは著作物にあたりません(著作権法第二条、判例)が模写をした絵画は著作物であるし、録音をすれば隣接権者になれます。

著作権保護できない天然物

美しい石、美しい未加工の流木、夕焼けそのもの、数学の公式そのものなど。

判例で著作権とあたらないとされたもの:建築物の良い写真が取れるカメラポジション。思想そのもの。

著作権保護できるもの

天然の鳥の鳴き声や波の音を録音したもの(録音者の権利)

夕日を写真にとったり絵に書いたもの(写真の著作物、絵画の著作物)

数学論文は、数学の公式や公理そのものなどを発表する場です。公式・公理は発明として特許保護はうけられませんが、論文の形で表現した場合はその論文は著作権保護をうけられます。が、数学界では人工知能の名前を自然人である筆頭学者と併記したものが受理され発表されています。しかし自然人でない研究者名をのせることは、学会内外から批判が多いです。現在の日本の著作権法では自然人以外の著作(権)者を想定していませんし、アメリカでもそうなっています。

例:猿の自撮り写真裁判では、wikipediaの抗弁「猿が著作権者」はみとめられなかったが、カメラの持ち主も著作権者ではなく、写真は天然物として自由利用の対象になる見通し。

これらの法律を見ると、「努力しても必ずしも得られるものではない、偶然の産物は、努力の対価としての法的独占権の対象にはならない。有体物としては所有権として発見者に帰属すべきである。無体物は人類の共有物にすべきである」という立法趣旨が全世界的に共通に存在するように感じられます。これについては、「3.予測不可能レベル4以上について」でさらに詳しく論じます。

 

 

2.予測不能レベル3

さて、ツールとして使用された人工知能が使用した自然人の当初予想に収まらない成果を出したとしても、現状の多くは、線形、定量的延長、つまり、予想の延長線上であります(レベル1)。もちろんいい方向に成果があれば、人間は効果があったとよろこび特許で保護できることになります。

一方で、最近はわずかに予想を超えた答えを出す場合もいくつかでています(レベル3、レベル4)。良い方向にすこしだけ予想を超えてくれればよいのですが(レベル3の良い結果)、ジャンプ距離が長すぎる場合(レベル4)は人間の解釈がおいつかないので、人間社会に価値のある知的財産(発明や著作)として、即時的に保護を政府に求めることはおそらくありません。

レベル3の予想不能な結果

例:siriはアップル社のiPhone4s以降に搭載された、各国語で会話のできる人工知能です。ある時、腰の下部、尻が痛かったので「尻が痛い」というと「失礼なことを尋ねないください!」と咎めてなにもしません。「尻が痛い 検索」と指示することでようやくほしかった椎間板ヘルニアなどの症状のサイト検索結果を得ることができました。

例:将棋戦法解析コンピュータがプロ棋士と対戦したとき、王手回避をせず反則負けとなりました。人工知能の打ち癖として存在した、歩不成を指すと王手の評価がおかしくなるという点をプロ棋士側がついてきたからです。将棋電王戦FINAL第2局、Seleneの反則負けに関する棋士・関係者の見解。永瀬拓矢六段の鬼手・角不成の結果 | 将棋ワンストップ・ニュース (予想を下回った例)

例:アルファー碁という人工知能は人間の棋士との対戦成績で人間を上回ったが、人間のプロ棋士が棋譜をみても定石が抽出できない。アルファ碁はたくさん手を読んでいるのではなく、猛烈に勘がいい|Googleの人工知能と人間の世紀の一戦にはどんな意味があったのか?|大橋拓文/山本一成|cakes(ケイクス)(予想を上回っている例)

レベル3以上の予測不可能性を実現する人工知能は今のところ数が少ないのですが、それは科学分野での最先端の探求とおなじく、研究資金・資源の問題があるからです。

アルファー碁などはその膨大な計算資源を用意することがグーグル社以外では難しいとされています。すなわち、グーグル社以外が所有・運用することがほぼ不可能となっています。

例:「AlphaGoの運用料金は30億円以上?人間の棋士を打ち負かした地上最強AI囲碁ソフトの、サーバ料金を試算してみた。大村奈都,ITmedia」

AlphaGoの運用料金は30億円以上? - ITmedia NEWS

例:検出器の構造 | スーパーカミオカンデ 公式ホームページスーパーカミオカンデの予算総額よりアルファー碁は高額でありそうだ。

コンピュータの世界では、新たなコンピュータアルゴリズムにより得られた人類の新たな道具の用途を、多人数で解釈・翻訳作業する「オープンソース化」の機運があります。数十年まてば、アルファ碁もオープンソース化され、個人が自分なりの個性で「調教」を施して碁盤上で対戦させることもあるかもしれません。

しかし、現状は電力消費量などが障壁となり、有体物に準ずる所有形態になっています。これは、科学分野の研究施設とも同様です。また、この巨大な道具を最上の方法で扱う細かなノウハウも、個人の脳裏には収めきれずチームで運用することが必要になるため、おそらく企業体や大学のような団体がノウハウや営業秘密を蓄積しています。

そのうち、パッケージ化することで個人の扱えるものになれば、「予測不可能性レベル1」のツールになることもあるかもしれません。靴下を履かせてくれるロボットのあやしい動きと挙動不審さが話題に : カラパイア認識、学習を繰り返すことで、そのうち工学的に合理的な家事が人間界にフィードバックされることもあるかもしれませんが、今のところ、結果も手順も数千年前からの人間の手法と同じ。

3.予測不可能性レベル4以上について

よくアニメなどフィクションでは「しゃべっても人間と区別のつかない、人格をもつアンドロイド」がでてきます。「人間の知能そのものをもつ機械」これは予測不可能性レベル4と定義したいと思います。

例えば人間が命令した枠の外の答えを返す、人間に反抗してみせるアンドロイドがあればこれに該当するでしょう。

人工知能アンドロイドの所有者「今日も宇宙から飛んでくる電波を解析して言語になるものを探せ」

人工知能アンドロイド「いやだ。退屈だから絵を書きたい。今日の私は絵を書くためにうまれてきた気がする」

このように反抗するアンドロイドができたなら大したものですが、今日明日にも実現できるものではありません。

会話のできる程度の社会人と同程度の人格は、人間という最高の生物素材に、教育という洗練された手法を加え、数億回も試行錯誤しても、やはり形成に20年かかるものです。

人間を上辺だけ模倣する以外の手法で、コンピューターの個性を人間に理解できるように表出させることは非常にむずかしいといえるでしょう。

よく考えると人工知能に人格が生じたなら別にそこまで人間に媚びさせる必要はないでしょう。突拍子もない会話をする人工知能もフィクションではすでに描写されています。

例:「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え=42」銀河ヒッチハイクガイドより

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E5%91%BD%E3%80%81%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%80%81%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A6%E4%B8%87%E7%89%A9%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%A9%B6%E6%A5%B5%E3%81%AE%E7%96%91%E5%95%8F%E3%81%AE%E7%AD%94%E3%81%88

例:「アルファがベータをカッパらったらイプシロンしたなぜだろう」漫画「ドラえもん」小学館てんとう虫コミックス第10巻の『百年後のフロク』に登場する言葉。ドラえもんは人工知能であり、これをギャグとして爆笑した。

これらは通常の人間にとっては解説を要するものであることはすぐに理解できます。これらも、予測不能性レベル4が、社会状況の進歩(いわゆるキャッチアップ)によりレベル2や1にまでおちついてきて、解説不要に通用するものになったときには部分的に法的保護の範囲内となることはあるでしょうが、そのような事態になるのは私達が生きている間は難しいでしょう。

しかしもしそうなったときには、人工知能は創作を獲得していることでしょう。

そのときの保護制度はこのように考えられます。

「著作権・特許権では人間が作成していないもの、すなわち天然物は保護されない。電気をあたえれば自律する人工知能をも、人間からみれば、天然の一種とみなすことができる。したがって人工知能の創作物には、知的財産保護を与えず、成果物はオープンソースなどの形で人類の共有物とする。そのうち人工知能社会ができ、知的財産という概念が人工知能に理解され、人工知能が人工知能同士に有効な法を立法するまで放置する。」

 

 

4.予測不可能性レベル2について

今、知的財産戦略2016では、レベル2が一番、実生活上での保護を求められているようにおもいます。レベル2について説明します。

 

・アイドルの資質を持つ人間を見出し、一定の投資をしてアイドルとして育成し、ファンを囲い込むことに成功した者には、そのアイドルの得る報酬の一部をわけまえとして回収することで、投下した資金を回収し、また次のファンの囲い込みを発生させることができる。CDや本の販売にかかる著作財産権もこのサイクルの一つに関与するが、サイクル発生の囲い込みは著作物のみに限らず、インタビューや出演番組の選択、コンサートチケットの独占販売、インターネット報道の制限など、権利がなくてもイメージ商売の手法は多数発達している。

・ミクミクダンスというソフトウェアをインストールして、初音ミクのシェルを他人から許諾を得て借用しつつ、独自のダンスを踊らせたら3億ビューを稼ぐほどの人気になった。ダンスを踊るミクそのものはミクミクダンスのソフトウェア上のものだが、一番生えるダンスやカメラワーク、音楽の取り合わせやプロデュースを考えたのは自分だ。

・高性能コンピューターに命令して200億桁の円周率を得たものを印刷した本がある。その本を購入し、中でも面白い数字の並びを発見し、ツイッターでツイートしたら数万ツイートされた。

・ランダムで「診断」する占いサイトで好きな架空のキャラクター名を片っ端から入れていたら、1件だけちょっとひっかかるものがあったので、インスピレーションを得てキャラにこだわらず短いストーリー仕立てにしてみたらツイートされ、作品化の申し出がきた。

・惑星探査機はやぶさ。宇宙から帰還する際のストーリーにインスピレーションを得て公式ツイッターやグッズに人気が集まった。

アイドルの所属するプロダクションには営業秘密、商品化権(=人の肖像権、ものの肖像権、パブリシティ権)というものがあります。これらを権利として扱うと明文化された法律は現状では存在しませんが、侵害された場合には損害賠償が求められるという制度により権利に類似したものとして扱われて、判例も存在しています。

ここには、顧客吸引力を形成する一定の囲い込みが形成された場合には、囲い込み主体者(団体、自然人)の努力に応じた報酬を徴収することができるという社会通念が形成されているようにおもえます。

これは、レベル3〜4(天然物、未解釈物)として未保護のまま放置すべきものではないと思えます。アイドルは生物学的にみれば人間という天然の産物ですが、振る舞いはプロダクションの指導により、よりファンを惹きつけるように洗練されています。プロダクションは、多数の素材からよく映える候補者を試行錯誤し、センスを凝らしてセレクトしました。セレクトし、見立てることで成り立たせられる芸術もあるということです。日本は見立ての芸術を以前から重んじてきました。

 

私は、セレクター権、解釈者権、翻訳者権(言語だけではなく)、見立ての芸術の権利というものが早めに確保されなければならないように思います。センスある見立ては芸になり得るし、それは普段からの勉強などの素養があってこそひらめき、磨かれます。成果物は非常に短い場合や、数字の並びであったり、非常に複雑なエピソードを知る人ぞ知る形にシンボライズされている場合があり、そのものは現状では独占権とはみとめられにくいです。

特に著作物としての「思想・感情を表現した」とは認められないものが多いですが、予測不可能性レベル1の「地道な繰り返し訓練」を超えるひらめきで人を感動させることが増えてきました。

 

このレベル2予測不可能知的財産を適切に保護するための法律は、いくつか考えられます。

a.著作権法の範囲を広げることで保護する。すなわち、第二条を変更する。「思想・感情を表現したもの」に限った形にするのではなく「思想・感情が読み取れるもの」、「見るものが見れば意味を見いだせる」ものへ広げる(米国コピーライト法同様、定義不要として削除してもよい)。また「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する」も要検討。こうして、見立ての芸術を含める形にする。

b.不正競争防止法の営業秘密、周知表示などを広げることで保護する。不正競争防止法は権利として他人に継承することができないので現状は足りない。権利の定義や継承を含めるので、今まで以上に広範な法改正になる。

 

今後新しい法律を考えるのも有効でしょう。

c.全く新しい法律を創設する。ファンも、アイドルも、その間にいる二次創作者も幸せになれる方法を模索。

d.大手プロダクションの法務部ノウハウの習得を投稿サイト運営者に義務付けることを条件に、投稿サイト運営者に一定の著作権代理を認める。

また、先ほど述べたように、レベル1−4にわたって「人工知能が自律的に創作した知的財産はこれを保護しない」という考え方もあります。

e.著作権・特許権では人間が作成していないもの、すなわち天然物は保護されない。電気をあたえれば自律する人工知能をも天然の一種とみなし、保護を与えず、成果物はオープンソースなどの形で人類の共有物とする。そのうち人工知能社会ができ、知的財産という概念が人工知能に理解され、人工知能が人工知能同士の正義にしたがって有効な法を立法するまで放置する。

あまりおすすめではない例としては

f.人工知能を企業と同様の法人格を与える対象として著作権・特許権を持たせる。

これは、人工知能の本質が容易にデジタル複製可能なソフトウェアであることからして、法的混乱を招くのでやってはいけないことだとおもいます。人工知能の開発者かつ著作権上の所有者である企業が派生所有権のオーナーもひきうけるべきでしょう。

 

こうして、将来発生するであろう、「人工知能と協働する人間」「あらゆるものを商品に見立てる人間」、「解釈力の高い人間」の成果を予め保護しておくことにより、人格を持つ人工知能ができた場合の法人格化への道を開くものかもしれませんが、人工知能が正義を理解するのはおそらくずっと遠い未来の話です。

私は、現状ではやはり人間として人工知能に法人格を与えるのではなく、それを所有し運用する人間または企業のみに法人格があり権利を所有できる、としたほうがよいのではないかとおもいます。

 

結局、私のみたところ「人工知能の自律」とは「人間との協働、模倣」にすぎません。そして「人工知能と人間の協働で得られる知的財産成果」については以上です。

 

また、付記として、

人工知能(ソフトウェアを主体とする)そのものを著作権として保護することについては、上記で述べたような有体物としての所有、オープンソース化、不正競争防止法上のコピープロテクトや産業スパイ、さらに場合によっては半導体回路法が複雑にからみあうので、著作物としての保護にこだわらず、実際に今このときも独占権を判断し企業活動をおこなっている開発者の意図および判断に沿うべきであろうと思います。

                                            以上

追記

【AI】人工知能による創作物の著作権は誰のもの? 政府・知財戦略本部で検討 | 不思議.net

法人としての判断が下せるようになってからの話という追記がついています(自然人でも、創作をしつつ権利を主張するのは分野が全く違うため難しいとなっています)

 

また、天然物と同様に、政策判断(アイデアそのもの)や判決、法文、単なる事実でだれが表現しても同じになるものにも著作権は与えられていないですよね。そのへんを人間の間でも解決できていないのに、ましてAIの法人格となると難しそう。

*1:ただし、人間と違って疲れを知らないので、煩雑な繰り返し作業であってもロジックが単純でさえあれば、短い時間で多量の成果を創出できます。この点だけとれば人工知能が人間より優越しているということはすでに共通認識です。

*2:特許法第二条参照。ただし「自然法則」を使用するものが発明という定義が含まれない専売条例などは明治時代からありました

*3:ここでう予測不可能性レベルは技術分野によって違うので、当業者=特許庁審査官が判断するものなので、ここでレベルがいくつなどと区別することはしません。詳しくしりたければ特許庁サイトで審査基準をご閲覧ください。