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この日記のはてなブックマーク数 弁理士の寺坂真貴子です。日々をつづります。
Here is a blog of Japanese chartered patent agent(=Patent attorney), Makiko Terasaka. Take it easy to contact me by leaving comment below or another site !
現在の姓名で検索をかけると300件程度と非常に少ないのですが、旧姓だとその10倍くらいでます。

2007-12-10

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特許庁特許審査官として、H15年にごく少数、H16年度からは毎年100人程度の「任期審査官補」が採用されています。そのほかに従来型の試験による特許審査官も毎年多数採用されていますので、毎年多ければ200人もの特許審査官が新しく増員されているわけですね。

任期特許審査官補」が任期を終えると特許事務所の進路を選ぶことも多いと言われています(そもそも、弁理士資格をとってから任期付きに応募する方も多いとか)。任期は5年間(補2年、官3年)、延長して9年目には士がとれます。延長しても10年はありません。

さて、来年は平成20年、平成21年4−5月には多くの「卒業生」が業界に流れ込むかもしれません。新しい出会いと別れの季節!?

2007-10-08

[][]ビジネスモデル

知財立国日本ということがいわれていますが、実際の法律になりますとなかなか難しいものです。特に、知財保護は人のアタマの中身というか、目に見えないものを保護しようという法律です。

お金、芸術株価アイデアなど、人のアタマの中から生まれた価値保護するのには、やはり、アタマの外に取り出した形、つまり、表現した形を保護することになります。

表現というと、人と人とのコミュニケーションです。直接会って話せば、価値観は多角的によく伝わるのですが、官庁は書面主義ですから、言葉や図でアイデア価値を表現できないといけませんね(そこがもう難しいんだヨという場合もありますね。わたしも36条の拒絶理由を受けた直後など痛感します:笑)。


・さて、最近、ビジネスマンの間では「すごいビジネスチャンス(商機)を自分が最初に見つけたのでそれを保護してほしい」という、いわゆるビジネスモデルの権利化の要求が高まっています。

答えを先に言いますと、しかしビジネスモデルは、知財としての権利化が難しいものが多いです。というのは、第1に、条件が限定されていませんか?たしかにその商事情でならば価値はありますが、遠方ではどうでしょうか?条件が限定されていませんか?と問いたくなるものが多いのです。つきつめると、ビジネスモデルの難しさは、「普遍的でない価値を、国に守ってほしい」という要求の難しさにつきます。これじゃわかりにくいですから、例でお話ししますね。


・たとえば

「A社に営業をかけるときに、A社買い付けご担当者は「虎やのヨウカン」が大好きなので、それを手渡しすれば多忙中でも時間を20分(ひとくち食べる間)、割いてくれる」

という事実をあなたが最初に発見したとします。ものごとを発見すると、「これはいいことを知った!自分だけがこれを独占するぞ!後から真似したってダメだ!」と勇ましい気持ちになりますね。さて、この事実はどこまで価値があるでしょうか?結論としては、A社ご担当に話を聞いて欲しい人だけに高い価値があります。つまり自分と、おなじ店への納入を目的とするライバル業者が知れば大喜びですが、一般の人には特にインパクトのない情報です。もちろん外部に知られないように営業部内秘で管理すべき営業秘密です。

・これをもし、官庁に出願すれば、1年半後には世界に公開公報で公開されてしまいます(最終的に権利登録されなくても、1年半という時間が経てば、全ての出願が公開されますよ。ご注意を。)。そうなると、ライバル社でも調べればすぐに目に入る公共のホームページに書かれてしまいます。

アレ?それではこの場合は逆に出願を避けなければいけませんか?そうです。では、公開されてもいいような、普遍的につかえる部分だけを出願することは?もちろんできます。が、「A社に限らず一般商談に広く通用する手段としてのヨウカン贈答」を一社が登録し独占するほど価値がある発見かどうか、官庁に納得してもらうのは最終的には難しいでしょう。一般的贈答には、A社+羊羹の組み合わせほどの突出した効果は例示できず、普通に行われる程度では効果も少ないからです。

A社+羊羹というのは特殊な発見です。受け取る側の都合で、いつオジャンになるかわからない程度の持続性しかないです(A社担当さんが異動や糖尿病にでもなったら即座に中止、という不安定さを含んでいます)。効果が属人的(人によって異なる)、効果が短い、など特殊事情のある部分を含むアイデアは、法律保護されづらいです。

ご興味のあるかた向けに少し詳しく説明します。(飛ばしてくださってもかまいません)

特許庁の管轄になる知財権は全4種類ですが、それぞれ「この種類の権利としては、いくら出願されても登録できませんよ」と最初に断られているケースがあります。

特許権で保護できないもの(不特許事由)」は、先にどこかで誰かがやっていたもの、先に誰かがやったことから簡単に連想できるもの、結局人類のためにならないもの(産業に利用できないものも含む)、科学法則を使用しないもの、出願時に書類が不備なもの(わざと実施できないようにコア部を隠して書いてあったものなど。)などです。

実用新案権で保護できないもの」は、不特許事由に加え、「形状を有する物体でないもの(液体、気体、配合割合、システム情報そのものなど)」もダメです。

意匠権で保護できないもの」は先に誰かが書いたデザインと同じまたは似ているもの、書類が不備なものなどです。

商標権で保護できないもの」はブランド力、識別力のないもの(長く不使用のもの、他人のブランドや国名などと紛らわしいもの、一般用語や一般地名など)、書類が不備なものなどです。

説明のためのおおざっぱな解説ですので、学問的に分類がおかしい部分や例外もありますよ・・・


・さて、A社とヨウカンの話はどの権利で保護しようとしても、不登録事由のどれかに該当してしまいそうですが、仮にこれだけがたまたま、公開も辞さずに出願し、審査をアンビリーバブルな偶然で通ってしまって保護されたとしたら世の中はどうなるでしょうか?

この権利化の代償は秘密の公開、そしてそれで得られる成果は、結局、A社ご担当の采配次第にすぎないです。そして、もしも他社営業がA社ご担当の取引に羊羹を持ち込んだとしても、国家権力が見張って保護したりはしてくれません。あやしいとおもって告発したり、下調べをするのは、全部自社でやることになります。万が一ヨウカンを持ち歩くビジネスマンの身元をすべて警察がチェックし出したら、世の中が大変なことになりますから・・・。

また、あまりに「ライバルを牽制する」ことに夢中になると、みなさんご存じの不正競争防止法にひっかかってしまうことも考えられます。同じ行為をある法では保護、もう一つの法律では防止しているのです。その点でも世の中がおかしなことになります。

・結局、取引相手A社が、ライバルと自社を見比べるというのは当たり前のことです。A社の合理的な商業判断を、国家権力で邪魔してしまうのは、業界(取引相手を含む)全体の発展という視点からは、健全とはいえないのです。A社ご担当が入れ替わる日まで自社の、一見さりげない気遣い、実は重要な営業秘密として、秘蔵しておくのが一番現実的です。

・ここまで長い文章を読んでくださってありがとうございます。中には、「営業秘密の扱いくらい知っている、こんなつまらない話はまじめに読む気もしない」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、こういうのはどうですか?

心理学を利用したビジネスモデル特許で権利化しました!ヨウカンを配れるのは自社エージェントのみです。あなたもエージェントに加入しませんか・・云々」(悪質な想定例です)

こんな広告文句を見ると、だれしも、一瞬「アレッ・・そんなこと独占できるんだっけ!??それなら自分も張り合わなければ!」と、惑わされてしまうものです。一時期、「ビジネスモデル特許」という言葉をつかった、弁理士から見るとちょっと不審な点のある無責任な文章が多かったのです(同じように乱用されがちな言葉に「世界特許」なんていうのもあります)。「特許」とか、「権利化」という言葉の魅力に惑わされる気持ちは、日々権利取得を目指す身として本当によーく理解できますが、その魅力に釣られてしまうまえに、一回は「本当に、単なるヨウカンを独占したいのだろうか、そんなことがまっとうなビジネスでほんとうにできるのだろうか」と考えていただくことも必要ではないかと、一弁理士として思うのです。宣伝などを見てみて、「本当にそんな特許権(商標権、など)が存在するのか?」と疑問が生じた場合は、先行調査のお手伝いを弁理士がさせていただきます。(実際は存在しない特許権や、内容の違う特許権を、宣伝に使用することは犯罪です)

・一方、たとえばもう少し自社内で発展させて、「自社で羊羹開発を行い、虎やのよりすごい羊羹をつくってA社担当に配るばかりかB社やC社、一般の店舗などでも売り出しはじめた」ともなれば、これはもう、弁理士の本来の出番です。羊羹の新レシピ特許権をとったり、自社羊羹ブランドヨウゥカーン(例示ですので敢えてダサいですが:笑)」の商品名を商標権で、包装デザイン意匠権で、羊羹の特殊な形状を表す看板を立体商標権で、多面的に保護していこう、なんてのは得意中の得意。最初のアイデアに開発という努力を加えることで、普遍的で、人々に広く役立つ知識になったのですから、最初に考え付いた人が堂々と登録を受け、他の業者をうまくけん制して開発費以上の利益を回収しましょう。弁理士という人種は、こんなふうにビジネスチャンスを扱いますので、「弁理士殺すに刃物はいらぬ、プロジェクトXがあればよい」といわれます(というのは実はほとんど私だけが唱えていることですが)。

・知的財産の制度を感じ取っていただけたでしょうか?実は、私も、「従来の世の中にはあり得なかったし考えられなかったような、商機をつくりだすパワー」をもっとうまく官庁が保護=登録=権利化できないだろうか、と考えることはあります。開発努力の質も方法も効力も従来とは違ってきています。特殊な科学技術ベースなら特許庁の対応も早くて権利化されやすいことが多いのですが、特殊な商事情がベースの場合は、やはり全部の行動をうまく保護することはできないことが多いように思われます。答えは「1円起業」、「企業起業」、「まずは自分で行動」などがベストアンサーになる場合も多いのかもしれません。

しかし、複合的な大きな企画の一部には、早めに知財権で保護しておくべきアイデアが含まれているかもしれません(商標権、実用新案権がお役にたつかもしれません)から、デビューさせる前にお近くの弁理士まで気軽にご相談ください。