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2009-05-05

[]今と未来ウェブコミック事情

小学館にて『新ブラックジャックによろしく』を連載中であり、映画化された『海猿』の作者でもあるプロ漫画家佐藤秀峰先生が、自身のサイトショッキングコメントをしている。なんと、「恐らく、僕が雑誌で連載をするのは「新ブラックジャックによろしく」と「特攻の島」が最後かもしれません。もう雑誌から声はかからないでしょうから…」と語っているのである。

従来のように漫画雑誌などの紙メディアでの連載ではなく、インターネットメディア漫画を連載することに決めたことがいちばんの原因のようだ。その裏側には、深い大きな苦悩と、出版社との確執があったようである。以前から佐藤先生出版社漫画家の間でより公平な立場に立って収益環境を良くしていきたいと、業界改革にも似た行動を一人で行ってきた。出版社から出版社への作品の移籍もそうだし、漫画家印税率や原稿料の増加の要求もそうだ。


『新ブラックジャックによろしく』が最後の作品になると思います | 未来検索ガジェット通信

佐藤秀峰先生の一件が公開されてから、この出版業界利益分配や、流通のしくみの見直しなどをあれこれ考えていたのですが、本を売るという意味においては現状のしくみがベストでないにしろベターなんだろうな、というような身も蓋もない結論に至りました。


仮に取次ぎをなくしたとして、5000にものぼるような版元と数万となる書店が個別に取引していたら、それはもう編集さん以上に営業さんが血を吐くような職場になるし、書店書店で発注や返本の手間を考えると、馬鹿馬鹿しいほどの販管費を削ることになる。そこで発生する「取次ぎを除いた利潤」が版元と書店に分配された時に、手間に見合ったものが得られるのかどうか、と聞かれると多分無理でしょう。


それじゃあ、今度は版元をなくしたとして、数万ではきかない漫画家と取次ぎが取引したとして、その前に本はちゃんと刷れるだけの資金は十分にあるのかと言えば、多くの漫画家は無いだろうし、告知等の販促は行えるのかとか、そもそも取り次ぎと交渉したりして本業漫画描いてる暇はどれだけあるのかとか。まぁ色々問題は見えてきます。


ではでは取次ぎと版元を全てなくして、漫画家書店だけで取引させよう!っと、これどこの同人委託、って話になります。現実的には同人での委託販売が手間とコストが掛からない最良の手段なのかなと考えていますが、結局印刷の際のリスクは丸被りなわけだし、ある程度資金力が無いと細かい重版の連発となり、思うように作品が世の中に普及しないどころか、利益率もどんどん下がっていきます。


以上のように「本を売る」ことにおいては現状のシステムは非常に効率が良く機能していることが分かります。某取次ぎの返品伝票が未だに手書きのみだとか、タイトルを"全て"記名しないとならないとか、伝統無駄に重んじられているように思えるのは気のせいです。


佐藤先生ウェブコミックで食っていけるの?

さて、そこで佐藤先生が考えたのが、ウェブコミックとして1話単位で販売する、という方法なのですが、これって大いに問題があると思います。

かーずさんも指摘されている通りインターネット課金制度は定着し辛い。それは金額の問題じゃなくて、支払い手段がクレジットだったり、webマネーBitCashだったりと手続きの煩雑さによるものだと僕は認識していますが、10円20円という破格のくせして、門戸が狭いのでは本末転倒なお話ですよね。

ライトユーザーが新しい場所に足を踏み出すにはそれ相応の勇気が必要です。現状のシステムで少しばかり高い金額になろうとも、馴染みの強さには敵いません。ケータイi-modeなんかは、月々の料金から自動的に支払いが行われるしくみなので、あの辺の機能と似たようなことが可能になれば、少しは解消されるのでしょうか。


またコンテンツそのものがお金を払うに値するかも十分に検討しなければなりません。10円20円での配信ということであれば、当然DMMパピレス等のような販売サイトを利用するわけではなく、自らのサイトで行われると思われますが、佐藤先生漫画を読む為だけにどれだけお客さんが集まるでしょうか。

僕は佐藤先生のファンで先生の著作は全て読ませて頂いており、間違っても批判しているわけではありませんが、純粋に、どれだけ集まるのか不安になります。


最近ウェブコミック事情

そもそもウェブコミックってどうなの?という話ですが、出版社もこれまで色々な試みを実践してきています。独断と偏見でいくつかをご紹介。


コミックハイ!公式サイト

僕の認識で古い所からいくと、ぺんぎん書房が運営していた「COMIC SEED!」が思い出されます。当時はまだあまりウェブでの配信は目立っておらず、新鮮な気持ちで読んでいましたが、きづきあきら先生が僕の中で一番輝いていたのはあの頃の話です。

完全無料広告費だけで運営していた所、サイト自体は黒字だったにも関わらず、いざ出版したらこけてしまって倒産してしまったようですが、現在双葉社によるWEBコミックハイとして継続運営されています。「にじぷり」や「つぐもも」はここの出身です。今も昔も0円で、ビューワーのインストールも無く運営しているんですよね。間口は十分に広いです。


ガンガンONLINE -SQUARE ENIX-

ところ変わって、最近お話スクエニが去年の秋から配信開始をした「ガンガンオンライン」はコンテンツの数が他所とはちょっと違う。先日「ガンガンJOKER」が新創刊されたのは漫画好きの方であればご存知かと思いますが、それに伴って残念なことに「ガンガンウイング」「ガンガンパワード」が休刊しちゃったんですね。まぁあの売れ数を見ていたらしかたない話ではありますが…。

休刊したものの連載作品はたくさんありました。その一部を引き受けたのがガンガンオンライン現在連載総数が30以上と、ウェブコミックの中でも抜群のラインナップとなっています。またここではオンライン小説も配信しており、同人ゲームひまわり」の"ごぉ&たつきち"コンビによるオリジナル作品等が掲載されています。

あまり話題に上がることが少ないですが、ガンガンオンライン、かなり頑張ってます。

スクエニはそれとは別に、現在少年ガンガンで連載されている作品1話試し読みもサイト上で行っています。ウェブを利用した読者獲得への努力、感服するものがありますね。(1話試し読みは他の版元でも行われている、最近ではポピュラーな手法になっています)


JUMP DIGITAL MANGA

少し特殊な事例を紹介しますと、集英社ジャンプデジタルマンガ」があります。集英社ウェブコミックは「ウルトラジャンプエッグ」が別にありますが、こちらはFLASHを利用したコンテンツとなり、厳密にはウェブコミックではないのかもしれません。FLASH全盛期より後に作られたこともあり、こちらもあまり話題にはならずい、残念なことに更新は終了しています。着眼点としては面白いと思ったのですが、アマチュアが作るFLASHクオリティと一線を引くことが出来ていなかったのが悔やまれる所ですね。


コミホリアダルト -エッチなオリジナルコミックを無料で開放!- in コミックとらのあな

成年漫画ウェブコミックも実はあります。

とらのあなが運営する「コミホリA」がそれに当たります。現在のところは全くと言ってよい程話題にはあがりませんが、みたくるみ先生や、たくみなむち先生等同人方面で著名な作家さんを集めて、とらのあなならではの展開を行っているようですね。こちらは年齢確認の為に、とらのあな通販サイトの登録が必要となるため、若干間口としては狭いような気もしますが、成年漫画を好んで読む層でとらに登録していない人を探す方がもしかしたら困難なのかもしれません…よね?


FlexComix Web|TOPページ

そして忘れてはならないのが、ウェブコミック大御所フレックスコミックス」でしょう。レーベルを3つに分けて展開し、掲載漫画数は100を軽く越える日本では最大のコンテンツ力を保有している、と考えられるサイトです。

ヒャッコ」の大躍進からメディアミックスへいち早く着手し、最近では「にゃんこい!」のアニメ化も決まったようですね。お抱えの漫画家個性豊かで我が道を突っ走り続けています。個人的には「おと×まほ」のコミカライズ担当した編集さんは神と言いたいです、とある理由により。

フレックスコミックスは母体がソフトバンクであることからも、資金面が充実しているのが強みでしょうか。展開力がちょっと他所とは桁が違いますよね。


まだまだまだまだあります。でもここで紹介するのはこれ位にしておいて、このように各版元は独自の路線でウェブコミックを展開しており、無料であることはもちろんのこと、様々な手法でユーザーの獲得に乗り出しています。

大分話が逸れてしまいましたが、さて佐藤先生はこの大海原で賞金首になることは可能なのでしょうか。蓋を開けて見ないと分からないのは当然の話ですが、コンテンツの展開の仕方、コンテンツそのもののパワー、それらが十分なものでない限り、既成概念をぶち壊すくらいはしないと中々難しいものがあると思います。個人でウェブコミックを展開している方々も当然同業者として相対するわけですし。

大丈夫なのでしょうか、佐藤先生皮肉は一切無しで、心より応援しています。


ウェブコミック、もう少し便利になってほしい

個人的に現状の版元によるウェブコミック展開については思う所があって、もう少し足並みを揃えたらどうなのかな、という風に常日頃考えています。

サイトは当然個別で展開されており一連性はなく、いくら無料とはいえ、どれを読めばいいの?どれが面白いの?どこが著名なサイトなの?と、若干の取っ付き辛さがあります。

まだまだ告知の余地があることは良いことでもありますが、ここは版元ごとに勢力争いをするのではなく、ユーザビリティから追求してみてはいかがでしょうかという所です。


ウェブ配信の手法としては、1話と最新話(もしくは最新話以下数話)だけ無料で読めて、あとは一切配信しないか、有料になるのが通例で、これらの配信日はしっかりと決められていることが殆どです。

これって書店で販売されている雑誌となんら変わらないと思うんですよね。雑誌だってバックナンバーは販売していないし、だからこそコミックへの需要は落ちないし、ものとしての価値コミックへ向けられています。

その「雑誌」って、同じ場所で売られていませんか?近い場所に陳列されていますよね。あの本屋のあそこにいけば「雑誌」があることが分かりますよね。

これって当然のことであり、とても重要なことだと思います。書店に関わらず優良な小売店はどこに何があるかが明文化されていて、一定の規則によって店舗が形成されています。それはお客さんに対して優しくあろうという姿勢が、そのまま売上げに繋がることを理解しているからであり、小売店の基本でもあります。ドンキホーテのような例外ももちろんありますが。

ウェブコミックだって、「インターネット上」に全てあるじゃないか!と言われればまぁ確かにその通りなのですが、ネットって広すぎですよ。どこから見たらいいか分からないじゃないですか。そもそもこれから獲得していくべきユーザーって「ライトユーザー」だと僕は思うのですが、違うのでしょうか。

そこで考えられるのがウェブコミック総合ポータルサイトになります。既存の取り組みではフレックスコミックスを含む「Yahoo!コミック」がそれに当たりますが、もっと包括的に全体を見通せるような場所があれば、ユーザー的には嬉しい所だし、認知度はぐっと上がるでしょう。

しかしながら、現にソフトバンクYahoo!コミックを運営してしまっているし、フレックスコミックスソフトバンク出資している為、現実的に全ウェブコミックを取り込むような取り組みは難しいのは明らかです。

一つの解釈として、このブログのようにサイト(または作品)を紹介をしていくようなレビューサイトが、街の小さな本屋さん的存在に値するのかもしれません。


非常に難しい問題ではありますが、Googleのブック検索が断行されていく中、コミックのデジタル化の未来を考えるに当たり、今まさに様々な議論が必要であると思いますし、その余地はたくさんあります。佐藤先生の問いかけが、それらに対しての一石になることを願っています。



※次回更新時にはハード面からウェブコミックインフラを構築する手法について、有体の考えを述べたいなと思います。

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