2008年03月03日
J-POPの政治学:大塚愛「さくらんぼ」、aiko「花火」
J-POPの事なかれ主義イデオロギー(および恋愛原理主義イデオロギー)がムカツクと言ってたわけだが*1、むしろ聴き手側のほうが勝手に政治性を見いだせばいいんじゃないかと思った次第。
1.大塚愛「さくらんぼ」
愛し合う2人 幸せの空
隣どおし あなたとあたし さくらんぼ
この歌のモチーフは明らかに日米同盟である。
日本と合州国の異常とも言えるほどの「熱愛ぶり」を、「さくらんぼ」というメタファーで皮肉っている。
しかしなぜサクランボなのか。当然ながら、それは日米友好のシンボルとされている桜(=ポトマック河畔の桜並木)を強く意識しているからである。
手帳開くと もう 2年たつなぁって
やっぱ実感するね なんだか照れたりするねそういや ヒドイ コトもされたし
ヒドイ コトも言ったし
中実がいっぱいつまった 甘い甘いものです
「ヒドイ コトもされた」とは間違いなく「原爆投下」「在日米軍によるヤマトおよび沖縄に対する犯罪」である。
「ヒドイ コトも言った」とは間違いなく、「鬼畜米英」および「安保反対運動」のことである。
笑顔咲ク 君とつながってたい
もしあの向こうに見えるものがあるなら
愛し合う2人 幸せの空
隣どおし あなたとあたし さくらんぼ
「笑顔咲ク」と、現代では「咲く」と表記されているものが戦前の仮名遣いになっている。
これは明らかに、戦前、つまり大日本帝国の時分から、合州国を常に慕っていたということの暗示である。日米大戦は、コンプレックスの裏返しに過ぎない。
もらったものは そう愛を感じ
あげたものは もちろん 全力の愛です
やっぱいいもんだよね 共同作業 罰ゲーム
思いがけなく歴史は さらに深いけれど
1つでも 欠けてたら とんでもなく
足りない 足りない! 足りない!! 2人の絆
合州国から「もらったもの」。それは実は、支配であり、植民地根性の内面化に他ならなかったわけだが、それらにすら愛を感じてしまっている。そうした「愛」に全力で答えようとする。なんたる滑稽さ!「共同作業 罰ゲーム」という表現には大塚の鋭い批判意識すら垣間見られる。
笑顔咲ク 君と 抱き合ってたい
もし遠い未来を 予想するのなら
愛し合う2人 いつの時も
隣どおし あなたと あたし さくらんぼ笑顔咲ク 君とつながってたい
もしあの向こうに見えるものがあるなら
愛し合う2人 幸せの空
隣どおし あなたとあたし さくらんぼ(もういっかい!!)
笑顔咲ク 君と 抱き合ってたい
もし遠い未来を 予想するのなら
愛し合う2人 いつの時も
隣どおし あなたと あたし さくらんぼ
「(もういっかい!!)」の声が自民党から聞えてくるようだ。力強いが、その反面、虚しく響く。私たちは過去から現在、未来まで「サクランボ」を余儀なくされているのだ。大塚の鋭い時代感覚が体現された名曲と言えよう。
2.aiko 「花火」
花火を至近距離で見た方ならわかると思うが、上空で爆発させるタイプの爆撃、つまり空爆に似ている。
aikoの「花火」が世に問われたのが1999年8月。そこから遡ること4ヶ月前の1999年3月24日、NATO軍による最初のユーゴ空爆が行われている(「同盟の力作戦」)。両者の関連を読み取るのはあまりにもたやすい。
眠りにつくかつかないか シーツの中の瞬間はいつも
あなたの事 考えてて
夢は夢で目が覚めればひどく悲しいものです
花火は今日もあがらない
胸ん中で何度も誓ってきた言葉がうわっと飛んでく
「1mmだって忘れない」と・・・
もやがかかった影のある形ないものに全て
あずけることは出来ない
「目が覚めればひどく悲しいものです/花火は今日もあがらない」――コソボの緊張、和平交渉の行き詰まりなど、不安な日々が淡々と綴られている。
三角の目をした羽ある天使が恋のしらせを聞いて
右腕に止まって目くばせをして
「疲れてるんならやめれば?」
「疲れてるんならやめれば?」――平和を希求することは結局ムダな努力なのだ。
夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです 仕方ないんです
夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
涙を落として火を消した
普通は花火を上から見下ろすことはできない。にも関わらずそれが可能となったのは、aikoは爆撃機からベオグラードの市街を見ているからである。暴力を与える側の視点を共有したのだ。結局は時代という暴力には抗うことはできないのだ、と彼女は嘆く。平和を希求しながらも、暴力をふるう立場になってしまうという逆説。
曲が最後に近づくにつれて、理不尽な暴力は加速していく。
夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
たしかに好きなんです もどれないんです
夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
最後の残り火に手をふった赤や緑の菊の花びら 指さして思う事は
ただ1つだけ そう1つだけど
「疲れてるんならやめれば・・・」
花火は消えない 涙も枯れない夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです しかたないんです
夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
涙を落として夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
たしかに好きなんです もどれないんです
夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
最後の残り火に手をふった
夏の星座にぶらさがって
暴力に飲み込まれてしまった自分の運命のなかで、もう「もどれない」、「花火は消えない」。そうした感情は「しかたないんです」という正当化につながっていく。
「善悪」を単純な二元論に回収せず、平和を願う視点と暴力を振う視点を混在させ、その共犯的構造を明らかにした点で、非常に重要な観点を提供していると言えるだろう。
しかしながら、そのペシミズムだけは、にわかには首肯しがたい。aikoが単なるニヒリズムとして、いや、反戦運動に対する痛烈な風刺としてこれを書いたのかは意見が分かれるだろうが、そのあまりにペシミスティックな描写は反戦の願いまでをも押し殺しているように見えるのだ。
(Special thx to id:isikaribetu07: 「ポトマック河畔の桜並木」ネタパクリました<ブクマコメント)
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