幻のアニメ。

なかけん。です。


幾千ものアニメが世に送り出されていますが、放映枠を確保できなかった企画書止まりになってしまった、企画が進まなかった、パイロットフィルムはできあがっていたもののテレビ放映には辿りつけなかった…などといった、様々な大人の事情でお蔵入りとなってしまったアニメ作品も何千とあります。

「幻のアニメ」は様々なところで語られていますが、いくつかのブログや掲示板から引っ張ってきたものを纏めてみました。
「幻のアニメ」だけでなく、既に放映されているアニメのエピソードに関する黒歴史といった製作側の事情のみならず、ファンの間で黒歴史となっているエピソードなんかも載せてあります。


【制作中止・公開中止・打ち切り】
■「ルパン8世・過去から来た男」
→三世ではなく、8世。念のため。
→1982年にフランスとの合作で製作されたものの未放映に終わり、版権問題でソフト化も困難な状態に。
徳間書店刊の雑誌「アニメージュ」に画像や記事が載っていた。

■「マロニアのマロン」
→制作会社のマーカスの解散により立ち消え。

■「舞夢」
→監督はマクロスシリーズや「あにゃまる探偵キルミンずぅ」などでお馴染みの河森正治さん。
スタジオジブリの「魔女の宅急便」にネタを先取りされてしまい制作中止。制作にソニーが絡んでいた模様。

■「世紀末リーダー伝たけし!」
→作者の島袋光年さんが援助交際で逮捕されたことを受けて制作中止。
→本来であれば「シャーマンキング」の後番組だったとのこと。

■「宇宙英雄物語」のOVA
→版権元の角川書店の内紛を受けて制作中止。

■「虎よ、虎よ!」
→1968年にエイケンがテレビアニメ化を企画し、「TIGER TIGER」の名でパイロットフィルムが制作されたが、テレビアニメ化ならず。
→2004年にGONZOがアニメ化しようとしたが、著作権の関係で果たせず。

■「あまいぞ!男吾
シンエイ動画によるパイロットフィルムが制作されたが、テレビアニメ化ならず。

■「フータくん」
→1966年に日本テレビ動画(1973年版初代「ドラえもん」制作元、日本テレビや日テレこと「日本テレビ放送網」とは無関係)によるパイロットフィルムが制作されたが、テレビアニメ化ならず。

■「蒼きウル」
ガイナックス制作。「王立宇宙軍オネアミスの翼」の続編にあたる作品で、監督は庵野秀明さんまたは山賀博之さん。
→「蒼きウル」の前から構想していた「新世紀エヴァンゲリオン」の企画に着手してしまいってスタッフもそちらに流れ、加えて庵野監督も辞退した。1997年に山賀監督による体制で再び企画されるものの、制作中止。
パイロットフィルムには坂本龍一の曲がかかっていたらしい。
→今年1月に再び企画され、2015年までの完成を目指すとされています。

■「魔太郎がくる!!
→「オバケのQ太郎」などと並ぶ、藤子不二雄Aさんの代表作。
→作品内容が凄惨なため、漫画版でも全133話のうち書きなおされた話が34話、欠番扱いが25話出たほどで、そういった事情からアニメ化は見送られた。

■「アルプスの少女ハイジ」リメイク版
→2000年頃に企画に上がっていて、クララが現代風の萌えキャラになっているんだとか。

■「おいら宇宙の探鉱夫OVA第3巻以降
→全6話の構想のうち、制作されたのは2話分のみ。
→第2巻封入特典のライナーノートや某イベントなどで監督自ら「核爆発してあぼーん」と仰っていた通り、続きは制作中止された模様。

■「星虫」
→1990年新潮社より刊行されるも絶版。2000年に朝日ソノラマ(2007年9月廃業、現・朝日新聞出版)のソノラマ文庫(現・ソノラマノベルス)より改変版が刊行される。
→第1回日本ファンタジーノベル大賞佳作。NHK-FM青春アドベンチャー」にてラジオドラマ化。
→ソノラマ版の帯に「アニメ化企画決定」とあったが、2011年現在具体的な続報がないため、何らかの理由で企画中止になった模様。

■「修羅の門OVA
→試写段階まで出来ていたが、作者の判断で公開中止。

■「となりの801ちゃん
京都アニメーション制作で「TBSアニメフェスタ2008」にてアニメ化が決定されていたが、一転して制作中止。

■「ありす in Cyberland」OVA
→上・下巻とあって、テレビ東京で先行放送があったが、作画の手直しをしている間に制作会社が倒産。
→下巻が発売中止。

■「HAND MAID マイ」
→テレビアニメ「HAND MAID メイ」のアナザーストーリーとしてOVA化。
→全3巻のうち1巻は発売されたが、制作会社の倒産で2〜3巻は発売中止。(完成はしていた)

■「ドン・ドラキュラ」
→広告代理店が放映料を滞納したため、第4話で打ち切り。

■「こどものじかん
→札幌の教頭児童買春事件の影響により、一部地方局では全話放送中止。

■「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション」第101話「ゆれる島の戦い!ドジョッチVSナマズン
→アニメ版ポケットモンスターシリーズ2度目の黒歴史話だが、こちらは未放映の方。
地震を題材とした話だったために未放映。(当時、新潟県中越地震が発生した影響)
→以後、「じしん」「じわれ」「マグニチュード」といった地震を連想させる技は全く登場していない。

■「学校の怪談」第3話「あたし、きれい?口裂け女
口唇口蓋裂症の障害者団体から抗議を受けた影響。予告編は既に放映されていた。

■「School Days」第12話「スクールデイズ
→最速のテレビ神奈川では、放送前日に発生した京田辺警察官殺害事件の影響で地上波全局で放送休止。事実上の打ち切りとなった。
→「Nice boat.」(中止のために代替として流れた環境映像より。後に原作側もコミックマーケットのブース名などでお遊び的に使用)
→後に秋葉原にて試写会が行われたが、「未開封の『School Days』か『Summer Days』持参」との条件に非難が殺到し、後に「開封済みでも参加可能」と変更された。

■「瀬戸の花嫁」第17話「県警対組織暴力」初版
→作中で使われたパロディが著作権侵害とのクレームがあり、放送中止。18話以降を繰り上げ放送。
→17話に関しては、該当箇所を修正した上で改めて放送され、DVDにも修正版が収録された。




【放映・公開されたが黒歴史化(作品そのもの)】
日本テレビ版「ドラえもん
日本テレビ動画制作で、1973年4月〜9月の2クールで放送。日本テレビ版ではガチャ子というキャラクターが登場する。
→しかし、黒字にもかかわらず制作会社が倒産。
→声優陣の配役は、テレ朝版初代(大山のぶ代版)とは逆になっている。
→その後、原作者の意向で再放送は行われておらず、ソフト化もされていない。


■「新プロゴルファー猿
→前作「プロゴルファー猿」が143話放映されたのに対して、新〜の方はたったの10話で打ち切られた。

■「つよきす Cool×Sweet
→PCゲーム「つよきす」を原作として、プレイステーション2版で追加されたヒロイン近衛素奈緒を主人公としたラブコメディ。
→ファンの間では、「『つよきす』はアニメ化していない」という声が聞かれる。どうやら大元のPCゲームからのファンにとってはなかったことにされている模様か、もしくは「つよきす」の大元の原作自体は完全にアニメ化されていないの意味でも捉えられる。

東映アニメーション版「Kanon
東映アニメーション初の美少女ゲームを題材にした作品だった。
→その後、2006年の京都アニメーション版の登場により一気に黒歴史化…。(私はどちらとも好きですが)

■「ガンドレス
→製作管理が破綻して完成に間に合わず、大部分が未完成の状態で劇場公開されることに。当日の新聞では「珍事」とまで書かれ話題になった。
→この影響で、公開当日の舞台挨拶が中止され、観客には後日完成版のビデオが送付された。
→完成版は2000年4月29日に上野スタームービーで2週間上映され、完成には1億円の予算がかかったという。

■「みなみけ 〜おかわり〜」
→オリジナルキャラクターが不評である他、作画崩壊も目立った作品。
→ファンからは、なかったことにされている。

■「夜明け前より瑠璃色な Crescent Love
作画崩壊の数々。代表的なものが「キャベツ」。(黄緑色の球体にしか見えないのに包丁で切っている)
→自虐的なのか、ミア・クレメンティスの「どどんまい」。(元々はテツandトモのネタ、しかもミアは原作ではそんなキャラクターじゃない)

■「MUSASHI -GUN道-
→これも作画崩壊が酷い作品の一つ。作品内容より設定破綻や作画崩壊に注目が集まって、無数のMADムービーが作成された。
→「うぉ、まぶしっ!」「スゲェあの爺さん…下に落ちながら戦ってるぜ…。」



【放映・公開されたが黒歴史化(各話)】
■「鉄腕アトム(白黒版)」第34話「ミドロが沼の巻」
→この回はスタジオ・ゼロ(現存せず)が作画を担当したが、手塚治虫さんがあまりの出来の酷さにフィルムを焼却して欠番扱いに。
→しかし、後にそのフィルムは海外で発見される。

■「ドテラマン」第7話「かわいいアイドルにはツノがある!?」
→CS再放送版では欠番になっている模様。

■「ロスト・ユニバース」第4話「ヤシガニ屠る」)
→セル画パート全編において破滅的な作画品質をテレビ放映するという事態に。俗に言う「ヤシガニ問題」。
→品質管理の面でアニメ業界やメディアミックス業界に大きな禍根を残した作品として超有名。
→その後、作画崩壊などといった作品の質が酷い作品に対して「ヤシガニ」と呼ばれる羽目になる作品が多く登場。
→制作元のイージー・フイルムは、この事態を受けて謝罪。信用を大きく失墜させられて後に2000年代前半に倒産。

■「サザエさん」の「サンタさんとお約束」
→マスオ=サンタクロースであることを描いてしまったことで「子供の夢を壊さないで」と視聴者から抗議を受ける。

■「カウボーイビバップ」Season XX「よせあつめブルース」
テレビ東京では放送コードの関係で全26話のうち12話しか放送されず、急遽作られた総集編。
→DVDへの収録や再放送などはされず、黒歴史化。

■「ポケットモンスター(初代)」第38話「でんのうせんしポリゴン▼」
→1997年12月16日放送、当時私もリアルタイム視聴していました。(当時小学1年生)
→激しい点滅のシーンで視聴していた児童や大人たちが倒れて病院へ運ばれた事件。私は幸い体調の不調は無く、病院にも担ぎ込まれませんでした。
ポケモンショック、ポリゴン事件などとも言われる。
→「テレビを見る時は、部屋を明るくして離れて見て下さい」という注意書きはこの事件が由来。

■「ひだまりスケッチ」第10話「ゆのさま」(TBSリアルタイム放送版)
→止め絵をバックに音声のみでストーリーが進行するシーンが多いバージョンを放映。
→銭湯のシーンで、浴室の壁を「富士山」という文字だけで表現したことから、この話の通称は「富士山」となっている。
→制作のスケジュールが厳しかったため、放送局への納品期限に間に合わせるために苦肉の策として起きた現象だったとのこと。(Wikipediaより)

■「ローゼンメイデン」第9話「鑑」
作画崩壊に加えて、フラグの成立や寝取られるなどの展開が衝撃的なエピソード。
→ファンの間ではなかったことにされている。

■「デ・ジ・キャラットにょ」第40話〜第52話(プリンセススクール編)
でじこ達が初めて学校に通うエピソード。
→それまでとあまりにもかけ離れているために、ファンの間では黒歴史化?(DVD-BOXのみであるが、ソフト化されている。)

■「コードギアス 反逆のルルーシュR2」第9話「朱禁城 の 花嫁」差し替え放送
→「緊急ナビ コードギアス祭」としてよゐこ有野晋哉さんを司会とした特別番組。
→特に「アキバで対決! コードギアス祭」の放送内容が酷く、全く知らないサンドウィッチマンなどの芸人が呼び出されて、司会の有野さんも含めて制作者に対して非常に失礼な言動が目立ち、視聴者の間では黒歴史認定番組に。
→第9話は翌週に放送。

■「まほろまてぃっく 〜もっと美しいもの〜」第14話「ナジェーナ」
→「まほろまてぃっく」第2期の最終回。
→原作終了前に最終回となって、原作とは完全に別物のエピソードとなったため、ファンの間で黒歴史となったもの。



【当初の予定が「幻」となったもの】
■1968年版「龍の子太郎」
東映動画(現・東映アニメーション)劇場作品として、大塚康生さん、宮崎駿さん、高畑勲さん、森康二さんらが名を連ねていて1968年に制作予定だったものの挫折。
→その後、浦山桐郎監督のもと、小田部羊一さんをキャラクターデザインにして1979年3月17日に「東映まんがまつり」内で公開。

東映アニメーション&朝日放送版「東京ミュウミュウ
東映アニメーション朝日放送と言えば、日曜朝8時30分アニメ(現在のプリキュアシリーズの放映枠)の製作元として馴染み深いが、「おジャ魔女どれみ」の後番組として「東京ミュウミュウ」が企画されていた。
→その「東京ミュウミュウ」は後にぴえろ制作でアニメ化。
→これは、後にこの枠(日曜朝8時30分枠)でいう「Yes! プリキュア5」につながることになる。

■「明日のナージャ」の企画書は15年以上前にあった。「明日のナージャ」の2期構想。
→15年以上前から長年温められた企画で、2003年に放映されて小清水亜美さんのデビュー作品にもなった。
→しかし商業不振によって2期の放映は実現せず。後番組は「ふたりはプリキュア」となって、現在に至るまでプリキュアシリーズは続いている。
小清水亜美さんは、現在放映中の「スイートプリキュア♪」で北条響/キュアメロディ役を演じており、8年ぶり2度目のニチアサアニメ復帰となった。

押井守監督版「ルパン三世バビロンの黄金伝説
→当初は宮崎駿さんに監督の依頼があったものの、宮崎さんが拒否する代わりに押井さんを監督・脚本に推薦したが、作品内容とあまりにもかけ離れているために上層部がNGを出して結局降板。
→その後、テレビシリーズのスタッフを引っ張って製作が進められ、作品は1985年7月13日に公開された。

■「風の谷のナウシカ」に至るまでのボツ企画の数々。
→「ロルフ」「戦国魔城」「風の谷のヤラ」。企画イラストはDVDやBlu-rayなどのソフトに収録されている。
→因みに、よく間違えられるが制作はトップクラフトスタジオジブリとなったのは翌1985年の「天空の城ラピュタ」以降〜になるが、「ナウシカ」もよくジブリ作品の一つに数えられる。

細田守監督版「ハウルの動く城
細田守監督は当時東映アニメーション所属だった。
→2002年に、細田さんとスタジオジブリとの間に人員応援を得られなかったなどのトラブルがあり制作中止。
→2003年に宮崎駿監督のもとで制作が再開され、2004年11月20日に公開された。

パイロット版(民放放送用)版「カードキャプターさくら
→当初はNHKではなく、民放で放映するつもりだった。
パイロットフィルムは、連載が始まってからすぐに制作された。



……といった感じで、全てではないですが、有名なものからマニアックなものまで、ある程度纏めてみました。
魔法少女」以来のデータベース記事になりそうかもですね。

テレビアニメというのは、1クールに10本以上、1年で40作以上も放映されますが、同時に上がってくる企画は200を優位に超えるそうです。企画書だけでボツになるものもあれば、完成間際でボツになるものもあります。
アニメ業界も、そういった幾度の企画倒れを繰り返して、スタッフもまた次に進んでいくものなのではないでしょうか。
纏めている中で、こんな作品が過去に企画されていた、このスタッフがこの作品に関与していたなど、自分が知らなかったことがどんどん明るみになって、新しい発見をすることもできました。
私としては、白いも黒いも、酸いも甘いも、全て知り尽くすことがアニメオタクなのではないかと考えさせられました。