改めて萩尾先生叙勲


・・・萩尾望都先生の叙勲のインタビュー記事が、国営放送サイトに文字になってあります。


http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/800/119069.html


萩尾先生らしい冷静な文面のインタビューだと思いました。先生のお母さんが、一昨年の朝ドラ「ゲゲゲの女房」を観てらして「漫画家があんなに大変とは知らんかったとよ。失礼いたしました。」と娘に謝ったといいます。お若い頃のこのお母さんとの葛藤が、創作の一大テーマになっている萩尾先生にしてみれば、「今頃になってやっと……」という感じで、大苦笑したんではないでしょうか。人生最大の苦笑ですね。


トーマの心臓」連載当時に人気投票が最悪で、いつ打ち切りになってもおかしくなかった。その時に「ポーの一族」の単行本が出て、それが思いのほか売れて、じゃあ連載もちょっとやらせてみようかとなったと。面白い話ですね。このように萩尾さんは、実はその時々のナンバーワンの人気作家ではなかった。むしろ2番手3番手で、でも熱狂的なファンやマニアが支持して、単行本で真価を発揮する作家さんだったんですね。人気投票がすべてで、結果が悪けりゃさっさと切ってしまう傾向がある昨今、編集側がじっくりと大器を育てる事が果たして出来るのか。表現全般の軽薄化・短期決算化を憂慮してしまいます。


あと萩尾先生は、手塚先生始めいろいろ他の漫画家の名前を列挙されて、その流れの中で自分があるんだと、言うような事をおっしゃってます。里中満智子先生とか西谷祥子先生とか、そういう少女漫画拡張期の作家さんは、皆「人間としての心の奥底」「女性としてのアイデンティティー」を追求しています。決して萩尾さんが特異な訳ではないのですね。少女漫画の文学性って、例えば大和和紀先生とか、ベテラン巨匠と呼ばれる方なら誰でも発揮していた。このことを、萩尾先生はおっしゃりたかったんではないでしょうか。

トラン君の国籍問題


フィギュアスケート。ペアのマーヴィン・トラン君の日本国籍取得問題。オカミの感触は良くないようだ。まだ結論は出ていないが難航するかもしれない。猫ひろし同様、日本居住年数などが問題となってくると言う。


高橋&トラン組は世界選手権でブレイクしかけ、今が売り出し時のペア。五輪出場が叶わぬとなれば日本スケート界の一大痛恨事となってしまう。私もスケートファンとして是非出て欲しいが、しかし安直に国籍変更して、選手層の薄い、出場しやすい国から五輪に出ようとする選手が続出している昨今、国際世論的に慎重になるのもわかる。(ただ日本のオカミが、そこまで考えているかは、はなはな疑問だけれども。)


国を背負って競技することは崇高なことだ。一時期はやった「自分のために楽しく競技しよう」では、アスリートの本当のチカラは出ないのではないか。やはりトップ選手たるもの、国家の威信と期待を背負ってナンボだと思う。


ところがマーヴィン君の場合、アジア系だが日系ではない。彼自身が「日本人になって五輪に出たい」と言ってくれたようだが、だとしても一時の五輪のために、協会やらが無理くり彼を日本人にしても、彼は果たして力を発揮出来るだろうか。何よりこの国籍変更が、彼の将来のためだろうか。


だからもし、彼の五輪出場叶わずとなっても、残念ではあるが失望してぶーぶー恨んだりはしないほうがいい。


フィギュアスケートはやっぱり個人競技。さっき言ったように国を背負うのは大事だけど、逆に国がなんぼのもんじゃいという根性も必要だ。わざわざ競争の厳しいロシアで代表になった川口悠子選手のように、場合によっては高橋成美ちゃんもカナダ国籍になる事も、良いじゃないかと思う。日本代表でなくなるのは残念だけど、我を通すとはそう言う事だ。


とにかくこの若い二人に、幸と不屈あれとエールを送りたい。