【文徒】2017年(平成29)年2月7日(第5巻23号・通巻952号)

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1)【記事】Googleが日本語検索のアルゴリズム変更でキュレーションメディアの整理・淘汰に乗り出した?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】Googleが日本語検索のアルゴリズム変更でキュレーションメディアの整理・淘汰に乗り出した?(岩本太郎)

Google日本法人が「日本語検索の品質向上にむけて」と題し、日本語検索のアルゴリズムを変更したと3日に発表。
《今回の変更は、日本語検索で表示される低品質なサイトへの対策を意図しています。このような改善が、有用で信頼できるコンテンツをユーザーに提供する皆さんを、正当に評価するウェブのエコシステム作りの助けとなることを期待しています》
https://webmaster-ja.googleblog.com/
これについて『ITMediaNEWS』は《内容の薄い記事を大量に掲載するキュレーションメディアについて、検索にヒットしにくくしたようだ》としつつ、SEO検索エンジン最適化)専門家の辻正浩のコメントもまじえて伝えている。
《辻さんによるとこの変更は、「アルゴリズムで抽出された特定サイトの一部ページだけに影響する」という。アルゴリズムの対象になった場合「ページ自体の評価が下がる処理が行われ、結果的に多くの人の目には触れないようになる」という。
辻さんが確認した限り、アルゴリズム変更の影響を受けたとみられるサイトは、旅行を扱う「RETRIP」、商品情報の「KAUMO」、健康情報の「カラダノート」、育児情報の「マーミー」など。「情報が薄いキュレーションメディアとテキストを中心とした新興メディアをターゲットにしていることはほぼ確実」とみている》
《「WELQを発端に始まったWebサイトの信頼性の問題に対するGoogle日本法人の第1弾の対応として非常に素晴らしい、意義あることだと考える」と辻さんは話している》
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1702/03/news099.html
先週の『文徒』では講談社によるキュレーションメディア参入の動きなどでこの分野の浄化(?)に向けた動きが進められる一方、なおも(上記でも名前が上がったところでのケースも含めた)パクリやパクリ隠しが水面下で横行している実態について触れた。パクリ撲滅については現状ではイタチごっこの感が否めないが、実のところこの件に関してはGoogleのような圧倒的な存在によるこうした取り組み(価値付け)が最も効果的なのだろう。無論、それはビッグブラザー企業による情報支配を通した権力行使(暴力)であるが。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋は6日にニッポン放送の番組『ザ・ボイス〜そこまで言うか!』に出演。『ニュース女子』で司会を務めたことで東京新聞が謝罪したことに関連して「私を処分するのは言論の自由に対する侵害だ」「東京新聞の報道や論説の姿勢と私の社内外の発言が違っても何の問題もないし、それを保障するのが言論の自由を守るということだ」と反論した。
http://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-440108.html
https://twitter.com/hasegawa24/status/828446959379771396
なお、今日7日付東京新聞は「こちら特報部」において、同紙で「本音のコラム」を連載している佐藤優が、琉球新報で連載中の「佐藤優のウチナー評論」の4日付で「東京新聞の誠意 沖縄ヘイト反対の意義大」と題した記事を寄稿していることに言及している。
琉球新報で佐藤が《『東京新聞』が最終的に会社として誠実な態度を取ったことは立派だ》《このコラム(引用注:東京新聞「本音のコラム」のこと)の掲載を拒否することがあれば、本音を書くことができない『本音のコラム』に連載を持っていても意味がないので、連載を降りるつもりだった》などと述べたことを紹介している。

博報堂はアジア太平洋地域に展開する独立系大手エージェンシーグループ「Integrated Communications Group Pte Ltd」(本社・シンガポール)の株式を100%取得した。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/36253

◎販売差し止め命令を受けた菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書。問題とされた部分を改めた修正版を既に発売中)について「こうしたケースでは電子書籍版での扱いはどうなるのか?」との疑問が想定されることを受け、『弁護士ドットコムニュース』で弁護士の桑野雄一郎が詳しい解説を行っている。
https://www.bengo4.com/saiban/1139/n_5640/

◎編集者・作家・デザイナーがタッグを組み、2日間で短編小説を書き上げるというイベント「NovelJam」が去る4日と5日に都内千代田区の五番町グランドビルで開催された。イベントはコンテスト形式で、審査委員は藤井太洋(作家)、米光一成(ゲーム作家)、海猫沢めろん(文筆家)、鷹野凌(NPO法人日本独立作家同盟理事長)が担当。完成した全17作品は電子書店の「BCCKS」に既にアップされて販売中だ。また、イベント模様を審査員の1人・米光一成電子書籍情報サイト『AOSHIMA BOOKSTORE』でレポートしている。
http://noveljam.strikingly.com/
http://bccks.jp/store/noveljam2017
http://aoshimabooks.com/archives/6637

山梨日日新聞Twitterの公式アカウントで以下のようにツイートしているのを発見。確かに最近は紙の新聞に載った記事を写真やコピーにとってそのまま丸ごとSNSに投稿しているケースをよく見かける。もっとも、同紙の場合は公式サイトに掲載する記事の大半を(それこそ「おくやみ」欄までも)「有料会員限定」にしている分、そうしたケースが多くなっているのということもあろうが。
https://twitter.com/sannichi/status/827414614665109504

◎昨年2月から電子書籍サービスを実施している愛知県豊川市の中央図書館が、2月1日から同県内では初めて登録対象を「市内在住のみ」から「在勤・在学者」まで拡大。自家用車普及率も高く在勤・在学者が遠方かつ広域にわたる土地柄でもあるだけに注目されよう。
http://www.tonichi.net/news/index.php?id=58349

京都市美術館ネーミングライツを京セラ(本社・同市伏見区)に売却する契約を京都市が1日に締結。これにより同美術館はリニューアルオープン(2019年度を予定)から50年間、「京都市京セラ美術館」になることが決定(もちろん正式名称は従来のまま)。京セラは今後50億円を今年から3年かけて分割納付する。一部の市民グループらは「歴史ある美術館に、特定企業の名前が付くのはふさわしくない」と反発しているとのことだ。
http://mainichi.jp/articles/20170202/k00/00m/040/146000c

JASRAC音楽教室からも著作権料を徴収する方針との報道に、宇多田ヒカルが「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな」とツイートしたことが報道でも取り上げられて話題を呼んでいるが、これについてJASRACの外部理事を務める東京大学教授の玉井克哉が《そもそもいきなり意見を求められたアーティストに、学校教育法上の学校と営利の教室教育を区別するのを求めるのもどうかと思います。報道する側の問題かな、と思っています》などとツイートし、さらにネット上での議論が盛り上がっている模様。
https://twitter.com/tamai1961/status/828053133079097344
http://www.yukawanet.com/archives/5172187.html

◎そうした中、自らが作った絵本の無料公開をめぐって先ごろネット上での炎上にさらされていたお笑い芸人「キングコング」の西野亮廣がブログで「ありがとうJASRAC!」と題し、《こうして身体を張って炎を引き取っていただき、感謝の気持ちでいっぱいです》と表明。その西野に対し、やはり先日「CMは偏差値40の人にも理解できるものじゃなきゃダメ」で炎上騒ぎに遭遇したブロガー「はあちゅう」も《西野さん最高!》とツイート。ネット上ではさながら炎上のバケツリレーとも言えそうな状態が持ち上がっている。
http://getnews.jp/archives/1620092

日経新聞では今年1月にAI(人工知能)記者が1月にデビュー。《企業決算が発表されると、わずか2分で速報ニュースを流すことが出来る》のだそうだ。昨年まで同紙で業績記事を書いてきた記者とAI記者が決算短信の作成で“勝負”してみた様子を『日経ビジネスONLINE』が紹介している。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/020200404/

◎「女に立ち読みさせろ。人間の心理を知り尽したコンビニのレイアウト」とのタイトルでの論考。「取次問題」にまでさかのぼって書いてくれるのは良いとしても、今どきのコンビニ店内からはもはや女性はおろか立ち読み客そのものが激減してしまっている。もとより、『文徒』発行元・出版人事務所のある神田神保町一帯のコンビニではほとんどの雑誌が紐で縛られ、物理的に立ち読みが不可能になって久しいわけだが。
http://www.mag2.com/p/news/237673

◎米国の出版業界では最近、題名に罵り言葉などの汚い文言が入った本が増加し、出版社も書店も困惑しているという。
http://blogos.com/outline/208812/
日本では「夫のちんぽが入らない」(こだま)のタイトルを書店で言うのが恥ずかしい人のための注文書ダウンロードサービスが開始されている。
http://www.fusosha.co.jp/special/kodama/order.pdf

米大統領選をきっかけに「オルタナ・ファクト(もうひとつの事実)」なる言葉が語られるようになった中で、デオドラントやボディウォッシュのブランド「ダヴ」が、そうした世相を皮肉るかのように「新しいダブのデオドラントがあれば、IQが40あがります」などといったコピーがずらりと並んだ広告(手がけたのはオグルヴィ・アンド・メイザー・ワールドワイドの制作者)をイギリスの新聞に掲載して話題を呼んでいるそうだ。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/03/dove-deodorants-alternativefacts-campaign_n_14591114.html

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

正論を語ることで周囲を敵に回す覚悟を持とう。