【文徒】2017年(平成29)年8月18日(第5巻155号・通巻1084号)

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1)【記事】人気ユーチューバーのヒカルにVALU"インサイダー"疑惑
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】人気ユーチューバーのヒカルにVALU"インサイダー"疑惑(岩本太郎)

人気ユーチューバーのヒカルが、仮想通貨(ビットコイン)による取引をめぐって炎上騒ぎを引き起こすことになった。発端は8月14日、ヒカル、禁断ボーイズのいっくん、ラファエルという3人のユーチューバー(いずれもヒカルの事務所「NextStage」所属)が、ビットコインを用いたマイクロトレードサービスのVARUで本格的に活動を行うとの予告をTwitterに投稿(既に削除)したことだった。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1708/17/news060.html
https://www.bengo4.com/internet/n_6522/
VARUは個人が自身を株式会社に見立て、仮想株式(VA)を発行して資金調達できるサービスで、取引にはビットコインが使われる。当然、Twitter等で知名度のある個人のVAは高くなるわけだが、問題はヒカルたちがこの告知を通じて多くのVA購入者を集めた、つまり「資金調達」した後で、保有するVAを一斉に売り払ったことだ。これが「意図的に値を釣り上げて売り抜けた」すなわち仮想通貨上のインサイダー取引を働いたかのようにみなされてしまったのだ。実際、「被害」を受けたと思しき者による以下のようなツイートも15日には上がった。
《ヒカルのVALUで死んだ
今日、優待発表するって言うから
今日のストップ高で買い入れてたら
昨日の終値で50000万VALU全部売ってきたw
まだマイナス20万円表記だけど、もう売れないっしょ・・・
これ以外にラファエルも買っちゃったよ
ヒカルは昨日の煽りTwitter消してるし》
https://twitter.com/hitsuzikai/status/897334477965242368
これにはヒカルたちはもとよりVALUの運営会社も慌てたらしい。翌16日にはこの件についての告知を公式サイト上に掲載し、その中で「VAを自身で買い戻したい」との意向を申し出てきた上記3人のVAについては《利用者保護の観点から特別措置として、該当VAへの現在の売買注文をすべてキャンセルとさせていただきます》としたうえで、
《一連の取引で発生した手数料収入については、VALUがミッションとしている「人の価値を発掘し、高める。」と類同の意向を掲げる組織へ寄付させていただきます。》
《利用者保護を最優先に考え、取引に関するルールづくりを進めております。新たなルールについては、決定次第発表いたします。 》
との方針を明らかにした。
https://help.valu.is/article/111-2017-08-17
ヒカル自身もさらに昨17日の早朝には《今回は僕の行動や言動により多くのファンや視聴者の皆さん、普段から関わってくださっている方々にご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。》などと謝罪のツイートを行った。
https://twitter.com/kinnpatuhikaru/status/897885053958504448
とりあえずこれで事態は収束した模様だが、さすがにネット上では「もう詐欺はやめないか」「規約違反ではなく詐欺事案ではないか」といった声が飛び交っているようだ。『KAI−YOU』の山崎智也はそうした声を拾いつつ、今回の件について《近年ようやく日本でも活況の兆しが見えた仮想通貨でのやり取りそのものに影響を及ぼしそうだ》と結んでいる。
http://kai-you.net/article/44481
専業主夫・マンガブロガー」のカタルエは、自身がVALUを所有している鈴木みそが主催した「俺のVALU持ってる人限定」の飲み会に参加した際の模様を実に楽しそうに漫画でレポートしている。ただ、彼もその会や、上記のヒカルらによる一件を通じて、改めて「VALU」の使い方について考えさせられたそうだ。
《もちろん人によって意見は様々で、一つの回答はない前提ですが、僕が現段階で思うことは、やはりこれは「好きな人を応援し、人と人のつながりを深める」というのがメインの使い方なんだろうなあ、と思っています。
ただこのVALUって、投資対象にはなり得るものの、いろいろな理由で売りにくいんですよね。だから本当に投資メインでやろうと思うと、なんだかんだ扱いにくい仕組みなんじゃないかなあ、と個人的には思っています。》
http://www.katarue.com/2017/08/valusuzukimiso.html

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎福岡市を拠点に小説や短歌、旅行ガイドなどを刊行している出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」の代表・田島安江が『マガジン航』のインタビューに登場。かつて大分県での公務員生活から、東京書籍編集者らが福岡市に設立した葦書房に転職。リストラされ、大阪、札幌と移った後に福岡に戻って住宅情報雑誌のレポーターやフリーの校正者、ライターなどとして活躍し、編集プロダクション経営を経て2002年に 書肆侃侃房を設立したそうだ。
http://magazine-k.jp/2017/08/17/kankanbou/
芥川賞候補作となった今村夏子の『あひる』は、同社が昨年創刊した文学ムック「たべるのがおそい」創刊号に掲載された。
http://www.tabeoso.jp/
http://www.kankanbou.com/kankan/

◎その芥川賞で現在選考委員を務める宮本輝が『文藝春秋』9月号に寄せた選評の中で、候補作の一つだった温又柔「真ん中の子どもたち」について《これは当事者たちには深刻なアイデンティティと向き合うテーマかもしれないが、日本人の読み手にとっては対岸の火事であって、同調しにくい》などと記述。これに対して武田砂鉄が『論男時評』8月16日付《「在日外国人の問題は対岸の火事」平然と差別発言を垂れ流した芥川賞選考委員の文学性》と題した記事で強く批判。
http://wezz-y.com/archives/49788

又吉直樹が初めて雑誌の編集長を務める『又吉直樹マガジン 椅子』が来月創刊。と言っても9、10日に又吉が主催するユニットコントライブ「さよなら、絶景雑技団」の会場で限定販売されるものだが、誌面には柄本明壇蜜らが登場する座談やグラビア、又吉編集長自身による原稿用紙20枚分の寄稿「椅子をめぐる自叙伝」も掲載される豪華版らしい。
http://m.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/08/17/kiji/20170817s00041000071000c.html

講談社は神奈川県西部の松田町と 「学校教育環境 の充実」に関する「包括連携協定」を締結した。松田町は小・中学生に一人 1 台タブレット端末を逸早く支給してきたことで知られ、講談社はここの「朝の読書の時間」に毎月 10 冊程度の電子書籍を提供。インフラには今春オープンした「じぶん書店」の仕組みが活用され、生徒の読書履歴などを把握しながら先生たちの読書指導にも活用できるという。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20170817matsudamachiHP.pdf

◎ケーブルテレビの「J:COM」はKADOKAWAとの共同製作による新しい地域情報番組『東京・横浜 TV Walker』の放送を19日より開始する。『東京ウォーカー』と『横浜ウォー カー』の編集長が両誌の発売にあわせて毎月 1 回更新で登場。誌面の中から「視聴者必見のオススメ情報」を選んでプレゼンするなどの企画が盛り込まれているそうだ。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20170815_x2edj.pdf

◎その新番組スタートと同じ19日発行の『東京ウォーカー』は創刊1000号。表紙は小池百合子とのこと。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003565.000007006.html

◎15日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑で行われた集会で福島瑞穂が挨拶中、映画『ロード・オブ・ザ・リング 指輪物語』の中で死者が地中から蘇って戦う場面があることを引き合いに出し「私は今、その場面を想起しています。主権者である私たちは、戦争犠牲者の全ての皆さんとともに力を合わせて、9条改悪を止めたいのです」と発言。これに対してネット上で「英霊をゾンビ扱いするとは何事か」などの批判が続出したことを、産経が批判ツイートを引用しながら報道。
http://www.sankei.com/politics/news/170816/plt1708160020-n1.html
産経新聞は「まとめサイト」に業態転換したほうが上手くやっていけるんじゃないかと思わせる記事がこのところ続いている。

◎その産経の連載「話の肖像画」での元小学館の編集者・島本脩二へのインタビュー第3回は、島本が手がけた矢沢永吉『成りあがり』をめぐるエピソード。『GORO』編集部在籍中に肝炎に倒れ、復帰後に異動した『マミイ』編集部で時間的余裕に恵まれた中で提案した企画だったという。
《僕は矢沢のコンサートに付いて回っていましたから、開演時間になると入り口に押しかける来場客を見た経験があった。いわばマーケティングリサーチですね。そのとき、これは本を一冊も読んだことのない人に、矢沢の言っていることを本の形にして届ける仕事なんだ、ということをはっきり思ったんです》
http://www.sankei.com/life/news/170816/lif1708160013-n1.html

◎『週刊文春』でユニクロ潜入ルポを連載した横田増生と、福島第一原発の作業員として働きながら取材し『ヤクザと原発』を上梓している鈴木智彦が対談。意外にも初対面だという。『文春オンライン』での連載対談第1回ではそれぞれの取材の舞台裏話をまじえながら「我々はなぜ、潜入取材に挑むのか」について語り合っている。
http://bunshun.jp/articles/-/3748

◎往年のヘアヌードブームの仕掛け人として知られる出版プロデューサーの高須基仁が15日に新宿のロフトプラスワンで行われた「脱法する人たち大集合!」に出演。「右翼も左翼もない。戦争はやらないという決意が大事」などと訴えた。最近では3億円の脱税疑惑で話題を呼んだAV女優・里美ゆりあの売り出しに力を注いでいるようだ。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20170816-OHT1T50038.html
元木昌彦による高須へのインタビューは現在発行中の『出版人・広告人』8月号に掲載されているのでお読みいただきたい。

◎街歩きをしながらWikipediaウィキペディア)の編集を行い、地域おこしにもつなげることも目的とした「ウィキペディアタウン」というイベントが全国各地で開催されている。
http://www.sankei.com/life/news/170816/lif1708160012-n1.html

NHKのディレクターとして『小さな旅』『クローズアップ現代』などの人気番組の製作に関わってきた弥富仁が代表を務める映像制作会社「とっておき」は、「映像を使った自費出版」として、高齢者などからの依頼を受けた「個人の人生の記録映画」の製作を事業として始めたそうだ。価格は9万8000円(基本料金)からだとか。
http://omoide.totteoki.jp/
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170817/prl1708170510001-n1.htm
そういえば是枝裕和の劇映画第2作『ワンダフルライフ』(1998年)は、死者があの世に旅立つ前の1週間で、自分の人生の中で一番大切な思い出をテーマにした映画作りを専門スタッフの手を借りながら行うという話だった。20年近くを経て時代が映画に追い付いてきたのかもしれない。

久米宏東京五輪の開催に反対しているそうだ。TBSラジオでの自分の番組や、夕刊紙でのインタビューで「8月、酷暑の東京での五輪開催は無謀」といった反対論を述べたところ、同五輪およびパラリンピック組織委員会から反論の手紙が到着。それも番組の中で朗読したとのこと。
http://www.asagei.com/excerpt/86962

◎相変らずCMをめぐる炎上が跡を絶たない。6月15日の「父の日」に公開され、その後「意味不明だ」「不快だ」との批判を浴びた牛乳石鹸のPR動画について、広告主である牛乳石鹸共進社の担当者は今のところ取材に対して「まことに勝手ながらお答えを差し控えさせて頂きます」との対応らしい。
https://www.j-cast.com/2017/08/16306004.html?p=all
http://www.huffingtonpost.jp/2017/08/15/milk-sekken-arainagaso_n_17762350.html

◎一方でポーラが昨年公開した、「この国は、女性にとって発展途上国」というフレーズのCMは物議を巻き起こしながらも先に1年ぶりの第2弾が公開された。取材を受けた担当者は《CMを引き下げるという考えはありませんでした》《それに対するコメントは、ポジティブ・ネガティブどちらも、みなさんが思われたことであり、 ご意見だと思っていましたから》と回答したそうだ。
https://www.businessinsider.jp/post-100743