【文徒】2018年(平成30)2月22日(第6巻33号・通巻1207号)

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1)【記事】日経が書いた講談社決算記事に「?」
2)【本日の一行情報】
3)【人事】講談社、2月20日付機構改変および職務掌底の一部改変と人事異動
4)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.2.22 Shuppanjin

1)【記事】日経が書いた講談社決算記事に「?」

講談社の決算を素直に見れば、雑誌の売り上げ減少を、マンガが9割を占めるという電子書籍が相当支えていると何故にそう書けないのだろうか。日経の記者は難しく考え過ぎているのではないか。
野間社長にしても昨日「電子書籍や版権ビジネスなどの事業収入が紙での減収分を上回る増収を記録し、事業収入の割合は収入総額の30%を超えるところまで成長しました」と説明していたはずなのだが……。吉冨取締役にしても「デジタル・版権ビジネスは引き続き業容を拡大し、社業の第二の柱と呼べる規模」と言っているわけだし。
また広告収入の既に3割をデジタル広告が占めるに至っているという事態も踏まえておいて欲しいところだが、この記者は私の質問の意図をわかってなかったのだろうか。いずれにしても、紙とデジタルを売上高で比較するのは無理である。デジタルに紙代はかからないのだから。
版権ビジネスにしてもマンガがメインであることも踏まえておきたい。これも吉冨取締役が説明したように「新興国でのコミック翻訳出版と、米国を中心に展開している電子コミックの配信が好調で、過去最高の収入」であったのである。
それに0.6%とはいえ増収であったにもかからず、純利益が35.6%減だったのは、社屋の修繕費、年金費用等が増加し、費用全体では前年を上回ったことが大きく影響しているのだとすれば、この記事の「講談社、漫画頼りが鮮明に 雑誌の不振を補えず 純利益36%減」というタイトルも果たして妥当なものなのかどうか。日経の記者は私たちの「文徒」でも購読して、今少し出版業界について勉強することをオススメしたい。
ちなみにこの記事を書いた記者の名は亀井慶一というそうだ。私などよりも遥かにアタマも給料も良いはずなんだよね。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27150510Q8A220C1X12000/

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2)【本日の一行情報】

電通3月29日付取締役人事および代表取締役の異動。
代表取締役  山本 敏博 (現 代表取締役
代表取締役  郄田 佳夫 (現 代表取締役
代表取締役(新任)遠谷 信幸 (現 執行役員
取締役   望月 渡 (現 取締役)
取締役   ティム・アンドレー(現 取締役)
取締役   曽我 有信 (現 取締役)
取締役(新任) 五十嵐 博 (現 執行役員
社外取締役  松原 亘子 (現 社外取締役
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/%E2%98%852018013-0219.pdf

小学館の七つの女性誌WEBメディアの月間UU数が総計1,500万に到達したそうだ。特に「CanCam.jp」のUU数が多く、単体で650万UUに達したという。「Oggi.jp」が183万UU、「Domani」が111万UU、「Precious.jp」が146万UU、「美的.com」が192万UU、「しごとなでしこ」が269万UU、「INTO JAPAN」が8万UU。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000013640.html
こういう数字を見ていると私などは、「CanCam」は紙の雑誌である必要はないという結論に達してしまうのだが、小学館の編集者で私のような結論になる者はいないのだろうか。できれば沢山いて欲しいなあ。例えば、紙の「CanCam」は年に2〜4回刊にして、WEBメディアにおいては「CanCam.jp」と「MERY」を統合して、「CanCam」とするという考え方もあるのではないだろうか。

◎ホームセンターで配布しているフリーペーパーを前身として、2016年3月に誕生したライフスタイルWebマガジン「Pacoma」(パコマ)の武蔵英介は主婦と生活社で7年間の編集経験を持っているようだ。
https://webtan.impress.co.jp/e/2018/02/20/28262
紙の雑誌マーケットの縮小はデジタルへの人材流出を加速させるのだろう。

◎「海程」を率いた金子兜太が亡くなった。98歳。
http://www.sankei.com/life/news/180221/lif1802210004-n1.html
時事通信誤報を配信した翌日に本当の訃報が報じられることになってしまったということである。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1802/19/news083.html
金子兜太は前衛俳句運動の中心人物であった。「彎曲し火傷し爆心地のマラソン」や「暗黒や関東平野に火事一つ」、「曼珠沙華どれも腹出し秩父の子」、「華麗な墓原女陰あらわに村眠り」といったところが代表作になるだろう。
実は私は金子の前衛俳句が苦手なのである。私が影響を受けて来たのは高柳重信を頂点とした「新興俳句」系の作家であり、作品であった。私が金子兜太を含めて前衛俳句を苦手としていた理由の一つは、方法的な前衛を捨ててまで政治的な前衛に跪拝するような俳句や作家が少なからず存在していたからである。朝日新聞金子兜太の訃報記事を次のように書いている。
反戦の思いから同時代への発言を続け、晩年は故郷や平和への思いを多くの句に託した。安全保障関連法案への反対が広がった15年には、「アベ政治を許さない」を揮毫(きごう)した」
https://www.asahi.com/articles/ASL2N7SV4L2NUCLV01C.html?ref=tw_asahi
ところが皮肉なことに、私を強引に俳句の世界に引きずり込んだのは「海程」の編集にかかわっていたこともある人物であった。その人物は政治的にリベラルでも何でもなく、左翼経験など微塵もなかったのだけれど、何故か俳句においては「海程」に所属していたのである。そのことが余計に前衛俳句から私を遠ざけた。岩本太郎の「炎上!一〇〇円ライター始末記」に登場する赤坂見附の社長がそうだ。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15316066/

◎日販が4月1日付で執行役員制と本部制を導入することになった。管理本部、仕入流通本部、営業本部、物流本部の4本部が新設し、本部以下の組織をシンプルな階層構造に再編することで、迅速な意思決定の体制を構築することになる。
(1)管理本部 経営戦略室、経理部、人事総務部、ビジネスサポート事業部、システム部
(2)仕入流通本部 流通改革推進部、マーケティング部、仕入部、輸配送改革推進室、CVS
(3)営業本部 営業推進室、リノベーション推進部、営業各支社、ネット営業部、図書館営業部
(4)物流本部 流通計画室、王子流通センター、ねりま流通センター
奧村景二取締役が常務取締役に昇任した。奥村はMPDの社長だ。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2018/02/officers_20180220.pdf

◎平昌オリンピックにおけるコカコーラのCMが話題になっている。「Yahoo!ニュース 個人」が掲載した徳力基彦の「綾瀬はるかのコカコーラ乾杯CMで考えるテレビCMの未来」は、こう書いている。
「競技の中継が終わってテレビCMに入ったと思ったら、『祝メダル』の文字の後に綾瀬はるかさんが登場し、『すごい!メダルおめでとうございます』と拍手して、『1500メートル、無駄のないなめらかな滑りが格好よかったです』と競技について言及。
視聴者に対してコカ・コーラでの乾杯を促したのです」
https://news.yahoo.co.jp/byline/tokurikimotohiko/20180219-00081793/

◎学研プラスの雑誌「ムー」は、神奈川県横須賀市が主催する歴史ミステリー謎解きイベントに監修として参加した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001475.000002535.html

BuzzFeed Japanは、資生堂と協力し、「国際女性デー特集」を実施する。3月1日(木)から9日(金)までの期間、「国際女性デー」にかかわる幅広い記事を集中的に配信するほか、スペシャルゲストとして滝川クリステルを迎えたトークイベントや、ハッシュタグ「#あのときのわたしへ」を使ったTwitterアワードを実施する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000019238.html

◎Perform Groupは、Twitter社とのパートナーシップ契約のもと、明治安田生命J1リーグ、ならびに各欧州リーグ戦、カップ戦から毎節1試合を日本国内においてTwitter ライブにてフルマッチで生配信することになった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000072.000019339.html

◎「AERA増刊 羽生結弦 ~連覇の原動力~」が発売された。昔ほどは売れなくなったとはいえ、新聞社系出版社は、こういう企画が昔から得意だ。
https://news.dwango.jp/2018/02/20/171342/sports/

◎Donutsは、3月6日(火)から3月25日(日)まで、ライブ配信&動画アプリ「MixChannel」内ライブ配信機能「MixChannel LIVE」において「雑誌『Popteen』モデル発掘コンテスト」を開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000152.000004237.html

◎「ビジネスジャーナル」が「コンビニ店員に多大なストレス?厄介な『成人誌』問題…ミニストップ全店舗撤去の真の狙い」を掲載している。ミニストップ商品本部長の中山博之執行役員は次のように語っている。
「家族連れにとっては成人誌が子どもの目に届く場所にあるということがストレスになります。一方で、加盟店にとっては成人誌を1冊ずつ目隠し袋に入れる作業は大きな負担となります。そうした事情を総合的に考慮した結果、今後の経営方針として『女性や子どもを含むお客さまの誰もが安心してご利用いただける店舗を実現するため』に全店取り扱い中止に至りました」
「雑誌類は夜間に納品されますが、今は夜勤の従業員にも女性が増えているため「並べるのが嫌だった」という声もありました。また、成人誌を購入するお客さまのなかには女性従業員の反応を見ることを趣旨としているケースもあり、それらが女性従業員のストレスにつながっていました」
http://biz-journal.jp/2018/02/post_22364.html

石田ゆり子のフォトエッセイ「Lily ―日々のカケラ―」(文藝春秋)がが4刷14万5000部の大ヒットとなったが、こういう本こそ朝日新聞出版とかリベラル色の強い出版社が企画しなければならないのではないか。文藝春秋は幅の広いところを見せてくれたわけだけれど。
https://dot.asahi.com/dot/2018021900006.html?page=1

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3)【人事】講談社、2月20日付機構改変および職務掌底の一部改変と人事異動

一、IT戦略企画室を新設する。
二、ライツ・メディアビジネス局デジタルソリューション部、ブランドビジネス推進部および販売局システム部をIT戦略企画室に移管する。
三、販売局宣伝部の業務の一部をIT戦略企画室デジタルソリューション部に移管する。
四、経理局グループ経理推進部の業務の一部を局および経理部に移管する。

異動

第五事業局長 市田 厚志
社長室付(局長待遇)とする

広報室長 乾 智之
IT戦略企画室担当局長兼務とする

第五事業局担当局長 唐木 厚
第五事業局長とする

第六事業局担当局長兼第一出版部長兼広報室担当局長 那須 奈美子
第六事業局長とし、第一出版部長兼務とする

販売局長  角田 真敏
ライツ・メディアビジネス局長とする

販売局次長兼宣伝部長兼ライツ・メディアビジネス局次長  吉村 浩
販売局長とし、IT戦略企画室担当局長兼務とする

社長室次長兼経営企画部長 原田 義一
経理局長とする

販売局担当局長兼広報室担当局長 小岩 茂樹
IT戦略企画室担当局長兼広報室担当局長兼販売局担当局長とする

経理局次長兼グループ経理推進部長 中田 弘史
社長室次長兼経営企画部長とする

第一事業局次長兼FRIDAY編集長 秋吉 敦司
第一事業局次長兼広報室次長とする

第五事業局文芸第二出版部長 西川 太基
第五事業局次長とし、文芸第二出版部長兼務とする

第六事業局次長兼第一出版部担当部長 大澤 清
第六事業局次長兼第一出版部担当部長兼広報室次長とする

ライツ・メディアビジネス局次長兼メディアビジネス部長兼広報室次長兼第二事業局次長 伊東 剛
ディアビジネス部長および広報室次長、第二事業局次長兼務を解く

第一事業局次長兼広報室次長兼ライツ・メディアビジネス局次長兼メディアビジネス部担当部長 長崎 亘宏
ライツ・メディアビジネス局次長兼メディアビジネス部長兼広報室次長兼IT戦略企画室次長とする

販売局第五事業販売部長兼広報室担当部長 菅間 徹
販売局次長とし、第五販売部長および広報室次長、IT戦略企画室次長兼務とする

ライツ・メディアビジネス局次長兼デジタルソリューション部長兼ブランドビジネス推進部長兼第二事業局次長 桑田 伸一
IT戦略企画室次長兼デジタルソリューション部長兼ブランドビジネス推進部長兼第二事業局次長とする

第一事業局FRIDAY担当部長(部長待遇) 藤田 康雄
FRIDAY編集長とする

第一事業局コミュニケーション事業第一部長 瀬尾 傑
第二事業局コミュニケーション事業第二部長 佐藤 栄
IT戦略企画室担当部長兼務とする

販売局第一事業販売部次長 島田 重輝
第一事業販売部長とする

販売局デジタル第一営業部長 山端 剛
IT戦略企画室担当部長兼務とする

販売局デジタル第二営業部担当部長(部長待遇) 冨倉 由樹央
デジタル第二営業部長とし、IT戦略企画室担当部長兼務とする

売局第一事業販売部長 川手 賢次
宣伝部長兼IT戦略企画室デジタルソリューション部担当部長とする

販売局システム部長 桧山 純一
IT戦略企画室システム部長とする

経理局グループ経理推進部次長 及川 美穂子
グループ経理推進部長とする

ライツ・メディアビジネス局国際ライツ事業部担当部長(部長待遇) 菅原 喜一郎
ライツ・メディアビジネス局部長とする

販売局宣伝部担当部長(部長待遇) 灘家 薫
IT戦略企画室デジタルソリューション部担当部長兼務とする

販売局宣伝部担当部長(部長待遇) 山口 志門
IT戦略企画室デジタルソリューション部担当部長(部長待遇)兼販売局宣伝部担当部長とする

販売局デジタル第二営業部長兼広報室担当部長 石井 寛子
IT戦略企画室デジタルソリューション部担当部長(部長待遇)兼第六事業局担当部長とする

ライツ・メディアビジネス局ブランドビジネス推進部担当部長(部長待遇) 丸山 紀子
IT戦略企画室ブランドビジネス推進担当部長(部長待遇)とする

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【訂正・お詫び】「講談社第79期決算・役員人事報告会」の記事

昨日の「講談社第79期決算・役員人事報告会」の記事中で「IT企画戦略室」という名称を掲載いたしましたが、正しくは「IT戦略企画室」でした。
ここに訂正するとともに関係各位にお詫びいたします。

                                                                                                          • -

4)【深夜の誌人語録】

吐き出して周囲を汚してしまうのが嫌なら飲み込むことだ。そして飲み込んだら忘れるが鉄則である。