サイレントヒル (クリストフ・ガンズ) ★★★★1/2

 映画を見に行く前日にゲームをクリアした(「1」だけ)俺に言わせると、長いテレビゲーム映画化の歴史の中でも(まあ、壊滅的な歴史ではあるが)間違いなく最高の作品。
 「バイオハザード」のようにゲームを「原作」とした「アクション映画」ではなくて、本当にゲームそのものの完全映画化である。ゲームの音楽が冒頭で流れ、あの一面真っ白な視界の悪さも完全再現された「サイレントヒル」の町並み、そして初めて怪物に襲われる真っ暗な路地とその奥にある死体が画面に登場した時はつい数日前にプレイしたゲーム冒頭を思い出し、感動のあまり涙で更に視界がさえぎられる始末<アホ。いや、一番のアホはそこまで徹底的に再現したクリストフ・ガンズだけどな…
 が、この映画の成功は単にゲームのビジュアルを完全再現したからだけではない。テレビゲームの映像化がなぜ失敗するかといえば、結局のところゲームとはルールのことであり、ルールを映像化することが困難な以上、そのルールという土台の上に乗っているゲームのあらゆる事象が、映画の観客として見ると全て不条理に映ってしまうから、てのが多分模範解答の一つだと思うんだが、「サイレントヒル」はそんな不条理をも内に含んだ世界観を有しているので(1をプレイした限りでは、製作者もきっちり1から10まで世界設定を作りこんでいる訳ではないと思う)、映像化により是が非でも増大する不条理感がまったくキズにならない。いや、さらにそのおかげでホラー映画としての強度は3割増し、という珍しい「映画化する為に作られた」と言っても過言ではない稀有なゲームだったからというのも一因と思われる。
 映画だけ見たからストーリー訳わかんねえ、という人も結構いると思うけど、正直ゲームの方がわけわかんねえと思うよ。よって、わざわざ主人公が死体の口からアイテムを取るシーンとかはまったく正しい演出だと思うし、登場人物の行動に違和感を覚えても、その違和感こそがこの映画全体を貫くキモなんで、ゲームをやったことの無い人も何だかよく分からんが強烈な映像と、何となく分かるが細かいとこは理解できないストーリー、という2時間グラン・ギニョールに身を任せてみれば地獄まであと少し
 俺も1しかまだやってないんで、「▲(▲としか言い様が無い)」がでてきた時には「なんじゃこりゃあああ」ってすげえ興奮したんで前知識が無いとかえっていいかも。あ、でも「PG-12」っては映倫の大嘘なんでそれなりの覚悟は必要。
 まあ、正直映像自体はクリス・カニンガムの"Come To Daddy"他を2時間に引き伸ばした廉価版、みたいなところもあるんだが、監督のゲームに対するあふれ出る愛(これを"愛"と言わずして何が愛だ?)により映画としてのランクが二階級特進といった按配で、「ありがとうクリストフ・ガンズ」と言ってあげたい。あ、決してこれはジョデルたんのおヘソが見えたからでは無いよ。が、おヘソのアップがあったらもっと良かった。これから「2」をプレイするんで、続編も早いとこ作っておくれ。
 そういえば映画を見てる最中に思い出したんだけど、このゲームって発売前に開発者の人がインタビューで「ジェイコブス・ラダー」とか俺の好きな映画の名前を一杯あげていて、「これはプレイしなくちゃならんな」と思ってたのに、今の今までプレイする機会がなかったという不思議。まあ、結果オーライ。