俺氏、うまぬしデビュー

田中勝春ジョッキーサイン色紙

 馬主協会の「馬主席ご招待」に当選したので喜んでいたら、当日の受付で「プレゼンターもお願いしたい」と言われた。
 混沌として罵声が飛び交う一般席と違い、馬主席は粛然とした雰囲気。ドレスコードがあるから身なりのしっかりした人ばかりである。もっとも、競馬の起源が英国貴族の嗜みであることを思えば、これが本来あるべき姿とも言える。俺みたいな似非馬主じゃなくて、正真正銘の馬主ももちろんいて、馬主同士のネットワークみたいなものも形成されている様子。「前週、中京まで行ってきたけれど俺の馬はビリだった」とか、「成績を上げたいから、調教師が地方ばかり参戦したがる。あの調教師とは合わない」等と言った異次元の会話も耳に入ってくる。
 プレゼンターの重責を引受けた重圧と戦いながら、マークシートを塗りつぶし、いよいよ出番の9R。三春駒が迎えるゴール板を先頭で駆け抜けたのは田中勝春騎手であった。最近、表舞台でお立ち台に上がる姿を見かけなくなったと思ったが、現在、関東リーディング10位。まだまだトップジョッキーの一人である。40歳を超えたとは思えない少年のような風貌で、気さくで人柄も良い。馬主協会の人も「田中騎手は良い子」と太鼓判を押していた。トロフィーを渡し、記念撮影をしてサイン色紙をもらった。馬主協会からも、蹄鉄や会報等、諸々の記念品をいただき、緊張したが良い経験になった。
 ちなみに、本物の馬主になるには、数千万円の資産と1千数百万円の年収が必要である。手取り10万円の給料で会社に魂を売った俺には無理な話である。脱サラして起業でもするか。
 ついでに、馬券のほうはこの日も散々であった。血統から勝馬を導き出す俺のロジックはもはや破綻しており、角度を変えた新しい論理を形成する時期に来ているのかも知れない。
 …選ばれた人々。選ばれた有象無象。かなりハイ。皆前を向こう。語り合い、手を差し伸べよう