リーチ先生

リーチ先生 原田マハ


柳宗悦との出会いは、口論だという
(ここは、なにか残っていて本当にそういうことが
あったのか、原田のフィクションなのかは定かではないですが)
そこで、思い出すのが、同じく柳宗悦河井寛次郎の出会いが
対立から、ということですね


詳細は、覚えていないのですが、確かある展示会において
柳が言ってることに、河井が反発し、完全に見解が相違というか
激論となったという話があります
そうなのですが、両方と親しかった、濱田庄司は、あるとき
河井を柳の家に連れて行くということを、やります
その玄関にあった、李朝白磁のツボをみて、河井が
うなったというのですね


こんなに、素晴らしいものがわかる、柳は、ただものではない
すごいやつだし、自分として好ましいじゃないかということで
心が溶けた、というのです
こんなに、素敵な出会いというのも、なかなかないように思うのです


「リーチ先生」のなかで、リーチと柳は、高村光太郎が間に
はいって、君たちは実はお互いを、賞賛してるということだよと
仲良くさせてしまったという、流れが描かれています
知ってる人は知ってるように、柳とリーチは生涯、お互いを
認め合い、最高の親友として、過ごしていきます


ストーリィが進み、あるとき柳が、リーチにそして、そのときの
白樺派の仲間に、セザンヌゴッホの複製をみせて、その良さを
讃えてみせるという場面があります
ここで、リーチは、頭を打たれたように、自分は西洋人として
どんな日本人より、西洋のアートについては、詳しいつもりでいた
それなのに、柳は、ゴッホのように、自分の知らない
素晴らしい才能に気付いて、こうして、披露してる
なんてことだ、と、大きく、驚きもし、感嘆、また自分の
思いあがりといったことに、心を動かすという場面がでてきます


ここで、複製とはいえ、ゴッホ(例の糸杉ですね)をみて
やっぱり、その凄さを思う、ここに登場する人の感性のすごさ
また、そのことを、披露してみせた、柳への尊敬をまじえた
驚嘆の心。


こんなふうに、ストーリィは飽きさせず
また、ところどころに、こんなふうに、アートを愛でて
アートから啓示があり、またアートの頂点まで歩もうとする
好ましさ、人格の高さを、掲げながら進みます


全編通して、貫かれてるのは、バーナード・リーチの人間としての
暖かさ、アートに対するいろんないみでの姿勢、心の高さ。
吸い込まれるように、読んでしまいました