3・11追悼式 被災の教訓を次世代につなげ

 東北地方の再生を急ぐとともに、被災の教訓を次世代に引き継いでいくことが大切だ。

 東日本大震災から2年を迎えた。

 東京では政府主催の追悼式が開かれ、天皇陛下ご臨席のもと、三権の長、遺族代表ら約1000人が、亡くなられた人たちの冥福を祈った。

 安倍首相は式辞で、「今般の教訓を踏まえ、我が国全土にわたって災害に強い強靱きょうじんな国づくりを進めていく」と決意を示した。

 伊吹衆院議長は、「ボランティアの減少など震災の風化が懸念されている。教訓を心に刻み、次の世代に引き継いでいくことこそが、我々の役割だ」と述べた。

 政府と国会は、震災からくみ取った教訓を日本全体の防災対策の向上に生かさねばならない。

 追悼式には、各国大使など外交関係者も約150人出席した。

 岩手県代表の高校生、山根りんさんは、「自然災害が発生した国々で、被災体験を生かした支援活動ができる人材となり、大震災がつらい記憶ではなく、未来につながる記憶となるよう私たち若い世代が行動する」と誓った。

 各国からの支援に応える意味でも、復興を急ぐべきだ。

 読売新聞が2月末に行った全国世論調査では、復興が進んでいないと思う人は69%に上り、昨年の72%と変わらない水準だった。

 自民党は野党時代、民主党政権が取り組む復興策の遅れや効率の悪さを厳しく批判してきた。

 安倍首相は、政権復帰を果たした以上、依然として強い国民の不満に対し、目に見える形で応えてもらいたい。

 特に、いまだ原発事故の処理が続く福島県は、宮城、岩手両県と比べても復興の遅れが目立つ。

 安倍政権は、福島市に福島復興再生総局を設置し、放射能の除染や町づくりに「現場主義」で取り組む体制を整えた。

 首相は記者会見で、原発事故で避難した周辺住民の帰還について、「夏頃をめどに、道路、水道、医療、福祉の復旧、いつ頃住めるようになるか、具体的な道筋を明らかにしていく」と語った。「すべては実行あるのみ」との姿勢は評価できる。

 被災3県については、住宅再建を急ぐため、政府が被災者向けの公営住宅である「復興住宅」建設の工程表を初めて提示した。適切な対応だろう。

 被災者は「先の見えない不安」を抱えている。一刻も早く将来に希望を持てるよう、手立てを講じることが肝要だ。