「星間商事株式会社 社史編纂室」

tetu-eng2014-06-08

「星間商事株式会社 社史編纂室」
三浦 しをん
ちくま文庫
2014年3月10日発行
560円(税別)

 本の話の前に、今週は、「T字路」のCD/DVDをアマゾンで購入。うん、「続・最後から二番目の恋」のエンデイングで、小泉今日子中井貴一のデユエット曲なんです。なんとも、昭和的でいいですね。わたせせいぞうさんのカバーのイラストも、最高ですね。

 さて、三浦しをんさんの小説は、お仕事小説がおもしろい。たとえば、「舟を編む」(辞書編集者)、「神去なあなあ日常」(山林業)、「まほろ駅前多田便利軒」(便利屋)、「仏果を得ず」(人形浄瑠璃)など。ぼくは、割と、好んで読んでいますね。この小説は、タイトルのとおり、「会社の社史編纂」に携わるサラリーマンのお話です。

 そういえば、ぼくは、昔、社史編纂に従事したことがあります。従事したといっても、最後のリライトを任されたのですが、これが、かなり大変でした。会社の各セクションが書いた原稿を全部、読んでトーンをあわせたり、執筆者との修正の調整をしたり、まあ、本の編集者のような仕事ですかね。 でも、会社の本来業務とは、直接、関係がないので、なんとなく生産性がないのと、なんといっても各セクションの協力なしには、前に進まない地道なしごとです。

 『「そういえば、我が社には社史がないぞ」
 と社長が言ったのかどうか知らないが、「社史を編むべ」となったのは、二十一世紀に入ってからだった。2006年が、会社ができてちょうど六十年だ。それに向けて、「星間商事株式会社 六十年のあゆみ」を作ろうということになり、本間課長が本館ビル内の資料室を掃除して、めでたく社史編纂室が誕生した。2003年のことだった。
 しかしいまは、2007年だ。会社創立六十周年のお祝いは、去年執り行われた。社員全員に紅白饅頭が配られた。まにあわなかったからだ。』

 社史編纂室のメンバーは、幽霊部長、本間課長、矢田さん、主人公の幸代、そしてみっちゃんの5人。しかし、部長は、見たことがない。課長は、定年前でふらふらしているだけ、矢田さんは、合コンに明け暮れ、幸代は、最近、配属されたばかり、みっちゃんは、元気が取り柄の女子。

 この5人のメンバー?が、遅れに遅れた社史編纂に向けて、走り出します。しかし、物語には、必ず、事件があります。社史編纂のための資料集めをしているとき、会社の秘密らしき事実に遭遇したのです。ありそうなことですね。どこからともなく、妨害工作も始まりました。社史に載せられない会社の暗部とはなにか?

 社史というモノは、だいたい、組織の表の部分しか書いていませんよね。要するに、成功談なのですよ。まあ、失敗したことを書き連ねて公表することもないでしょうが、失敗こそ、後世に引き継ぐモノでしょう。二度と過ちを繰り返さないため。でも、そうは、ならないのですよね。

 そこで、この5人のとった行動は?これが物語の佳境です。

 僕の読んだ三浦しをんさんの小説としては、残念ながら、やや低調と言わざるをません。テーマが社史となると、企業小説的になるのでしょうが、三浦さんの小説は、そういったジャンルではありませんね。「池井戸潤」的が、いまの流行ですから、ストーリーにパンチが欲しかったですね。