「もう誘拐なんてしない」

tetu-eng2014-11-30

もう誘拐なんてしない
東川 篤哉
文春文庫
2011年年4月10日発行
590円(税別)

東川篤哉さんの代表作は、なんと言っても「謎解きはデイナーのあとで」ですね。テレビ、映画ともにヒットでしたね。「謎解き」同様に、この小説も、コメデイタッチのミステリーです。読了後、きっと、テレビドラマ化するだろう、と、思ったら、すでに、2011年の新春ドラマで、放映済みでした。うむ、見逃しましたね。主役は、大野智。えっ、これも「嵐」。相手役は、ガッキーこと新垣結衣

ストーリーは、ある目的で大学生の樽井祥太郎と高校生の花園絵里香の狂言誘拐が事件の始まりです。もちろん、誘拐されたのは絵里香なのですが、この子、花園組の組長の娘さん。組長から身代金をせしめようとすることが、もはや、コメデイです。しかし、その花園組が、「セーラー服と機関銃」の「目高組」のような落ちぶれた組、って、分かる方には分かりますよね。

舞台は、僕の故郷である下関と門司、そして、身代金の受け渡しは関門海峡・・・から、僕も、知らなかった彦島水道の「関彦橋」という場所なのですね。

『「おう、橋が見えてきたど」
梵天丸の運転席で、甲本が前方を指さす。
彦島下関市街地を繋ぐ、なんの変哲もない鉄の橋。この橋に名前があるということ自体、祥太郎は甲本に聞くまで知らなかった。橋の名前は関彦橋というのだそうだ。
「下関と門司港を結ぶ橋が関門橋で、下関と彦島を結ぶ橋は関彦橋か」
「じゃあ、もし彦島門司港を結ぶ橋ができたら、どういう名前になるのかしらね」
いや、そんな無駄な橋が架かる予定はない。』

東川さんは、尾道市の出身で岡山大学卒業。しかし、この小説では、まるで下関出身であるかのように、やたら、市街地のことに詳しいのです。おそらく、この小説を書くために、かなり、下関、門司港の周辺を調査されたのでしょう。でも、無駄な橋の計画は、実は、あります。仮称「第二関門橋」ですよ。ここまでは、調査は及ばなかったようです。ちなみに、彦島にある下関第一高等学校は、松田優作の出身校です、って、関係ないですね。

さて、小説は、身代金の受け渡し後に大きくストーリーが変わっていきます。花園組のナンバー2の死体が、身代金の受け渡しの船から、発見されたのです。犯人は、誰なのか?ここからが、どんでん返しのミステリーとなります。「お嬢様の目は節穴ですか?」なんて「謎解き」のような決めぜりふはありませんが、全編にわたって、下関弁・・・のオンパレードです。

下関出身の出稼ぎの皆さんには、きっと、この下関弁だけでも、なつかしさ満載の小説でした。そして、「ぶり、懐かしいっちゃ」とつぶやくでしょう。