大江戸化物細見

 楽しい本である。以前、近世の本をもみたいと思って、同じ著者の「妖怪草子 くずし字入門」(柏書房)を読んだが、ちょっとばかりしても、実物は読めない。
 

大江戸化物細見

大江戸化物細見

 著者はアメリカのニュウーヨーク生まれの54歳。今は武蔵大学で教えている。この本では、「妖怪仕打評判記」「ばけものつわもの二日替」「化物一代記」「河童尻子玉」「鬼の趣向草」が入っている。著者によると江戸時代の「黄表紙」というジャンルに属するもので、「黄表紙」とは絵と文章が一緒になった、一種の小説というべきもので、形式は現代の漫画に近い。内容も、ふざいけて笑わせる話が多く、これも現代の漫画に似通っていると紹介している。
 人を脅かしても、あまり悪意がない化物が多く、大変愛嬌がある。今の「化物」という言葉と若干違うようである。
 写真は「妖怪仕打評判記」で、首の長い見越入道がお多福のろくろ首と「首引き」(二人が輪にした紐を首にかけて引き合う遊び)をしているところ。猫股と蛙が見越入道チームに入っている。真ん中にいる山姥は審判あるいは応援しているところ。見越入道が負けている。
 右上の文章は「第三番に、見越入道。このお坊は隠居して、今は出勤なれど、今夜のことゆえ、まかり出でける。これも、夜暗い時、通る人の後ろより見越して、向かふへぬっと首を差し伸べて、怖がらす仕打ちなり。さて、見越入道の相手は、女なれども、釣り合いよしとて、ろくろ首を出だしけるが、お六、首引きに勝ちて、落ちをとる。と書いてあるそうだ。」
 本書のほかに、「ももんがあ対見越入道」(講談社)「江戸化物草紙」(小学館)が書棚にあるが、積読である。