絵葉書

絵はがき100年 近代日本のビジュアル・メディア (朝日選書791)

絵はがき100年 近代日本のビジュアル・メディア (朝日選書791)

 絵はがきが生まれて約100年になるという。1900年に私製はがきの発行が許可されてから、絵はがきは大ブームになったという。
 以前、旅行・出張をしたときなどに絵はがきを買ったことがある。私の場合は、手刷り版画のものしか買っていない。もう30年も前だが、一部はまとめて額にして飾っている。観光写真の絵はがきなどは買ったことがない。残念ながら、今では手刷り版画の絵はがきにはお目にかかれない。
 この本は、著者の何万点に及ぶコレクションの中から、約90点を紹介している。書かれた事件や風俗から、当時の雰囲気・時代が理解される。エンターテインメントと絵はがき・記録写真としての絵はがき・メディアイベントと絵はがきの3分野に分けて解説している。今では絵はがきは販売を目的としているが、以前は「国家的な行事や災害にかぎるものではない。絵はがきは個人や団体で記念品として重宝がられた。学校の遠足や運動会、そして建物の竣工記念など、公私を問わず祝いごとがあると、人々は絵はがきを製作して関係者に配布した。絵はがきは記念品の定番であった。」 一時はやったテレホンカードのようだ。
 台風被害や飛行機事故現場・大火災まではがきにしている。中には死体までもである。博覧会の記念にも絵はがきが作られた。この本によると、警察や軍隊までが博覧会を開催して、絵はがきを発行している。噴飯ものは、ホワイトハウス空爆(日本によって)され、酒を飲んで涙にくれている大統領らしき人物を描いたはがきである。これは、実業之世界社が懸賞「米本土空襲の歌」にあわせて出したはがきということだ。はがきにはニューヨークの摩天楼と首都ワシントンを空襲し廃墟としたという仮定のもと、戦勝をたたえる歌詞が書かれている。日付は皇紀2604年(西暦1944)2月4日という。歌詞はこうだ。「ついにやったぞ 大空襲 見ろニューヨーク ワシントン 濛々あがる 黒煙に 飛ぶは白亜だ 摩天楼 廃墟と化した 敵首都に あがる日の丸 日章旗 万歳 万歳 大空襲」 絵はがきも国威発揚に利用されている。