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孺子の牛(じゅしのうし)

2010-12-31

文学者たちの大逆事件と韓国併合

17:50 |

 とにかく、寒さ厳しい年末である。徳島の我が家でも少しばかり雪が積もった。

 年末までに読んだ本で、紹介していないものが3冊ある。「文学者たちの大逆事件韓国併合」(平凡社新書)「昭和天皇の終戦史」「漢文東アジア」(岩波新書

文学者たちの大逆事件と韓国併合 (平凡社新書)

文学者たちの大逆事件と韓国併合 (平凡社新書)

 文学者にとって大逆事件の与えた影響の、大きさを知らされる一冊である。それは、事件前後だけでなく、昭和・平成の今日まで続いている。日本人作家だけでなく、朝鮮人作家にも、植民地満州国朝鮮に居住した人にもである。直接、大逆事件に関した小説だけでなく、文学者の作家としての心を折らせる事件であった。著者の高澤秀次は「アジアで最初の近代国民国家を形成した日本の誇りは、歴史的な過去を直視することによって真に回復される。それは、日清・日露の両戦争に勝利した明治国家を理想化して、その暗部に眼を瞑るのとは逆のことだ。」また、著者は「あらゆる『理想』と『虚構』の『不可能性』を歴史的に隠蔽する『坂の上の雲』のような作品に、国民が熱狂していることが、おぞましく感じられた」とも書いている。その通りと思う。

 「昭和天皇の終戦史」は、戦争責任ははたして軍部だけにあったのか?天皇と側近たちの『国体護持』のシナリオとは何であったか?として、「昭和天皇独白録」を検証している。そこでは、天皇がいかに戦争責任を回避しようとしたか、太平洋戦争についての記述はあるが、日中戦争については、その正当性を信じて疑わなかった天皇軍部官僚たちの姿が明らかにされいる。また、穏健派と言われた人々が、国体護持のために戦争の責任を軍部に押し付け、アメリカもそのシナリオを書いて受け入れている有様が知られる。戦中・戦後直後の支配層の念頭には国民の姿は一切なかったようだ。

昭和天皇の終戦史 (岩波新書)

昭和天皇の終戦史 (岩波新書)

 「漢文東アジア」も興味ある本であった。日本文化の受容の経過も理解される。学ぶこと少ない私にとって、「漢文訓読」と聞くと日本独自のものかと思っていたのだが、中国を取り巻く東アジア全体に広がっており、その類似性も知られるのであった。しかも、その訓読は仏教経典の受け入れが重要なポイントになっている。著者の金文京は「仏典漢訳が中国を含む東アジアの言語意識に大きな影響をあたえ、そこから訓読をはじめとするさまざまな現象が生まれたこと、そしてそれが言語意識だけではなく、各地域の国家観や民族思想にまで波及したことについては、大方の同意が得られるのではないか」と書いている。

漢文と東アジア――訓読の文化圏 (岩波新書)

漢文と東アジア――訓読の文化圏 (岩波新書)

 長年の日中・日韓・日中韓三国の歴史、東アジアとのかかわりを見つめ直して、今後の政治・経済・文化交流を強めていく必要があるのではないか。そうすれば尖閣諸島竹島などの領土問題についても、短絡的な軍事強化などと言うばかげた発想は出てこないだろう。

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