金子光晴「ねむれ巴里」
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- 作者: 金子光晴
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/06/25
- メディア: 文庫
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「ねむれ巴里」は金子が上海からマレー半島に渡り、そこで妻の森三千代を先にパリに送り、彼が何とかして金を工面してパリにむかうところから始まっている。パリでの2年間の生活はとにかく破天荒なものであった。1928年末の上海から、パリ、マレー半島へ、彼の放浪は1932年6月まで足かけ5年にもなる。現在のように社会基盤も整って、先行きの見通しをつけての滞在でない、浮浪者のような根無し草がパリで住む危うさの中でも夫婦して生きていく、いつ野垂れ死にして無縁の墓場に放り込まれかねない生活、40年後に回顧した自伝ではあるが、その凄まじさに圧倒される。「ねむれ巴里にはこの時代、パリには金子と同じような生活の中でパリに囚われた人々が多く登場して」くるが、パリで客死する人、パリを抜け出す人、パリをあきらめる人、私にはパリへの呪縛などこれっぽちも無いから「ううむ」とあいまいにうなづくしかない。額縁づくり・無心・だまし・旅客の荷箱作りなどなど、文学とは全くかけ離れた生活を送りながら、最後には文学が残った金子光晴ではある。しかし、金子光晴は魅力的である。
俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
○春の嫁菜の 摘み残されて 秋の野菊の 花盛り
○似ても似つかぬ 縁ならよしな 鴨と鶩(あひる)は 値が違う
○送りましょかや 送られましヨか せめて峠の 茶屋までも