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2012-03-27

サイエンスの週末

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写真はイメージです、というか一時の気の迷いです

未来設計会議

3月24日土曜日、科学未来館で開催された、未来設計会議 シリーズ3 after 3.11 エネルギー・科学・情報の民主的な選択に向かって 03 食品の放射能、どこまで許せますか?に参加してきました。
登壇者は

さんのお三方。
座席の量は前回の半分くらい。前回は早野さんとか平川さんとか超有名人が登壇したからなあー。


最初にファシリテーターさんから、事前にwebで募集した意見と、その日の来場者を指名して集めた質問を投げかけ。*1それを踏まえてのお三方のトーク開始。

山本さん

山本さんはレギュラトリーサイエンス*2分野の専門家として、規制値設定のところのお話。
難しいのは、まさにタイトルでもあるけど「どこまで許容するか」の合意形成と、「基準値は危険と安全を分ける線ではない」ことの周知。
説明ではICRPの実効線量10mSv/年でも緊急時対応として不適切とまで言える根拠はないこと、生涯における追加累積線量100mSv未満の影響について言及することは困難であることの説明、その上で、「より一層の安全と安心を確保する観点から1mSv/年に引き下げる」とのこと。
食品群ごとの基準値設定、年齢と性別でグループ分けして一番弱いところから安全側に振った数字を適用、具体的には13-18歳男子(つまり要は食べ盛り層で一番米を食べる。確かに成長期って摂取>排泄だもんね)。逆に幼児とかは粉ミルクだけ考えれば良いので管理が楽とのこと。確かに。
汚染率は50%が前提。自給率は40%前後なのでまあ半分は輸入品ということ。(つまり国産品全部汚染されているというかなり悪めの前提シナリオ
あとは厚生労働省モニタリング調査結果の説明。

会場からの質問で、マーケットバスケット方式*3より陰膳方式*4の方が良かったのでは?とありました。(その筋の人すぎるやろ…)市場流通品の調査はバスケット地域を絞ってピンポイント調査する時は陰膳の方が良いとの回答で激しく頷き。

道野さん

道野さんは実際の管理側行政サイドの説明。
段階を追って対策された内容の説明。2011/3/18〜2012/3/16で126,821件の検査、暫定規制値超過1,183件。最初はヨウ素、後は牛肉とか茶とかキノコとか。
食品衛生法は平時の法律であって、原子力災害特別措置法に基づく形で出荷制限をかけた。地域と品目に応じて設定して、条件を満たせば解除。規制中のリストには警戒区域のためそもそも農業ができていないところも残っているという話も。
実際の検査についてもガイドライン策定して自治体国立機関大学等も含めて検査をしているがゲルマニウム半導体検出器は供給が追いついていない。
実際の検出データで、葉物野菜は3-4月にヨウ素系を検出したがその後出ていない、野生鳥獣は猟期の関係で秋以降、牛肉は汚染稲わらを給餌した個体が処理場に行くタイムラグで6-7月、お茶は収穫が4-6月で製品化のタイミングでぽろぽろと基準を超えている、という話は興味深いなと思いました。分析屋も食品製造とか流通のこと理解してないとダメなんですよね…。
最後に、(山本さんの時にあった質問に答える形で)マーケットバスケットでの摂取量調査で、原発事故前K40で0.18mSvくらいの摂取、事故後のCs131+137で0.02mSvくらいの摂取という説明。少なくとも個人的には恐れるレベルではないなと思いました。

会場からの質問は、牛や米の検査に偏ることについての質問というか意見が上がっていました。現在の検査状況は流通消費者サイドからの要請によるものが大きいので、という感じでした。
また昨年は事故後対応のため系統的なサンプリングができなかったり、事故直後のヨウ素対応があったため、二年目の今年は慎重に広くデータを拾って将来に繋げる必要があるというお話でした。

甲斐さん

甲斐さんのお話は、「リスクコントロールを目指せ」ということで、管理とコミュニケーションのおはなし。
一年暫定基準をとってきて、緊急時から復旧期への転換が必要。
健康に事故も平時もないという声もあったが、東京都上水道ヨウ素が検出された際に10Bq/Lの基準をあてはめると水道が一ヶ月使えない、じゃあそれによって生じる危害はどうなるのか、放射線リスクが高ければ当然避ける必要があるが、それ以外のリスクと天秤にかけることをおろそかにしてはいけない、と。

食に対する信頼回復としては、規制値は安全と危険の境界ではなく、小さいリスクをどこまで低減するかという目標だという方向からアプローチするおはなし。
その後また実際のデータを踏まえてのおはなし。


f:id:tetzl:20120328001610p:imageグラフはイメージです)
↑こういう、反比例グラフロングテールをどこで切るかという感じの基準値改正であるというお話。(サンプル数はまあ≒頻度ということですが、そしてもっと検出率低いよな…)
現状に即したリスク管理をするということが大事だが、どうあるべきかという議論が先にある。リスクの考え方としては決めにくい。
国立医薬品食品衛生研究所でのバスケット調査ではセシウムが一日3Bq/kg程度の摂取だが、一方のK40は80Bq/kg前後。

また示唆的な内容で、リスク管理について、「"安全側"の落とし穴」として、基準が厳しければリスクコントロール効果が上がる訳ではない→検査体制強化による機器不足・コストの増加・(検査母数が有限なため)実質検査サンプルの減少というデメリットが上げられ、「有限な世界に生きている」ことを前提として、じゃあどうすれば良いか考えようよというおはなし。少なくとも下流(流通段階)よりも上流(生産段階)の管理、それも汚染レベル管理から汚染のコントロールにスライドする必要があって、それは消費者にも生産者にもメリットがあるということ。汚染状況、移行状況の把握からその管理へ。

ディスカッション

その後のディスカッションでは、「安全とはどのような状態か」の問いに、会場から「管理されていること、安全を担保されている仕組みがなんとなく理解されていて信頼を持てる人が多い状態」や「許容の基準を国民一人ひとりがチェックすることはリスク管理ではない」というコメントがあって、おおお、と思いました。
甲斐さんからは、市民測定所やお母さんの会への行政支援の必要性のお話があったりもしました。


思ったこと

新型インフルエンザが海外で流行し始めた時、全国各地の検疫所から食品衛生監視員も含めたスタッフが空港や港湾の検疫所に集められて体温チェックや問診などの防疫業務に駆りだされたことがありました。それによって何が起こったかというと、輸入食品の検査が民間の機関にえらい量アウトソーシングされまして…。いやわかるんですよ、検査機関も協力したくないわけじゃなくて、むしろ協力したいんですけどね、リソースがね、足りないんですよ絶対的に。それでもお役所は中でなんとか運用しなきゃいけないプレッシャーがあって実際大変だと思いますし、現場の方は非常に頑張られておられると思います。。


それと、会場で質問があった「安全とはどういう状態か」。自分としては、会場からの答えとかぶりますが「特に気にしない人であっても危害が発生しなくて、調べ癖のある人、こだわりのある人は安心できる材料があること」かなあ、と。例えるなら外国産商品のパッケージのように、「誰かが検査している」「簡単な説明がついている」「もっと気になる人は勉強すれば読み解くことができる」ような。そして、もっと言うならば「バックラッシュで危険なことをする人(変なお風呂とか)にも危害が発生しないか、まあ生死にかかわらない程度の世の中であること」とかかなあと思っていました。


あと、「安全宣言」も、「基準値のいたずらな厳格化」も行政コミュニケーションに手を抜いちゃいかんよと思ったのでした。そういうのって結局ディスコミュニケーションの裏表だと思うんですよね…。もちろんコミュニケーションの割くリソースが足りてないとは思いますが。その一方で流通・小売によるプレッシャーについては何か色々納得できない部分が今でもあります。とかもやもや。


全体的に、前回と比べてより「話のわかっている」人が多い印象でした。(ある意味聞き分けがよすぎたのかな、とも思いますが…)。また座っていた席が登壇者席に近かったのですが、終了後に道野さんが参加者の質問を受けている間、山本さんと甲斐さんで「あそこであの回答(なんとなく理解されていて信頼を持てる人が多い状態)が出ちゃうともう充分というか、ですねえー」とお二人で満足そうに笑っておられたのが印象的でした。まあでも規模の割に雰囲気も良かったなあと思いました。


余談ですが、甲斐さんの声のトーンが柔らかくてこういう場のスピーカーに向いているなあ、いいなあと思ってもおりました。ちょう余談ですね。

サイエンスブロガーお茶会

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3月25日日曜日は朝からサイエンスブロガーお茶会に参加。サイエンスブロガー同士でお茶するのでなくサイエンスブロガーを囲んでお茶をする会です。
前半は食の安全情報blogの中の人ことid:ohira-yさんの食品衛生の概論説明。食品衛生法の話とか規格基準の話とか、基準値の決め方とか。「バナナはおやつに入りますか」という問からの、ブラックリストホワイトリストの説明を経由して残留農薬ポジティブリスト制度のお話。
日本では検出→回収というのが殆どだけど、海外ではそうでもないという事例紹介でアメリカであったメキシコオレンジジュースの基準値超過の事例紹介も。EPAFDAが照会し、リスク評価をした上で回収不要との判断をしたとか。参加者からは「他の製品とブレンドして基準値クリアして出荷はできないのか」という質問もありましたが、事故米の時に焼酎まで回収された例の解答があって、おおさすがな返し!と思いました。一罰百戒であるという声も参加者からありました。

農薬の話の後はいよいよ「これからの食品放射性物質基準値の話をしよう」。
暫定基準値の設定と実際の摂取量については昨日の未来館イベントで話された内容とほぼ同一。まあソースが一緒だからこういうのはしょうがない(笑)
そこから土壌汚染について、ヒ素カドミウムの例を上げられました。どちらも火山国であるこの国では外国に比べて土壌含有率が高い一方、天然にあるものだからしょうがないという声もあります。しかし現在の汚染については江戸時代の採掘による「鉱毒」的側面も強く、じゃあ江戸幕府損害賠償できるわけでもなくどうしようか、というお話。
またここ最近の食中毒死亡事故事例の紹介も。細菌性食中毒かフグによるものが殆ど。あとよくあるのは有毒きのこか。

そして、最後はALARA(As Low As Reasonably Achievable:合理的に達成可能な限り低く)の説明でohiraさんの説明は〆。

ディスカッションは最初しずかーになってちょっとドキドキしましたが、一度軌道に乗ると結構いいやりとりが進んでおりました。皆さんご自分が悩んだり迷ったりというよりは周りの人にどうしたら伝えられるかな、みたいな感じの方が多くて、リスク比較とかそういうの、どうやって説明したらいいんだろうね、みたいな話が弾んでいました。

中心的処理と周辺的処理とか、プリウスの出現で「自動車=悪」でなくなったという話とかはなかなか示唆的でしたねえ。
基準値を下げる話はおおむね歓迎ムードで報道されていて、一方「すり抜けが問題」という論調は怖いね、というお話も。基準があってサンプル調査をしている以上、必ず最初の検査でスルーするものが出るものだしスルーしたことがわかるっていうこと自体逆説的に検査体勢がうまくいっているということですよね、という話を聞きながら、バレーボールでブロック失敗したら即負けるわけじゃないしなあ(リベロがレシーブだってできるし、仮に失点したとしてもリカバー可能という意味で)とか妄想しておりました。

思ったこと

まず思ったのは、不安な人が「チェルノブイリハート」的なものに吸い寄せられてしまうという話のところで、「何故科学は不安を抱き止められないんだろう」と。厳密には、「何故一部の人にしか手が届かないのだろう」。もちろんすぐクリアな答えが出る話ではないとはわかっていますし、おそらく形としてはSTSに入るのでしょうが、科学技術の人間が自分の言葉で語れるようにならないとダメなんじゃないかなあとか思う訳です。
また不安を解消する方法については、(ちょっと言いかけたのですが纏まらなかった)「目的地への到達方法」なんだと思いました。実はお茶会の会場に行く前にちょっと伊勢丹へ寄ったので、そのまま地上から向かったのですが、Googleカレンダーに入れた住所(ビッグスビルB2F)だけをちらっと見て、途中で目に入った銀座ルノアール(B2F)の看板を見てそのままお店に入ったら別のお店だったんですね。会議室の案内がなかったので店員さんに確認したら「あ、ビッグスビルはC8出口の方です」って教えて貰ったんですけど、結局不安に向きあうということの方法もどこかに出かけるのと同じように、人によって「地図を見る」「お巡りさんに聞く」「知ってそうなその辺の人に聞く」「友達と一緒に行く」「誰かに迎えに来てもらう」「お店に問い合わせる」「そもそも面倒だから参加しない」とか色々な方法を取る人がいるように、可能なかぎり個別に対応していくしかないんだと思っています。Google MapのURLをメールしたらみんな集合できるわけではないように、ね。自分はニガテですが、場合によっては「権威を振りかざす」ことが効果あることも当然あるでしょうし(本当に苦手なのでそれはどなたかにお願いしたいですが)。そういう機微を聞き取れるというのも、科学コミュニケーションにおける科学側話者(いやむしろリスナーというべきか)の「リテラシー」なんじゃないかなあとか思ったのでした。

まあそんなことを考えながらも、実はサイエンスカフェ的なの初めてだったのですがとてもリラックスして楽しめました。ちょっと会場が狭かったのだけど、逆に一体感があったと好意的に思っておこう。
程よい座談会+αの規模で、逆にあれがあの雰囲気でやれる最大人数かなという気もしました。

余談

終わったあと、関係者にご挨拶したり名刺交換して「ああっいつもお世話にっ…」とかって言ったりしたあと、有志+みつどんさんで集まってご飯を食べました。
僕のいたテーブルはしゃぶしゃぶを頼んだのですが、店員さんが具材を運んでくるなり「この豚肉は生でも食べられますので〜」と仰ってですね、場がピキーン!ってなりましたピキーン!って。
参考:ちょっと待って!お肉の生食|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

参考リンク

食品中の放射性物質の新たな基準値について(PDF)
厚生労働省の食品中放射性物質の新基準説明資料。けっこうよく纏まっているというか、頑張りが見える。


みけねこさんとこの科学日記
お茶会の主催、ミケネコさんとこ。


サイエンスブロガーお茶会、無事終了いたしました - 趣味:科学
名司会だったたかさんの感想。ぱちぱち(拍手)。


はてなダイアリー
メインゲストおひらさんの感想。スライドも掲載されています。ぱちぱち(拍手)。

*1:前回同様前の方に座ってたので当てられそうでひやひやしました

*2:規制科学。いわゆる「基準値」をどう設定して、どう社会で運用していくかという部分。自分もそういうとこの分野にいました。

*3市場流通している商品を買い上げて分析し、国民健康栄養調査に基づいた喫食量を掛けて摂取量を推定する

*4:かげぜん。家庭の料理をひとり分多く作ってそれをまとめて分析する

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