株主総会

  • ●意義

株主によって構成される,株式会社の意思決定機関(商法4章3節1款,会社法4章1節)。
取締役会のように,常置機関ではない。
最高機関であるが,万能機関ではない(230条の10参照)。


定時総会(234条)
   :決算期ごとに開催される株主総会
臨時総会(235条)
   :必要がある場合に開催される株主総会


  • 権限

◎原則:法定事項に限る
×例外:定款自治の原則
   =取締役会の権限事項を定款で株主総会決議事項にする


  • 招集

取締役会決議により,代表取締役が招集する(231条)。
   少数株主も招集できる(237条)
      ↑だめなら,お願いされた裁判所もできる


全員出席総会
   株主全員が出席したら,招集はいらないことになる(最判昭46・6・24)


・招集通知
   ますますご清栄のこととお喜び申しあげます。
   →株主のためのもの
      ∴時間と心の余裕を与えなければならない


株主提案権(232条の2)
   具体性・・・議題>議案


  • 議決権

◎原則:資本多数決→1株1議決権
×例外:議決権制限株
    自己株
    相互保有
    その他


・行使方法
   不統一行使
      できる(239条の4)が,拒まれることもある(239条の4第3項)
   代理行使
      できる(239条2項)が,多くの会社は定款で代理人資格を株主に限定

★「なぜ,入れないんだ!」最判昭43・11・1百選26
<争点>
株主総会代理人資格を株主に限定する定款の有効性。
<判断>
このような定款の規定は,株主総会が株主以外の第三者によって撹乱されることを防止し,会社の利益を保護する趣旨に出たものと認められるから,合理的な理由による相当程度の制限ということができる。

   書面行使
   ネット行使


  • 議事運営

議長(237条の4)が仕切り役
○取締役の説明義務(237条の3第1項)
   会議体としての一般原則確認
   ↑株主の質問権に対応
      →平均的株主を想定

平均的株主 ソニー(6758)の株主総会プレステ3の開発状況を質問することは,株主全員の利益にもなると思われる。家電の不調が伝えられる中で,プレステはソニーの生命線となっているからである。では,プレステ3のソフトの開発状況を質問することはどうか。

★「質問権のなんたるか」東京高判昭和61・2・19百選29
<判断>
取締役の説明義務は,株主が株主総会で質問してはじめて生ずるのは文言上明らか。したがって,あらかじめ質問状を提出したからといって,取締役に説明義務が生じるわけではないが,説明しても,なんら差し支えはなく,また,その説明方法に法の規制があるわけではないから,合理的な方法で行うことができる。法は,質問権を会議の目的事項を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲を得るためのもの,と想定しているのだから,一括説明が直ちに違法となるものではない。
<整理>
じゃあ総会で質問される前の回答は何なのか,ということになる。説明義務の先履行か,はたまた説明義務とは関係のない説明なのか。

   ・拒否事由(同条同項但書)
      ①会議に関係ないこと
      ②説明が株主の共同利益に反する
      ③調査に時間がかかること
      ④その他正当の事由
議事録を作る役も必要(244条1項)


・決議方法
   普通決議(239条1項)
      総株主の議決権の過半数を有する株主の出席
         ∩
      その出席株主の議決権の過半数の賛成
   特別決議(343条)
      総株主の議決権の過半数を有する株主の出席
         ∩
      その出席株主の3分の2以上の賛成
   特殊の決議


・株式買取請求権


総会屋対策
   総会屋の分類
   ・利益供与の禁止(295条)
      推定規定(同条2項)
      民法708条=不法原因給付の特則としての返還義務(295条第3項)
      利益供与した取締役に対する返還請求(266条1項2号)
         +一般責任(266条1項5号)
      刑事罰(497条)
   ・代理人の人数制限(239条の2)
   ・代理人の資格制限
   ・単独・少数株主権の制限
   ・議長の運営権限強化(237条の4第2項3項)


  • 決議の瑕疵

○決議取消の訴え(247条1項)
   1) 手続不公正(1号)
   2) 決議内容の定款違反(2号)
   3) 特別利害関係人の議決権行使(3号)
   ・判決の効力
      対世効(2項→109条)
      遡求効
   ・提訴権者
      株主+取締役+監査役
   ・提訴期間
      決議の非から3か月以内(248条1項)
   ・裁量棄却(251条)

制限事項 株主総会決議取消の訴えには提訴権者,提訴期間,裁量棄却など制限事項が多いが,これは株主総会決議が取り消された場合の重大な影響を考慮しているからである。たとえば,郵便事故で,いてもいなくてもいいような株主が出席できなかったからといって,総会決議が取り消されたのでは,いくらなんでも・・・。が,瑕疵の程度が大きければ,そうもいっていられない。そこで,決議無効・不存在確認の訴えの出番となる。


○決議無効,不存在確認の訴え(252条)
   確認訴訟
   瑕疵の程度が大きい
      →取消の訴えのような制限事項無し
         =誰でも,いつでも,訴え以外でも


○瑕疵の連鎖