啐啄同時

若手研究者を応援するオヤジ研究者の独白的な日記です。

「junkDNA」と「中立進化」

 ENCODEプロジェクトの成果は、大野乾博士が名付けた「junkDNA」(ジャンクDNA)があたかも大きく間違えていたような書きぶりもあり、この点はしっかり反論しておきたいと思います。
 大野博士の「junkDNA」の概念は、1970年の彼の本に挿絵とともに、転写してRNA産生することが明記されています。そのため、驚くべき先見性でもってRNAは産生されることを前提に、機能の重要性の薄さとして「junkDNA」が提唱されています。
 過去に、Sydney Brenner博士がいみじくも言ったように、「junkDNAはrubbishDNAではない」という言葉を思い出します。ハンバーガーやポテトチップのような食べ物をアメリカ英語で「junk foods」といい、高級ではないが食べることができます。一方、「rubbish」というのは本当のゴミで、一般にはたべられません。日本語では、同じように「がらくた」と表現するので、その区別は難しいものです。
 non-coding領域に、ncRNAやcis-elementのような制御領域があることは前から知られていました。その広範な存在は疑いのないところではありますが、junkDNAの概念まで変える必要があるかどうかが論点です。