掌/命

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今や飛ぶ鳥を落としそうな勢いのRINGO MUSUMEに乗っかる形なのか何なのか、姉妹ユニットの活動も活性化。ということで、リンゴミュージックが送り出す3つ目のアイドルユニット、ライスボールがCDデビューを果たした。
ダンス&ヴォーカル・ユニットとして成熟してきたRINGO MUSUME、その直系妹分として元気な少女像を打ち出しているアルプスおとめに対し、このライスボールは素朴で情感のこもった唄を聴かせるヴォーカルグループとして、方向性を定めた模様。ここに収録されている3曲は、いずれも生楽器中心のアレンジが効いたしんみりとした楽曲で、歌唱力が問われるものだが、それらを丁寧に歌い上げている。
曲名やジャケットに感じられる青春メロドラマ/演歌的なテイストが、個人的にはあざとさが鼻に付くというか、しみったれた感があるというか、中高年をターゲットにでもしていくのか?とか何かと疑問符が残るが、継続していけばグループ独自の色として認知されると思うので、せっかくだからこの路線を貫いて、正統派アイドルとは違う道を開けばいいのではないだろうか。

JAWAMEGI NIGHT!!

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この夏を彩るRINGO MUSUMEの新曲。トータル20枚目、多田慎也プロデュース体制になってからは5枚目のシングルとなるが、楽曲のインパクトとしては明らかに最大級のBOMBが撃ち込まれたといっていいだろう。以下、帯文を一部引用する。
令和初のシングルは、和とEDMを融合させたダンスナンバー!!カップリングは地元・弘前の特産品「嶽きみ」への愛を描いたシンセポップ(以下略)……とのことだが、実際にはそんな上品なものではない。
タイトル曲“JAWAMEGI NIGHT!!”は、EDMというよりむしろ一昔前のパラパラユーロビート色が強く、和テイストとの親和性は既にYOSAKOIなどで証明されている。とはいえ、こういうハイエナジーな曲調はここ最近のりんご娘に無かったので新鮮味十分。津軽弁も無理なく取り入れられていて、覚えやすく盛り上がれるメロディだが、Cメロにトリッキーな展開が用意されていて面白い。
カップリング“Kimi-Dake”のメロディはもろに“TT”(TWICE)調なのだが、音色に抑制が効いていて、ギリギリでK-POPのパクリという印象を逃れている。
下世話さを打ち出しながら若干ひねりを利かせているところに、作編曲陣のプロフェッショナルな仕事ぶりを感じる。また、2曲とも岩木山を楽曲の舞台にしているらしく、シングル作品としてのコンセプトも光る。唯一の不満はジャケットに載っているタイトルのフォントがありきたりでダサいこと(ジュリアナっぽさでも狙った?)。特に「RINGO MUSUME」はあのロゴで徹底させるべき。

YOHAKU ep

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バンドCreepsを休止させ、音楽活動から一時離れていた竹内晃が活動再開の第一歩として発表した5曲入りEP。全曲アコギ1本の弾き語りによる作品。
公式サイトにアップされたオフィシャルインタビューによると、作品のリリースに至るまで紆余曲折があったらしく、全曲を貫く静謐で寂しげなムードはそれらが自然に発露したものといえるだろう。
曲調は特にドラマチックな展開があるわけではなく、どれもシンプルなものだが、それを淡々と、時に力強く歌うことで、まるで様々な悲しみをグッとこらえているような様子として響き、感情を揺すぶられるものがある。装飾の無い生々しい音作りも、そんな表現を伝える上で効果的だったと思う。
正直なところ、どれもスローな歌(最後のスポークンワードの曲は除外して)ばかりなので、聴き進めながらアップテンポな曲を求めてしまう自分がいたのだけれど、それは来たるべきバンドCreeps復活の時に取っているのだろう……なんて期待したりして。

FOURs

FOURs

りんご娘サードアルバム、ていうかRINGO MUSUMEセカンドアルバムと言った方がいいかもしれない。つまり王林リーダー体制時代の第2弾アルバム。その王林がMASAKAの全国区ブレイクを果たし、注目が高まる中での作品。
前作からプロデュースに名を挙げた多田慎也が青森移住までして全ての楽曲を制作。既発シングル3曲を含めた全10曲。アルバム全体を通して、青森の四季を描いている。RINGO SISTERSなる面子によるボーナストラック入りではあるが、作品としてのトータリティは格段に向上している。
一方、多田氏が作曲を独りで行ったことのデメリットだろうか、それぞれの楽曲に持っている芸風を分けて出した印象があり、曲調のヴァリエーションとは裏腹に1曲毎のインパクトがやや弱め。
端的に言うと、前作における“Ringo Star”のような、アルバムの中心をなす曲が見当たらない。それを粒揃いと取るか、小粒ととるかは聞く人の判断に委ねる。(個人的には、前作でアクセントとなっていたAZUMA HITOMIによる楽曲が無くなったのは残念)
とはいえ、このクオリティを保ちながら作品を定期的にリリースできるようになったことは、賞賛すべきだろう。

BOOTLEG II TMBEP

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極東ロックのライヴ『極東NATION』で限定販売された、CDR「BOOTLEG」シリーズ第2弾。ブートレグとは言いつつも高野政所によるリミックス付きという豪華絢爛な5曲入り。
彼らにとって、ブートレグ扱いと正式リリースの違いは何なのか? もしかしたら下ネタの度合いによるのかもしれない。というわけで1曲目“玉袋がエンプティ”はストレートなエロワードが並ぶテクノ歌謡。2曲目“スーパー消防団”は、1曲目に比べると歌詞は少しだけオブラートに包まれているともいえるが、訛り全開の助平親父風に唄う下品なコミックソングだ。
前回の「BOOTLEG」同様、新曲とリミックス、説法という構成になっていて、オリジナル曲でイメージを汚した分をリミックスで補填する関係性が出来上がっているように思う。ということで、WACHA氏による”浅虫スーパーコンパニオン”のリミックスは、テクノDJとしての側面を発揮したものになっている。そして、高野政所氏による”スーパー消防団”リミックスは音のエッジの鋭さがさすがの出来であり、これをブートレグ扱いでいいの?とさえ思ってしまう。

RINGOSTARS

RINGOSTARS [ りんご娘 ]
りんご娘12年ぶりのセカンドアルバム。先行シングル“Ringo Star”から始まった著名クリエーター陣による楽曲提供、洗練されたヴィジュアルを得て、リリースへとこぎ付けた。
全10曲41分。シングル曲の他、配信限定で発表されたコージィニアス(=あべこうじ)プロデュースなどを含む既発曲が収録され、とき・王林体制に入って以降のりんご娘の歩みが総括されたものとなっている。
アルバムの為に新録された楽曲には、近年の矢野顕子作品にも関わりをもつテクノポップリエーター・AZUMA HITOMIが携わっており、新曲提供の他、過去曲“トレイン”を見事にブラッシュアップした。
ただし、こうなってくるとHASP〜リンゴミュージック・スタッフによる手作りの楽曲は、どうしても田舎臭さが際立つものに聴こえるのも確か。今後、この匂いを消す方向に向かうのか、融合させるのか、はたまた共存させるのか。方向性が問われる予感が漂ってくるアルバムである。

SHAKE!

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極東ロック公式シングル第2弾。前作“浅虫スーパーコンパニオン”同様、iTunesなどで世界数か国へ向けて配信されている。
作詞はWACHA、作曲は極東ロック全員による共作というクレジット。これまでにリリースされてきた楽曲は、ほとんどがDOKDOK総裁による下ネタ、地元ネタ中心のものであったが、この曲においては封印されている。直球の4分打ちビートに人懐っこいシンセフレーズ、さらに隠し味的にエレキギターが入るという、ライヴで踊るには最適と思われる正統派歌モノテクノ。
若干引っ掛かる点としては、WACHAさんと思われるヴォーカルの音が、微妙にフラットしているところ。そこが、個人的にはこの曲に突き抜けきれないもどかしさを感じる次第。
それは置いといて、DOKDOK総裁以外の極東ロックメンバーが、それぞれに個性や技を発揮した楽曲として価値があるといえる。今後もどんどん方向性を拡張していってほしい。