IGDA日本 SIG-Indie 第5回「ノベルゲーム制作実践テクニック」早狩武志発言メモ
全発言メモではありません。pptの柱立てと発言が混ざっています。
発言要旨しかメモを取っていませんので、実際の発言者の言葉と隔たりがあります。
早狩氏以外の方も全部聞きましたが、興味・関心の範疇から、ここだけ報告します。
なお、質疑応答の部分もオフレコといわれたところ以外で私の関心のあった部分だけメモ出しします。
13:30〜14:00「萌と鬱―PCゲームライターの一例―」早狩武志
企画もするシナリオライタ、ゲーム以外と兼業。
制作物紹介:『群青の空を超えて』デモムービーを流す。
○『群青』開発について
・制作規模:中規模と書いたのはペイラインが5000本程度との想定。大規模となると1万本以上。
・開発期間3年というのは本来大規模クラスの期間。しかし、CGとプログラムのみがlight内部要員で、シナリオ・原画が外注のため、この期間でもできた。シナリオと原画は期間に関わらないペイで、原稿量単価や枚数単価になるため、開発期間が延びても経費がそれほど増えない。
営業実績は「まあまあ」としか書けない。本当にいくら収益があったかは社長と会計担当者しか知らないところ。外注の立場の自分にはわからない。
・『群青』企画持込のきっかけ
light代表に会う機会があり、文章同人を持ち込んだ
経験上、企画持込の第1作は使用されないと考えよ。そもそも完成する力があるかどうかが重要視される。
・『群青』に関するこぼれ話
制作中、仮想戦記ものはたいてい実在の戦闘機名称などは多少改変するが、本作では「グリペン」を実名使用している。著作権の話が私の前にあったが、このあたり、実名使用でいいのだろうか……。まさかスウェーデンから文句言ってきたりしないだろう、などと考えながら作っていた。
VFBを作るとき、出版社の方から、SAAB日本法人に問い合わせしたところ、「どうぞどうぞ、どんどん宣伝してください。」と言われて胸をなでおろした。
なぜ仮想戦記ものか。関東V.S.関西で、関西に負ける関東が描きたかった。敗北の美学好き。
○ライタとしての立場
・企画から
・企画決定後
・テキストのみ
→これが多い。テキスト量は稼げるので金にはなる。エロシーンなどは他作品のコピペ&シャッフルするなどという話も。それを判定するツールを通されるという話も。
○商業の良いところ(萌)、悪いところ(鬱)
・萌
・文章が書ける
・楽しい
・感想が聞ける
→無反応が一番嫌
小説の感想はがきは、敷居が高いし、切手まで貼らないといけない場合もあり、ファンでないと送らない。はがきだけ見て面白かったと言われ勘違いする。
・自分の文章に絵・声・音楽を付けてもらえる喜び
・鬱
・原稿を書く義務が生じる
→仕事として
→(例)「あれ、俺なんでこんな絵指定しちゃったんだろう」と思いながらイベント絵に従った文章を書かなければならなくなるなどのことも
・叩かれる
→ブログの感想などはポジティブなものよりネガティブなものが多い。それに挫けない強い心のある人でないと書き続けられない。
・実力のなさを思い知る
・時間がなくなる
→ゲームだけでなく兼業なので、他のゲームはやれない。
→小説は、新人賞を取ったものは全部読むようにしている。
○モチベーションの保ち方
・書きたいことしか書かない
・黒い欲求を自覚する
→「面白かった」という感想は次回作へのモチベーションにはならない。
→何故有名になれないんだというコンプレックスや世の中への呪詛のこと。
・金銭はモチベーションにならない(これは個人的に)
・無理しない
→自分は40歳に近い
→坂がきつい(目標が高い)と萎えてしまう。
・諦めない
→やる気があり、力のある人が書くのをやめていくのを何人も見てきている。
→周りがみんな止めてしまえば、必然的に残るのは自分と考える
○結果として生じること
・萌であったこと(やりたかったこと)が鬱(やりたくないこと)に転化する
(例)楽しかった文章書き→書かないことが不安になる
「今月○KBしか書いていない」
物語らない人間がダメ人間に思えてくる
自分が遊びたいゲームをつくってくれないことが不愉快になってくる
基準が変わってきてしまう→自己コントロールの必要性
○経験則
・感想と意見の区別
→自分より上手な人の意見だけ聞く
・質より量(ゲームでの話)
→厳選した量を推敲して質を上げていくより、量を書いているうちに伸びる(個人的印象)
・欠点は直さない
→30点の欠点を70点にしようとして伸ばしているうちに、70点あった長所は磨いていないので60点に下がってしまう。総体で60点になっても、そんな平均点のものは全く評価されない。80点のものが1か所あり、それが120点になれば、それだけで売れる。また、長所を伸ばそうとしているうちに、欠点も引きずられるように上がっていくもの。個性は欠点として現れる。
・プロモーションは不要(シナリオライタに限る)
→みんな面白い作品を探している。面白ければ誰かが「これ面白いよ」と見つけてくれる。そうして宣伝してくれる人が現れる。
→プロモーションだけ凄くて、面白くないものをたくさん売ってしまうと、次に買ってくれなくなり、その業界が萎縮してしまう。(同人小説を意識しての発言)
・他人が諦めるまで書く
→自分は18歳から同人小説を書き始め、商業に載るまでに12年、30歳代になっていた。
・自分の経験則を見つける
→ここまで喋ったことはあくまで自分のこと。他人の方法論でしかない。これはその人固有のもので、自分には合わないと考えてほしい。人の方法論をまねるより自分の話を書いた方がいい。
→むしろ、他人の話を素直に聞く人は、作家に向いていないのではないかと思う。良い作家に会うたびに、人の話は聞かないし、何でこんな嫌な奴なんだろうと思うことの方が多い。嫌な奴でないといい作品が書けないのではないか。なので、他人のことはほとんど無駄と考えてください。
<質疑応答中の発言>
・(音楽の指定について)「僕がびっくりする曲を書いてください」と言う。ゲームのBGMということで、ループに使える平板な曲が多い。AメロがあってBメロがあって……とどんどん展開するものでもいい。
・(皆さんのやっているインプット、アウトプットは?)インプットはアウトプットの手段、あくまでアウトプットが目的。インプットに逃げ込まない。勉強のためだからといって小説読んでそれで満足というのはだめ。