「『何者かによる他殺』と書いても名誉毀損ではない」と言われて「『他殺』が認定された」と理解する恐るべき「市議」たち ※追記しました


6月12日午後4時10分ごろ、「東村山市民新聞」に〈「フォーラム21」裁判の歴史的意義〉と題する新規ページが登場しました(魚拓)。その後、トップページの「最終更新日」も6月13日付に修正され(午後5時過ぎ)、〈◎「フォーラム21」最高裁確定判決の歴史的意義〉という見出しが付け加えられています。新規ページの上半分はこれまで〈「変えよう!議会を 親創価に」〉に掲載されていたものと同じで、新たに加筆されたのは、次の小見出しがついた囲み記事のみです。


〈自分が「論破」されているのも無自覚!
 哀れ!見殺しにされた無許可の「コピペ屋」の無残
― ことごとく取り消された地裁判決に必死にすがるど素人の哀しさ ―〉


ここには次のように書かれています(太字は原文ママ)。

 つまり、先ず第一に最高裁確定判決が認定したのは、この対談記事は「朝木市議転落死事件が、新たに判明した事実によれば、何者かによる『他殺』であること」を記載したもので、この「朝木市議転落死事件は何者かによる『他殺』である」との記載事実は名誉毀損ではないとしたことです。
 次に、第二として、最高裁確定判決は「検察官の発言が『創価学会(信者)』が事件に関与した『疑い』が『否定できない』というものであること」(9頁14行以下)と認定し、「検察官発言」はなかったとか、「検察官発言」が客観的真実に反するというような認定は一切していないことです。
 これに対して、無許可の「コピペ屋」らが必死にすがりついている地裁判決は、どのように認定しているかというと、
「他に本件検察官発言を真実と認めるに足りる証拠はない」(21頁5行)と認定し、矢野議員が言及した「検察官発言」は真実ではない、としています。
 これらから明らかなように、最高裁確定判決が認定したのは、先ず第一に、「朝木市議転落死事件は何者かによる『他殺』である」こと、第二に、矢野議員の聞いた検察官発言は「『創価学会(信者)』が事件に関与した『疑い』が『否定できない』」というものであることです。


3段落目(「これに対して、・・・真実ではない、としています」)が余計なのでわかりにくくなっていますが、要するにこういうことです。


(A)東京高裁判決(PDFファイル)は、「朝木市議転落死事件は何者かによる『他殺』である」との記述は名誉毀損ではないと認定した。
   ↓
(a)東京高裁判決は「朝木市議転落死事件は何者かによる『他殺』である」と認定した。


(B)東京高裁判決は、「検察官発言」の存在や真実性を否定はしていない。
   ↓
(b)東京高裁判決は、「検察官発言」は「創価学会(信者)』が事件に関与した『疑い』が『否定できない』」というものであることを認定した。


ここに恐るべき論理の飛躍があることは、詳しく説明する必要もないでしょう。特に(A)→(a)については、わざわざ判決書を参照するまでもなく中学生でも理解できる、詭弁の見本みたいなものです(追記(B)→(b)については、とりあえずP2Cさんの〈『中学生でもわかる話』について〉を参照)。


というわけで、つっこみは後からゆっくり入れるとして、取り急ぎ報告だけしておきます。まだ6月12日午後6時半ごろで、私もいろいろやることが残っているものですから。


【追記1】


「ユ」の1文字で議論板の皆さんを悩殺した滑り子さんがそのまま退場してからしばらく経った午後10時22分ごろ、新規ページに次の記述が追加されていました。

100%のまじりっけのない「愚か者」=無許可の「コピペ屋」らは、名誉毀損性がないことを、何の証拠も根拠もなしに裁判所が判断すると思ってるようですね。
 名誉毀損性がない、という判断がでているだけで、もう思考停止です。
 ?・・・、なぜ、ここまで「無自覚」と『裸踊り』を続けられるんかしら???
 と思いましたが、まっ、実に理由は簡単なことでした。
 無許可の「コピペ屋」らには、判決書を読む力がなかったのです。まともに相手にしてあげて、時間の無駄でした。アッハッハ!


あらかじめ敗北宣言的捨て台詞をかましておくというわけですね、さすがです。まともに相手にしてあげるのは本当に時間の無駄だと私も思いますが、起きてから適当にやっておきます。


【追記2】
さて、ひと眠りしたので続きを書いておきます。その前に、今まで書いてきた主な関連記事は次の通り。


まず、新たに加筆された、「(批判者は)名誉毀損性がないことを、何の証拠も根拠もなしに裁判所が判断すると思ってるようですね」という点ですが、誰もそんなことは言っていません。「わら人形論法」(議論において対抗する者の意見を正しく引用せず、あるいは歪められた内容に基づいて反論するという誤った論法)炸裂ですね。


何度も書いているように、裁判所が名誉毀損性を否定したのは、『FORUM21』の記事が、「朝木市議転落死事件は、創価学会が朝木明代市議を殺害した『他殺』事件であるとの事実を、明示的にも黙示的にも摘示するものとはいえない」(=“創価が殺したとまでは言ってない/読み取ることはできない”)と判断したからです。東京高裁判決(PDFファイル)では、なぜか矢野「市議」らが無視し続ける「その余について判断するまでもなく、」(判決書10ページ)という文言から明らかなように、それ以外の争点については検討すらしていません。


次に、上記本文で書いた(A)→(a)(B)→(b)について。まず、


(A)東京高裁判決は、「朝木市議転落死事件は何者かによる『他殺』である」との記述は名誉毀損ではないと認定した。→(a)東京高裁判決は「朝木市議転落死事件は何者かによる『他殺』である」と認定した。


という点については、いちいち説明するまでもありません。4月20日付の記事でも書いたように、特定の個人・団体を名指しせずに「何者かによる『他殺』」だと騒ぐだけなら誰の社会的評価も低下させないのですから、名誉毀損が成立するわけがない。なた5963さんも指摘する通りです。


だからといって、(a)のような結論が導き出されるはずもない。幼稚にもほどがある論理の飛躍です。念のため、この点に関わる東京高裁判決の認定内容は次の通り(判決書9ページ、【 】は引用者=3羽の雀が付したもの)。

(4)そうすると、本件記事を一般読者の普通の注意と読み方を基準として、記事全体を通読した場合には、朝木市議転落死事件は、朝木明代市議の自殺であるとして捜査は終結されたが、その後新たに判明した事実によれば何者かによる「他殺」であること、今後は更なる真相究明とともに犯人検挙が望まれることを訴える趣旨であることは読み取れるけれども、本件記事が、特定の個人なり、団体なりを朝木市議を殺害した犯人であると断定するものであることまでは、到底読み取ることはできない。


もちろん、【 】内は本件座談会の趣旨を裁判所なりに要約したものであって、転落死事件が「他殺」であることを認定したものではありません。これも4月19日付の記事などでとっくに指摘済みです。


次に、


(B)東京高裁判決は、「検察官発言」の存在や真実性を否定はしていない。→(b)東京高裁判決は、「検察官発言」は「『創価学会(信者)』が事件に関与した『疑い』が『否定できない』」というものであることを認定した。


という点について。この点に関わる東京高裁判決の認定内容は次の通りです(判決書9ページ、太字は引用者=3羽の雀)。

(3)本件問題部分については、その内容が、控訴人矢野が別件で担当検察官と話していた際、たまたま創価学会代理人から架かってきた電話を聞いたというものであり、電話の相手である井田弁護士の発言を直接聞いたものでなく、検察官発言部分がどのようなやり取りの中でされたものであるかが明確でないことは、本件問題部分の文面から明らかであること、検察官発言部分に続いて井田弁護士がこのような会話があったことを否定している旨が記載されていることに加えて、問題とされている検察官の発言が「創価学会側(信者)が」事件に関与した「疑い」が「否定できない」というものであることに照らすと、本件問題部分を一般読者の普通の注意と読み方を基準として読んだ場合、創価学会が朝木明代市議を殺害したとの印象を持つことはないと認められる。


太字の部分は、矢野「市議」が現認したと主張する「検察官発言」が『FORUM21』の記事においてどのような形で公表されているかを確認したものに過ぎず、このような「検察官発言」が実際にあったことを認定したものではありません。むしろ、「検察官発言」の信憑性を疑わせるような要素、すなわち


*「電話の相手である井田弁護士の発言を直接聞いたものでなく、検察官発言部分がどのようなやり取りの中でされたものであるかが明確でない」こと
*「井田弁護士がこのような会話があったことを否定している」こと


――も『FORUM21』の記事にいちおう記載されていることから、一般読者は「創価学会が朝木明代市議を殺害したとの印象を持つことはない」として、名誉毀損性が否定されたものです。


それなのに、矢野「市議」らは次のように書いて、東京高裁があたかも「検察官発言」の真実性を認めたかのような情報操作を行なっているわけです。

次に、第二として、最高裁確定判決は「検察官の発言が『創価学会(信者)』が事件に関与した『疑い』が『否定できない』というものであること」(9頁14行以下)と認定し、「検察官発言」はなかったとか、「検察官発言」が客観的真実に反するというような認定は一切していないことです。


東京高裁判決が「『検察官発言』はなかったとか、『検察官発言』が客観的真実に反するというような認定は一切していない」のは事実です。しかし同時に、「検察官発言」が実際にあったとか、「検察官発言」は客観的真実に基づくものであるという認定も一切していません。「創価学会が朝木明代市議を殺害したとの印象を持つことはない」として名誉毀損性が否定された以上、この点に関わる判断を行なう必要はないのですから(「その余について判断するまでもなく、」〔判決書10ページ〕)、当然です。


したがって、「検察官発言」の真実性・相当性を否定した東京地裁の判断は、東京高裁によって追認されたわけではないけれども、覆されたわけでもありません。東京地裁によって「検察官発言」の真実性・相当性が否定された状況は変わっていないというわけです。


自分が「論破」されているのも無自覚!・・・〉に書かれている他の点については、とりあえず5月14日付〈なぜ「親創価匿名ネット族」と呼ぶのかという疑問には答えない矢野穂積「市議」〉を参照。


何より、『FORUM21』座談会裁判の控訴審判決をめぐる矢野・朝木両「市議」の対応が、本件判決の本質的意味を、そして両「市議」がそれを十分に理解していることを、明らかにしています。5月16日付の記事で経緯をまとめておきましたが、東京高裁判決が「東村山市民新聞」のサイトで公表されたのは、言い渡しから1年半以上、確定から約10カ月が経過した後のことでした。


今回の新規ページのタイトルにあるようにそれほどの「歴史的意義」がある判決なら、なぜさっさと公開しなかったのでしょうか。矢野「市議」らが「他殺」の決定的根拠になると思い込んだらしい第1次FMひがしむらやま事件の東京高裁判決は、言い渡し(2007年6月20日)からほとんど時期を置かず、2007年7月14日ごろには全文公開したというのに。


また、1月31日付〈東京高裁に“判決の誤読”を厳しく指摘された矢野・朝木両「市議」〉等でも指摘しているように、矢野・朝木両「市議」はこれまで、『潮』事件判決『月刊タイムス』事件判決第1次FMひがしむらやま事件判決の3つを「他殺」の決定的根拠として宣伝してきました。紙版「東村山市民新聞」でも〈★「潮」「タイムス」「千葉副署長」判決で、他殺がはっきりした朝木議員殺害事件。犯人逮捕へ御協力を。〉などと書き続けているわけですが、『FORUM21』座談会裁判の控訴審判決がそれほどの「歴史的意義」を持つものなら、なぜそれもこのリストに加えなかったのでしょうか。


そろそろ、東京高裁判決の確定(2008年6月17日)から1年が経ちます。今さら〈「フォーラム21」裁判の歴史的意義〉などと騒いでも、そんなのを真に受けるのは、「判決書を読む力」どころかその意思すらない、「邪(よこしま)教」の信者ぐらいなものでしょう。