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2015年10月13日(Tue)

条例審査ガール ep-55 条例審査ガール ep-55を含むブックマーク 条例審査ガール ep-55のブックマークコメント

「簡単に言えば、基礎自治体が行う空家防犯対策は、どこまで効果が出るかは不明だが、条例上の規定が一切無くとも可能ではないのか。逆に言えば、条例上の根拠が無ければ出来ないことはあるのか?」

「立入調査とか?」

「立ち入ってどうする?そこに何らかの犯罪を起こした、あるいは起こしうる犯人がいて、現行犯逮捕でもするか?現行犯逮捕なら何人でも可能であるし、理想かもしれない。しかし、全ての空家に定期的に立ち入ることは不可能だろうし、何を動機にして立ち入るか否かを決定する?そもそも空家特別措置法では、立入調査規定は犯罪のためのものではないと明記している。」

「代執行とか?」

「除却してどうする?犯罪予防のための除却ということであれば、状態にかかわらず、全ての空家を除却する必要があるのではないか?」

「除却ではなく修繕や保全…、は関係ないか。あくまでも一時的だし…。」

「結局、ただでさえ仕事が増えヒト・カネが減っている基礎自治体行政力では限界があろう。防犯対策は本来的には警察行政の分野だ。基礎自治体としては地域警察と連携を取るのが現実的ではないか。」

「でも、連携の元ネタがないんじゃ?」

「目的にかかわらず、空家であるのか否かの調査、空家である場合の情報把握は法律上可能であるし、目的にかかわらず実施する必要がある。9条1項だな。そして空家である場合はそれ情報を周辺住民や地域警察に情報提供するしかないだろう。」

「情報提供?さっき、意味がないとか、リスクもあるって…」

「一般的に、制裁目的の公表とか、制裁目的ではない単なる情報提供などは、誰でも閲覧できるような方法で行われることが多い。告示や公告、ホームページ掲載などでな。そういう方法ではなく、空家に利害を有する者のみに限定的に情報提供をするしかなかろう。さっき言っただろう?『客観的に見て使用されていないと思われるような建築物が存在していた場合、やはり気にはなる』と?空家が存在して不安になるのはその地域に住む住民なのであって、全市民に周知する意味は無かろう。」

「えーっと、まとめると、防犯目的は条例では規定する意味がないとしつつ、防犯目的のために法律を使う、と。ちょっと矛盾しているようにも思えますが。」

「矛盾などしていない。空家対策として得た情報の一部を防犯対策にも活用するということだ。」

「そうすると個人情報の問題が出てくるから、やはり条例上情報提供の根拠規定を置くべきではないかと?」

「空家の所有者情報を情報提供して何の意味がある?『あの建築物は空家です。何かあればご相談してください』ということを情報提供するだけだろう。それのみで個人を特定できるのか?」

「しかし、プライバシーの問題があるんじゃ…。」

 フジはやや笑みを浮かべる。

「ふむ、確かにその通りかもしれない。個人情報とプライバシーとは、重複する部分もあるが別の概念だ。個人情報保護上の問題が無くとも、プライバシー保護の観点から問題が生じることはありうる。建築物をどのように使うのかはその所有者の自由であることを考慮すれば、空家であるという事実もまたその所有者のプライバシーの範囲内ともいえなくもない。空家であることを隠しておいてもらいたいと思う人もいないではなかろう。一方で、空家であること、あるいは空家であるかもしれないことについて不安を覚える住民も多い。では、どうすれば丸く収まると考える?」

 そういえば、以前、『空家対策特措法において『特定空家等』という用語は、実はあまり登場しない。強制措置を定める14条においてこそ多用されているが、その他の規定にはほとんど出てこない。そこがポイント』だと言っていたことを思い出した。

「防犯目的にとどまらず、空家情報をその利害関係人へ情報提供できる根拠規定を置く…?」

「防犯目的という概念を無理して入れるから条例がややこしくなる。基礎自治体にとっての空家防犯は、『空家条例上の目的』ではなく、空家法制に基づき確実に空家対策、すなわち、予防・活用・除却を進めれば結果的、あるいは必然的に生じうる効果、として位置づけるべきなのではないか。よって、そうする場合はどうする?」

「第1条の目的規定における最上位の目的として位置づける…?」

2015年09月24日(Thu)

条例審査ガール ep-54 条例審査ガール ep-54を含むブックマーク 条例審査ガール ep-54のブックマークコメント

「これは特措法にはない防犯目的を加えているということですよね。」

「そういうことのようだ。確かにこのように空家条例において防犯目的を追加して規定している例はある。空家であれば、犯罪の温床にもなりうるし、放火された場合に通報や初期消火が遅れる可能性もある。そういう意味では防犯目的を意図することは適切であろう。」

「じゃ、なぜ特措法では規定されなかったんですかね?」

「この法律は議員立法なんだが、衆議院法制局の職員が書いたレポートでは、防犯を直接の目的としなかったのは防犯は警察活動による治安対策として行うのが適切であると考えたかららしい。空家対策ではなく、そもそもの治安対策だろうということなんだろう。」

「それはそれで分かるような気もしますね。」

「仮に防犯目的として空家対策を行う場合、どのような管理を所有者等に求めるのか。門扉をしっかりと閉めておけば足りるのか。」

「門扉を閉めたとしても、無断立ち入りはある程度減るかもしれないけど、放火はなくならないんじゃ…。」

「基本的なことだが、適切に管理をしてさえすれば、仮に使用されなくとも、問題のある空家、つまり特定空家等ではない。特措法において空家等から特定空家にレベルアップする4要件は、すべて適切な管理がなされていないことを前提としている。一方、防犯は、適切な管理をしていても生じうる。第三者、すなわち犯罪者の行為が介在するからな。この差は大きいように思える。」

 防犯目的を加えることを理解した際に感じた違和感はこれであった。特措法の強制措置は適切な管理がなされていない空屋のうち一定の基準を超えるものを対象にしている一方、この条例案は空家そのものを対象にしているようにも思える。

「適切な管理をしていても、倒壊等は起こりえるのでは…。」

「倒壊等を惹起するような管理が果たして適切な管理といえるのか。なお、よく問題となるゴミ屋敷対策の条例も存在するが、これは空家条例とは、重複する点もあるが、本質的には異なると考えている。つまり、ゴミ屋敷条例はゴミの除去を目的とし、その家屋の使用・不使用は問わない。一方、空家条例は、その家屋の使用・不使用及び管理が適正か否かを問題としている。だから仮にゴミ屋敷であっても実際に使用されていれば空家ではないため、その家屋は空家条例の対象とはならない。」

 フジは続ける。

「この条例案は『空家であること自体』を禁止しているように思える。空家であること故に起因する防犯目的を達成するためには、極論すれば、空家を無くすしかない。なぜならば、空家であれば防犯上の問題が生じうるということを前提としているからな。防犯上の問題が生じ得ない空家と生じうる空家の基準でもあれば別だが。当然のこと、そして基幹的なことだが、建築物の所有者がそれをどの程度使用するか、あるいは使用しないか否かは、当然所有者の自由だ。そして、その不使用あるいは不適切管理により周囲に悪影響を及ぼしうる状態になってはじめて具体的な法規制の対象となるということなのだろう。その証拠に、特措法においては『空家等把握調査』は空家等を対象としているが、より強い『立入調査』は『特定空家等』対策のみを対象としている*1。」

 そのような基準や統計はあるのだろうか。見た目は立派な空家だから放火されないとか、朽ち果てる寸前の空家だから放火されやすいとかいう統計などが存在するのか。感覚的には理解できるかもしれないが。また、仮にあったとしても、この条例に防犯目的を加えることが適切なのだろうか。

「また条例案のいう『空家の活用』とは何を意図しているのか、だ。」

「そりゃ、居住者を探したり、一時宿泊施設として、とかでは?」

「探している間に放火されたらどうする?すぐには居住者などが見つかるとは思えない。」

「うーん、道路の街灯を多くしたり、明るくしたりすれば…。」

「であるならば、やはりそれは空家対策ではなく治安対策だということだ。空家の周りのみ街灯を多くするわけにはいかないだろう。付け加えれば、この条例案には公表規定が存在する。趣旨は制裁措置なのだろうが、防犯目的を加えておきながら空家の具体的場所を公開するとどうなる?」

「うーん…」

「犯罪者にとって有益な情報ではないか?」

「まぁ、行政のお墨付きですからねぇ。」

「それを上回る効果が想定されるのであればいいが。」

「それはワタシも考えてました。制裁としての意味はないんじゃないかって。だって、周辺住民は空家の所有者の情報は知っていることも多いだろうし、仮に知らずとも、その所有者の情報を知ったところで何の意味もないし。」

「そうかもしれない。所有者としては、一旦氏名を公表されればその空家に戻りにくかろう。逆に開き直られることも想定される。」

 制裁的機能はない、ということは、情報提供としての効果はあるのだろうか。この情報提供的な公表をうまく使えば、防犯目的というものを条例の前面に出す必要はないのではないか…。

「さて、話は戻るが、空家条例と防犯とはなかなか結びつきにくいが、一般的な感覚からして、客観的に見て使用されていないと思われるような建築物が存在していた場合、やはり気にはなるのではないか?」

「そうですねー。この建物ってどうなんだろう、とか。誰か潜んでいるんじゃないか、とは思ってしまいますね。」

「そう感じるのが一般的であろう。だから、空家問題と防犯問題とは無関係ではない。」

「じゃ、条例に入れた方がいいと?」

「無関係ではないから条例で明記すべきとは、必ずしもならない。」

*1:特措法9条

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