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midnight in a perfect world このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-04-16

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超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト」を読む。

期待していただけに、余りの内容の酷さに笑う。「リアル鬼ごっこ」を彷彿とさせる文章力の低さと、雰囲気だけ最先端な感じの単語をソーカル論文のように並べたてた、この本自体が学習量の足りないAIで書かれたんじゃないかと思うほどの出来。

ちりばめられた単語をもとに言ってることを何とか要約すると、佐藤 航陽氏の「お金2.0」とほとんど変わらないんだけど(こちらの方が100倍分かりやすく、読みやすい)、とにかく人に伝えようと言う気がさらさら感じない、行ったりきたりの蛇行運転のような文章で酔いそうになる。薄い一般書だし別に論文じゃないから単語の定義をきちんと決めて論を進めるという形式を取る必要はないかもしれないが、これだけバズワードのような底の抜けた言葉を使って論を構築しようとしても理解しづらいし、彼自身も読者に理解してほしいというよりも、そういう単語を振りかざす自分に酔ってるんだろうなぁ、そして周囲もそれを褒めたたえるんだろうなぁと悲しくなってしまった。

全編を通して、「共同幻想脱構築された今、ビジョンはカリスマの手を離れ、個人個人が別のビジョンを持つことを求められている。今、私たちに必要なのは、信じるに足るパラダイムやフレームであり、各自の幸福論やビジョンを追求する、生き方を求められている」みたいな文章がずっと続くんだけど、この文中で使われる「共同幻想」「脱構築」「カリスマ」「パラダイム」みたいな言葉って人によって想起するイメージがかなりバラつくと思うんだけど、一切の補助線なしでガンガンこういう言葉を使うのでめちゃくちゃ読みにくい。「共同幻想」は俺にとっては吉本隆明を思い出すし、「脱構築」はデリダを思い出すんだけど、彼らの思考をなぞったりとかは本書の中では一切ない。

後は、ルー大柴的な、やたらとカタカナ言葉を多用する辺りもギャグのようで痛々しい。例えばギャンブルのことを、「もっとクリエイティブに人間のこの性質をハックしたい」とか書いてるけど、ちょっと吹き出しそうになる。

さらにひどいのは誤字というか日本語として破城している部分も多々あり、例えば、「全員が全員、同じ目標に向かって走ることができないので、ソフトウェアだったら走れるけれど、ハードウェア、もしくは、ニッチサービスだとそれは無理なので、ニッチに分けた方が正しい。」という文章。これ、原文ママだけど、何が言いたいか分かる人いるんだろうか?

冒頭に「丁寧に論じたつもりだ」とか書いてあるけど、ケンコバよろしく「正気ですか?」と問いたくなる。多義的な言葉には註をつけてもいいし、参考文献や引用文献、引用データを載せるとか、彼自身が何度も本書内で強調する「研究者」であるならいくらでも丁寧に論じる手段はあるが、本書にはこれらは何もない。彼は学会で発表する論文でもこの調子なのだろうか?

極めつけにがっかりしたのがこの一文。「そもそも遊びはコンテクストを理解しているほうが楽しい。たとえば、オペラ鑑賞をするにしても、事前学習をしないと意味が分からないし、アーティストのライブでも、事前に音楽を聴いてから行った方が楽しめる」彼自身「アーティスト」としての肩書でアートを創造する活動をしているはずなのに、音楽や演劇の持つその場限りの未知なるものに揺さぶられる感覚、固く言うと「アウラ」を体感したことがないのだろうなと思ってしまった。

彼の「作品」は文章や論文で楽しむのでなく、純粋にメディアアート作品だけ楽しもうかなと思ってしまった。今年読んだ本ではぶっちぎりのワースト。

[] 19:56 を含むブックマーク のブックマークコメント

「勉強の哲学 来たるべきバカのために」を読む。

去年出て東大生にめちゃ評判だったという、勉強論についてまとめた本。いわゆる勉強メソッドについてはほとんど終わりの方でしか触れないので、ハウトゥを求めて本書を読むと肩透かしを食うかも。自分の経験と照らし合わせてもかなり納得感ある内容で面白かった。筋トレと勉強を「自己破壊して成長する」という点で接続する辺りは感動した。

一般書ではあるけれど、内容はかなり論文調で丁寧に論じられており、「勉強ができるようになるためには、変身が必要だ。勉強とは、かつての自分を失うことである。深い勉強とは、恐るべき変身に身を投じることであり、それは恐るべき快楽に身を浸すことである。そして何か新しい生き方を求めるときが、勉強に取り組む最高のチャンスとなる。」という紹介フレーズに誤りはない。ただ、その過程をきちんと言葉の意味を定義しながら読者を誘導する。背景にあるのはソシュールヴィトゲンシュタイン言語哲学ドゥルーズロラン・バルトなどのフランス現代思想だが、あまり難解な言い回しはせず、その思考のエッセンスをかみ砕いて勉強するってこういうことだよね、という説明のみに終始していて無学でも全然読める。そして、きちんと専門知識のある人向けに補論として彼らの思考をどのように料理したかを紹介しており、一粒で2度おいしい内容となっている。

後、実践的な勉強メソッドについては「どの分野でもまずは入門書から読め」とか具体的なレベルで参考になるんだけど、お助けアプリ(outlinerとかevernote)の紹介があってかなり気になった。GTDメソッドを知った時もそうだったけど、今後自分の気になる人が使ってるアプリは積極的に取り入れて、彼らの思考のトレースをしていきたいと思う。

最後に関係ないけど、文体こそ柔らかいもののかなりきちんと哲学の素養を身につけた構築的な文章から受ける印象が、以前から著者自身に抱いていた「何かネトウヨに詳しくてよく論争してる人」みたいな印象と合わないなぁと思ったら古谷経衡と混同してることに気づいた。見た目似すぎだろ…

2018-04-14

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bob james「TWO」を聴く。

ずっと欲しかったLPサンプリングネタとしてお馴染な「TAKE ME TO THE MARDI GRAS」とか、メロウで気だるげなヴォーカルもの「I FEEL A SONG」とか、柔らかいローズピアノの音が印象的な「YOU'RE AS RIGHT AS RAIN」とか好きな曲多いんだけど、何といっても痺れるのが「THE GOLDEN APPLE」。70年代のブラックムーヴィーのサントラのようなスリリングなホーン、疾走感溢れるドラム、むせび泣くようなギターソロ、緩急のはっきりしたドラマチックな展開など最高すぎる。正直bob jamesのプレイヤーとしての見せ場は少ないんだけど、この曲と、別アルバム収録だけどmoodymannshade of joe」ネタの「SPUNKY」はbob jamesの2大巨塔。ちなみにこの曲は、SIMI LABの「show off」で使われてて改めてこの曲の魅力に気が付いて、こういうベルボトムとか似合いそうなDJしたいなーと思っている今日この頃。

D

2018-04-12

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TIMBALAND & MAGOO/IN」を聴く。

2LPを格安で購入。一昔前のアルバムだし、正直TIMBALANDの全盛期から言っても後期に当たるけど、同時期のhip hopとも毛色が違う、ティンバ節が随所に香る実験的なリズムに溢れた面白いアルバム。個人的にも大好きなAaliyahの最後の録音を収録していて(正直、地味だけど)価値高いアルバム。

どの曲もいわゆるbpm90前後のhip hopとはかけ離れた、どちらかというとfuture funkといったタイトな曲が多く、全く飽きない。正直言って一昔前まではtimbaのビートって「チキチキビート」と形容されたように、ファンキーさの要めである土臭さとかケムさが皆無で全然好きじゃなかったんだけど、近年になって彼の仕事の特異さを十分に噛みしめてる気がする。上記の代わりに、タイトさというかイビツさやつんのめったリズム感が強調されていて、耳に引っ掛かる。Aaliyahやmissy ellitotの全面プロデュースをやっていた2000年代前半よりは若干見劣りするけど、カッコいい曲が目白押し。

特にアルバム中でもトップクラスにカッコいい曲。まるで現代のjames brownのような隙間感。

D

2018-04-09

[] 20:48 を含むブックマーク のブックマークコメント

「観察の練習」を読む。

「目の見えないアスリートの身体論」がすごく面白かった伊藤亜紗氏と交流がある人で、cakesでも紹介されていた(https://cakes.mu/posts/19151)の著書ということで読んでみた。内容は、東京の何気ない景色の写真をまず映し、それを観察して何を得られるかを問うというもの。うん、本人も認めている通り、良くも悪くもVowっぽい感じ。悪く言うと木村祐一の「写術」っぽい。もう少し社会性とか事象の背景を掘り下げると都築響一っぽい感じが出ると思うんだけど…。装丁フォント、問いと回答という構成などは凄く拘ってると思うんだけど、ちょっと本書だと内容の割りに高いかなという感じ。30分くらいで読めるし。

ただ、写真は確かにきちんとしたロジックを基にセレクトされていて、面白いなぁと感じた。特に面白かったのが、駅構内の何気ない配管を赤と黄色で着色すると、途端にマヨネーズマスタードが流れてるようにしか見えなくなるというもの。言われてみるとホントそうとしか見えなくなって、自分の脳の錯覚具合もきちんと機能してるんだなぁと感心した。後、コンビニのコーヒーメーカーのサイズが「普通」と「大」という二択の表記しかなく、後付けで「普通」の方に「小」と言う張り紙を張っていた写真。SIMI LABOの「UNCOMMON」じゃないけど、「普通って何?」という疑問に溢れるデザインだ。「小」と表記すると売れないと考えたんだろうか?こんな感じで人間の認知能力に揺さぶりをかける面白い写真が楽しめました。

2018-04-08

[] 19:13 を含むブックマーク のブックマークコメント

「騙し絵の牙」を読む。

大泉洋のアテガキ作品ということで話題になっていた一冊。大手出版社の40代半ばの雑誌編集長を主人公として、電子出版や図書館メディアミックスみたいな問題を抱える斜陽産業である出版業界を舞台に、魑魅魍魎とバトルしながら何とか自分の雑誌の廃刊を阻止し、文芸の面白さを伝えようと頑張るというお話。「東京フールズゴールド」の出版業界版という感じで、テンポよく進む物語で楽しめた。さすがアテガキというだけあって、脳内での洋ちゃん再現度がめちゃくちゃ高く、邦画を観ているような変な感覚で読めた。モノマネで修羅場を乗り切ったり、軽いトークで場を和ます感じは実際笑えるし超本人っぽい。癖のある登場人物たちも脳内で勝手に配役が決まって話し始める始末だった。個人的には、相沢局長は香川照之、奥さんは宮沢りえ、高野は蒼井優辺りを連想して読んでた。

出版業界の暴露本としても面白く、営業と編集の関係、作家と編集の関係だったり、広告や予算のつけ方、「配本リストの作成」「実倍率6割」みたいな業界用語も出てきて、他人の職場を覗き見してる感覚を味わえた。

ただ、タイトルの意味が結末で分かる内容になってるんだけど、そこまで胸をすかれるというか「騙された」感がなかったのはちょっと残念。エピローグに差し掛かるまで、随分悲惨な物語だったなぁと思ったら急に大逆転を決めるんだけど、前フリとかもほとんどないので、正直とってつけたような感じがしなくもない。「英語の勉強してた」ってのはあったけど。