「箱入り息子の恋」を観る。

なかなか中盤くらいまで楽しめた。でも、消化不良だしラストはちょっとひどいと思う。全体的なテンポも悪い。35歳童貞の冴えない市役所員が視覚障害のある女性と知り合い、お見合いし、お互いに惹かれていくというお話。映画初主演の星野源夏帆はともにいい仕事してると思う。
少しずつ変わっていく主人公に中盤くらいまで(夏帆とキスにこぎつけるあたり位)共感し、物語に導いてくれるんだけど、視覚障害を持つ人と(一応)健常者の恋の困難さを描けていないのはとても残念。何より、主演の二人が一度も衝突しないのが気持ち悪い。セックスまではするものの、お互いの嫌なところを何一つ見つけられることなく、幸せに物語が終わってしまう。要するに、男女関係の酸いも甘いも描かれない(あ、甘いは描かれるか)。「僕には障害はありませんが、たくさん欠点があります。こんな見かけだし、人の目を見て離せないし…」というお見合いでのセリフは、健常者か障碍者かではなく、人間みなできることとできないことがあるのだ、と言っていてすごく共感できたのだけど、もっと二人の生々しいエグさやいやらしさを描いてほしかった。そうすればもっと深みが出ると思うんだけどな。終盤に行くにつれて色々な描写がリアリティがなくなっていき、いわゆる「日本のドラマ的」な臭い演出になってしまったのも残念(職場を飛び出し、絶叫しながら全力疾走する主人公、みたいな)。そして、人間的な成長を遂げたと思いきや、最後の最後主人公が成し遂げるのが「夜這い」というのもどうなの?という感じ。35歳にもなって、これじゃ応援してくれてた相手のお母さんだってかばい切れないでしょ…。ただ、夏帆にしかわからないカエルの鳴き真似で合図するというアイデアは良かった。
まぁそういう道徳的な価値判断と作品評価は別だとは思うけど、興ざめしたのは確か。後、浮気していた夏帆の父親のエピソードが結局語られずじまいなのもマイナスだし、夏帆を責めていた星野源の母親がどうやって交際に納得したのかも説明不足。もうちょっと描き方次第でより楽しくできたんじゃないかと思う。