「潜行」を読む。

潜行~地下アイドルの人に言えない生活

潜行~地下アイドルの人に言えない生活

姫乃たま氏を知ったのは去年くらいだろうか。多分鎖レコードのダースレイダーと一緒にイベントの司会やってたりしたのが最初だったような気がする。その後も知り合いのカメラマンさんと一緒に仕事してたり、サブカル界隈で名前を目にすることが多くなってきて、実は先日初めて「アイドル」のイベントと言ってもよい、同じくSF好きで気になっていた西田藍氏との対談会に顔を出してみた。正直言って知らないクラブに一人で行くより緊張したが、会場が下北沢にあるビールが飲めるおしゃれな本屋という雰囲気もあり和やかな雰囲気でとても楽しめた。最近は文章仕事も多いみたいだし、映画や音楽の造詣や人脈が深かったりと、恐らく彼女はこのままサブカルアイドルとして、しまおまほとか篠原ともえみたいに歳を重ねていくんじゃないかなーと勝手に予想。今後もチェックしていきたいし、気になるアイドルが出来た。
実はイベント参加時点で本書を未読だったのだが、今回読んでみた。まさに潜行というタイトルが似合うというか、形式としては水道橋博士が書いた「藝人春秋」的な、変な社会に生きる変な人を徹底的に観察し続けて本にしてみました、的な面白さがある。正直に言って地下アイドルと言われても顔と名前が出てくる人がほぼいないほどアイドル音痴なので(自分のアンテナだと、吉田豪氏やライムスター宇多丸氏あたりからじゃないと情報が入ってこない)、異世界感が面白い一方で、比較したらおこがましいかもしれないけど、東京の小箱DJシーンと比較したりすると共感できるところも多く、楽しめた。あとは、どうしても若い女性の性を扱うという点で荻上チキ氏のルポを読んでいるようなスリルもあった。かといって、変にこじらせてフェミニズムの言葉とかアカデミックな匂いを出さず、自分の言葉で語っている感じの文体なのもポイント高い。大学ではメディアについて学んでいたみたいだし、多分彼女はある程度その辺りの教養も持ってそうだけど。
あと、全然別の驚きとして、本書では彼女自身の個人史を語ることで地下アイドルの世界を描き出す章があるのだが、彼女がデビューしたのが16歳で09年というのがビビった。自分が今の会社に入社したのと同じ年であり、自分としてはほんのこないだのように感じてしまう年である。それからわずか7年の間で、一高校生だった彼女が地下アイドルの激動の時代を体感し、社会について学び、現在の地位を確立したのだ。確かに自分自身だった同じ年月寝て過ごしたわけじゃないし、それなりに仕事でやっていけるだけのスキルや経験を積んだのは変わらないのだが、自分の過ごしてきた時間と全く違う彼女の言葉を読んでいて、彼女のようにほんとに自分らしく胸張って生きてきたか、と考えて複雑な気持ちになってしまった。「棒があっても高飛びしないで、自分らしくリンボー・ダンスでくぐって」という彼女の言葉がとても刺さった。