「パスタでたどるイタリア史」を読む。

著者はもともとヨーロッパの中世・ルネサンス史を研究する人のようだが、パスタを切り口にイタリアの動乱や統一といった歴史や現代の文化に至るまでを包括的に語ろうという野心作。冒頭には家庭的なイタリア料理の写真が並び食欲をそそられるし、歴史的なウンチクと美味しそうな筆致をどちらも楽しめる本。
イタリアが国家として統一したのが他の欧米諸国よりも比較的遅い(歴史が短い)19世紀であるというのは以前から世界史の勉強などを通して知っていたけど、統一の過程をパスタを軸に語るというのはなかなかないと思うし初めて知ることも多くて面白かった。ナポリ南イタリアを中心として地方色の強いパスタを全国区に押し上げていった話とか、19世紀に入るくらいまでパスタを腹いっぱい食べれることが庶民からしたら何だかんだいって贅沢で、「クッカーニャの国」というユートピアにその姿が描かれていたとか、そもそも庶民派パスタを手食していたとか、アルデンテなんていう食べ方が定着したのは近年で、昔は数時間も煮込んでいたとか、そういうトリビア。料理人自身の意志を持ってイタリア料理のレシピを目とまとめ上げてレぺゼンしたり、それに対して地方が反発して地方オリジナルなレシピをレぺゼンしたりというようなエネルギッシュなやり取りあったらしいとか、海外の世界の未来派の連中がパスタを前時代的としてディスったけど結局世界中にパスタ食広がってんじゃん、みたいな話とか。
読んだ後に実際再現したいレシピがあるかというとそうでもないんだけども、今日常的に食べる食材のルーツを知れた感じがしてためになった。