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2011-04-21

ライ麦畑でつかまえて

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて
J.D.サリンジャー著/野崎孝

 この小説に出会ったのは、1984年、高校2年生の時でした。まさに時代は変われど、この物語の主人公 ホールデン・コールフィールドと同じ歳でした。この小説は、1951年アメリカで出版された作品ですが、未だに根強いファンがいる不朽の名作です。
 読み始めた時は、言いまわしと悪態のつき方が鼻につく感じがしたような気がしますが、読み進めると、ホールデンの口調にはまってしまって、自分の思考までホールデン口調になってしまうのです。その理由は、きっとサリンジャー小説家としての力量と、野崎孝氏の訳のうまさ*1だと思うのですが、愛すべきホールデンはその口調と共に我々の心の中に生き続けることになります。
 この小説の後半に、こんなシーンがあります。全寮制の高校を退学になって、ひとり寮を飛びだしたホールデンは、両親がパーティーで留守の間に、こっそり自宅に忍び込みます。そこで久しぶりに再会した10才の妹フィービーから、こんな質問を投げかけられます。
「兄さんは世の中に起こることが何もかもいやなんでしょ」
困りはてたホールデンは、そうじゃないことを解らせるために、好きなことを挙げようとします。幼くして亡くなった弟のアリーのことや、今こうしているようなフィービーと他愛のない会話を楽しむこと。でも、フィービーは「そんなの、実際のものじゃないじゃない!」と言って、取りあってくれません。そこでフィービーは、代わりに「なりたいものを言って」と質問を変えます。その答えとして、ホールデンが言ったことが、小説のタイトル『ライ麦畑の捕まえ役(The Catcher in the Rye)』となっています。これを『ライ麦畑でつかまえて』と訳すセンスには、脱帽です。このタイトルがなかったら、日本での認知度も違っていたかもしれません。

 ざっと、好きな小説『ライ麦畑でつかまえて』について、思いつくままに書いてみました。これから自分自身への癒しの意味も込めて、このフィービーの最初の質問に少しずつ答えていこうと思います。「そんなの、実際のものじゃないじゃない!」って、怒られてしまうかもしれませんが(笑)。

・2003年に発売された村上春樹の新訳本

キャッチャー・イン・ザ・ライ

キャッチャー・イン・ザ・ライ

*1:2003年に村上春樹氏による訳も発表されましたが、個人的には野崎ホールデンを越えられなかったと思っています。