Hatena::ブログ(Diary)

地域が連携し「住みたい都市」をプロデュースする

2016-09-27

『進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来』

マット・リドレー著(大田直子ら訳)、早川書房2016.9.25刊。原題は「THE EVOLUTION OF EVERYTHING」、その副題は「How New Ideas Emerge」。
サイエンス・ライターの著者が、「世の中のすべてのことを、すべてボトムアップ的にできたのだと言い切ってみよう」と挑んだ書。第1章の「宇宙の進化」からはじまり、道徳、生物、遺伝子、文化、経済、テクノロジー、心、人格、教育、人口、リーダーシップ、政府、宗教、通貨インターネットの進化が次々に取り上げられます。結局、広い意味でのイノベーションは1つ1つ、起こるべくして起こる。それは政府や誰かの意図やデイザインにもとづいて起こるのではなく、ごく自然に(進化的に)起こる、ということを、広範な分野の成果を薄く広くながめて論じています。

実はこの春学期の大学院講義『市街地創造論』において市街地の変化や創造を「進化」ととらえて議論した際、本ブログを「進化」で検索するとかなりの件数がヒットすることを発見??しました。それは本ブログがスタートして4日後の2011.5.20に地域のイベントの進化としてあらわれ、2011.9.6に都市計画家石川栄耀の都市計画観と関連して議論し、2011.11.8の「3.11」からの集落復興についてそう表現したのが最初の3つでした。(本記事含め58件)
本書で都市の進化そのものを議論しているのは第5章「文化の進化」においてですが、その分量は多くはありません。むしろ、すべての章を通して「進化」というものがどういうことか、「進化」という切り口では難しいと考えられてきたことが最近の成果によりどこまで進化的に理解可能になったか、自分が行おうとしていることは「進化」の目で一歩引いてながめるとどういうことかなどを考える手掛かりや刺激がたくさん盛り込まれている楽しい図書です。

2016-09-26

「地域創造論」が本年度もスタート(10月3日より)

大学院科目「地域創造論」を10月3日にスタートします。
地域創造論2016予定.pdf 直
本年度は昨年度から継続中のテーマ「ローカルからの発想が日本を変える、世界を変える。」の2年目です。今回は特に、新しい<生産>と<消費>の連関の可能性、地域文化や観光のこれからなどに光を当てます。

[関連情報]
・『地域創造論 ポスト3.11の新しい地域像』
2012-14年度のテーマ「ポスト3.11の新しい地域像」をまとめたテキスト。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150330/1427692708
・大学院副専攻プログラム(地域創造科目)シラバス
2016年度版です。「地域創造論」は副専攻プログラムのコア科目。
http://www.webline.jp/info/chiki-ct.ynu.ac.jp/info_js/data/1459761845swhmx.html
・「地域創造論」ブログ
4年前の本科目スタート時から各回の様子がわかります。本年度も継続予定。
http://chiikisozo.blogspot.jp/

2016-09-14

『OF PLANTING AND PLANNING』(Second edition)

『植えつけられた都市』の邦訳で2001年に京都大学学術出版会から出た「Of Planting and Planning」(1997)の第2版。Routledge,2013。副題は、「The making of British colonial cities」。著者のRobert Home教授をはじめとする、初版以降のこの分野の研究成果を反映させた最新の成果。
イギリス植民都市に限られるという限界はありますが、淡々と語られる内容は誠実かつ真摯で、都市イノベーション開墾的視点からは以下のような新しい視点の所在を感じました。
第一。「planning(近代都市計画)」の前史としての「planting」という視点。一般にplanningは土木と建築造園の統合という視点で説明されてきましたが(⇒関連記事1,2)、plantingからplanningへの進化という視点が提示されています。
第二。しかし、植民都市においてplanningへの進化はかなりの限界があったことが語られています。ここでいうplanningとは、西洋近代都市計画、さらにいえばイギリス本国の都市計画であり、そのような意味での<都市計画>の相対化がなされるのと同時に、日本人(の都市計画専門家)が抱く「都市計画」像をも相対化する契機を与えてくれます。
第三。特にこの第2版ではアフリカを含む第三世界の都市計画史の最新成果が加えられており、現代都市計画にかかわる際の重要な知見を提供してくれます。
第四。「イギリス植民都市計画史」がほぼカバーされています。これに例えば「スペイン植民都市計画史」が加わるだけでもかなりのカバー率になると思われます。是非読んでみたいと思います。
第五。イギリス本国(のみならず世界の)都市計画史で有名な都市計画家のワールドワイドでの仕事が多く紹介されていて、それだけでもかなりおもしろい。特に、何度も登場するパトリック・ゲデスは、もっと研究されてもよいのではないかと思います。
第六。ある特定都市の都市計画が何度も書き換えられる場面を通して、プランを立案する側の思想や考え方と地元側の政治状況や文化的特質とがからみあう様子がわかり、興味深い。特にエルサレムの都市計画。ゲデスも登場しますが、すぐに次の計画にとってかわられます。
最後に。「all cities are in a way colonial」という序章の言葉(p1)。それに続く理由説明をみると、なかなか興味深い視点です。

[関連記事]
1.『アメリカ都市計画の誕生』(都市イノベーション読本 第65話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20121016/1350359560
2.『The Plan of Chicago』(都市イノベーション読本 第76話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20121225/1356407762
3.『ドバイ開墾(4) : ニュードバイ』(都市イノベーション開墾 第4話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150904/1441323131
4.『A HISTORY OF FUTURE CITIES』(都市イノベーション読本 第100話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130625/1372127319

2016-09-12

『秀吉の普請』(京都と都市イノベーション(その2))

季刊大林No57に『秀吉の普請』が特集されました(2016.8.10発行)。正確に書くと、「されました」というより、ちょうど京都へ行く前々日、この号の企画編集に携わったO社のH氏からこの号を手渡され、大坂の都市計画ではなく京都の都市計画が特集されていることに大いに関心を持ちました。民間企業誌でこれだけ本格的かつたいへんおもしろい企画をたてたことにも驚きましたが、その内容もかなりのもの。
特に、「方広寺大仏殿の復元」をプロジェクトチームを編成して行い、「構造解析」や「施工方法の検討」までやってしまうところはO社ならではの快作。ちょうど昨日のNHK大河ドラマ真田丸』では関ヶ原の戦いで徳川方が勝利した知らせがもたらされ、いよいよこれから方広寺の鐘をめぐるいざこざがあり大阪冬の陣・夏の陣へと向かうところ。なかなかタイムリーです!
ついでながら現地で感じたのは、現在、京都国立博物館の新館はこの方広寺大仏殿の敷地内に建てられているばかりか、その回廊跡の上に一部重なりながら建っている。もし本当に「方広寺大仏殿の復元」をやろうとすると、このあいだ建ててしまった京都国立博物館の新館にどいてもらわなければならない。けれどもあくまで「方広寺大仏殿の復元」はシミュレーション。むしろ、現在本当に話題になっているのは、東京への一極集中防止のため移転させる計画の文化庁の移転候補地にこの京都国立博物館も7月に加えられたことです。

ややこしくなってきたので元に戻ると、「京都の近世都市化」を大胆に進めた都市計画家秀吉の偉業はきわめて大きく、それは大坂も含めた「近世都市化」が現在の都市に直接つながるという意味において、信長から受け継いだ都市計画を発展させつつ家康へと受け渡していく秀吉の役割はとてもおおきかったのだと思わされます。
京都の近世都市化」を他の近世都市化と合わせて総合的に論じた伊藤毅氏の論考「近世都市の成立」と合わせて、このあたりの関連記事をまとめておきます。

[関連記事]
・「近世都市の成立」(都市イノベーション2020 第63話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141129/1417234824
・「信長の城」(都市イノベーション読本 第79話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130129/1359426558
・『堺−海の都市文明』(都市イノベーション2020 第66話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141215/1418611574
・『家康、江戸を建てる』(都市イノベーション開墾 第49話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20160503/1462258948

[京都と都市イノベーション]
琵琶湖疏水(都市イノベーション読本 第84話)=本日より、「京都と都市イノベーション(その1)」とします。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130305/1362457545

2016-09-04

検証・2050日本復活(5)創造・創出化

最後の検証テーマは「創造・創出化」です。このテーマの「検証」方法は意外に難しく、『2050日本復活』で書かれているたいていのことは既に言われているか、この著者が言いそうだと予想できること。また、移民としてやってきた外国人や誘致に成功した外資に頼る話もあまり本質的ではありません。さらに、この著者は日本のさまざまな技術力を称賛し、そのうえに高度な技術開発をシミュレートしていますが、そういう話に着目すると、まさに技術的・手段的な検証になりそうです。
そこで思い切って、ここでは、著者が日本(人)の何に魅力や潜在力を感じているかのみを、本書全体から読み取ることにしました。それそのものが、著者が提案するさまざまな「手段」が達成された際にグローバルに花開く、あるいは少なくとも海外から関心を持たれる、そしてなによりも私たちの生活を豊かにするものと考えられるからです。

第一。著者が初めて日本で暮らした1960年代に妻が「アメリカに帰ったらスシ・レストランをひらかなくっちゃ」などと言い始めたのに対し彼は「まさか。アメリカ人がハンバーガーやホットドッグの代わりに生の魚にかぶりつくなんてことは絶対ないね」と否定。「もし、あの時、妻の言葉に耳を傾けてさえいれば、今頃私は大金持ちになっていただろう」(p298)と反省します。また、著者は日本の「侘び・寂び」にふれ、「変わることのない良質さや静寂、そして尽きることのない新たな発見を呼び起こし、そのすべてが常に新たな価値を生み続けるのだ」(p299)と高くたたえます。さらに、日本の礼儀作法は外国人の目には堅苦しく型にはまってみえることがあるが、それには「他者に対する深い敬意があらわれている」(p299)ともちあげます。
これらをまとめて、「この偉大な国の足元が揺らいでいるからといって、食や芸術、文化、礼節という日本の豊かな価値観がすべて世界から失われてしまうとしたら」「この世の中はとんでもなく貧しい世界になってしまうだろう」(p300)と世界の中に日本を位置づけます。
第二。「日本の超長寿社会を支えているのは、一つは食習慣や生活習慣だ。高いレベルの公衆衛生やきれいな水と大気、健康増進プログラムや日常的な運動といった地域ぐるみの取り組み」(p30)と指摘していることも、いくらか第一の点とかぶりますがはずせません。
第三。「日本は西欧以外で民主主義を成功させた国である。その意味で、アジアをはじめ、世界の途上国の心強い手本となってきた」(p302)と強調しています。第一、第二の点と合わせ、「もともと優れていた日本のソフトパワー」(p40)に着目しているといえます。
第四。これは少し次元が異なりますが、「最も豊かなイノベーションは、主要な大学や企業の研究機関といった既存の枠組みの外側、たとえばマンガやビデオゲームのような主流の企業群から外れた周辺分野において確実にひろがっており、そこでは型破りな発想も受け入れられる」(p179)としつつ、「企業による研究開発投資の増加とイノベーションの進展との間に、直接的かつ密接な相関を示す根拠がほとんどない」という研究結果も紹介しています(同)。
第五。さらにこれは日本という場所の特性との関係ですが、「海に囲まれた日本ならではの巨大エネルギー資源」(p215)の開発に、海の向こうから期待を寄せています。

―ミニシリーズ「検証・2050日本復活」おわり―

検証・2050日本復活(4)生活中心化/地域個性化

「生活中心化」「地域個性化」は著者の論理そのものというより、それらの結果としてありうる都市像。ここではこれらがどうありえそうかの程度を検証します。

「生活中心化」。35年ぶりに日本を訪れた「彼」が若手社員をビールに誘ったところ断られてしまったので「仕方なく1人で夜の街へと出かけてみたものの、居酒屋が軒を連ねていた昔の光景はなく、家族向けのレストランが並んでいるばかりだった」(p96)。「居酒屋が軒を連ねていた」原因を「社員は正当な人事評価システムではなく、仕事や仕事関連の付き合いに費やした時間の長さで評価された」と、社会システムの問題に求めつつ、第4章「女性が日本を救う」において「2050年の日本はますます若々しく、強靭な国へと成長を続けている」原因を解き明かしています。
ここでは「特命日本再生委員会」が描いたシナリオそのものではなく、委員会がなぜ「女性が日本を救う」と考えたかの理由に着目します。ずばり、それは労働力不足です。2017年時点の想定によれば、「やがて年間に100万人以上も人口が減り、日本人は2300年に絶滅する可能性があることになる」(p96)。「もちろん、そうなるよりずっと前に、日本そのものが社会として機能しなくなるだろう」(同)。そこで「特命日本再生委員会」は遅れているこの分野に注目。女性就業率をOECD平均に引き上げるとGDPは4%増加、北欧並みに引き上げるとさらに4%増加するととらえて、保育施設の増加や税制改正のみならず、「深く染みついた企業慣行や社会の意識」(p101)を変えるべく、システムそのものの大胆な改革を提言。移民によりカバーする分野との総合的効果も検討されています。
両親とも働いているとなると、果たして「居酒屋が軒を連ねていた昔の光景はなく、家族向けのレストランが並んでいる」ことになるかどうか不明ですが、とりあえず、「彼は満開の桜に彩られた2050年春の日本を旅していた。35年前にきた時とは、街のようすが何か違う。昔より大勢の子どもや若者が駅に溢れ、道を自転車で駆け抜けている」(p95)、という将来像には期待したいところです。

もう1つの「地域個性化」。これは第10章のテーマの地方分権とからみます。それは、「日本が抱えている問題は経済ではない、政治なのだ」(p289)という「特命日本再生委員会」の結論によるもの。「日本人は自己責任に任せれば、驚くほど革新的で生産的な国民だ。だが、政治や官僚の厳しい管理下では全力を出し切れず、優れた資質を十分に発揮することができなかった」(同)。そうした視点からは「地域個性化」というより「地域自己革新」とネーミングした方が適切だったかもしれません。
「この劇的な進化をもたらした地方分権化政策を採択するまで、再生委員会は長い時間を費やして集中的に議論した」(p290)。その論点は3つあり、第一に競争は地域に革新をもたらすこと、第二に東京への集中が経済の低迷の原因であるばかりか安全保障上も非常に危険であること、第三に東京集中により地方には高齢者と生活困窮者ばかりが取り残され政府補助金だけが頼みの綱になってしまうかもしれないことでした。

2016-09-03

検証・2050日本復活(3)スマート化

「都市イノベーション開墾」の視点から「スマート化」をテーマとして抽出しましたが、『2050日本復活』で「スマート化」が占める割合は一見高くありません。むしろ断片的でさえあります。
けれどもよく見てみると、第7章の「エネルギー独立国」はより本質的なところで「スマート化」とかかわっていて、「新・日本モデル」とされるエネルギーシステムのもとで「スマート化」もより魅力的になるととらえられます。

まずは狭義の「スマート化」にかかわる部分をチェックすると、、
2050年の日本は「道路も建物も乗り物も、すべてスマート化されている」(p26)。「彼」が羽田に到着し「飛行機から降りると、彼の荷物を積んだロボットが出迎えてくれる」「都心だけでなくどこへ行くにも、運転手がハンドルを握るリムジンバスやタクシーはいない」「もはや日本では、誰も運転などしない」(同)。「こうしたイノベーションのおかげで、日本では交通事故がほぼなくなり、当然のことながら交通事故による死傷者もいなくなった」(p27)。「ウルトラロープ」の開発・普及に後押しされて東京の高層化が進み、「ドバイの超高層ビル「フルジュ・ハリファ」よりも高いビル群が林立するようになった」(p28)。超高層化により都市空間が効率的に利用されてスマートシティ化の環境を生み、起業家の活動が活発になった、というのがおよその全体像です。
一応「スマート化」的描写にはなっていますが、やはり「一応」です。

けれども、「スマート化」の前段としてのクリーンエネルギー化やエネルギー自立の方に着目すると、なかなか興味深い議論が展開されています。そもそも「エネルギーはこの国のアキレス腱だった」「第二次世界大戦へと突入していったのは、もとはといえば石油の確保に不安を抱いていたからだ」(p187)との認識は、本書の根幹にかかわる重要な部分です。
以下、「検証」の枠組みだけ簡単にまとめます。
日本のエネルギーの自立は、2017年5月に設置された「特命日本再生委員会」の提言による5つのステップにより進められました。結果だけ書くと、全国のスマートグリッド構築のみならずそれがアジアスーパーグリッドにつながります。国内では海洋エネルギー開発が進むほか、メタン・ハイドレード(こちらは低炭素ではあるが炭素含む)開発も進み、「モンゴル平原の風力発電所から予想外に膨大な電力がもたらされ」(p215)たりもして、「2050年、日本は長年の夢だった低コストによるエネルギー自給をついに実現させた」(p215)。
「最終的には廃棄物から放射性物質がなくなり」とされるIFR型原子炉の話や、「自給」としつつモンゴルから「予想外に膨大な電力がもたらされ」ていること、2050年時点のエネルギーシェアが書かれていないことなど、検証すべき点はいろいろあると思いますが、「2050年」へのシナリオをともかくタタキ台として書いたことに敬意を表したいと思います。

2016-09-02

検証・2050日本復活(2)非グローバル化/新グローバル化

ベルリンの壁崩壊以降、一方向のみに突き進んだグローバル化の勢いはとどまらず、「地球上の最も安く生産できる所で生産し、消費地に運べばよいのだ」「知識社会で生き残れない労働者は、地球上で生き残れそうな場所まで移動して働けばいいのだ」風な考え方がどんどん強まってきた昨今、特に2015年から2016年にかけて、それを巻き返すような力が各地で働くのが目立ってきました。
『2050日本復活』では第1,2章を中心にそうした「シミュレーション」がなされているのですが、ここでは章を超えてこのあたりの議論を検証してみます。

第一。「2015年頃、おおかたの専門家は、世界の金融も生産もグローバル化が進むと予想していた。しかしその後、流れは変わって、むしろ国や地域を中心に発展するようになった」(p35)の部分に着目すると、ここでいう「地域」はEU太平洋地域などへのブロック化を指していると思われます。これは国益を加味した「非グローバル化」ととりあえずとらえられ、ブロック化を通した「新グローバル化」の模索の動きと思われます。
第二。「地域」としてはもう1つ、「都市地域」があって、こちらは『2050日本復活』では触れられていませんが、ベルリンの壁崩壊後の経済システムによって富が集中し(やすかっ)た大都市がP.ホールによって「中世都市国家フローレンスのようになっている」と言われたような(⇒関連記事)富の偏在傾向はまだまだ続くのかもしれません。これは「従来型のグローバル化」としておきます。
第三。『2050日本復活』では第一のような選択がなされる背景をいくつかあげています。1)リーマンショックEU凋落など、経済のグローバル化だけが先行すると問題が大きすぎるとの反省、2)炭素税導入等で輸送コストが大きくなり世界規模でのサプライチェーン展開が非効率になったこと、3)3Dプリンター等の新技術の登場で消費地に近い場所での生産が有利になったことなどです。これらは「非グローバル化」というより「脱グローバル化」と表現したほうがよいかもしれません。
第四。日本に限ると、2015年に2%ほどだった外国人比率が2050年には「6%に届こうとしている」とされます。これは日本にとっては「新グローバル化」。『2050日本復活』のために求められる人材を積極的に惹きつけるための戦略が縷々綴られています。
第五。原文の副題が「HOW JAPAN CAN REINVENT ITSELF AND WHY THIS IS IMPORTANT FOR AMERICA AND THE WORLD」となっているように、著者の主眼は、世界をカバーするグローバリゼーションの力が維持できなくなったアメリカ国益に沿う形で日本にもっとがんばってもらわなくてはならない、というものです。とはいえその視野は広く、「従来型のグローバル化」「非グローバル化」「脱グローバル化」「新グローバル化」によるグローバルな新秩序のあり方を提起したのが『2050日本復活』でした。

[関連記事]
・『大格差 機械の知能は仕事と所得をどう変えるか』(都市イノベーション2020 第62話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141126/1416983696

2016-09-01

検証・2050日本復活(1)高速化

3つ前の記事で『2050日本復活』をとりあげ、この書のシミュレーションの条件・内容を自分自身でチェックすることが大切と書きました。そこで、『2050日本復活』のなかから(章の構成にとらわれず独自に)5つのテーマをとりあげ、簡単な検証をしてみたいと思います。キーワードは「高速化」「非グローバル化/新グローバル化」「スマート化」「生活中心化/地域個性化」「創造・創出化」と仮に名づけておきます。
今回はその(1)の「高速化」。「都市イノベーション開墾」の第67話、「都市イノベーション」シリーズ通算(⇒参考)では第267話です。

『2050日本復活』の第1章「2050東京」で「彼」は35年ぶりにワシントンDCから東京へ出張します。乗っているのは「ミツビシ808型超音速ジェット旅客機」で、飛び立って2時間半で「快適な空の旅も終わろうと」していて羽田に降下をはじめます。
ここからが検証。ワシントン-東京10920キロで、羽田到着まであと10分かかったとすると2時間40分の飛行。平均時速4095キロ。音速を1225キロとすると、この速度はマッハ3.34。
現時点においても非民間機も含めればマッハ3.5くらいは出せているようですので、一応理屈上は成り立つ話です。『2050日本復活』では第1章の25〜26頁にかけて、マッハ3.34が出せる民間旅客機(ここでは全日本航空機とされている)が成り立つためのストーリーが書かれていますが、さらに、世界の長距離路線はこの「ミツビシ808」が独占していること、そのおかげで日本は貿易黒字になったとまで書いてあります。それはさておき、2050年には東京-ワシントンDC間を2時間40分で飛べる話は、とりあえず無くはなさそうです。

そうすると、以前の記事で、「もし仮に「陸」並みに0.17倍のスピードで「空」を行けるとすると1030×0.17=175分でパリに。広島程度の近さです。気軽にショッピングといきたいところですが、そうはなりそうもありません。」と書いたことは(⇒関連記事1)消極的将来像と言わざるを得ません。「ミツビシ808」に乗るとパリまで(9730キロ)145分なのですから。
ついでに地球の裏側のリオまで(18590キロ。給油なしで行けるとして)4時間30分。おお、これは革命的。時差の問題や空港への発着時間なども無視し日本時間だけで考えるとすると、例えば、朝、8時に羽田を出てリオに着き、午後一で空港脇のホテルで会議をして午後3時20分頃パリに向かい(リオ-パリ間は9180キロ。2時間15分で到達)、6時からの会議に間に合ってそれを済ませたあと8時半の便に乗り、夜10時55分に羽田に着いて家に帰る、などという話もありえなくはない、ということかもしれません。
そんな人はいないかもしれず、テレビ会議なら移動しなくてもよいでしょ、と思う方が大半だとしても、「高速化」によって、世界の(都市の)可能性がかなり広がり、グローバル社会における「移動」の意味も大きく進化・変容しそうです(⇒関連記事2)。

[関連記事]
1.「空か陸か海か/空と陸と海と」(都市イノベーション2020 第71話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150224/1424749035
2.『モビリティーズ 移動の社会学』(都市イノベーション2020 第79話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150506/1430900566

(参考)【コンセプトノート】都市イノベーション
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141110/1415588957

2016-08-31

【公開講座】ヨコハマ地域学・かながわ地域学ベストセレクション(2016.10.14午後)

10周年となる「地域実践教育研究センター」の公開講座を下記のとおり行います。ふるってご参加ください。

【公開講座】ヨコハマ地域学・かながわ地域学 ベストセレクション
・日時 10月14日(金) 午後1時から
・場所 横浜国立大学メディアホール
・詳しいご案内は下記URLにて。
http://www.ynu.ac.jp/hus/koho/15572/detail.html

「都市科学部」がスタートします(2017.4より)

都市をめぐる新しい学部がスタートします。横浜国立大学都市科学部。
今朝、メディアで報道されました。
大学HPでは以下のように紹介しています。9月19日には説明会(オープンキャンパス)も開催されます。
[新学部]http://www.ynu.ac.jp/ynu-project/urban/index.html
[オープンキャンパス]http://www.ynu.ac.jp/exam/ynu/opencampus.html

なお、現在私が所属している大学院組織は「都市イノベーション研究院」(2011.4発足)。
学内横断型の地域実践教育研究組織が「地域実践教育研究センター」(2007.4発足)です。
いずれも右帯下の「リンク集」でリンクしています。合わせてよろしくお願いいたします。

2016-08-29

『なぜ近代は繁栄したのか』

1つ前の『2050 日本復活』では日本(のもつ潜在力)を良く知る著者があえて日本の現状に苦言を呈し、それを、日本経済が破綻した先の復活のシナリオを描くという形で示した1941年生まれの70歳代の論客による議論だったのに対して、この書は、1933年生まれの80歳代(原書の発行が2013年なので執筆時はまだ70歳代だったと思われる)のマクロ経済学者(2006年ノーベル経済学賞受賞)による近代市場経済論です。
両者に共通するのは、このところ目立ったイノベーションがみられない、あるいはそれどころか先進国全体に今後のイノベーションのネタが無くなっており経済成長もままならず、いったい世界はどうなってしまうのよ、しっかりせいよ、という苛立ちというか焦燥感が先立ち、それを日本経済の復活(前者)、草の根イノベーションへの期待(本書)の形で示した労作という点です。前者はより経済的側面が強く東洋経済新報社から、本書は人文的要素が強調されみすず書房から発行されています。
エドマンド・S・フェルプス著、みすず書房2016.6.10発行、副題が「草の根が生みだすイノベーション」。原著は「MASS FLOURISHING」、副題が「How Grassroots Innovation Created Jobs, Challenges, and Change」、Princeton University Press,2013。

「近代はなぜ繁栄したか」と問われれば、産業革命が起こり多くのイノベーションによってそれまでとは比較にならないほどの生産をあげられるようになり、人間は労働にしばられない自由時間が増えて豊かになったのだ、などと答えてしまいそうですが、それではバツ。
本書の紹介文によれば、「近代の繁栄の源泉は、挑戦、自己表現、人間的成長といった個人主義に裏付けられた価値観の誕生と、そこから湧き出る大衆のイノベーション・プロセスへの参画にあるとする」新たな≪近代経済≫論とされます。
しかし、そもそも「イギリスアメリカを皮切りに始まった一連の近代経済は、ドイツを最後にいきなり終わったと考えられる」。日本は「蚊帳の外に置かれた」。(こうした国では)「確たる証拠があるわけではないが、パイオニアから提供された新製品に追いつこうと努力した結果が発展をもたらしたとも考えられる」(以上、p165)。日本はこの書で批判される「コーポラティズム」の国で、この「コーポラティズム」が今やヨーロッパ諸国ばかりでなくアメリカの政治経済システムの中に浸透してしまった結果、イノベーションが起こりにくくなっているのである、とするこの議論は、かなりの部分、1つ前の『2050 日本復活』の議論と重なるものです。

[関連記事]
・「アダム・スミスとその時代」(都市イノベーション2020 第51話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140916/1410839084

2016-08-28

『2050 日本復活』

「自動運転タクシー試走 シンガポールのベンチャー」(毎日新聞2016.8.27)、「東京都、外国人家事代行を解禁」(日経新聞2016.8.28)などと、ほんの少し未来を予感させる記事が断片的にメディアに頻出しています。
けれども、「2050年」の日本をトータルに描き出すのは意外にたいへんです。というのも、あまりに遠い将来となるとせいぜい人口などの予測や新技術の予言(または期待(のリスト))くらいしかできず、リアルに描こうとすると今度は、現在のトレンドに沿った“その先”くらいしか描けません。

本書の正確な日本語タイトルは「近未来シミュレーション2050 日本復活」(東洋経済新報社、2016.8.4発行)で、原文タイトルは「HOW JAPAN CAN REINVENT ITSELF AND WHY THIS IS IMPORTANT FOR AMERICA AND THE WORLD」。今朝の朝日新聞書評が出ていて、それは本書の要約になっているので正確にはそちらを見ていただくとして、ここでは、2050年をシミュレートした本書のおもしろさをいくつかあげます。

第一。著者は、日本の良さも欠点も知り尽くした論客(クライド・プレストウィッツ)で、初来日した1965頃頃を振り返りつつ、その後の日本の変化を押さえています。
第二。一般的にみて、こうした予測モノは、「自動運転」「スマートシティー」などの技術的予測に陥るか、文明論のような大風呂敷になるか、単なる要素の羅列にとどまるかになりがちですが、本書は「日本の2050年」を、国際的位置づけも踏まえてトータルに描き出せていると感じます。
第三。その理由の1つは、「2015年時点の課題」をしっかり構造的に捉えていて、しかも、それは2015年というより、2016年8月時点のリアルな分析にもなっていることだと思います。
第四。それをもとにここでは日本の危機を救うべく、2017年5月に「特命日本再生委員会」が設置されたという設定になっていて、この委員会が課題ごとに世界の先進事例をリサーチしたり政策立案したり、時々失敗したりして、なんとかそれらの実施までこぎつけるという臨場感あふれる内容です。
第五。それらの結果としての日本の2050年の姿が印象深く描き出されます。第三、第四の特長が功を奏して、第二のような結果に陥らず、2050年の都市の姿や生活や社会や国際情勢がバランスよく描かれています。
第六。私たちはその結果を信じるかどうかではなく、1つの「シミュレーション」としてながめることができるので、自分でバックキャスティングして、著者の「シミュレーション」の条件の妥当性をチェックしたり、言及されていないことは何かを考えたりすることが可能です。

[関連記事(類似の方法論)]
・『2050年の世界地図 迫りくるニュー・ノースの時代』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20120403/1333416322

2016-08-26

博多港の爆買いクルーズ船

せっかく福岡に来たのでと、博多港に行ってみると、「洋上の巨大マンション」と命名したくなるような大型クルーズ船が。もう1つそれに比べれば小ぶりながら大型といってよいクルーズ船も埠頭に横付けしています。
これは何かありそうと聞いてみると、これらは中国からの爆買船(この用語は私がとりあえずここでつけたもの)で、毎日のようにやってくるとのこと。「毎日のように」ということにさらに驚き、以下にその動向をまとめてみます。

第一。この日博多港に寄港していたのは、「巨大マンション」のほうが定員4919名の Ovation of the Seas(天津から来て天津に戻る)。少し小さい方が定員2394名の Costa Victoria(釜山から来て舞鶴に行く)。両方で約7300名です。いずれも朝博多港に着き、夕方出航。皆が爆買い客かどうかわかりませんが、バス1台に50人とするとしても約150台分と相当な人数。
第二。こうしたクルーズ船の博多港への入港は、予定も含めると2016年は404回。「毎日のように」どころか、1日2隻の日もかなりあります。[資料1参照]
第三。すごいのはその伸び方。2008年からの博多港の8年分を示すと、35、42、84、55、112、38、115、261。261回が2015年、さきの404回が2016年です。2015年の261の内訳は、外国籍247(うち中国発着238)、日本籍14。
第四。横浜港は2010〜2014年の5年間、120〜150回程度で国内一だったのですが、この勢いで2015年に博多港に抜かれ(長崎港にも抜かれた)、はるかに差がつきました。
第五。システムとしては、大型クルーズ船からの下船はビザ無しでよいとしたこと、博多港がかなり前からクルーズ船の誘致に努め、2015年には「中央ふ頭クルーズセンター」を供用開始したことなどがあげられます。
第六。前から問題になっていましたが、横浜港ベイブリッジの下は55メートルしかなく、大型クルーズ船が通れません。さきの「巨大マンション船」は60メートル以上。やむを得ず、せっかく作った大桟橋ではなく、ブリッジの外側の大黒埠頭に着けざるを得ません。
第七。国では、2015年に112万人だった寄港客を2020年に500万人にする計画。博多港のみならず、日本の港町はどうなっていくのでしょうか。

[資料1]博多港クルーズ客船入港予定(3月1日時点のもの。「第一」であげた船名はこれによる)
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/guide/cruise/pdf/cruise2016.pdf#search=’%E5%8D%9A%E5%A4%9A%E6%B8%AF+%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E8%88%B9+2016’

[関連記事]
・『新・観光立国論』(都市イノベーション2020 第89話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150612/1434075701
・「空か陸か海か/空と陸と海と」(都市イノベーション2020 第71話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150224/1424749035

住環境価値の捉え方と都市計画制度

機会をいただき、「住環境価値」について新たな視点から考えてみました。
一昨日の建築学会PDでお話ししました。
当日、印刷されたPD資料は売り切れていたため会場で資料無しの方もいました。また、発表用資料にはデータや図面や細かな解説があるにもかかわらずサッと通りすぎてしまい十分伝わらなかったのではと思います。できればあとで、発表に使った資料等をアップしたいと思います。

(参考)
ブログ右の検索欄で「価値」を入れると、本記事も含め26件がヒットします。

2016-08-19

“攻めの廃線”

昨日のメディアで、JR夕張支線16.1キロメートルの廃止をJR北海道夕張市に申し入れたと報道されました。実はこの話はさかのぼること10日、夕張市の鈴木市長が8月8日にJR北海道に対し廃止を提案したことを受けてのJR側の反応でした。朝日新聞記事によればこれは「支線廃止を認める代わりに地域振興への協力を求める異例の提案」で、廃止候補路線を抱える他の道内沿線自治体は「廃止ありきの先例になりかねない」と警戒感を募らせている(北海道新聞2016.8.9)とのこと。
「地域振興への協力」の内容としては、1)代替の公共交通ネットワーク構築への協力、2)JRが市内に所有する土地の無償譲渡、3)JR社員の市派遣など(北海道新聞2016.8.8)のようです。市側はJRからの申し入れを受けて「前例のない廃線になるが、地域公共交通のモデルをつくる出発点になったと言われるようJRと協力を進めたい」と述べています(2016.8.18朝日新聞)。

路線の維持が想像以上にたいへんなことは、老朽化した線路や電車の車体・設備、駅舎(⇒事例JReki.JPG 直)、生い茂る沿線の草木、一応やっていることにはなっているけれどもほとんど無いダイヤなどを見て最近痛感したばかりです。
一方で、「都市イノベーション開墾」ならぬ「北海道開墾」は、たった140〜50年ほど前にスタートしたばかり。地域の盛衰の速さを感じざるを得ません。

[関連記事]
北海道新幹線(都市イノベーション開墾 第58話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20160705/1467714618

2016-08-13

『まちづくりの哲学』

ドクターゼミで話題になった本書をさっそくその場で注文し、読んでみました。企画・編集が「代官山ステキなまちづくり協議会」、著者が「蓑原敬・宮台真司」、副題が「都市計画が語らなかった「場所」と「世界」」。ミネルヴァ書房、2016.6.30刊。
内容は、ステキ会の野口氏に促されて2人が対談するもので、ゼミでの評価はともかく、考えるべきヒントがいくつかの場所に埋まっている、これまでにない深さをもった、刺激的な図書でした。
なかでも最も刺激的なのは、153ページ最後から154ページにかけての宮台氏の発言内容です。この部分は、8月下旬にF大学で開催される建築学会でも(とあるパネルディスカッションあるいはその前後の懇親会で?)話題にしたいと思います。
これからの都市計画を担う人々のための「哲学」が、ある意味意外な形で語られています。

2016-08-06

『オリンピックのすべて』

リオ五輪がはじまりました。五輪開催そのものが開催都市のみならず国のありようにまで影響を及ぼすほどのオリンピック、正確にいうと近代オリンピックはなぜ、どのようにはじまったのか?
ウィキペディアでも「古代ギリシアのオリンピアの祭典をもとにして、世界的なスポーツ大会を開催する事をフランスクーベルタン男爵が19世紀末のソルボンヌ大における会議で提唱、決議された」となっていますが、本書『オリンピックのすべて』(副題「古代の理想から現代の諸問題まで」ジム・バリー+ヴァシル・ギルギノフ著、舛本直文訳、大修館書店、2008)では数々の切り口からオリンピックを再認識する機会を提供しています。
近代オリンピック誕生の面でおもしろかった点をざっとあげると、、、(少しぼかして書きます。)
第一。近代オリンピックの前史。あの古代オリンピックを復興させようとする契機はどのようなものだったかについて、1)連綿と続いた競技を誰が支えどのように受け渡されたか、2)古代オリンピアの発掘がいかになされ、いかに影響したか、3)近代オリンピックの前史ともいえる競技会が誰により、どこでどのように行われていたか。個人的にはこの3番目にたいへん興味が湧きます。古くは1604年に開催されており、1つ1つが個性的です。
第二。クーベルタンの理念はどのように実行につなげられたか。ここだけ少し書くと、当初クーベルタン英米の経済力・政治力に注目してイギリスハーバートアメリカのスローンを引き入れ、自分を含めた3人で手分けして、ハーバートイギリスイギリス国王担当、スローンはアメリカ大陸担当、クーベルタンフランスヨーロッパ大陸担当として働きかけをおこない、第1回の1894年ソルボンヌ会議に14か国から79人の代表と49のスポーツ団体が参加したとされます(この会議でIOC設立)。その結果1896年に第1回アテネ大会が開催され、14か国から244人の男子選手が参加。9競技43種目が行われています。

それから120年。リオ五輪には204の国・地域が参加。28競技306種目に10500人の男女選手が登場します。

それにしても、このような本を書く人とは、どのような動機・分野の人たちなのでしょう。
p388の日本語訳によると、ジム・バリー氏は英国リーズ大学の元哲学科長。専門はオリンピックの哲学的・倫理学的研究。ヴァシル・ギルギノフ氏は英国ブルネル大学の上級講師で、専門はオリンピックムーブメント研究と東ヨーロッパ社会のスポーツ研究なのだそうです。

[関連記事]
・本ブログオリンピック」検索 本記事含め36件ヒットします。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/searchdiary?word=%A5%AA%A5%EA%A5%F3%A5%D4%A5%C3%A5%AF&.submit=%B8%A1%BA%F7&type=detail

2016-08-02

2100年の地球人口が112億人になるまで

昨年7月に国連が発表した2100年の世界人口推計(中位推計)によると[→下記資料1]、2100年の地球人口は112億人に達するようです。注目される特徴をいくつかあげると、
第一。2015年の73億に対し、2050が97億と推計されていて、2015から2050に24億の増加、2050から2100年に15億の増加です。後半でかなり落ち着いてくる感じです。
第二。ただし大陸別にみるとかなり感じが異なります。2015から2100年にアフリカは12億から44億へと32億の増。アジアは44億から49億へと5億の増です。2015から2050とそれ以降に分けると、アジアは前半が9億の増ですが後半は4億の減。それに対してアフリカは、前半が13億の増、後半はさらに19億の増と推計されています。
第三。その結果、アフリカでは2015年に比べ2100年の人口が倍以上になる国がいくつもあり、例えばエチオピアは1億弱から2億強に。ナイジェリアは2億弱から7.5億です。日本でも85年前の昭和の初めには6千万人代だったのが倍増しているので、この伸び自体はごく普通のことかもしれません。都市人口の増加はさらにこれを上回ると考えられ、これまでになかった種類の、超長期視点での都市計画や都市イノベーションが必要なのかもしれません。

[資料1]
https://esa.un.org/unpd/wpp/

2016-07-29

クリスマス島の塩

関東でもようやく梅雨明けとなりました。間もなく8月。
クリスマス島の塩クッキー」がきっかけとなり、クリスマス島(キリバス)について考えています。
既に本ブログでも北極方面(下記関連記事1,2)から南極方面(記事3)まで旅し、「世界の要」ドバイも“開墾”しましたが(記事4から10回)、クリスマス島地球儀でみると太平洋のど真ん中にあり、近年、日付変更線を変更して「世界で最初に夜が明ける国」になったという意味で、ある意味この地は、第二の「世界の要」といえなくもありません。
クリスマス島の塩」は日本で多く販売されており、関連商品もとても多いです。塩田はごく小さいと書かれているので、そんなにたくさんとれるのかと心配になりますが、むしろ本当に心配すべきは、クリスマス島はじめキリバスを構成する多くの島が“地球温暖化等の影響で”水没の方向に向かっている、との話です。

ソロモン諸島のタロ島の住民1000人弱が隣のチョイスル島に「太平洋で初めて水没の危機による全島住民の移住」と報道されたのが2014年のこと。本ブログでも2014年8月26日の記事でモルディブ(人口約80万)のことを「1200もの島があるため(移住に)優先順位をつけなければならない」ととりあげました(記事5)。
クリスマス島(人口約5千)の属するキリバス(人口約10万)でも2014年に、フィジーのバヌア・レブ島(首都スバがある島の北に位置する大きな島で、最高峰1111メートルの山もある)に、将来の移住に備えて2200ヘクタールの土地を購入したとのことです。

押し寄せる塩水と格闘しつつそこから塩をつくるというのも、なんとも矛盾しそうな話ではあります。けれども、このおいしい「クリスマス島の塩クッキー」のことを考えると、できるだけ長く「クリスマス島の塩」をとりつづけ、できればそれが地元の雇用源・収入源につながり、そのことが島の生活の存続に少しでもつながればと思うところですが、実際のところ、どのような状況なのでしょうか。

[関連記事]
1.『2050年の世界地図 迫りくるニュー・ノースの時代』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20120403/1333416322
2.スバールバル諸島
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140804/1407123309
3.2050年のニュー・サウス
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20160212/1455265366
4.ドバイ開墾(1):世界の要
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150901/1441078837
5.(映画)「南の島の大統領 沈みゆくモルディブ
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140826/1409012699

2016-07-27

レファレンダムを通過した近隣計画が200件を超えました

政府ウェブサイトに7月11日、標記記事が掲載されました。
https://www.gov.uk/government/news/new-landmark-with-200-communities-now-approving-neighbourhood-plans

昨年11月に100件を超えてからまだ9か月ほどですが、普及の勢いは保持されています。
その際、「近隣計画に取り組む地区も1650となり、イングランドの人口の15%が活動を行っているとされます」とした数字は、それぞれ1900地区以上、20%弱となりました。

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)

ウェブサイト『Neighbourhood Planners.London』ができました

「とても遅れている」といわれているロンドンの近隣計画策定。
ここにきて第4号と第5号がレファレンダムを通過しましたが、全国平均とくらべるとまだまだの進捗状況です。この状況をなんとか改善しようと有志が立ち上がり「The network for London's Neighbourhood Planners」を結成しました。そのウェブサイトが公開されています。
http://www.neighbourhoodplanners.london/

たとえば「MAP」をクリックすると、ロンドンにおける近隣計画策定状況が地図上に表示されていて、図の下の「LIST」には、2016年6月時点の96地区の策定状況および連絡先等がリスト化されています。
また、「RESOURCES」欄には、近隣計画策定情報へのリンクが張られているほか、これまでレファレンダムを通過した5地区の計画図書等が一覧されています。

2016-07-21

EU離脱とイギリス都市計画の課題

Planning誌の2016.6.30号では、巻頭文(p3)などに、EU離脱後のイギリス都市計画の課題がいくらかまとめて書かれています。まだ投票結果が判明した直後の記事ではありますが、論点を少し整理しておきます。
第一。EU法で決めていた環境影響評価や生物生息地、大気の質などを国内法で決め直す必要がある。その際、イギリス独自の考えを出せる面もある。こうした課題はむしろ時間がかかると予想される離脱過程で処理していくことになるだろう。同様に、EU財源による不況地域政策等も国内版に切り替えていく必要が生じ、地域的な浮き沈みに結果するかもしれない。
第二。離脱により大陸からの移民が減ったり経済の落ち込みで地価も下がるなどして、そもそも想定していた人口増・世帯増がかなり少なくなる可能性もあり、そうすると、ローカルプラン等でギチギチにエビデンスをもとに計画していた前提が崩れ、計画の見直しをしなければならなくなる可能性が出てくる。実務的にはかなりたいへん。
第三。そうした落ち込みは、たとえばロンドンの高かった地価が下がって新たなチャンスが広がる面もある一方、不動産開発という面では落ち込みをカバーするべく規制緩和のような政策も必要になるかもしれない。2016/17国会で審議予定の「Neighborhood Planning and Infrastructure Bill」の議論の方向にも影響してくるかもしれない。
第四。ロンドンの新空港やハイスピードレール計画といった国家的ビッグプロジェクトも、これまでの想定通りにはいかなくなる可能性もある。

既にこの6.30号が出たあと新しい首相も大臣も決まり、内政も重視した堅実な舵取りがなされそうな気配です。

2016-07-13

成立したばかりの「Housing and Planning Act 2016」145条がさっそく問題になっています

雑誌Planningの6月17日号が届きました。EU離脱が決まる前の時点での特集のような内容が多く、都市計画への影響を論じたものとしてそれなりに興味をもてるのですが、ふと、危なげな別の記事が強調されていることに気づきました。
ブログでも2度ほど「Housing and Planning Act 2016」(当時はBill)のことを取り上げてきましたが(参考記事1,2)、そこで話題になっていた97,99,100条(法案提出時)ではなく、98条(同。法律では145条)が話題になっています。やや複雑かつマニアックかもしれませんが、都市計画法的には重要な部分ですので、全体像をわかりやすく解説します。

本年5月12日に公布された「Housing and Planning Act 2016」(参考資料)のうち5月26日に施行された145条(法案提出時98条)は、大臣の新たな介入権限を規定しています。そのうち第5項が問題になっています。
バーミンガム市では新しいローカルプランを策定中で、第三者による審査も終え(インスペクターレポート受領)、さて採択の手続きを、と思ったちょうどそのタイミングで新法の145条が施行され、第5項を使って、大臣より「その手続き、待った」、との命令が届きました。
大臣は、
「he may direct the authority not to take any step in connection with the adoption of the document」
とすることができるのです。しかもいつまでかというと今回は(b)号の、
「until the direction is withdrawn」
と、命令が取り下げられるまで待たなければなりません。

そもそもこの問題は、バーミンガム市のグリーンベルト上に6000戸の開発を認めるもので、大きな問題となっていました。直接的には、地元国会議員が大臣に働きかけてこのパワーを使わせたということで、「そんなことやられたら、都市計画は政治に翻弄されてメチャクチャじゃないの」という危惧・疑問が「Planning」の記事の第一の論点です。しかもバーミンガム市としては第三者審査も受けており、それを担当したインスペクターも、バーミンガム市には膨大な住宅需要があるのでグリーンベルト上の開発は(本来は良いとはいえないが)やむを得ないと判断していて、適正な手続きしていたはずなのに新法によって待ったがかかった状態です。
実をいうと、この地元選出国会議員は第三者審査の過程においても「ちゃんとした住民参加をしていない」「オレがなんとか阻止してやる」(やや意訳なのでごめんなさい)、などと言っていたとされ、本年1月の国会審議においても「グリーンベルトに6000戸などと言う前に、8〜10年のモラトリアム期間を設けてバーミンガムじゅうの土地をさがすべきだ」と主張していたとのこと。
第二の問題としては、そもそもこの法律の趣旨は、なかなか住宅開発を受け入れない自治体に対してなんとか言うことをきかせようとしていくつもの大臣権限を付加したものであることを考えると、(せっかく開発しようと計画しているものに待ったをかけるなどということは)逆効果ではないかという論点が書かれています。(ただしグリーンベルト上を開発することも国の政策に反するので大臣としては苦しい立場なのですが、、)
第三に、このように上からの政治が出てくると、地元では萎縮してしまいイノベイティブな都市計画ができなくなるおそれがあるというものです。

さて、この介入。大臣命令はいつ、どのような形で取り下げられるのでしょうか。

[参考記事]
(1)http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20151116/1447670125
(2)http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20160502/1462177268

[参考資料]下方に「法」があり、その下に「法案」がアーカイブ化されています。
http://services.parliament.uk/bills/2015-16/housingandplanning.html

2016-07-12

木密地域不燃化10年プロジェクト(その6)

9月に木密地域のあり方について話す機会ができ、最近の動向や文脈の変化、オリンピック後も含めた将来ビジョンや新たな課題などを考えようと、さっそく先週末、まずは、これまで歩いたことがなかった台東区N地区と江東区K地区へ行ってきました。今回のテーマは、建物1棟1棟の耐震性能や防火性能をきちんと見て、それらが首都直下地震でどのような被害を受けるかについて、建物1棟1棟の様子と、集団としての路地や街区がどのようになってしまうかについて想像するとともに、避難ができそうかどうかについてもある程度イメージすることでした。
特に、現在建て替えられている物件がどのような性能をもった建物か、それに対して都市計画規制などがどのように作用しているか、それは適切かそうでないか、もしそうでないとすると、何が課題でどうすれば「適切」といえるようになるかについて、いくつかのオプションを考えられるようにしてみたい、という観点です。

東京都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」は続いていて(資料1)、昨年末には以下の動画(資料2)も都市整備局により公開されていました。「建物1棟1棟の耐震性能や防火性能をきちんと見て、それらが首都直下地震でどのような被害を受けるかについて、建物1棟1棟の様子と、集団としての路地や街区がどのようになってしまうかについて想像するとともに、避難ができそうかどうかについてもある程度イメージする」ための補助手段として一定程度有効だと思います。


[資料1]
東京都「木密地域不燃化10年プロジェクト」
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/mokumitu/

[資料2]
・「首都被災〜木密地域に潜む災害リスク〜」(東京都都市整備局)
https://www.youtube.com/watch?v=Pd6J9cpead8

(その5)

2016-07-05

北海道新幹線

私:「今度札幌に出張した帰り、北海道新幹線に乗ってきます!」
知人:「、、、???」。「札幌から函館は飛行機ですよね。」
私:「いえ。ずっと電車です。もちろん。」
知人:「??!!」

という会話に見送られて先日、北海道新幹線に乗ってきました。
いくつか「都市イノベーション開墾」的に(?)発見したことなどを。
第一。新函館北斗から先の大沼公園、森、八雲室蘭、白老などの、これまで電車で行こうなどとは思わなかった地域がとても北海道らしく感じられ、ある意味感動しました。
第二。東京から新青森までの平均時速225キロに比べ新青森から新函館北斗までは149キロときわめて遅く、せっかく新幹線が通ったウマミがうすい。むしろ在来線廃止区間はデメリット。海底トンネル在来線貨物とすれ違うため高速運転できないなどの理由があげられていますが、たいへん惜しい。仮にこの区間も225キロ平均でいくと、現在の最速4時間2分は計算上3時間41分になります。
第三。在来線が転じた「道南いさりび鉄道」も大幅な赤字でスタートしており地元負担などを入れてなんとかしのいでいる。けれども、将来どうなるか不安。新函館北斗から札幌間も新幹線が2030年度に開通すると廃止される区間がかなり長くなることが予想され、さらなる地域再編につながることが考えられます。
第四。新函館北斗から札幌まで仮に平均225キロで走ると56分。全区間で平均225キロになったと仮定すると、東京札幌間は計算上4時間37分です。トータルにみて、こうしたプラス面と失いそうなマイナス面を比較するとどのような評価になっていくのでしょうか。

[参考]
・【コンセプトノート】都市イノベーション(Blog内統合ファイル)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141110/1415588957

進化する港北ニュータウン研究会

昨晩、第103回港北ニュータウン研究会が開催されました。
今回は地域でまちづくり活動を行ってきた4つの地元グループがその経緯を発表。合わせて、港北ニュータウン研究会で研究してほしい(研究したい)テーマ等を発表しました。
4つのグループは、中川駅周辺まちづくり(特定非営利活動法人ぐるっと緑道遊歩道研究会)、I Love つづきのまちづくり活動(特定非営利活動法人I Love つづき)、都筑ふれあいの丘まちづくり(都筑ふれあいの丘まちづくり協議会)、東山田準工業地域まちづくりプロジェクト(株式会社スリーハイ)と多彩。
このあと、東京工業大学、芝浦工業大学、日本女子大学の学生・院生らがそれぞれのテーマを発表しました。東京都市大、東海大も主力メンバーとして本年度も実践活動も含め研究を進めるとのこと。
港北ニュータウン研究会は地域のまちづくりを進めるプラットフォームとしてますます進化しているようです。

[港北ニュータウン研究会facebook]
https://www.facebook.com/pages/%E6%B8%AF%E5%8C%97%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A/289291671161258/

[参考資料]
・「地域貢献まちづくりモデルの検討」(『地域貢献まちづくりモデル開発』横浜国立大学、2005)
http://www.chiki-ct.ynu.ac.jp/40resrep/pdf/machimodel06-09.pdf

2016-06-25

天王洲ボードウォーク(その2:建築倉庫ミュージアムのことなど)

「これは、もしかすると、重要な都市イノベーションの一過程か、、、」との昨年の記事(→関連記事)から1年と少し。6月18日にオープンした「建築倉庫ミュージアム」を観に天王洲へ。何人かの建築家の作品のほか、坂茂氏のアンビルト模型なども(現在)展示されています。展示物というか倉庫収納物というか、「倉庫」という概念を超える都市の土地利用という面でも興味深いほか、「作品展」「オープンハウス」のような既成概念を超える場の形成という面でもおもしろく、また、倉庫業という貸しスペースと建築模型倉庫利用の立場と入場料を払ってそれを観に来る鑑賞者により成り立つビジネスモデル(それは建築模型でもよいしワインや家具でもよい)のような面もたいへん興味深いです。天王洲界隈の「T倉庫」そのものがビジネスとして進化している一断面を見ることができるともいえます。

昨年工事中だったボードウォークは1年の間にできあがっており、いくつかの機能が付け加わり、さらに「重要な都市イノベーションの一過程」が次に続いています。
その建築倉庫と天王洲ボードウォークの間の都市空間も、かなり意図的にデザインが進み、他になかなかみられない空間のつながりがさらに面的に進化しています。建築倉庫から出てきた幹線道路に何やら「Samurai」アイランドとかなんとかいう看板が出ているで誘われて2階に上がってみると、大きなインキュベーション施設(スタートアップオフィス)があり、「SAMURAI ISLAND EXPO’16」というイベントを開催中。
2020年、2030年、2040年に向けて、この地域はどんどん変わっていき、その過程では、今までなかった都市の土地利用や都市空間、ビジネスモデルがたくさんあらわれそうだと予感しました。

[関連記事]
天王洲ボードウォーク
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150520/1432086538

2016-06-24

マグナカルタ(1215)とEU離脱

EUからの離脱がほぼ決まりかけた本日午後1時前(日本時間)、BBCの画面に映し出された残留派のリーダーの1人は悔しい気持ちを精いっぱい抑えながら、「これが民主主義なんです。私たちは、この結果を尊重しなければなりません。」と語りました。
今回、超国家EUからの英国の「独立」を決めることになったこのような民主主義的手続を、国民は真に大切にしているようにみえます。このような精神や価値観は、いったいどこから湧き出てくるのでしょうか?

話は少しずれますが、昨年発刊された『思想のグローバル・ヒストリー』(デイヴィッド・アーミテイジ著、法政大学出版局、2015.3.15刊)は、思想を地理や空間と関連づけ、特に近代的な「国」が成立する理論的裏づけや、それが「独立」することの理論的根拠を、グローバルな観点から読み解いたたいへん興味深い図書でした。副題の「ホッブズから独立宣言まで」が本書の内容を端的にあらわしていて、ホッブズの思想は1776年のアメリカ独立宣言につながり、それはすぐそのあとに続くフランス革命(1789年人権宣言)につながったばかりでなく、19世紀初頭の中南米諸国の独立につながっていきます。
逆に、暴君の圧政から身を護り民主的な手続きによって地域を統治するシステムはいつごろ発生したのかと自分なりに歴史をさかのぼると、マグナカルタ(1215年)にたどりつきました。『人権宣言集』(岩波文庫 白1-1)の最初に出ているマグナカルタ。「このような精神や価値観は、いったいどこから湧き出てくるのでしょうか?」に関連しそうな話題を3点書きます。

第一。マグナカルタ成立の社会背景。暴君(ジョン王)に歯止めをかける主役になったのは当時のバロン(封建領主)たちでしたが、それだけでは多数派とならずマグナカルタ成立に至らなかったところで、「都市の商人達を味方につけ、とくにロンドン市がその門をバロン達に開くにおよんで」(人権宣言集p34)ジョン王は屈服し1215年6月15日に要求を受け入れたというところです。
第二。これと関係する、全63条のうち第13条。「ロンドン市は、そのすべての古来の自由と、陸路によると海路によるとを問わず自由な関税を保有する。このほかなお、他のすべての都市、市邑、町、および港が、そのすべての自由と自由な関税とを保有すべきことを、朕は欲し許容する」。
第三。今日のイギリス憲法の一部に、マグナカルタの一部が今なお含まれていること。特に、この第13条が含まれていること。イギリスには「これが憲法です」というものは無く、「一般的にイギリス憲法を構成しているとされる主要な成文法」はこれらです、と説明されていて、その中の最古のものがマグナカルタ1215で、前文と4カ条が生き残っているとされます。その4カ条の1つが第13条(実際には1225年版マグナカルタの第9条)だと解説されています。

このマグナカルタ第13条的精神が強く残っていて、自由が別の力によって奪われたり強く制約されそうになったとき、なんとしてでもそれを取り戻そうとする力が働いている。その1つの表れが今回のEU離脱という選択だったものと思われます。

[関連記事]
・『アダム・スミスとその時代』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140916/1410839084

2016-06-23

「科学だけで決められない問題の啓蒙について」(UP2016.5号、泊次郎著)

この1年ほどの間に出版された『南海トラフ地震』(岩波新書2016)、『首都直下地震』(同)、『富士山大噴火』(徳間書店2015)をとりあげながら、「科学だけで決められない問題」への専門家の向き合い方について考察したこの書評が気になりとりあえず積んでおいたものを、熊本地震がらみで思い出しました。
泊氏は前の2つの新書は「科学というより行政施策の解説という肌合いが強」く、上から目線で、正確な科学知識が欠如した人々に啓蒙しようとする考え方(「欠如モデル」)のため「どこかよそよそしく、「他人事」と捉えられやすい」としています。一方の『富士山大噴火』の方は火山の専門家が少ない、予知は実用レベルに達していない、危険な場所に立ち入れず研究ができない、などの問題をあげるなど「率直に火山研究のなげかわしい現状を打ち明けて」おり、このように率直に問題を打ち明け討議の材料を提供することが重要としています。

こうした解釈はさておき、私たちの身の回りには「科学だけで決められない問題」というよりも「科学を駆使してもいまだわからない現象」が多く、その解決を科学技術だけに求めても限りがあり、その“隙間”のようなものにどのように対処していけばよいかについては、まだまだ人間が発揮できるさまざまな能力や(⇒参考記事1)、実践と修正の連続に頼らざるを得ない面が多いと思います。
たとえば、自然災害の被災の可能性指標は日本は世界で5番目でありながら、災害に対する脆弱性は他の主要国並みと評価されている(⇒参考記事2)ということから、災害日本列島に不安を抱えながらも一生懸命それを克服するべく、科学や技術の力も借りながら工夫・努力してきた姿が浮かび上がります。

首都直下地震に限れば、その確率は「今後30年以内に70%」とされています。自分自身、関東に出て来てから40年ほど「明日にでも大地震が起こるかもしれない」と言われ続けていますが、まだ起こっていません。これからもずっと「明日にでも起こるかもしれない」と言われ続け、いつか起こるのでしょう。本当に明日かもしれません。
都市計画を専門とする立場からは、国土の人口減少もポジティブにとらえ、危険な市街地をできるだけ先行して減らすことや、少なくとも新たに危険な場所をつくらないこと、何かが起こったときそれを受け止められる「余地」を残しておくことなどを重視しています。先日もある町の都市計画マスタープラン改定作業の終盤で「津波のことは考えたが直下型地震のことは手薄では」との意見を受けてその場で皆で計画案をチェックし、「余地」に関する記述箇所を確認しました。

[参考記事]
1.『復興文化論 日本的創造の系譜』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20131111/1384141804
2.『災害復興の日本史
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130312/1363075438

2016-06-14

熊本地震調査報告会が開催されます(6月20日午後)

熊本地震から本日で2か月。その調査報告会が横浜国立大学で開催されます。

■日時
2016年6月20日(月) 14時〜17時
■場所
横浜国立大学教育文化ホール 大集会室
■内容
・今回の地震と揺れについて
インフラおよび家屋・ビル等の被災状況について
・生活への様々な影響について

[紹介記事]
http://www.ynu.ac.jp/hus/koho/16050/detail.html
[ポスター(pdf)]
http://www.ynu.ac.jp/hus/koho/16050/34_16050_1_1_160610045223.pdf

2016-06-01

バスタ新宿

東京新宿という地において、鉄道ターミナルと長距離バスターミナルを複合させることになったこの施設。これは「都市イノベーション開墾」と、先日、(用もないのに)御殿場まで試乗してきました。
本日の日経新聞(東京首都圏経済欄)によると、1日平均で1200便に約2万人が利用。割り算すると1台当たり10数名ということで経営面は心配になりますが、それはさておき、分散していたバス停を統合することで新宿駅周辺の渋滞緩和につながり(実証データはまだ見ていない)、利用者の満足度が上がる(これは日経記事にデータ掲載)など、メリットは大のようです。
こうした一般論は横に置いておき、「都市イノベーション開墾」的視点でいくつかあげてみます。
第一。鉄道駅をまたぐテラスに国際色豊かな旅行客等が腰を下ろし、今まで新宿では見られなかった(もしかすると日本のどこにも見られなかった)風景が出現しました。
第二。そのことと関係すると思われますが、成田空港新宿富士山をはじめ、高速バスと鉄道を組み合わせたさまざまな機会が相当増えたものと思われます(一か所にまとめられ便利になりわかりやすくなったことも含む)。
第三。鉄道と高速バスが組み合わされた他のターミナルとの関係がさらに便利になると、ますます<東京>という場所の国際的存在感が増すのではないかとワクワクします。
第四。深夜便や早朝便(そんなのある?)など、バスと鉄道が組み合わさることでさらに都市における時間そのものを開拓している(する可能性がある)などと考えます。特に都市の国際化を考えたとき、重要な観点かもしれません。
第五。新宿という街に、新たな可能性がひろがったという視点もありそうです。やや拡大して考えると、もはや新宿代々木は一体化されつつあること、新宿御苑のような貴重な都市空間の活用と結びつけて考えることで、<新宿>というブランドがまた進化する可能性もありそうなことなどです。

ところで、御殿場からの帰りは新幹線「こだま」でした。お客の過半は外国人。本記事でも<東京>というとき、こうした広域的なイメージをもつことが重要そうだと考えたりもしました。

2016-05-26

“朝日座でロックだぜ!”(朝日座を応援します(その4))

本日の岩手日報(Web版)に掲載された記事「沿岸唯一の映画館シネマリーン閉館へ」を見て、朝日座(南相馬市)の「その後」を書いておかねばと思い立ちました。岩手日報の記事は、岩手県の沿岸部で唯一残っていた映画館(全国で唯一の生活協同組合運営)の赤字が膨らみ閉館することになったとするものです。

朝日座。
「3.11」を乗り越えたものの(その1) 、築90年の木造の元映画館(旧芝居小屋)は雨漏りに悩まされそれをなんとかしようと「朝日座を楽しむ会」が寄付を募って屋根を改修(その2) 。さらにこれまでの取組みや建物調査結果等が報われ登録文化財となった(その3) 南相馬市の朝日座。
その朝日座で映画+ロックコンサート(“朝日座でロックだぜ!”)が行われるというので、先日、久しぶりにおじゃましました。ハードロックコンサートに行ったことは一度もなくとても躊躇しましたが、「これはただのハードロックコンサートではない。改修したとはいえ築93年にならんとするあの建物がハードロックで壊れやしないか見届けるべきだ」「いやいや、そのような価値ある建物でハードロックが聴けるなどという機会はめったにないはず」「そんなこと言ってないで、朝日座を楽しむ会のOさんに会いに行くべきだ」などと自問しながらバスで「帰還困難区域」を横切り、朝日座へ。
映画もよかったし、ハードロックのほうも地元グループの友情出演ありそのグループリーダーの母親の声援ありで、なかなかのものでした。

朝日座が映画館かというと今は「元映画館」。けれどもその分、今回のハードロックコンサートも含めて、地域を元気にするさまざまな活動を展開中。
ちなみに、朝日座はハードロックごときではビクともせず、私の心配は杞憂に終わったのでした。

[参考]
東日本大震災復興計画・復興事業(Blog内統合ファイル)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20120305/1330943180
・【コンセプトノート】都市イノベーション(Blog内統合ファイル)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141110/1415588957

2016-05-24

オクシズの縁側カフェ

2年ほど前に「盆栽カフェ」を記事にしました。当時、気づいてみるとあの原宿「The Share」にも盆栽(ミニサボテン)がテーブルに置いてあり驚いたものです。今度は「縁側カフェ」。こちらのほうが空間的にはピンときます。
きっかけはおとといの毎日新聞。「ぐるっと首都圏」欄でオクシズを取り上げています。こう書くとオクシズを知っていたようにみえますが、最初は「???」でした。そのオクシズの大沢地区で、23世帯が参加する「縁側カフェ」なるものをやっている、という記事です。そしてなにより、以下のような呼びかけ文が心に響いたのでした。

「何もないところで、皆様に満足していただけるおもてなしもできませんが、季節ごとのお茶請けをご用意してお待ちしております。農家の縁側でどうぞのんびりしてください。」

少し正直すぎて、こちらが戸惑ってしまいますね、、、
「縁側カフェ」と名乗るカフェは各地にあるようですが、これだけ皆で「地域おこし」としてやっているところははじめてかもしれません。少し引いて客観的にオクシズをみると、静岡市では「オクシズ地域おこし条例」を制定(H27.4.1施行)してオクシズを盛り上げていこうとしているようです。現在、この条例にもとづき、「オクシズ地域おこし計画」の見直し作業が進行中。
それにしても、静岡市は大きいです。Google mapで大沢地区をかなり山の中に発見したのですが、静岡市全体からみるとまだ中心市街地に近い距離です。

2016-05-23

Sunken cities (アレクサンドリア開墾)

「都市イノベーション開墾」(第1話〜50話)を受けて、本日より、「都市イノベーション開墾2」をスタートします。都市イノベーションを“開墾”しそうな話題を世界中から見つけ出して(実際には日々の生活の中からこれぞという関心事を抽出して)、書き留めていきます。

第51話。
先週、大英博物館で「Sunken cities : Egypt’s lost worlds」展がはじまりました。ホームページを開いてみると、海底に眠る都市の中から像を引き上げる、神秘的というか心ときめくというか、現代に生きる自分を一瞬忘れそうになるショットが出ています。このたびの展示はアレクサンドリア近くの「Herakleion」と「Canopus」という古代エジプト都市が、ナイル河デルタ地帯の液状化等により海底に沈み込んでいたものを、近年の水中考古学や空間認識技術等の発達によって「発見」し、引き揚げ作業を行った(作業後は元に戻す)成果を大規模に展示するもので、11月までの半年間開催されています。

話は飛びますが、昨年、『アレクサンダー』という映画を観て、自然に、アレクサンダーを撃退した古代インド文明のみならず、古代アレクサンドリアへの興味が湧いてきました。本ブログ『十二世紀ルネサンス』、あるいは2009年の映画『アレクサンドリア』などにより、現代科学の基礎を築いたアレクサンドリアという都市の魅力にますます引きつけられていたところです。
このたびの大英博物館の展示はそのアリクサンドリアが繁栄する一歩手前の時代の交易都市についての考古学的成果のようです。この考古学チームは20世紀の終わり頃に、アレクサンドリアそのものの海中に没したエリアの考古学的成果をあげていました。

都市の繁栄とははかないもので、現代につながる数々の科学的成果をあげたアレクサンドリアも、学芸に力を注ぎ文化・科学の拠点をつくった3代の王が去ると力を失い、映画『アレクサンドリア』でとりあげられたキリスト教による迫害や、相次ぐ地震等により都市は衰退。18世紀末には人口4千人ほどの「アレクサンドロス大王が初めて目にしたときの漁村と変わりない状態に戻ってしまった」(『古代アレクサンドリア図書館の物語』柏書房、2003、p227)とされます。しかし都市とはおもしろいもので、1798年にナポレオンエジプトに侵入。その後いろいろあって、現在では、人口400万人を超える大都市になっています。
けれども都市というのはさらにおもしろいことに、では、アレクサンドリアの都市の真価は?と問われるとき、やはり古代アレクサンドリアの魅力ではないかと思ったりします。海中に沈んでしまったり、海中に沈んだ古代都市の上に現代のオフィスビルなどが建っていたりして、「本当のアレクサンドリア」についてはまだまだわからないことの方が多いわけですが。