『進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来』

マット・リドレー著(大田直子ら訳)、早川書房2016.9.25刊。原題は「THE EVOLUTION OF EVERYTHING」、その副題は「How New Ideas Emerge」。
サイエンス・ライターの著者が、「世の中のすべてのことを、すべてボトムアップ的にできたのだと言い切ってみよう」と挑んだ書。第1章の「宇宙の進化」からはじまり、道徳、生物、遺伝子、文化、経済、テクノロジー、心、人格、教育、人口、リーダーシップ、政府、宗教、通貨、インターネットの進化が次々に取り上げられます。結局、広い意味でのイノベーションは1つ1つ、起こるべくして起こる。それは政府や誰かの意図やデイザインにもとづいて起こるのではなく、ごく自然に(進化的に)起こる、ということを、広範な分野の成果を薄く広くながめて論じています。

実はこの春学期の大学院講義『市街地創造論』において市街地の変化や創造を「進化」ととらえて議論した際、本ブログを「進化」で検索するとかなりの件数がヒットすることを発見??しました。それは本ブログがスタートして4日後の2011.5.20に地域のイベントの進化としてあらわれ、2011.9.6に都市計画家石川栄耀の都市計画観と関連して議論し、2011.11.8の「3.11」からの集落復興についてそう表現したのが最初の3つでした。(本記事含め58件)
本書で都市の進化そのものを議論しているのは第5章「文化の進化」においてですが、その分量は多くはありません。むしろ、すべての章を通して「進化」というものがどういうことか、「進化」という切り口では難しいと考えられてきたことが最近の成果によりどこまで進化的に理解可能になったか、自分が行おうとしていることは「進化」の目で一歩引いてながめるとどういうことかなどを考える手掛かりや刺激がたくさん盛り込まれている楽しい図書です。