アジスアベバ開墾(3) : 多数の死者まで出したマスタープラン改訂の意味

「共生都市」とは、「である」という状態をあらわすのと同時に、「常に葛藤はあるがそれらを賢くマネジメントできる力が備わっている」ことだということが、まだ結果は見えていませんが、現在進行中のマスタープラン改訂プロセスから見えてきそうです。
アジスアベバは諸民族が連邦を形成して人為的につくったエチオピアという国の、これもまた人為的にその境界を定めた首都であるとともに、オロミアの中心都市でもあります。
アジスアベバの人口が増加し将来もさらに発展しそうなため、現市境の外側に「Special Zone」をつくって都市計画をおこなうマスタープランの提案を2014年春に行ったところ、オロミアの土地に一方的に提案されたとの怒りが爆発。騒然となり、死者140名を出すまでに。その原因を探ると、大きく以下のように整理できそうです。

構造的には、アジスアベバという都市そのものがオロミアの一部にあり、市域を大きく拡大して都市計画を行うためには十分な合意形成が必要だったにもかかわらず、一方的に計画が発表されたことによります。実際の計画プロセスは、アジスアベバ周辺地域の代表者も入るジョイントプロジェクトとして進められてはいたようですが、オロミア側からみると、「我々は農業州なんだ。都市側の理由だけで勝手に考えられるのは大問題。我々の権利は憲法にも記載されているんだ」と、特に憲法上の原理的な問題にまで触れる議論をしています。
この計画。フランスの協力を得てパリとリヨンのマスタープランに学び作成したもの。アジスアベバの周辺に約110万ヘクタールの土地を拡大して産業用地や住宅用地等を含めた総合的な計画にしようとするものでした。
あまりもの反対および多数の犠牲に、ついにその計画案を2016年1月に撤回。2016年夏には、周辺地域への拡張を大幅に縮小した新しいマスタープラン案が発表され、「参加手続を重視して進めていきたい」と説明されています。

実はこの問題の背景には、国レベルでオロモ人の権利が主力のアムハラ人によって不当に制限され差別されてきたという強い不満があり、アジスアベバが大きくなって得をするのはそういう人達だけであって、オロミアの農地は正当な手続きもなくこれまでも取り上げられてきたという怒りがあります。
運営を誤ればクーデターや内戦にも発展しうる(エチオピアでは大丈夫だと思いたいところですが、両隣には内戦状態の国や「崩壊国家」がある)、まさにアフリカにおける「国」の存立基盤や「首都(圏)」の計画根拠にかかわる重要なポイントといえそうです。
「葛藤を賢くマネジメントする」には相当な能力が必要。工学技術のみならず、人文社会等も含めたトータルな専門性・実践性と、都市や国を良くしたいというときの「良く」「する」ことについての共通目標づくりや遂行全般に関する能力の持続的進化が必要なことを、ひしひしと感じます。