坂井豊貴『マーケットデザイン』

マーケットデザイン: 最先端の実用的な経済学 (ちくま新書)

マーケットデザイン: 最先端の実用的な経済学 (ちくま新書)

献本御礼.

内容に関しては,おそらく今の日本で最も信頼出来る著者の一人によるものであるから,多言は要しない.私としては随所に見られる「坂井節」が楽しくてたまらない.

一例を勝手に引用させてもらうと,例えば「学生寮の部屋の交換方式」という一般の「経済的関心」からすれば「どうでもよいこと」の研究が腎臓移植マッチングの研究へと繋がっていくくだり.

部屋の交換は経済学で扱う問題としては小さなテーマです.財政政策(中略)といった大きなテーマと比べれば,ずいぶんとどうでもよいことのように思えます.
この「どうでもよいこと」を追求していったのがトルコ出身の研究者,アティラ・アブドュルカディログルとタイフン・ソンメツらです.

著者本人が意識していたかは定かではありませんが,私としては当然のことながら,この記事を思い浮かべます.

もう一つ,あとがきから.

マーケットデザインの知見が日本社会に多く採り入れられることと,ただ面白いだけの基礎研究が広く尊重されることを,ともに願っている.