英語教育の明日はどっちだ! TMRowing at best Twitter

2016-07-19 21世紀の、ライティングを教えよう。

今年度はカレンダーの関係で一足先に夏休みになりましたが、夏バテ気味で更新も滞っていました。

期末試験の出来があまり良くなかったので、夏期課外講座も悩み処です。

教科書の選定も自分の担当の「コミュニケーション英語 I 」は何とか済ませましたが、次年度に向けた「改訂版」が幾つもでているので一冊読むだけでも大変。というのも、教科書会社と現場教員の間の数々の「不祥事」の影響で、見本本は各校一冊しか送付、配布されないからです。さらには、「改訂しない教科書」は送られてこないのです。これって、英語科教員だけで十人くらいいる学校は大丈夫なんだろうか、と心配になります。

現任校では「学校設定科目」を設置している関係で、開講していない「英語表現」は別に選定する必要はないのですが、読み比べ。現行本では、啓林館のVision Questが異様な採択率でしたので、今回の改訂版に際しての私の不安、危惧は「VQ横並び」だったのですが、複数社で見事的中、という感じです。今回の新刊(予定)の見本本で、いいずな書店の “be” が検定を通っています。さらには、啓林館の “Vision Quest” のシリーズ(?)で、一番易しいという謳い文句で “Core” というのが検定を通っています。数件出版でも “Dual Scope” が出ました。VQの現行版が通っているのだから、もう教科書検定では、政治的なことに触れない限りは何でも有りなのでしょう。

呟きの方では連投していましたので、そちらを探してお読み下さい。

http://twilog.org/tmrowing/month-1607/3

  • 学習指導要領で「英語表現」の項目をまともに読んでいて、どうしてこんな教科書が作れるのか?

と思うのは、私が歳を取って、流行に乗れなくなったからなのでしょう。

旧指導要領での「オーラルコミュニケーション」「ライティング」という二つの科目で検定教科書を書いてきた人間としては、この二つの科目の墓標に手向ける花を用意しておかねば、という心境になります。

今年度私が担任をしている高校1年生も、始めての「模擬試験」を受験しています。これもベネッセの「商品」なのですよね。以前は、高1、高2は英語を易しいものに書き換えるライターがいないのか、英語のつながりとまとまりのクオリティにばらつきがありすぎて、なんとかして欲しい、と思っていましたが、今年度早々の高3の模試の設問でも酷いのがありましたので、そろそろ利用する模試を変える時期、というか「模試」そのものの利用を再考する時期にきているんじゃないかとも思います。

高1でも1回の受験料で3000円以上かかる訳です。

こちらをご覧下さい。

Charile’s.jpg 直

how things work.jpeg 直

Maths.jpeg 直

Q&A animals.jpeg 直

Q&A general.jpeg 直

Q&A your body.jpeg 直

Q&As.jpeg 直

Qs children ask.jpeg 直

Science.jpeg 直

事典類.jpeg 直

現在、学級文庫に、この類いの「英語ネイティブのおこちゃま用図鑑・百科事典」を入れているのですが、これは私が英米だけでなく、世界中の「密林市場」を探して、コンディションの良いものを買いそろえているものです。中古で1冊1500円くらい。一回模試を受けなければ、一人当たり、この類いの本が2冊、学級文庫に増える計算です。「なんだかなぁ」というエイブンや作問をもとに「点数」や「偏差値」が返ってくる模試を受けるよりも、多種多様な英語本が豊富に揃った教室で、週に2時間とか、ひたすら読む授業をつくる方が余程英語力伸長に寄与するのでは、と思っています。

さて、

先週末は遥々横浜まで、TEAP関連で「アカデミックライティング指導入門」のようなセミナーに参加してきました。

※以下、リンクをクリックするとpdfファイルが開きますのでご注意。

指導者向けアカデミックライティングセミナー及びスキルアップ講座

https://www.eiken.or.jp/teap/info/2016/pdf/TEAPWritingSeminar2016.pdf

今後、北海道と東京の会場でも開催される模様。

ネタバレになるので8月末まで詳細を書くのは控えておきますが、資料ダウンロードはできますので、事前に少しは学んでいた方が良いように思います。

TEAPライティングテスト・指導者用手引 (この中に、更にリンクがあります)

https://www.eiken.or.jp/teap/construct/writing_handbook2.html

因に、第2部の少人数制ワークショップは、ほぼ英語で進行しました。この後の会場がどうなるかはわかりませんが、情報提供まで。

改めて思ったのが、次に示すような本は高校現場で殆ど活かされていないのだなぁ、ということ。

外部試験の independent & integrated tasks の対策だけでなく、template に依存せず、つながりとまとまりを作るヒントが満載の教則本。

TOEFL TEST対策iBTライティング

四軒家 忍 著

TOEFL TEST対策iBTライティング

TOEFL TEST対策iBTライティング


「パラグラフ・ライティング」をどのように授業に取り入れていくか、という指導者向けの概説書。

パラグラフ・ライティング指導入門

大井恭子 編著


実際に「アカデミック・ライティング」を必要とする人への日本語で書かれた入門書。

英語論文・レポートの書き方

上村妙子・大井恭子 著

英語論文・レポートの書き方

英語論文・レポートの書き方

既に、良書が流通しているのに、その良さどころか、存在にさえ気づかずに通り過ぎている「異邦人」が多いのであれば、多くの学校で「英語表現」の教科書採択が、あのような 惨状 状況になるのも無理からぬことです。

そして、いつも同じ話。

より良い英語で、より良い教材

より良い教材で、より良い指導

本日はこの辺りで。

本日のBGM: おなじ話 ( ハンバート ハンバート “FOLK” より)

tmrowingtmrowing 2016/07/20 07:54 一部、加筆修正。

2016-07-07 ”as part of the whole design”

過去ログでは2つに分かれていましたが、現任校の生徒に配布する資料を作成する都合で、一つにまとめましたので、こちらにもアップしておきます。

「出藍の誉れ」

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060216

”Voices beyond the border”

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120317

90年代と00年代の生徒による授業評価です。

人はこの手の「自己評価」で、敢えてマイナス点を付け、自分の努力や、費やした時間を否定しようとはしない生き物なので、「話し半分」どころか、1/3くらいに割り引いた方が健康的だと思うので、微妙に3〜4人分くらいを鏤めておきました。

旧態然とした「文法訳読」が諸悪の根元と思っている方達には、どのような授業なのかイメージしにくいかも知れませんが、とことん言葉を読み、自分で考え、筆者と対話しようと志向する授業だと思ってくれると喜びます。

<Reading comprehension(内容の理解)>

1.文の仕組み・構造の読み取りに関して

・1年間近くやったことで、それまでは一度戻ってうんうんと分析してから理解していたものの多くが一回読んだだけで分かるようになった (パターンに慣れたのか)。またそれまでは全く理解できなかった文の目を付ける場所が分かるようになって、うんうんと分析すれば理解できるようになった。

・ これは得意な方だったので、よりスムーズに、より注意深く、より丁寧にやるよう心がけるようになった。対比などには必ずマークを付ける。

・ 英文をただ機械的に読むのではなく、主題は何なのか、筆者の主張、立場はどこなのかを意識的に読むようになった。そのために例と主題文との区別、名詞・名詞句のチェック、関係詞などがたくさん含まれた文での中心となる動詞のチェックを心がけた。あと、完了形などの時制のチェックに厳しくなった。

・予習段階で文の中のS+Vをなるべく近づけて書くように心がけた。初見で読む時もSVの関係が分かるようになったので良かった。

<指示語の内容把握>

・ それまでの学習でitを「それ」と訳して過ぎていたのが誤読の源であるとしみじみ実感。すべてしつこく明確にしてゆくようにしたら、いろんなものが見えて くるようになって驚いた。そのうち頭で明確にしなくても目の裏側あたりで明確に出来るようになるといいなと思う。精進。

・ まだまだ間違えるけれども、間違えやすいことに気づいたから注意して見られるようになった。

・ itは単に単語や文の一部だけではなく、それまでの内容を指し示す場合があるので、itの内容理解に努めた。単語や部分で指示できる場合は、線で結び合わせた。逆に、それをしないと、まだ次の内容がわからなくなる。

・ 単なる名詞句を当てはめる作業ではなく、その名詞につくべき限定内容までも考えられるよう心がけた。これは未だうまくできないが、これからも続けていきたいと思う。Thisなどで文章を指す時に、どこまでが範囲なのかをよく考えるようになった。

<文の中の並列構造・共通関係・パラレリズム>

・ それまでのほほんと読んでいたけど、こことここがつながって対比されてという分析ができると、文字に頼りすぎず誤読が減った。先生のいう次の推測というのができるようになりつつあって、そうすると具体的にというか、頭の中のまとまりが、とてもよくなる。

・ 素早く気づいて、素早くマークすればよい。頭の中で整理しながら読む。

・ andの持つ意味 (前後は並列か?) などや、both …and …, 比較級 (more, less, much more, no less than) などの確認。asの用法に注意。

・andは常にチェックして、その並列されている部分の前後にも意識するにした。"A and B which ..."という時に、whichの先行詞がB単独なのか、A, B両方なのかを、2つの語句がどういう点で共通なのか考えながら判断できるようになった。

<情報構造>

・前提と焦点というのが、これまで雑然としていた文に一つの共通点を与えた。

・主題をつかんで、先を予想しながら読み、要らないものは削除。

2.センテンスの中の語句の意味の理解

・私はボキャブラリィが少ないと痛感した。語句が、5行中に2つくらい分からなくてもどうにかなるかもしれないけれど、3つ分からなくて、し かも大切なところが分からないともうアウトだと思った。そういう訳で精進を続けて (ピー単のお世話になったり) 少しずつそういう悔しさも減ってきた。あとはシリウスもやって、イディオムも見て目の裏側あたりで理解できるよう精進したいです。

・一単語に一つの意味は禁物。先生の繰り広げる1つの単語やその仲間の単語が持つイメージやニュアンスを吸収整理することでうまく読めるようになってくる。

・授業での先生の単語の類語や、単語の英語での説明で、その語句が持つイメージを捉えようとした。

・文章の流れの中で、ある一つの概念がどのように言い換えられているかをチェックすることで、その語句の持つ意味の幅がわかるようになった。具体的な名詞が出てきた時に、それが何の例なのか、サポートなのかを考えるようにしたのはとても理解を助けたと思う。

3.語句の表している意味内容そのものの理解

・これが先生に教わって得した点だと思う。分かっているつもりで分かっていないというのが分かっていなかった。つまりそれはどういうことなの か、と言葉を置きかえて、具体例を出して、図にしてみて、そうするうちに、英語と日本語って全く別の言語なんだなと思えてきた。ネイティブの発想という言 葉が、とてもあっ!というかお得でした。日本人同士でも言葉に対する価値付けは微妙に違うし、まして英語などは。

・日本語訳してみても全く意味が分からない文はどうすればいいのか?自分で「…ってことは〜ってこと。ってことは…」をすればいい。

・英語というよりも、その英文の内容自体に対する基本知識が必要だった。先生のつっこみが激しかったので、この授業では一番この点で鍛え上げられたと思う。授業後の復習では、この点を重視して読み直したつもり。それでも分からなくなった時には先生に質問した。

・とくに、動詞、形容詞から生まれた名詞の意味をよく考えるようにした。日本語訳する際に、主述にまでおこして書くという姿勢がだんだんと身についてきていると思う。あとは、単語が単なる事実を表す語か、または評価を表す語か、ということを考えるようになった。

4.筆者の意図・焦点

・<文の中の並列構造・共通関係・パラレリズム>ができると分かるようになるのだと思います。

・プラス、マイナスの現れる語句には印をつける。major, main, leadingなど最上級格のことばにも印。

・単語そのものの意味から読み取るプラス、マイナスの評価と、その英文でその単語が持つプラスマイナスには、記号を付けておいた。否定の接頭辞や、should、比較級のチェック。A rather than Bで、Aを選択し、Bを却下していることを初めて知った。

・insteadやrather thanなど、一方を却下する言い方を学び、文章の中で実際に触れることで、筆者の焦点の明確な理解が出来るようになった。過去形で事実を述べている文章では、特に現在形が出てきた時に、そこにある筆者の意図を考えるようになった。単なる一般論としてのまとめなのか、今までは〜だったけど、という「ここか らが本題」という目印なのか。

5.主題の発見・把握

・パラグラフリーディングを教わった時に、一文目、二文目に主題がくるとか、最後の段落を読め、とか言われてうまくいかない場面が多々あったけれど、ああ英語ってきちんとしているようで柔らかな部分もあるんだと思う授業でした。何が言いたいのかは、きちんと読んでゆけば分かるんだなと思った。 その発見のしかたも知ることができたし、主題が分かっていると誤読が減る。あとは主題の内容を理解できる単語力と…思考力?が不可欠だと思います。

・全部完璧に読まなくても主題の把握が可能な事に気づけば気も楽になった。筆者の意図、焦点の把握で必要なことに注意すれば分かる。

・地の文で疑問文があった場合には、その答えに当たる部分を探すことで主題を発見した。

・先ず何度も出てくる語をチェックするようにした。これで大まかなテーマをつかめた。あとは名詞句としてまとめられている部分を意識するようになった。名詞句をしっかりつかむことはテーマの正確な理解に欠かせないと思う。否定が出てきたあとは必ず肯定を探すことを心がけるようになった。

6.段落構成・ロジックパターン

・これは未だによくわかっていない。パターンがあるのは分かるけど、全部読んでから、これは主題、これは具体化、また主題、まとめと分けたりしている。凄く遅いと思う。

・「次は例!」など、よっぽど簡単なことしかわからない。特に限られた時間内では難しいので、まだ復習の時とかに見ている。

・最初の段落に筆者の主張が明らかになっていれば、その後は例や裏付けかな〜?と思いながら読み、最初に明らかになっていなかったり、問題提起がされていれば、文中の例から筆者の立場をさぐりつつ、最後に主張が書かれているだろうなと期待しながら読んだ。あんまり、そううまくはいかなかったけれど。

・最終段落は全体のまとめの場合と、そうでない場合があることを知って、要約する際にただつなぎ合わせるだけ、(段落ごとの topic sentenceを)という作業をしなくなった。

7.筆者の心的態度を表す語句

・これがすぐ分かるようになると誤読が減るしスピードも上がる。持ち歩くブリーフケースには絶対入れるべきだと思いました。

・ 面白いように見落としてしまう助動詞表現。分かっているのについ流し読みしてしまう。常に頭の隅に置いて読まなければならない。

・ shouldやmayなどの助動詞から言い切りの形なのか、あいまいなのかを判断。要約の時はその判断が大切だった。また可能性を含んでいるのか、いないのかも重要で、canやno、否定の意味を表す語には敏感になった。

・文修飾の副詞や助動詞をよく見るようになった。助動詞wouldなどは筆者が断定を避けている→しっかりしたsourceがないのでは?というふうに考えるようになった。筆者の心情と、事実とを混同しないように読む姿勢が身についた。

<上記を踏まえた上でもう一度初めからやり直すとしたらどうするか?改善点・変更修正の必要な点を述べよ>

・もっと早く先生の言ってたことの重要性が分かっていたらよかったと思う。でもそういうものを理解するにはそれなりに時間がかかるし、結局なるようにしかならないのだと思います。なるようになりました。とりあえず今分かっているぶんに力を注ぐしかないのでしょう。そのうち、あっこんなの知ってればなあというのが出てくるかもしれないけどそれはそこまでの失敗のおかげで整理がついた喜びというのがあるんだろうと思います。今できることをやります。

・ がんがんマークしながら読む。難しいところで足止めを食らっていないで読む。常に主題のことを考えながら、離れないように読む。英語だからってびびらない で、書いている人は人間なんだから、次に何が来るかなど機転を利かせて読む。筆者の意図を暗示している語には要注意。

・ 予習の段階での疑問点を紙に書くかして、授業ではその点を中心に解説を聞くべきだったと今さら思った。もっと名詞の四角化で視覚化や、動詞にはとじかっこをつけたりすることを徹底していれば文の構造理解がもっとできたと思う。

・ 英文を一つの大きな流れとして読み取るのが甘かったと思う。断片的に意味を理解するのではダメ。その内容が英文の中でどのような効果を持っているのかを考えたい。

・ 現在完了形、過去完了形、進行形の表現を未だに読み流してしまっている。

・語彙がないせいで読めないことが多すぎるので、良く扱われるテーマに出てくると思われる語は、予め学んでおくべきだと思った。英語だけでなく幅広い知識と教養を身につけなければ英文読解は出来ないと思うので、英語以外(理科・国語)の学習もおろそかにしない。予習が不十分だったと思う。必ず一度は辞書無しで目を通し、分からなければ何度も読んで「分からない点」を具体化する作業がもっと必要だった。

<問題の演習よりも読解そのものに重点を置く方針について>

・ 英語を理解したいという欲求が高まった。そういう気持ちは勉強する時にとても有効に働くし、英語を少し面白いと思うだけでも有益です。それにやっぱり読解ができれば演習もできるはずなんだろうと思うし。逆はどうなのか分からないので、きっと良かったんだと思います。

・ はじめのはじめはパニックを起こしかける生徒も多いと思うけれど、のど元過ぎれば熱さも忘れるし、良薬は口に苦しって感じでとてもいい! ということにだいぶ後になってから気づく。

・ 私はその方が好きだった。英語を読んでいる、というよりも日本語を読んでいる感覚で楽しむことができた。1学期に読解中心の授業を受けたことで、入試の問題を解いた時にそれまでより解けるようになった。演習問題をいかにして解くかではなくて、内容をいかに理解するかが、やっぱり入試でも大切なんだなと思った。

・穴埋めなどは読解がしっかりできていれば自ずと分かるし、T/F問題は内容まで考えなくても形だけで答えが出てしまう場合もあるので、そういう演習をやるよりは読解を固める方が大切なので良いと思う。

・難しくても良問が多いテキストの方がいいので、今回のテキストはとても良かったと思う。ジャンルが明示されていたり、アドバイスがあったりして、自学自習もとてもやりやすかった。

<テキスト・教材の選択 (レベル・内容・構成) について>

・ 比較のしようがないので何も言えません。でもしんどかった。負荷が大きければ大きいほど力がつくと先生が時々言っていましたけど、 (なんか筋肉的勉強法だと思っていました)、多分それは真理なのでしょう。他でいろいろ失敗したらよく分かるのかもしれません。

・ 適当である。レベルは低いのは困るけれど、高い分にはついていけばいいと思った。そう思うことが大事だと思う。内容は様々なジャンルのものが揃っていて飽きが来ない。

<後輩へのアドバイス>

・ 先生の言うことを理解しよっ、と一生懸命になれば、早いうちに、どうやれば英語がぼろぼろほぐれるのか分かるようになると思います。そうしたら後は精進あるのみだと思います。頑張って下さい。

・ この時間は英語オタクになりきって臨みましょう。オタクになってしまえば、なかなか楽しいものです。先生のおっしゃることは、はじめは、その多くが呪文のように聞こえることでしょうが、徐々に、徐々に、呪文は言葉として頭に入ってきて、しばらくすると「もしや、私も使えちゃうかも…?!」なんて思えます。そうしたら、本当に面白くなってくる。そして、そこに行くには、努力、予習、疑問、感動、不屈、授業中起きているための前日の睡眠時間が必須なのでした。

・ とにかく予習は怠らずに!最初はきついかもしれないけれど、人間やってできないことはない。英文を読むぞ!というのではなく、ただ文章を読む気持ちで取り組んだ方がよい。基本的なことに思えるかも知れないが、時制のチェックや関係詞がどこに係っているのか、助動詞・可能性などに敏感になるべし。主題が読み取れるようになると最高。たとえ分からなくて、くじけそうになっても、自分の納得のいくまで追求しましょう。先生がこわくても、バカだと思われても、どんどん質問しましょう。でも、一番大切なのは、この授業、テストに負けない強い精神力を持つことと、楽しむこと。この授業を選択して損はない!

・とにかく予習して下さい。文全体の意味が分からなくても、SVくらいは予想をつけておくこと。あとは辞書を使わずに一度は目を通すことが大切です。分からない点は具体化しておくことも忘れないで下さい。先生の説明を聞けば理解できるのは当然なので、その後で自力で見直し、身についているかを確かめることも大切です。

都立高校、都内私立高校から山口県の私学へと、月日以上に流れ流れてきた感はありますが、その時々の英語教育の流行とは距離を置いていたかなと思います。ただ「流れ」であるからには、通底するものが確かにあるだろう、という再再録でした。

本日のBGM: Gypsy (Suzanne Vega with Richard Thompson)

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2016-06-29 You are what you don’t write about.

週末には更新しようと思っていたのですが、先週の木曜日、金曜日と大雨の影響で二日続けて休校となり、授業が欠けた分の埋め合わせや、試験問題の作り直し等々、思うようにはならないものです。土曜日課外で、なんとか授業の方は軌道修正したものの、今度は月曜日から体調を崩し授業と期末試験の準備で手一杯でした。

現任校のカリキュラムでは、高3の学校設定科目「クリエイティブ英語」で、1学期はナラティブパッセージを書かせています。四半世紀使い回したネタも多いので、昔のファイルを眺めていたら、面白いものに再会。

前任校時代だから、10年ほど前でしょうか。科目「ライティング」での実践に基づく進学校教員を対象とした研修の質疑応答が出てきたのでご紹介しておきます。(先日、「呟き」で連投していたものと基本的に同じものですが、一部コメントを補足しています。)

Q1: 大変素晴らしい実践だと思いますが最小限の負担で最大限の効果を引き出す工夫について何かヒントがあれば教えてください。

A1: 何事も新たな取り組みをするときは、無駄があるものです。私は「最小努力、最大効果」ということを考えたことがないので、とにかく、生徒の能力と自分の実践を信じて、結果に隷属しない気概が大切なのではないでしょうか?

これは、質問者が望んだ回答にはなっていないのですが、私をよく知らない人には分かってもらえないところかもしれません。でも、まあ、普段の授業でも、クラス担任としての対応としても、基本はこんな感じです。


Q2: 普段の授業と実際の大学入試における採点基準について差は感じられるでしょうか?

A2: 東北大や阪大のように、大学が出題意図を公表しているところは稀ですので、大学でどのように採点されるかはあまり気にしておりません。あくまでも、自分のシラバスの中で、高校生がどこまで英語らしく書くことが出来るか、という点で評価しています。

ここでは「稀」と言っていますが、大学側の変化はこの10年で著しい進歩を見せていると思います。今は無き『英語青年』の特集 (2006年4月号) での私の主張の方向に少しずつ近づいているといえるでしょうか。

九州大学の「標準解答例」の配布。金沢大学の「正答例」の公開など、大学の公式見解が表明されているのは歓迎すべきことです。

「大学入試の自由英作文は減点法」等と言っている人が受験指導の界隈には未だにいるようなのですが、受験生や高校生が大学に情報を公開するよう求めればいいのに、といつも思います。

因みに、私の母校でもある東京外国語大学は、昨年度から、詳細な採点基準を公開しています。

問題の難易度や採点基準の中身はともかく、「公開する」という姿勢は良心的です。

(http://www.tufs.ac.jp/common/is/nyushi/kakomon/1-1zen-e.pdf)


Q3:添削の効果的なやり方は?あまり労力をかけずに大量のペーパーを処理するにはどうすればいいのか…。

A3: たくさん書かせなければ、添削の労力は減りますから、introductionの段落とconclusion段落の英語は既に与えdevelopmentの部分だけを英語で書かせるというように、量をコントロールすることと、idea generationの手法を工夫して、アイデアを出すときに語彙指導をしてしまうことだと思います。添削など、書かせた後に待っているであろう労力を、事前のステップに振り分けておく、と考えてみては?

現行の『英語表現』の教科書を見ていて痛感しますが、短く書かせるのは大変なんです。50語程度で、「つながり」と「まとまり」がある英文を書くのは至難の業。そのことをまず指導者が体感、体現しないとダメでしょう。のり代とか踊り場とか、ある程度のムダを許容する「分量」が必要だからこそ、『パラグラフ・ライティング指導入門』では、テクストタイプごとに段階的な指導手順を示していた訳です。

  • 全体を通してみると80語とか、150語とか、300語といった分量になる「英文」だけれども、書かなきゃいけないのは、この部分の50語とか、80語でいいですよ。

という課題設定と、ネタをテクストタイプごとに用意しておくのが「ライティングの教師」の仕事だと思います。


Q4: 要約させる時に指導すると良い点があったら教えていただけるでしょうか?

A4: 類義語での語句レベルのパラフレーズの指導を通して「語義」の正しい理解を常に意識させることが大切かと思います。日本語を活用しても良いので、上位語・下位語の概念や、反意語を援用した語義の理解(例えば、innocent = 無垢な、という訳語は既に「汚れていない」という否定を利用した語義の記述となっていますから、wicked = 邪悪なという語義も、その反対概念のpure を想起すれば「汚れていない」の否定はimpure「汚れている」というように、その語が持っている個性を際立たせる効果があります。

この「反意語を援用した語義の理解」は、私の授業の基本線でもあるので、過去ログでたびたび出てきていることでしょう。


Q5: 高3でリーディングの授業と連携したりすることはありますか?(理社へかける時間を増やすべきではという考えもあるが、英語の授業数がたくさんあり、その使い方で意見が分かれているもので…)。

A5: 現任校では担当教師裁量に任されているので、互いに何をやっているかは情報交換します。リーディング教科書の英文のテキストファイルはコピーしておき、コンコーダンスソフトにかけて、特定の表現を検索できるようには準備します。リーディング教科書のテクストタイプだけでも1年間分は必ず確認して欲しいものです。次には、トピックを共有することが考えられます。さらには、和訳先渡しやTM先渡しで、なぜ筆者はここでこの表現を用いたのか、など、とことん「ことば」にこだわった授業展開も可能です。私のクラスでは、ライティングの授業でトピックや主題に関連した英文資料を相当な量読ませますので、現在は直接的な「リーディング」の科目との連携はありません。

今は、「コミュニケーション英語」っていう科目があるから、技能統合とか連関などと騒がなくてもよい時代なんですよね? え? 次期指導要領の改訂で「英語コミュニケーション」になるの? なんで?


Q6: 私も教科書の各レッスンの要約を生徒にさせていますが、いきなり何の手がかりも無いと厳しいようです。そこで、私は要約をある程度教員が作って、生徒は空所をうめるというスタイルにしています。先生は高1から生徒に要約をすべて教員の補助なしで書かせていらっしゃるのですか?

A6(前半): 高2の授業では1学期中間までに私の作った内容理解のQを利用した要約作りから始めます。1学期期末は今度は生徒がグループで質問の方を作り、クラスで答えを考えます。2学期中間までは語句や文レベルでのパラフレーズ、語義のきちんとした理解、類義語と上位語の概念を学び、最終的に要約を各自で作る前段として、2学期はグループで要約作り、という進め方です。題材やテクストタイプが変われば難易度も変わるので、既習の手法を常に確認できるようにしています。2学期期末では、設定したキーワードからだけでreproduceできることを「理想的」な目標としています。

要約の段階的指導も、過去ログで触れているはずですし、これまでに声がかかった「お座敷」で、何度も披露していると思います。


ということで、10年以上前の実践に基づく発表の質疑応答とその補足でした。

  • では、今はどうしているのか?

ということで、高3の学校設定科目の期末試験問題をこちらに。基本的にやっていることは同じなんです。

16CR_ENG3_1TE.pdf 直

今回の1問目の「帽子売りと猿」はサービス問題。

この「お題」で既に平常の授業で各自に書かせています。そのドラフトを元にして、時系列で書くための「肝」へのFBは与えているのです。

帽子売りと猿のフィードバック.pdf 直

ここで分類整理した上で提示した全ての例文が、生徒のドラフトを私が修正して、このお話に基づくように再構成した表現集となっているわけです。

それでも、自分でイチから書くのは大変なんですよね。

ナラティブって難しいんですよ。

上記資料のダウンロードは自由ですが、二次使用はご遠慮願います。

本日は、この辺で。

本日のBGM: That’s where you’re wrong (Arctic Monkeys)

2016-06-18 「なぜ、いま、若林俊輔なのか?」

tmrowing2016-06-18

ある日、職場から帰ると小包が届いていました。

若林俊輔 著(編集:小菅和也、小菅敦子、手島良、河村和也、若有保彦)

『英語は「教わったように教えるな」』(研究社、2016年6月20日発売)

研究社の津田正様よりご恵贈賜りました。

腰帯にはこのようなキャッチコピーが。

若林俊輔先生が生きていたら、

今の英語教育に

何を言っただろう?

はしがきに当たる部分で、編者の小菅敦子氏は次のように問いかけています。

  • 「なぜ、いま、若林俊輔なのか?」

この問いの持つ重みは、読者によって、大きく異なるだろうと思います。



読み始める前に決めていたことが一つ。

  • 決して、センチメンタルにならないこと。


一気呵成、という形容が相応しいくらいの勢いで読了。

今はまだ、「書評」という形では書けそうにありません。

著者の若林俊輔氏は2002年3月2日没。

私は東京外国語大学在学中 (1982年〜1986年) に若林氏の薫陶を受け、英語教師となりました。

この過去ログでも記していましたが、入学前にふとした偶然で若林氏と出会っています。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050805

雑誌『英語教育ジャーナル』(三省堂)の1982年4月号特集「やめてしまえ英語教育」の誌面ででした。


その後、教壇に立って30年、このブログを始めてから干支も一回りしようかというくらい月日が経ちましたが、自分の英語教師としての節目節目で、若林氏に教わったこと、若林氏のことばを思い起こしてきたといっていいでしょう。

とは言え、語研のメンバーとして若林氏の跡を継ぐでもなく、COFSで揉まれた直系の弟子筋でもなく、大学の英語科教育法の担当者として英語教師を育てているわけでもない私に、この本が贈られてきたことの意味を噛みしめています。


この度の新刊『英語は…』は、これまでに雑誌等で発表された記事、論文・論考を5人の編者がそれぞれの視座でまとめたものとなっています。

既に、和歌山大学の江利川春雄先生のブログで書影や目次が紹介されていますので、私は、年表との対比で、今回収録されたそれぞれの記事の時代区分というか、位置づけを見てみたいと思います。

[↓]アイコンをクリックするとpdfファイルが開きます。

若林各記事発表順.pdf 直

これを見ると、

70年代の記事が14本

80年代の記事が14本

90年代の記事が15本

00年代の記事が3本

となっています。

個人的には、70年代の東京学芸大学所属、またはそれ以前の記事や発言をもっと読んでみたいと思いました。

というのも、本書でも多く引かれている雑誌、『現代英語教育』(研究社)の1995年5月号の特集、「戦後50年:リストで読む英語教育」には、次のようなリストが載っているからです。

「リスト」.pdf 直

学芸大時代に充実した記事を発表し、今私たちがよく形容する「若林節」とでも言えるスタイルが形成されていったのだろうと推察します。

また、

Teacher’s Manual to The Junior Crown English Course

『中学英語事典---語法から指導法まで』

主幹 中島文雄 (三省堂、1966年)

には、同事典の執筆者の一人として若林氏も紹介されています。

若林俊輔

東京工業高等専門学校講師.1962〜63年ミシガン大学留学.中学校での経験が長く, また, もとELEC指導主事だったせいか, 英語教育を身をもって体得している.音声面にはことに非常な関心を持っている.三省堂の「英語教授法辞典」の実質的編集者.本書では, 発音ならびに指導法に関する項を担当.

とあります。

ミシガン大留学の頃のお話は直接聞いたことはなかったのですが、今回の『英語は…』を読んで、若林氏のC.C. Friesの引用は極めて的確であると、あらためて強く感じました。この60年代の「英語教育の最先端」での経験を得て、「若林節」がどのように作られていったのか、その源流に思いを馳せています。


今回の編者は、それぞれの担当部分で、「解説」「解題・注記」を施しています。

小菅敦子(「本書の出版にあたって---いま、なぜ、若林俊輔なのか」)

小菅和也(第1章「いっとう りょうだん」)

手島良(第3章「英語授業学の視点」・第4章「ことばの教科書を求めて」)

河村和也(第5章「英語教育の歩み」・第6章「英語教育にロマンを」)

若有保彦(第2章「つまずく生徒とともに」・付章「英語の素朴な疑問に答える」)

適材適所、と私が言うのもおこがましいですが、唸ること頻りです。

それぞれの章の解説を読み、巻末の「出典情報」に施された「注」を読んだ後で、再度、本編の記事・論考に戻ることをお薦めします。

編者の中では、若有氏だけ、お目にかかったことがないのですが、資料の収集整理など、若有氏なくては完成しなかったとも言えるご尽力に、感謝のことばしかありません。

pp.294-295 での、

  • 「付章 英語の素朴な疑問に答える」 解説

での最終段落からの引用をお許しいただきたく思います。

本書においてもそうだが、氏の残した「名言」は様々なところでいくつか取り上げられてきた。しかし、「英語教師はことばの教師である。ことばの教師はことばに興味を持たなくてはならない」という授業で何度も登場した氏のことばは、なぜか忘れられてきた。よって遅まきながらではあるが、これも氏の名言であることをここに記して解説の結びとしたい。

  • 「ことばの教師たれ」

正に、私が、教壇に立って30年、大事にしてきたことです。

これから英語教師になろうという、学生・院生や、若い世代だけでなく、私と同世代か、それ以上の英語教育関係者、そして「ことば」の教育に関わる方たちに、是非読んで欲しいと思っています。


過去ログでもいくつか「W氏」や「恩師」、「私の師匠」といった匿名で若林氏に触れたエントリーがあります。

私の師匠は「大学で学ぶことは須く机上の空論で良い」と喝破した。「その論が何故、現場で窒息するのかを身をもって体験する」ことを私(たち弟子)に求めていたのだと思う。

Anniversary (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20071220)

  • 戦後のこれまでの日本の英語教育はことごとく上手くいっていない。根本的にダメである。そのダメな英語教育のもの差しで、「優秀だ」とみなされてきた君たちは本当に英語ができると言えるのか、疑ってかかった方が良い。

英語科教育法の授業第一回での恩師の言葉。大教室で概ねこのようなものだったと記憶している。私の周りでも何人か、この言葉で嫌気がさし、教職の履修を止めた者もいた。私はといえば、入学以前の高校生の頃、すでに『英語教育ジャーナル』(三省堂)でこの教授のことは知っていたので、これがあのW氏か、という感慨があった。そして、この「感慨」が本気で英語教師を志す契機となったとも言える。

「能ある豚は星を見ない」(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20081208)

今回、自分の作った定期試験問題を希望者に配布しているのだが、「自らの退路を断つ」、という恩師の言葉の影響というよりは、自分自身のため、という側面が強い。今の自分の取り組みを恥ずかしく思う気持ちは全くないが、過去の自分に指された後ろ指とはきちんと対応したい、とでも言えばいいだろうか。過去ログ (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20061204 ) で以前の自分の持っていた典型的な定期試験に対する考え方が記してある。では、どの学校に行ってもそれで通していますか?どんな生徒に対してもそれでやっていけますか?という問いへの回答、または回答しようという試みである。

In a double bind (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090308)

私の恩師である、W先生は『学校英語を批判する前に読む本』というものを生前企画していたらしい。自前の考察、地に足の着いた論考というDNAを受け継ぎたいと切実に思う。

  • 現状での、中高の英語教員が使い物にならないと思うのであれば、自分が中高現場に飛び込んでいってその世界を根底から変えてみればよいではないか。自分が主となって新たな組織を作らずとも、既にある学会や研究会のスタッフとして志を等しくする人と手を結べばいいではないか。大学や大学院の教員養成課程を自ら担当して、優秀な卒業生を教育現場に送り出せばいいではないか。英語の教科書が世界水準で評価した時にあまりにお粗末というのであれば、教科書の著者になればよい、または教科書会社の編集担当となり、全国にいる例外的に優秀な教員を集めて、自分の理想とする教科書を作ればよいではないか。英語の辞書も批判するだけでなく、自分で辞書を作って、全国の学校で使ってもらえばいいではないか。英語力の測定が適切に行われていないというのであれば、毎回のようにTOEICを受験して、TOEIC対策本を書いて売りさばくのではなく、TOEICのアイテムライターになればいいではないか。

私自身のことを振り返ると、東京にいる時分はそういう思いで一貫して現場で生きながら、全英連でテストを作り、英和・和英の辞書を作り、検定も非検定も教科書を書き、教材を世に問い、業界内でも糺すべきは糺し、学会・研究会の末端として働き、一方で山口の地に来てからは新たに研究会を立ち上げ、地元でのイベントを開催すると共に、時折中央に赴き、現場の先生方対象の研究会や講習会の講師を引き受けてきました。

浜省で内省 (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20100909)

anfieldroadさんの企画に乗って、英語教師になるあたりまでの英語学習歴のまとめを書きましたが、その後のことも少しだけ書いておきましょう。学習歴というよりは、職歴を振り返るようなものになるかもしれません。

大学の恩師のW先生に、

• 君はね、自分で英語が出来ると思っているでしょ。そういう人には入門期の指導なんて出来やしないんだよ!

と怒られるたびに、

• わかりました、だったら (中学じゃなく) 高校へ行きます。

と答えていたから、というのは本当に多分にあって、高校で教壇に立とうと決めていました。

”easy said but less often done” (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110306)

そして、昨年度の「第8回山口県英語教育フォーラム」では、若林氏の「正四面体モデル」を紹介し、技能統合についての先見性に言及していました。今回の『英語は…』では、第3章で扱われています(この章は手島良氏による解説)。

Expressly, exclusively or excessively

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20151117

こんなにも影響を受けている私が、『英語は「教わったように教えるな」』を評する、ということはとても難しいのです。

若林氏に出会い、教えを受け、心酔し、その一方で反発もし、それでも自分の身に就いて「剥がれない」かのような、「英語教育」、「英語授業」、そして「ことば」というものを捉える視座が形成されているから。

今回の収録から洩れた、ある雑誌記事について、11年ほど前の過去ログで取り上げていました。

「スピーチ&レシテーション」

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050518

今日のエントリーの冒頭で、

読み始める前に決めていたことが一つ。

  • 決して、センチメンタルにならないこと。

と言っていたのは、この特集での「師匠」のことばを今も生きているからでした。

「小若林」にならずに、私自身になれているか、独り立ちできているのか、自問自答は続きます。

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本日のBGM: Here, there, and everywhere (告井延隆:サージェント・ツゲイズ・オンリーワン・クラブ・バンド)

2016-06-16 「不確かな日々の希望」

tmrowing2016-06-16

教科書の検定や採択に関わる教科書会社の不祥事(白表紙と金銭等見返りの授受の問題)が引き金になっているのか、採用を決めるための見本本供給が1校1冊で、取り扱いが厳重になっている模様。

英語科の専任教諭だけでも複数人いるというのに、この状況では、まともに「英文」を読んでいる 時間的余裕 はないだろうと思う。不幸な現実だ。

教科書検定が機能していないのだろうか?という思いは、前回の「学習指導要領」改訂に伴う現行の教科書を見た時にもあったのだが、今回、「英語表現」の改訂版や新刊を見て、その思いを一層強くした。

30年前の『英文法の準教科書』とどこが違うのか?

20年前の「英語II C」の教科書と比べて、何が優れているのか?

10年前の「ライティング」の教科書の何を、どのように超えたのか?

現行本の英語表現での採択が異様に多かったVision Quest (啓林館)が、文法シラバスへの回帰の先鞭をつけたということなのだろうが、それを「英語表現」の教科書として現場が歓迎しているとすれば、そこに英語教育の明日はないだろう。

以下、オンラインでもオフラインでも再三再四言っていることだが、繰り返しておく。

学習指導要領の法的拘束力を無くすこと。

「ライティング」「リーディング」「オーラルコミュニケーション」を廃止し、技能統合を謳いながら、「英語会話」と「英語表現」という羊頭狗肉な科目を設定している現行の学習指導要領は改悪である。

学習指導要領の内容と逆行するかのような文法シラバス回帰の教科書が教科書検定を通っているのは、よくて茶番、普通に考えれば矛盾。

高校現場は、学習指導要領の改訂内容には異議を唱えず、その趣旨に逆行するかのような教科書を歓迎しているという為体を猛省すべき。

このブログでも、以前「『教科書』はどこへ行った?」というエントリーで教科書についてあれこれ書いていた。

『教科書』はどこへ行った?

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20051218

『教科書』はどこへ行った?(その2)

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080126

『教科書』はどこへ行った?(その3)

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080627

私の理想の教科書

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150306


新しい時代を拓く教科書は本当にそれに見合った資質を兼ね備えているのだろうか?

その拓かれた新たな地平には夢(ファンタジー)の片鱗くらいはあるのだろうか?

研究社の教科書 "New Age" は随分と前に、高校の教科書から撤退した。

「グローバル」を叫ぶ声が大きくなるのとは対照的に、旺文社の教科書は "Planet Blue" で幕を閉じた。

中学校では依然として意気軒高だが、高校の教科書では、もはや「地平線」も「水平線」も姿を消している。

詩や文学の香りを残していた数少ない教科書、文英堂の "Unicorn" も、その名を残すのみである。

市販教材のトンデモ本が市場で淘汰されないのだから、現場で教員が採択する教科書でも同じことなのか?

時間との戦いではあるが、「良書」を見つけて、その良さを知らしめたい。心ある、志しある教師の目に届き、心に響くことを願うのみ。

ということで、いつものように、古い本からその一部を紹介しておく。

良いものが目の前にあっても、その良さに気づかない「後の祭り」の典型、見本と言えるかもしれない。

  • Enjoy English Writing Teacher’s Manual (教育出版)

「ライティング」ではなく、「英語II C」 の時代の教科書指導書の写しである。

著者代表は金子稔氏。

※以下 [↓] のアイコンをクリックすると画像のDLが始まります。

本日のエントリー冒頭の写真が表紙です。

金子稔Writing表紙.jpg 直

この課のねらい。「副詞節」の知識と運用力。

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金子稔Writing_政治_目標.jpg 直

モデルパラグラフ。メッセージも感じられます。

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金子稔Writing_政治1.jpg 直

文法解説のための例文。

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金子稔Writing_政治2.jpg 直

ドリル1では「マッチング」も多用されています。

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金子稔Writing_政治3.jpg 直

ドリル2は「整序」「空所補充」による文完成。

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金子稔Writing_政治4.jpg 直

エクササイズは「和文英訳」の形式。

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金子稔Writing_政治5.jpg 直

それら全てを経ての「暗誦用例文」の提示。

例文の一つ一つが響いてきます。

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金子稔Writing_政治6.jpg 直

この「はしがき」の金子氏のことばはずっと私の胸に刻んであります。

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金子稔Writingはしがき.jpg 直

本日のBGM: 一角獣と新しいホライズン (山田稔明)

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2016-06-15 「僕は誰が素敵な奴かを知っている」

tmrowing2016-06-15

先週末、関西英語教育学会 (KELES) の大会で大阪に行っていました。

お目当てのプログラムが幾つかあり、ほぼ目的は達したのですが、その中から少しだけ備忘録として。

初日の最初が、奥住桂先生の「ワークショップ」。

  • 「中学英語教科書のアクティビティーを考えるー教科書の役割、教師の役割―」

中学校の教科書の「活動」に何を求めるのか? という根源的な問い。

奥住先生ご自身が、『英語ラボ』などの教材開発に関わったことで得た知見も話されていました。

本文はなぜ対話ばかり(しかも読ませてばかり)なのか?

リスニングは「絵」「写真」に基づくものばかり?簡単すぎないか?

活動だけで成立する「課」があってもいいではないか?(「音だけが提示される課があってもいいのでは?」というのは昔から奥住先生が言っていたことでした)

本文と活動とのつながりが希薄ではないか?

「活動の場面設定のもっともらしさ」が逆に足かせになっていないか?

潔く「パタンプラクティス」に徹した活動があってもいいのでは?

TBLT的な教科書は可能なのか?

今後、教科書が変わっていくとするとそのゴールは?

というような問いが投げ掛けられ、フロアでも意見交換しながら進みました。英米など海外の出版社から出ている『コースブック』との比較もあり。

「まずは学習指導要領をCan-do で示す方向で変わらないと」というメッセージもありましたが、教科書検定制度と広域採択制度の存在も忘れてはならないでしょう。中学校教科書の点数の少なさと、一つの教科書に関わる著作者の人数の多さは、高等学校の検定教科書と比べた場合に「異様」な感じがします。

私が終始考えていたのは、

本文と活動の連動以上に、そこまで学んできた言語材料や言語技術のうちで何が自分に使えるのかの選択判断が問われる活動をどのように取り込んでいくのか?

その際の言語材料は、現行のようなその課で導入・練習した言語材料だけでは(足り)なくなると思うので、「お題」を与えてから活動に移るまでに「何にアクセスしておくと生徒が自分の力量に応じて取捨選択できるのか?」という、リソースの提示と、活動中、または活動後での「成功例と思しき発話」「模範例」の提示をどうするのか?

という部分でした。

前者は以前、浦野研先生のお話を聞いた時に痛感した「品質保証」に関連することでもありましたし、後者は1990年代の終わり頃にLeni Dam の実践を知って、自分の授業に取り入れようと模索してきた部分でもありました。


講演は、卯城祐司先生の「クリティカル・リーディングで迫る、深い英文の理解」。

たまたま、自分のいる列で足りない配布資料があったために、途中の課題を時間通りにこなせず残念でした。

数年前に、全国の発表で卯城先生からご指名を受けながら、当日がインターハイと重なるかもしれないということで、お断りしていた経緯があったので、アフタヌーンティーの場で、その詫びも兼ねてご挨拶に伺いました。「お手柔らかに頼むよ〜」と道産子のイントネーションで、私が『卯城本』に関連して、このブログで書いた記事や密林レビューのことにも触れられていました。


初日の最後には山岡大基先生のイブニングセミナー。

  • 「汎用的教材研究術」

会長の担当する講座の裏番組ということで、随分気にされていましたが、国語教育、さらには「教育学」そのものの視座を取り入れて、「教材研究」のありようを揺すぶる良い企画だったと思います。

ワークショップでの意見交換に先立って、「自分で発問・指示を作る」というお題が課されたのですが、これは面白かったです。「形式発問」というのは、以前、山岡先生にお願いして冊子を送ってもらっていましたが、あらためて考え、見えてきたことも多々ありました。

とりわけ、旧版の One World のBook 3 に収録されていた、Audrey Hepburn の伝記に基づく「発問づくり」は考えさせられました。

私が考えた発問は、

1. Have you ever seen her movies?

2. How successful was she as an actress?

3. How did her childhood experiences influence her later career?

などの他、

4. What did she mean by the words, “Giving is like living?”

5. What did she give to those around her?

6. What did she think was the most important thing in life?

7. What did she live by?

8. Looking back on your life so far, what do you think is your biggest “giving” to others?

というもの。この中では、4. が「形式」に着目した発問になるでしょうか。

引用符で囲まれた、Audrey Hepburn 自身のことばは、この文章ではここだけなので。

ここが上手く処理できると、冒頭での something more than these movies や、第6段落での her mission、そして最終段落の her devotionといったキーワードの読みを深められるかと。

最後の「表現の置換不能性」という件では、私自身が講師を務めた津田塾大でのセミナーを思いだしました。

その後、語学教育研究所の講座で私が発表した時にも同じことを話したのですが、その時には「置き換えられないことば」がピンと来ていなかったという山岡先生の中で、何かが芽生え、花開き、実を結んでいるのを見られたのは嬉しかったことの一つ。

津田塾セミナーの様子は、過去ログ参照。

ダンスはすんだ?

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080806

語研の講習会の振り返りは山岡先生のブログで。

語研講習会の備忘録(後半)

http://angel.ap.teacup.com/amtrs/35.html

懇親会は設定されていなかったので、旧交を温める中堅&若手の会に一人年長者も混ぜてもらい、美味しい沖縄料理を堪能しました。お互いをSNSでは知っていても直接会うのは初めて、という方同士もいたりして、あれやこれや話に花が咲きました。私としてはとても実りのある楽しい夕餉、宴でした。ありがとうございます。

生憎の雨予報となった二日目の振り返りはまた日を改めて。

本日のBGM: 大阪へやってきた (友部正人 『ぼくの展覧会』より)

2016-06-06 定番メニュー

tmrowing2016-06-06

高1は、中学で既に出会い、通過し、高校入試前に塾でも散々書いてきた割りには身についていない「規則変化」する動詞のマトリクス。不規則変化の練習には熱心な先生が多い印象を受けますけれど、規則変化の原理原則は明示的に教えられる際に、「綴り字」なら綴り字だけ、「発音」なら発音だけで類型化がされているかのようです。

規則動詞の発音と綴り字一覧 (16年版).pdf 直

観察して、自分で発音してみて、仲間を見つけて、マトリクスの中に入れていくだけの単純な活動ですが、決して、-edのついた動詞の活用形をマトリクスの中には書かない、という約束事です。ひたすら原形のみをリスト化。

このマトリクスを学習し、その後、小出しに動詞を示し、どのグループと同じ仲間か、と補充していきます。

今日は、こんな補充の仕方。冒頭の写真です。

名詞と動詞の意味と規則変化jpg.jpg 直

カタカナ語として日本語に定着しているものも含めて、名詞の意味を想起しやすいけれど、動詞としても使う語を考えていきます。

rainやsnow が「雨」「雨が降る」、「雪」「雪が降る」は自明のような気がしていますが、

waterを動詞で使ったらどんな意味?「水る」?過去形は「水った」?

weedを動詞で使ったらどんな意味?「雑草る」?過去形は「雑草った」?

という私の授業では定番のネタから。

生徒は waterを動詞で使うと、「水を撒く」「水がある」などなど反応が返ってきます。そこで初めて辞書を引きます。「水を撒く;やる」「涎が出る」などを確認します。

ではweedを動詞で使うと「雑草を植える」とか「雑草を生やす」という意味になるのか?と問うて辞書引き。「雑草を抜く;取る」という意味であって、waterとは対照的です。

このように、動詞は「何が」どうする;どんなだ、「何を」どうする、という意味の整合が求められるので意味はある程度絞られてくる、私たちの世界の見方、人間世界の常識で意味のデフォルトができ上がっていることを感じてもらいます。

以下、face, look, shop, store など似ているけれど違うもので想起しやすい名詞とあまり考えていなかった動詞の意味。lookだけは動詞の意味を最初に答えますね。

faceを動詞で使ったら?という問いに「頭突きをする」という答えもあって、良いセンスしているな、という感じです。faceにはlookにはない「作用と反作用」みたいな力関係が感じられますから。

lookは 『エースクラウン』のフォーカス頁の「絵」を見せて、「あなたがバラを見る時、あなたもまたバラから見られているのです」という解説をしてカタカナ語の「ルックス」で補足。

shopで「店」→「買い物をする」は楽勝だったのに、store を動詞で使ったら?では沈黙。辞書引きの良いタイミングです。文化の違いを少しは感じられていれば幸い。

それぞれの過去形をマトリクスのどこに入れるか?発音と綴り字を確認して終了。

たった9語で50分使っていますが、この後扱う予定の「自動詞」「他動詞」への布石、伏線でもあるので、まあ、上手くいった方ではないでしょうか。過去ログだと、この辺りで「自動詞・他動詞」を扱っています。例年よりはちょっと遅目ですかね。でも、早ければ良いってわけでもないので。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140510

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140516

高3は、「四大テクストタイプ」の概説に続いて、「ナラティブ」の書き方。『日向本』と ”GTEC Writing Training” の併用です。

文章の四大類型2016.pdf 直

narrative.jpg 直

平日の課外講座では、模試解説。答え合わせではなく、「診断テスト100」で作ったノートや、授業傍用で使っている私家版の『前置詞のハンドブック』に、語法・文法・表現での関連事項を補足していくガイダンスが主眼。

いよいよライティングのつながりとまとまりに授業の重点が置かれるので、「文」レベルの文法は、この「診断テスト100」の徹底活用が求められます。模試のなかでは、「パラグラフの中で、余計な一文を抜いて、つながりとまとまりのある英文を残す」設問の解説は丁寧にしています。今回は、ちょっと作問のセンスに「?」がつくように思います。これって、近年センター試験で出題されていますが、「ライティング」の授業を真っ当にやってきた教師なら、生徒のドラフトでフィードバック前の「お手本」がいくらでも手元にあるのではないでしょうか?

「この一文は取るか、書き換えるかしないと、台無しです」というフィードバックを与えて、書き直しの指示をしなければならないドラフトに相当数出会うはずです。

私は四半世紀、このようなフィードバックは原則日本語で与えてきました。

このフィードバックに関しては、過去ログをお読み下さい。

雑誌『英語教育』の去年の特集を読むよりは役に立つのではないかと思います。

「ことがらはワニノクチ」はまだ序の口

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160517

いつも同じ話…。

本日のBGM: もういいかい -2016 remaster- (サニーデイサービス)

tmrowingtmrowing 2016/06/07 09:20 テクストタイプに関わる資料と、教材の写真を追加しました。

2016-06-02 「書くこと」の指導計画の立て方(2004年版)

プロフィール欄に載せている「ニチブン」の資料の元原稿が出てきたので、12年くらい前のものになりますが、参考までにアップしておきます。古い学習指導要領に沿った記述にはなっていますが、当時 (1988年〜2004年) の私の実践を踏まえたものです。アクティブラーニングとか、ICTとか、4技能とか、今風の取って付けたような派手なバナーに躍らされないためにも、「書くこと」の指導に興味関心のある方は是非お読み下さい。


「書くこと」の指導計画

1.3つのキーワード

  外国語教育で長らく指摘されてきた、 form, meaning, use の3つのキーコンセプトに関しては多言を要しないだろう。しかしながら「書くこと」の指導を考えるときには、その前段階として次の3つの要素を満たす必要がある。(Bratcher1997)

・(Establishing) Comfort   教室で「書き手」として受けいれられているという安心感(を与える)

・(Building) Confidence   「読者」に「自分の意図が伝わった」という自信(をつけさせる)

・(Developing) Competence 「よりよい英文、分かりやすい」英文を書く力(を伸ばしていく)

これら3つの要素は、階段を上がるように順番に養成されるものではなく、「安心感があるから積極的にタスクに取り組む」、「力がついてくるから自信が深まってくる」、「自信がついてくるから、教室に居場所ができる」というように、指導の初期段階から最終段階まで3つが常に補完しあいながら高まるものであり、教室で英語により「書くこと」を成立させるためには常に考慮されるべき要素である。

2.3カ年を見通したデザインとは?〜ゴールから逆算した計画立案 (= backward designing) の視点

  中学校では、高等学校の科目『ライティング』のように、1冊の教科書が「書くこと」に特化して作られているわけではない。常に4技能の関連を考え、教科書の目次や進度表に縛られることなく、「書くこと」の発達段階を考えることが大切である。指導要領に示された「学習段階を考慮した指導上の配慮事項」を踏まえた上で、学習段階を第3学年から第1学年へと逆に眺めてみることで、到達目標へ到達する段階を概観することができる。

<表1>はこちらを。(ファイルを開く際は↓のアイコンをクリックして下さい。

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表1.png 直

 このように最終目標から、その下位スキルを想定し、生徒にとってそれまでに身につけておかなければならないことを考えながら指導計画を立案していくわけである。最終目標は「英語で〜を書くことができること」というcompetence/performanceの養成ではあるが、常にcomfortとconfidenceに配慮して、指導計画を立案することを忘れてはならない。

3.「書くこと」のスキルを伸ばす3カ年の指導計画とは?

  一般には、指導要領に示された「話題」と「言語の使用場面」を照らしあわせて、コミュニケーション能力とコミュニケーション活動の見取り図を作り、具体的な指導計画に入っていくことが多い。しかしながら、下記<表2>の例を見てもわかるように、教室内での「書くこと」のコミュニケーション活動を想定した際には、ALTや留学生がいるとしてもなお、a.のように、「〜になったつもりで書きましょう」という「擬似的な場面」「擬似的な読者」を想定したものが多くなることが予想される。また、b.やc. のように「教室内」で自然な言語活動は、「なぜ日本人同士が英語で行わなければならないのか」というコミュニケーションの必然性が希薄になり、生徒は「違和感」を覚えることがある。

<表2> はこちらを。

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表2.png 直

 「書くこと」をシラバスの中にしっかりと位置づけるためには、この「違和感」に対処する必要がある。教科書で扱われる「話題」を軸に、「書く活動」にかかわる種々の要因を整理しておくことが不可欠である。「書くこと」のスキルの何を伸ばすのか、をより明確にすることで、指導者も生徒も自信を持って「書くこと」に取り組むことができ、「教室内で書く」ことに対する違和感を軽減することができる。

  

  以下の6項目を関連づけることが長期的な見通しと、個々の授業でのねらいを両立させる上で有効である。

    A.他技能との関連と指導のねらい

    B.想定される読者

    C.内容と形式の自由度

    D.談話のレベルとテクストの種類

    E.メッセージの独立性

    F.指導学年とレッスン

それぞれの項目を簡単に説明する

・ 「話すこと」「聞くこと」「読むこと」といった他技能に関連した「付随的ライティング(=incidental writing) 」か最初から「書くこと」を主眼とした「意図的ライティング(=intentional writing)」か、

・ 教室内の「他の生徒や教師を読者とする」活動か、現実に「教室外の読者を想定する」活動なのか、

・ 「発話は教師がガイドして一定の内容と形式で書く(=controlled and formatted)」のか「生徒が内容や形式を主体的に選択判断して書く(=open-ended)」のか、

・ 「語、語句、文、段落」と広がる談話のレベルと、「物語(=narrative passage)」「説明・情報(=informational passage)」「主張・説得(=persuasive passage)」「創作・娯楽」=creative passage)」などといったテクストレベルでの特徴を分類する、

・ 「文字のみ、文章のみに頼る伝達・メッセージ(=story message)」なのか、それとも、映像など「視覚的なメッセージ(=visual message)」が伝達の補助手段として得られるのか、「スピーチ」「ディスカッション」など「音声によるメッセージ(=physical message)」が補助手段として得られるのか、といったメッセージの種類の分類。

上記の要因をマトリクスの形でまとめるには、以下のようなフォーマットを用いることが考えられる。

<表3>はこちらを。

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表3.pdf 直

採択した教科書の各課で扱う話題を軸として、教科書で扱うものは「付随的」な活動を中心に、教科書で扱っていない話題は「意図的」な活動として新たに設定するのである。このように全体的なバランスを見通した上で、3年間でスパイラルに「書くこと」のコミュニケーション活動を取り上げ、スキルの定着を計っていくことが望ましい。同じ話題に関する「書く活動」であっても、A〜E以下の要因の組み合わせが変わることで難易度も変わることに指導者はよく留意する必要がある。学校生活を例に取れば、文化祭などの学校行事はどの学年でも行われるが、1年生で表現できる内容と3年生で表現できる内容は当然変わってくるはずだからである。

  このようなマトリクスを作ることで、同じ話題で生徒の表現が成熟していく過程を追うこともでき、学校独自の評価基準表作成にも役立つはずである(北尾・長瀬 2002)。また、一度作成した「付随的」なタスクと生徒の書いた英文を保存しておくことで、新年度、新たに採択した教科書では、「この話題が扱われていない」というときに、「意図的」活動を一から作成し直す労力を省くことができる。

4.Comfort 確立のために 〜 教室でできる「学習活動」から「コミュニケーション活動」へ

  初期の段階に限らず、意味の理解を伴った「書き取り(=dictation)」「筆写(=copying)」等を積極的に取り入れる中で、「正確な表記」の必要性を生徒に理解させながら「書くこと」の指導を進めていくことが肝要である。「書くこと」の指導に熱心な指導者ほど、学年が進行すると、「新出語彙を書くことは難しい」という認識が薄くなり、言語活動・コミュニケーション活動を発展させることにとらわれていることがある。テーマ・トピックが難しくなればなるほど、その話題でのコミュニケーション活動を支える、語彙指導・書写指導の重要性は増すのだという意識が指導者には不可欠である。

  題材・タスクの設定にあたっては「生徒間の擬似コミュニケーション的なライティング活動」を積極的に活用することが肝要である。

・ ペアワークの後に行うreportingの際に、完全な文ではなくメモだけを書かせる、といったincidental writing意図的に組み込む

・ 生徒が自分の感想を書き、次の生徒はそれに続いて内容を自分で考えながら文を書き加えていくチェーン・ライティング

・ 他の生徒の書いた英文に対してコメントや質問を書き加えていくピア・フィードバック

などを取り入れることで、クラスを「書くための共同体 (= writing community; writers community)」として確立することがより高度な「書く活動」を支える基盤となるのである。いったん、共同体としてクラスが機能し出せば、生徒同士の一見擬似的な活動がすべてauthenticな意味を持ってくる。また、共同体としてクラスが機能していれば、教室内でのみライティング活動を課す必然性は薄まり、プロジェクトワークや卒業文集作りなど、結果として柔軟な指導計画につながり、comfortの確立にも寄与することになる。

  近年e-mailの利用など、現実の読者を想定するタスクの重要性が指摘されている。コミュニケーション能力を養成しなければならないという目的と一見矛盾するようだが、authenticなタスクのみを行うことにとらわれないことが「書くこと」の指導を現実的なものにする。インターネットやe-mailを使わなければできない活動を行う場合には、「1教室で全ての生徒にリアルタイムでそのコミュニケーション活動を行う機会を保証できるか?」、「全クラスに機会を公平に保証できるか?」というマネジメントの問題が生じてくる。1学年のクラス数の多い大規模校では、物理的に難しい状況が予想される。  

  指導計画にあたっては、「教室でできること」の優先順位を考慮し、

・write to learnの活動(学習活動)→copying/dictationなど、言語材料の理解と記憶のための活動

・learn to writeの活動(コミュニケーション活動)→ライティングスキル獲得のための活動

の双方を有機的に結びつけることが大切である。その上で、「日々教室で取り組むことのできるコミュニケーション活動」と「特別な機会に行うコミュニケーション活動」を区別してバラエティーを持たせるのである。

5.Confidence 養成のために 〜 appropriateness(適切さ)を考慮して

  文字指導から考えていかなければならない中学校段階ではeffective(効果的)であることだけではなく、 appropriate(適切)であることに配慮することが大切である。

  指導の初期段階でまだ competenceが充分でない生徒に、書くことに対する自信をつけさせるのにもっとも重要なのが、「書く過程への指導」である。「過程」という言葉で、安易にプロセスライティングという用語を思い起こすことには慎重でなければならない。ライティングのプロセスは書き手の数だけあるといってよいのであり、「優れた書き手」が用いているプロセスをそのまま「より劣る書き手」に強要しても上手くいかないことが多い。ライティング力があまり高くなく、自信のない書き手にとっては、いくら指導者の側から見てEffectiveな手法であっても、生徒自身にとってappropriateでなければ受け入れにくいのである。この部分を見極めるためにこそ、タスクを細分化したライティング活動が必要となる。上位者の持つストラテジーを下位者に取り込ませるのではなく、ある目的に必要なライティングのプロセスにおいて、実際の生徒の取り組みで、何が上手くいって、何で躓いたり戸惑ったりしているのかを教師がモニターできるように、個々のタスクを設定することが重要となってくる。

  テーマ・トピックに関連する語彙の分類、価値判断を伴う文の順位付け、原因を表す文と結果を表す文をつなぐマッチングなど、意味解釈は生徒に任されているが、言語材料や形式は教師から与えられているという下位タスクを豊富に準備しておくことが必要になってくる。

  

6. CompetenceとPerformance

  旧来の和文英訳に代わる「書くこと」の指導としては、自己表現や自由英作文が広く取り入れられているが、「書くこと」のコミュニケーション活動を考える場合には、この二つにとらわれすぎないことが大切である。自己表現や自由英作文に偏ってしまう弊害として顕著なのは以下の2点である。

・ 第1学年では、簡単な「語」「語句」「文」レベルの活動に終わってしまい、「談話レベル」の活動が指導されないまま学年が進行してしまう。

・ 第3学年になり「談話レベル」の指導にとらわれるあまり、正確に語句を綴ったり、1文を正確に書く活動がおろそかになったりする。

<表3>で概観したように、3カ年を見通し、教材やシラバスに「書くこと」をしっかりと位置づけながら、生徒が書く英文の「質」を高める指導を行うには、

1.低学年であっても「ディスコースレベル(文と文のつながり、段落のまとまり)でのcontrolled な活動」を用意しておく

→「書く過程」に対して、アイディアジェネレーションの段階から語彙を与えつつ口頭練習を充分に行い、言語材料や表現形式を「準備」し「誘導」した上で最終的に生徒が自由に書く部分は少ないながらも、より大きなdiscourse levelで、より多様なtext typeを扱えるようにする。またGrammar Dictationなどまとまった長さの英文を書き取る活動を通して文と文のつながり、まとまりに習熟させる。 

2. 上級学年であっても「文より小さいレベルでの open-endedな活動」を用意しておく

→チャンクやコロケーションを積極的に活用し、生徒が書く英語は語や語句、1文のレベルにとどまるとしても、open-endedで生徒が主体的に判断して書けるように、より自由度が高くなるようにタスクを設定する。

という2つの視点をもつことが望ましい。これにより、聞くこと、読むことといった他技能との関連を踏まえて自信を持って書くことに取り組む下地を作ることができ、文構造や情報構造などより高次の指導を行うことが容易となる。

7.incidental writingを意図的に活用する

  内容の適切さ、目的に応じた表現ができるようになるためには、「いい英文」のモデルを生徒が自分のものとして吸収している、身につけていることが不可欠である。そのためには、「読むこと」「聞くこと」での良質で適切なインプットが欠かせない。概要を理解することにとどまらずに、「書くこと」に活用できるように読ませたり、聞かせたりする工夫が必要である。このような視点で設定されたタスクに取り組む生徒は「読むこと」「聞くこと」の活動に取り組んでいるという意識しかないかもしれないが、それが生徒の「書くこと」への心理的な負担を軽減することにもつながる。また、聞き取った内容に関する英問英答など「言える」語句や英文を書けるようにする地道な指導も欠かすことはできない。音読指導で用いられるRead and look-up をさらに Look up and write / Flip and Writeにまで発展させれば、無味乾燥な丸暗記ではない bottom-upの活動となる。「書くこと」以外の技能から「書くこと」へとつなげることだけを考えるのではなく、「書くこと」を適宜取り入れることで、他の技能が円滑に行われることで生徒は自信を深め、その自信が「書くこと」にも積極的に取り組もうという更なる意欲を与えてくれる。Incidental writingの有効性とその限界を認識した上で、指導者も自信をもって「書くこと」をシラバスに位置づけていくことが、「書く共同体」でのComfort, Confidence and Competenceを高めていくということを再度強調しておきたい。

  

参考文献

1.北尾倫彦、長瀬荘一編集『観点別学習状況の新評価規準表』図書文化、2002

2.次重寛禧編著『コミュニケーションを目指した英語の学習と指導』鷹書房弓プレス、2001

3.田中正道編『英語の使用場面と働きを重視した言語活動―指導と評価の実際―』教育出版、2000

4.平田和人著『新中学校教育課程講座<外国語>』ぎょうせい、1999

5.米山朝二著『英語教育指導法事典』研究社、2003年

6.Bratcher, S. 1997, The Learning-To-Write Process In Elementary Classrooms. Mahwah, New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates, Publishers

7.Brooks, A., Grundy, P. 1998, Beginning to Write, Writing Activities For Elementary And Intermediate Learners. Cambridge: Cambridge University Press

8.Graves, K. 2000, Designing Language Courses, A Guide For Teachers. Boston: Heinle & Heinle

9.Scott, V.M. 1996, Rethinking Foreign Writing Language Writing. Boston: Heinle & Heinle

10.Ruth, W., 1990, Grammar dictation. Hong Kong: Oxford University Press


本日のBGM: 成長するってこと(サニーデイ・サービス)

tmrowingtmrowing 2016/06/04 08:50 イントロの一部に加筆修正。

2016-05-28 「忘れてしまったたくさんの話」

サミットとオバマ大統領の任期切れ駆け込み広島訪問が話題です。

授業で演説を逐一扱う余裕はないかな、と思いますが、高3生が表現ノートでどう扱うかに注目しています。

NYTの記事はこちら。

http://www.nytimes.com/2016/05/28/world/asia/text-of-president-obamas-speech-in-hiroshima-japan.html?smid=fb-share&_r=0

その高3生の中間試験後の授業では、教科書の読解の精度を高めなさい、という指導。

高校の教科書が「読解偏重」という批判がよく聞かれるけど、今や「読解」に特化した科目は「学習指導要領」から消えています。批判されるべきは「読解」に重きを置いているのに「読解力」が養われない教科書や指導法であって、「読解力」がついているなら、少なくともその部分では成功しているのです。

教科書に限らず、「教材」の批判もどんどんやって風通しを良くすればいい。ただ、教科書検定制度そのものを無くすとか、学習指導要領の法的拘束力を無くすとか、そういった動きは何とも鈍いのですよ。教科書検定では、教科書の音声指導をする頁でさえ、CD等付属音源のチェックなどありませんから。

教科書の検定も、今では政治的配慮が求められる記述を除けば、見た目の構成や、活動の(4技能から見た?)バランスあたりをチェックしているだけではないでしょうか?各社の教科書の新出語のカウントをしてリストが発表されることもありませんし、英文そのものの吟味がされているとも思えません。

検定に合格し実際に高校で採択されていた「リーディング」教科書の「英文」の杜撰な編集についてはこのエントリーで明らかにしました。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130528

新課程に変わったら、その英文はそのまま「コミュニケーション英語」の教科書に採録されていました。世も末です。

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Bathing ってタイトルまで変えずに使っています。しかも、ご丁寧に、改訂サイクルに入っても、まだ使ってくれて構わないんですよという但し書きまで。いや、他の英文に差し替えるか、ちゃんと書き直すかしましょうよ。

このような「実例」は例外的なお粗末さなのか、それとも氷山の一角なのか、一般の教員には確かめるのは大変です。少なくとも「採択しよう」と思った教科書一冊くらいは事前に読み通せる「時間的&精神的余裕」があるといいのですが、現状ではそれさえも難しいのではないでしょうか?

それでも検定教科書は複数の作り手、教科書検定官の目を通過しているからまだましなのかも。学校採択専用教材の中にはリスニングであれ、読解であれ「エイブン」のお粗末さが目に余るものがあります。

「だが、それはたいしたことじゃない?」

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160507

次のエントリーは、とりわけ高校の英語の先生に読んで考えて欲しいです。

”Cradle to the grave”

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20151123

そして、来年度は高校の教科書の改訂の時期です。今、各社が見本を携え学校へと営業をかけている頃でしょう。現行の各科目教科書の売れ筋に倣った改訂に なってしまっているのでしょうか?それともユーザーの声を反映させた改訂となったのでしょうか?そして、6月の1ヶ月で何冊読み通せるでしょうか?

私がどういう教材に関わってきたかは、こちらをご覧下さい。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/about

批判や嘆きだけでは埒が明かないので、目の前の授業に精を出すことになります。

読解のガイドラインとして、ボトムアップ側の強化を図っています。現任校だと、高2から高3が対象です。それ程習熟度は高くありませんので、いきなり「鷲掴み」とかは考えていません。むしろ、「なぜ鷲掴みができないのか?」の部分にスポットライトを当てています。

2016高3読解のガイドライン.pdf 直

高3の上位層向けの読解(&ライティング)には、「焦点化と強調」の話を。類型化です。 これだけの短い例文・用例で意味が取れるかが肝なので、ある程度の英語力は前提になります。過度の単純化に自分が陥らないよう心して使っています。

焦点化による強調の類型2016.pdf 直

この2つとも、もともとは、まだ東京で働いていた頃に作ったもの。暫く忘れていました。

当時、某私立大学のエクステンションでTOEFLの講座を持っていました。ライティングをさせようにもまずきちんと読めない学生が多くて苦肉の策でリーディングからライティングへの橋渡し教材を投げ込みで入れていたのでした。その時のハンドアウトが残っていたので、それを改編したものです。


今年度の高2は週2コマだけなのに、行事による時間割変更で一コマが授業カットのためほとんど進まず。

土曜日課外で、『コーパス口頭英作文』(DHC) の導入。

「トリセツ」を丁寧にしています。

2008年から授業で使っていて、一時期絶版となり、卒業生に寄贈してもらったりして「飢え」を凌いだ時期もありましたが、今では5刷ですよ。今年は、「スラスラ感」「1秒反射」ができるようにしてから、意味順スロットに入れて駄目押しの流れです。この「同じ釜の飯を食う」ではありませんが、「同じスロットの飯を食う仲間」が分かるということが大事ですから。

過去ログでも触れましたが、

Where are you?

Where are you from?

だけでも結構面倒なんですよ。今日も、生徒に、

Where are you? って、誰が誰に言ってるの?どんな時に発する質問なの?

では、Where are we? だと?

というやりとりで、「生息域」の話まで。

生徒は勿論、教師もあまり気にしていなさそうですけど…。

高1は、初の中間試験の出来・不出来を踏まえて、「助動詞の番付表」と「名詞は四角化で視覚化」、そして「意味順」の重要性を認識する日々。ここでも「音声」「音調」が大事。そしてそのためにも「対面リピート」をきちんと行うことが必要になってきます。

「四角化ドリル」では、「その7」で、代名詞。対面リピートではペアの相手が読み上げた名詞句を復唱するのではなく、その名詞句を代名詞に置き換えたものを答えます。

こんなドリルです。

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昔ながらの、she, her, her とか he, his, him とかit, its, it とかthey their them とかです。

ドリルへの記号付けは次の要領。

時制を持つ動詞・助動詞の前でとじカッコ、という約束事なので、sheはとじカッコの左側にいる・来る時の形でそれ自体を四角で囲む。名詞の目印のherはそこから下線が始まるけど、四角で囲むのはその後に来る名詞の方。とじカッコの右や、前置詞は波線(=ホニョホニョ)をつける約束事なので、ホニョホニョの後に来るherはそれ自体を四角で囲む。という作業を踏まえて、口頭でやらせています。自分で見ながら言えるようになったら、対面リピート形式で、名詞句はリピートせず、代名詞を3セット答えるという活動へ。名詞句を耳で聞いて、それを代名詞に置き換えて先へと引っ張っていけることが狙い。


ドリルでは主として名詞句(の限定表現)を扱うのですが、今回は、「このドリルだけで閉じていてはダメ」ということで、応用編。free substitution の名詞句の限定表現版ですね。

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ペアになって、一人はこの白板を背にして立ち、もう一人は自由に組み合わせて「意味のある名詞句」を相手に言う。言われた方は、それを聞いてリピートするのではなく、代名詞に置き換えるというもの。

  • a cat in the bag
  • cool rain in August

は容易くても、

  • a lot of cats along the street
  • a lot of rain in August

で、「ムムっ⁉」ってなることを想定してはいますけどね。

対面リピートならぬ、代名詞への置き換え練習へと発展させてみました。


番付表も並行して進めています。

助動詞 can の「可能性」では、定番の衣類洗濯用の洗剤ネタ。「アリエール」を使っている家庭が思いの他多かったのでこちらが驚きました。

助動詞の扱いで気になったのは、「中学校、または高校入試前に通った塾で、must とhave toの書き換えをやらされた人」という問いに7割以上の生徒が手を挙げていたこと。中学校の先生なのか、塾の講師なのか、問い詰めてはいませんが、

イコールで書き換えられる、という理解をしているとするなら、それはひとまず忘れて下さい。

と伝え、使い方・使い分けの「大まかな目安」は教えておきました。

芸人さんの「タカ&トシ」の片方がやっている「オレダオレダ…」のジェスチャーを引き合いに出して記憶のヒントに。

意味順で「する・です」をやっているので、

You must be tired after driving so long.

の前半は比較的すんなり入りますが、after に続く、-ing形のところで滞ります。

You must be tired after that.

と代名詞にすると分かったつもりにはなりますが、「で、thatって何?モノ?」と問うて、 driving so long が「ワニ」だよね、という確認です。合言葉は「ことがらはワニの口、ウ○コ漏らすな、○ロ吐くな」。忘れたら、思いだせばいいんです。思いださなくてもできるようになれば、身についたということですけど。

土曜日課外では、番付表の「大関」の導入。所謂「完了形」です。

使用頻度が多くはない表現形式ですが、それでも「使い所」「ツボと効き目」「がありますから、一つ一つ用例を見て、その使われ方を吟味する極めて明示的な扱いです。

典型的な用例を提示し、

「時の隔たりを超えて現在時へと伝わる余波」

「成果・達成感」「失敗・喪失感」

などのキーワードを示していますが、サッカー元日本代表、川島選手の「ドヤ顔」や芸人さん、クールポコの「やっちまったな!」あたりで実感を補足しています。

生き急いで劣化コピーのような問題演習の文字列にうつつを抜かすのではなく、お膳立てされた教材であれ、それが適切に用いられたものであるなら、その一つ一つのことばを自分で生き直すことが大事だと痛感しています。

本日はこの辺で。

本日のBGM:いちょう並木のセレナーデ(『刹那』バージョン)/ 小沢健二

tmrowingtmrowing 2016/05/29 17:40 指導手順など一部加筆修正。

2016-05-20 英語の文字指導

ライティング指導を専門と自称する私のモットーは

  • 「ライティング指導の第一歩は文字指導から」

というものです。

英国の National Handwriting Association のサイトがこちら。

http://www.nha-handwriting.org.uk/about-nha/about-nha

私は今年度から海外会員(年会費£24で英国内より割高) として登録しました。

英語を母語とする教育現場の「文字指導」がどういう状況にあるのかを知ることができます。

ナショナルカリキュラムの改訂で文字指導に関わる変更点・留意点

Handwriting-changes-in-the-National-Curriculum-KS1-2-Sept-2013.pdf 直

Twitterのアカウントもありますよ。

https://twitter.com/NHA_news

NHAに限らず、彼我の差を実感するのが、handwritingにおけるmotor skillsの考察とfont、typographyへの意識。

英国から豪州に目を移せば、タスマニアの department of education が発行している2009年版の詳細なhandwritingの手引がこちら。無料です。

https://www.education.tas.gov.au/documentcentre/Documents/Handwriting.pdf

理念というか、指導の背景というか、その辺りが大事だと思うので、是非、序論に当たる文章からお読み下さい。

個々の指導手順では、大文字 IとJのセリフの有無。V,v,W,w の筆順。小文字kのループなど解説も含め参考になります。


「欧文文字」そのものへの関心がそれほど高くないのは教育現場だけに限らないかも知れません。

次の記事は、日本では殆ど話題になっていない模様だけれど、単に「デザイン」の観点からだけではなく、欧文の「文字指導」でも考慮すべきことがらがいくつも指摘されています。心ある英語教師の方たちにぜひ読んで欲しい記事。

How Typography Can Save Your Life

What words look like matters ― in some cases, a whole lot.

by Lena Groeger

https://www.propublica.org/article/how-typography-can-save-your-life?utm_campaign=sprout&utm_medium=social&utm_source=twitter&utm_content=1463067664


さて、

授業時間確保の見通しも立たないのに、小学校での教科化で「文字指導」を開始することがあたかも既定路線であるかのような日本の英語教育改革ですが、お上の広報だけでなく、学会等でも最近頓に目にする機会の増えた、「小学校英語での文字指導」に関して、私はこれまでにも、何回か、重要な疑義を呈し、異議申し立てをしてきました。また、中学高校段階での指導の不在、定見のなさに関しても警鐘を鳴らしてきました。

ライティング指導の第一歩は文字指導から

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150825

Look who’s talking!

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150407

なくてななくせ

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120213

Do I have to draw you a diagram?

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120211

しかしながら、handwriting そのものの考察が殆ど為されていないのでは?と訝しく思うような実践例や研究成果が「説得力」を持ち、それに後押しされるかのような改革の動きは容易には変わらないのでしょう。

英語を教えている教員、英語を教えることになってしまった教員の目と心に届くことを願って以下、教材・指導書・概説書の紹介だけでもしておきます。個人で購入するのが難しいものは、学校の英語科の年度予算での購入や、同僚との協同購入などをご検討下さい。(近隣の方で、購入前に実物をご覧になりたい方は、要相談。)

日本にも古くからきちんとした「英習字」指導の体系はあったのです。

『新英語教育講座』が1948年。

『語学的指導の基礎』が1959年。

篠田治夫、寿岳文章という名前も若い世代には誰のことやら、という感じなのでしょうね。

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かつては、ペン書きがデフォルトで、能筆家による概説書が文字通り「お手本」でした。

「筆記体」と「ブロック体」などと言っている場合ではないですよ。

Alfred Fairbank

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Reginald Piggott の業績

所謂 "National Survey" の結果をまとめたもの。

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調査だけでなく、実際の教材とその指導書も出しています。

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Rosemary Sassoon の業績

そのうちの「一般書」から

如何に pen hold や motor skills への配慮がなされているか痛感します。

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こういった一般向けのものだけでなく、学校教育でも多大な影響を与えています。

私はもう随分長いこと、英文フォントは Sassoon 系ですが、好みを抜きにしても、次のような考察には触れておいて欲しいと思います。

Why Sassoon?

http://www.sassoonfont.co.uk/fonts/sas/WhySassoon1.3.pdf

冒頭で紹介したNHAのサイトでは次のような提言(警鐘?)をしています。「モデル」や「視写」に対する考え方など、さらに進化したように思います。

Rescuing-Handwriting-from-Redundancy-by-Rosemary-Sassoon.pdf 直

次の2冊の概説書は教師向けです。

小学校英語に限らず、文字を扱う英語教師は必読だと思います。

協同購入でも、学校の予算でもいいので、買っておきましょう。

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...Problems... は、2006年に出ています。もう10年になるんですよ。

目次。

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このイントロを熟読されたし。母語でさえこの現状なんですよ。

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...the way の方は、2003年刊です。既に干支一回りです。

「四線」とか「方眼」とか、今更ロシアに行かなくても…。

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Nelson のシリーズから

Cursiveの教師用指導書 (1993年) より

今では、ナショナルカリキュラムの方が改訂されているので、現行のネルソンの指導書にはここまでハッキリとした記述はなくなっているようですが、四線の間隔、文字のプロポーションなど、この「絶版本」から、まだまだ学ぶべきことがあります。

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現時点での最新版 (2014年刊) の指導書がこちら。

文科省の調査官や、指導的立場にある「有識者」の方々はこのくらいのことは踏まえた上で、「教材」を作成しているのでしょうね。

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Nelsonの指導書はかなり高価なものですが、教材自体は比較的入手しやすいと思います。

1989年版と1997年版の指導書。

改訂を重ねて、使い勝手は良くなっていると思います。

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以下、教材。

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フォントでSassoonを使用した教材

「3歳から」というのがちょっと心配ですが…。

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個人指導でも、教室での一斉指導でも使える、今私が一番高く評価している教材

イントロで述べられている指導の理念、全体の枠組みなど、彼我の差が明らか。

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フォントとか、文字のプロポーションとか、ちゃんと考えていますよね。

Practice 1 のフォントはSassoon Infantです。(kに着目)

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joinsに重点を移したBook 2がこちら。

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彼我の差を思い知らされること頻りですが、気をつけなければならないことが幾つかあるでしょう。

まず、motor skillsに主眼を置いた、線描や図形を含む、「運筆」を取り入れていること。

そして、その導入や練習、習熟では「意味のある語」を用いる必然性がない代わりに、何か「ゲーム性」のようなものを取り入れていること。

次に、そこから「意味のある語」「意味のある語句」「意味のある文」を扱ったトレーニングに移行する場合に、母語である彼らは、既にそのことばを耳で聞いて理解したり、自発的な発話でも使うことができる発達段階にいる、ということです。

日本の学習環境、授業環境に目を移せば、当然、習熟している「語彙」にも限りがありますから、「有意味」なことばを用いたトレーニングを初期段階から取り入れることは難しくなります。ここで紹介したような、優れた教材をそのまま「輸入」「翻案」するだけでは不十分で、「手書き文字」を指導する専門家が知恵をだし合ってシラバス、カリキュラムを組み立てる必要があるでしょう。

デジタル教科書など、ICTの活用が、「デジタル機器や教材市場の拡大」としてだけ脚光を浴びるのではなく、学習者の益になり、指導者の負担の軽減になるような取り組みを期待します。

最後に、最新のICTとの連動教材の指導書を紹介して、本日はおしまいです。

このエントリーの冒頭で紹介した、National Handwriting Association のサポートを受けています。

私は「紙」の指導書しか持っていませんので、実際のInteractive な教材(かなり高価です)の使用に関してはよく分かっていません。日本の「研究指定校」や「開発拠点校」などでは通例予算がつきますから、きっと、このような教材を試して、日本独自の教材開発へのデータを蓄積、提供しているのではないでしょうか?

このシリーズは2000年代前半で既に英国の出版社 Cambridge と日系企業である HITACHI のコラボレーションを実現していました。今年に入ってのBook 1改訂版(2016年最新版)の指導書になります。

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最後の写真の冒頭で書かれている配慮事項、Correct letter height, Parallel ascenders, Writing letters on the baseline が、日本の英語授業での文字指導できちんとなされているか、自問自答するべき人の目に届くことを願っています。

あとは悲しみを持てあまさないように、繰り返しておきます。

ライティング指導の第一歩は文字指導から。

本日のBGM: 異邦人 (原田知世)

tmrowingtmrowing 2016/05/22 07:42 大幅な加筆修正と画像ファイルの天地の修正をしました。

tmrowingtmrowing 2016/05/22 09:39 更に加筆修正。画像ファイルも追加しました。

tmrowingtmrowing 2016/05/22 15:40 豪州・タスマニアのdepartment of education 発行の2009年版 handwriting 指導の手引きへのリンクを追加しました。pdf (約2.6MB) のダウンロードが始まります。