英語教育の明日はどっちだ! TMRowing at best Twitter

2016-05-20 英語の文字指導

ライティング指導を専門と自称する私のモットーは

  • 「ライティング指導の第一歩は文字指導から」

というものです。

英国の National Handwriting Association のサイトがこちら。

http://www.nha-handwriting.org.uk/about-nha/about-nha

私は今年度から海外会員(年会費£24で英国内より割高) として登録しました。

英語を母語とする教育現場の「文字指導」がどういう状況にあるのかを知ることができます。

ナショナルカリキュラムの改訂で文字指導に関わる変更点・留意点

Handwriting-changes-in-the-National-Curriculum-KS1-2-Sept-2013.pdf 直

Twitterのアカウントもありますよ。

https://twitter.com/NHA_news

NHAに限らず、彼我の差を実感するのが、handwritingにおけるmotor skillsの考察とfont、typographyへの意識。

英国から豪州に目を移せば、タスマニアの department of education が発行している2009年版の詳細なhandwritingの手引がこちら。無料です。

https://www.education.tas.gov.au/documentcentre/Documents/Handwriting.pdf

理念というか、指導の背景というか、その辺りが大事だと思うので、是非、序論に当たる文章からお読み下さい。

個々の指導手順では、大文字 IとJのセリフの有無。V,v,W,w の筆順。小文字kのループなど解説も含め参考になります。


「欧文文字」そのものへの関心がそれほど高くないのは教育現場だけに限らないかも知れません。

次の記事は、日本では殆ど話題になっていない模様だけれど、単に「デザイン」の観点からだけではなく、欧文の「文字指導」でも考慮すべきことがらがいくつも指摘されています。心ある英語教師の方たちにぜひ読んで欲しい記事。

How Typography Can Save Your Life

What words look like matters ― in some cases, a whole lot.

by Lena Groeger

https://www.propublica.org/article/how-typography-can-save-your-life?utm_campaign=sprout&utm_medium=social&utm_source=twitter&utm_content=1463067664


さて、

授業時間確保の見通しも立たないのに、小学校での教科化で「文字指導」を開始することがあたかも既定路線であるかのような日本の英語教育改革ですが、お上の広報だけでなく、学会等でも最近頓に目にする機会の増えた、「小学校英語での文字指導」に関して、私はこれまでにも、何回か、重要な疑義を呈し、異議申し立てをしてきました。また、中学高校段階での指導の不在、定見のなさに関しても警鐘を鳴らしてきました。

ライティング指導の第一歩は文字指導から

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150825

Look who’s talking!

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150407

なくてななくせ

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120213

Do I have to draw you a diagram?

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120211

しかしながら、handwriting そのものの考察が殆ど為されていないのでは?と訝しく思うような実践例や研究成果が「説得力」を持ち、それに後押しされるかのような改革の動きは容易には変わらないのでしょう。

英語を教えている教員、英語を教えることになってしまった教員の目と心に届くことを願って以下、教材・指導書・概説書の紹介だけでもしておきます。個人で購入するのが難しいものは、学校の英語科の年度予算での購入や、同僚との協同購入などをご検討下さい。(近隣の方で、購入前に実物をご覧になりたい方は、要相談。)

日本にも古くからきちんとした「英習字」指導の体系はあったのです。

『新英語教育講座』が1948年。

『語学的指導の基礎』が1959年。

篠田治夫、寿岳文章という名前も若い世代には誰のことやら、という感じなのでしょうね。

日本の絶版概説書1.jpg 直

かつては、ペン書きがデフォルトで、能筆家による概説書が文字通り「お手本」でした。

「筆記体」と「ブロック体」などと言っている場合ではないですよ。

Alfred Fairbank

fairbank1.jpg 直

Reginald Piggott の業績

所謂 "National Survey" の結果をまとめたもの。

Piggott1.jpg 直

survey1.jpg 直

survey2.jpg 直

survey3.jpg 直

survey model.jpg 直

survey model2.jpg 直

survey model3.jpg 直

survey pen and angle.jpg 直

survey basic stroke and joins.jpg 直

調査だけでなく、実際の教材とその指導書も出しています。

survey typical joins1.jpg 直

survey typical joins2.jpg 直

survey left unjoined1.jpg 直

survey word writing1.jpg 直

piggott practical1.jpg 直

piggott practical2.jpg 直

piggott practical3.jpg 直

piggott practical4.jpg 直

piggott practical5.jpg 直

Rosemary Sassoon の業績

そのうちの「一般書」から

如何に pen hold や motor skills への配慮がなされているか痛感します。

Sassoon teach yourself1.jpg 直

sassoon teach yourself2.jpg 直

Sassoon teach yourself3.jpg 直

sassoon teach yourself4.jpg 直

sassoon teach yourself5.jpg 直

sassoon teach yourself6.jpg 直

sassoon teach yourself7.jpg 直

sassoon teach yourself8.jpg 直

こういった一般向けのものだけでなく、学校教育でも多大な影響を与えています。

私はもう随分長いこと、英文フォントは Sassoon 系ですが、好みを抜きにしても、次のような考察には触れておいて欲しいと思います。

Why Sassoon?

http://www.sassoonfont.co.uk/fonts/sas/WhySassoon1.3.pdf

冒頭で紹介したNHAのサイトでは次のような提言(警鐘?)をしています。「モデル」や「視写」に対する考え方など、さらに進化したように思います。

Rescuing-Handwriting-from-Redundancy-by-Rosemary-Sassoon.pdf 直

次の2冊の概説書は教師向けです。

小学校英語に限らず、文字を扱う英語教師は必読だと思います。

協同購入でも、学校の予算でもいいので、買っておきましょう。

Rosemary Sassoon.jpg 直

...Problems... は、2006年に出ています。もう10年になるんですよ。

目次。

Sassoon Problems Contents 1.jpg 直

Sassoon Problems Contents 2.jpg 直

このイントロを熟読されたし。母語でさえこの現状なんですよ。

Sassoon Problems Intro.jpg 直

...the way の方は、2003年刊です。既に干支一回りです。

「四線」とか「方眼」とか、今更ロシアに行かなくても…。

Sassoon the way lines.jpg 直

Sassoon the way lines 2.jpg 直

Nelson のシリーズから

Cursiveの教師用指導書 (1993年) より

今では、ナショナルカリキュラムの方が改訂されているので、現行のネルソンの指導書にはここまでハッキリとした記述はなくなっているようですが、四線の間隔、文字のプロポーションなど、この「絶版本」から、まだまだ学ぶべきことがあります。

nelson cursive TM cover.jpg 直

nelson cursive TM1.jpg 直

nelson cursive TM2.jpg 直

nelson cursive TM3.jpg 直

nelson cursive TM4.jpg 直

nelson cursive TM5.jpg 直

nelson cursive TM6.jpg 直

現時点での最新版 (2014年刊) の指導書がこちら。

文科省の調査官や、指導的立場にある「有識者」の方々はこのくらいのことは踏まえた上で、「教材」を作成しているのでしょうね。

nelson TM latest cover.jpg 直

nelson TM latest1.jpg 直

nelson TM latest2.jpg 直

nelson TM latest3.jpg 直

nelson TM latest4.jpg 直

nelson TM latest5.jpg 直

nelson TM latest6.jpg 直

Nelsonの指導書はかなり高価なものですが、教材自体は比較的入手しやすいと思います。

1989年版と1997年版の指導書。

改訂を重ねて、使い勝手は良くなっていると思います。

Nelson TM.jpg 直

以下、教材。

Nelson Practice books.jpg 直

Nelson Yellow.jpg 直

Nelson Yellow Contents, Scope and Sequence.jpg 直

フォントでSassoonを使用した教材

「3歳から」というのがちょっと心配ですが…。

practical handwriting 3 and over cover.jpg 直

practical 3 and over 1.jpg 直

practical 3 and over 2.jpg 直

practical 3 and over 3.jpg 直

practical 3 and over 4.jpg 直

3 and over.jpg 直

個人指導でも、教室での一斉指導でも使える、今私が一番高く評価している教材

イントロで述べられている指導の理念、全体の枠組みなど、彼我の差が明らか。

Practice 1 cover.jpg 直

practice1 intro.jpg 直

practice 1 contents.jpg 直

フォントとか、文字のプロポーションとか、ちゃんと考えていますよね。

Practice 1 のフォントはSassoon Infantです。(kに着目)

Practice1 infant.jpg 直

practice 1_1.jpg 直

practice 1_2.jpg 直

practice 1_3.jpg 直

practice 1_4.jpg 直

joinsに重点を移したBook 2がこちら。

Practice2 cover.jpg 直

practice 2 contents.jpg 直

practice 2 intro.jpg 直

practice 2_1.jpg 直

practice 2_2.jpg 直

practice 2_3.jpg 直

practice 2_4.jpg 直

practice 2_5.jpg 直

practice 2_6.jpg 直

彼我の差を思い知らされること頻りですが、気をつけなければならないことが幾つかあるでしょう。

まず、motor skillsに主眼を置いた、線描や図形を含む、「運筆」を取り入れていること。

そして、その導入や練習、習熟では「意味のある語」を用いる必然性がない代わりに、何か「ゲーム性」のようなものを取り入れていること。

次に、そこから「意味のある語」「意味のある語句」「意味のある文」を扱ったトレーニングに移行する場合に、母語である彼らは、既にそのことばを耳で聞いて理解したり、自発的な発話でも使うことができる発達段階にいる、ということです。

日本の学習環境、授業環境に目を移せば、当然、習熟している「語彙」にも限りがありますから、「有意味」なことばを用いたトレーニングを初期段階から取り入れることは難しくなります。ここで紹介したような、優れた教材をそのまま「輸入」「翻案」するだけでは不十分で、「手書き文字」を指導する専門家が知恵をだし合ってシラバス、カリキュラムを組み立てる必要があるでしょう。

デジタル教科書など、ICTの活用が、「デジタル機器や教材市場の拡大」としてだけ脚光を浴びるのではなく、学習者の益になり、指導者の負担の軽減になるような取り組みを期待します。

最後に、最新のICTとの連動教材の指導書を紹介して、本日はおしまいです。

このエントリーの冒頭で紹介した、National Handwriting Association のサポートを受けています。

私は「紙」の指導書しか持っていませんので、実際のInteractive な教材(かなり高価です)の使用に関してはよく分かっていません。日本の「研究指定校」や「開発拠点校」などでは通例予算がつきますから、きっと、このような教材を試して、日本独自の教材開発へのデータを蓄積、提供しているのではないでしょうか?

このシリーズは2000年代前半で既に英国の出版社 Cambridge と日系企業である HITACHI のコラボレーションを実現していました。今年に入ってのBook 1改訂版(2016年最新版)の指導書になります。

Penpals for handwriting cover.jpg 直

Penpals the whole picture.jpg 直

Penpals contents.jpg 直

Penpals font size variations.jpg 直

Penpals GPS.jpg 直

Penpals sequence1.jpg 直

Penpals sequence2.jpg 直

Penpals sequence3.jpg 直

Penpals Unit1.jpg 直

penpals Unit2.jpg 直

最後の写真の冒頭で書かれている配慮事項、Correct letter height, Parallel ascenders, Writing letters on the baseline が、日本の英語授業での文字指導できちんとなされているか、自問自答するべき人の目に届くことを願っています。

あとは悲しみを持てあまさないように、繰り返しておきます。

ライティング指導の第一歩は文字指導から。

本日のBGM: 異邦人 (原田知世)

tmrowingtmrowing 2016/05/22 07:42 大幅な加筆修正と画像ファイルの天地の修正をしました。

tmrowingtmrowing 2016/05/22 09:39 更に加筆修正。画像ファイルも追加しました。

tmrowingtmrowing 2016/05/22 15:40 豪州・タスマニアのdepartment of education 発行の2009年版 handwriting 指導の手引きへのリンクを追加しました。pdf (約2.6MB) のダウンロードが始まります。

2016-05-17 「ことがらはワニノクチ」はまだ序の口

tmrowing2016-05-17

中間試験がスタートしました。

連休明けの授業では、マインドセットが振り出しに戻って中学生になっている生徒を鼓舞したり、中には初めて迎えることになる複数日程での「定期試験」に対する心と身体の準備を説いたり、世界一亀の定義に習熟する高校生を目指したり、もどきの「エイブン」を指摘し改善したり…。

高1は、例年よりも早い「ワニの口」の導入と、例年より遅い「助動詞の番付表」の導入。

私の授業で「ワニの口」、または単に「ワニ」と読んでいるのは、一般に、名詞句や名詞節と呼ばれる(今「一般」と言ったけど、「普通の人」はそんな用語ではモノを考えていないだろうと思う。あくまでもメタ。)もの。で、今回は、所謂「動名詞」。本来、動詞として用いられていた意味内容を「コトガラ」として名詞化する工夫です。(「ワニ」の種類に関しては、後々取り扱うことになります。アリゲーターとかクロコダイルとか、ね。)

合言葉は「ウ○コ漏らすな、ゲ○吐くな」

今年度から、「意味順」教材を、文英堂のものに変えたので、初期段階から「名詞句」「名詞節」といった用語が出てきます。実感を伴うには工夫が必要です。

今回の中間試験に出す問題とは異なる、いささか極端な例ですが、

1. Football is fun.

2. Watching football is fun.

3. Playing football with my teammates is a lot of fun.

はそれぞれ、このような記号付けで整理されます。

f:id:tmrowing:20160517151835j:image:w360

ワニの口.jpg 直

あくまでも「名詞は四角化で視覚化」ですので、「ワニの口」の下顎から書き始めて、尻尾で反転し、上あごを書いて「ワニ」です。(今さらながら、このワニは左向きなんですよね。導入の小道具に、「ラコステ」のポロシャツを着ていったのですが、鏡を見て「よしっ!」と思ったのが失敗でした。ラコステのワニは、右向きなんです。)

この1−3の例で、1が分からない生徒は今の私のクラスにはいないと思いますが、2, 3が怪しい生徒はいると思います。

ダメワニ.jpg 直

例文2. で、主語が footballだと思い、動名詞のwatchingを考えない状態が「ゲ○を吐いた」状態。

上の「ダメワニ」の写真ファイルを開いてもらうと、ダメな記号の付け方が見られます。(見ないに越したことはないので、ファイルだけ示しています。)

ただ、人間も消化吸収できなかったり、悪いものを飲み込んだりしたら吐き気がしますから、もし、ここで「ダメ出し」されるような記号付けをしている生徒がいたら、そこまでの自分の指導の不味さ、拙さを振り返る好機でもあります。そして、大抵の場合、振り返ってばかりです。

例文3. で、主語が playing football だけだと思い、 with 名詞を除いてしまうのが「ウ○コを漏らした」状態。こういう記号付けは避けるように言っています。でも、これとても、乳児から幼児への発達段階では、「おむつ」「おしめ」の必要な時期がありますし、歳を取ったら取ったで、また必要になるかもしれません。

ということで、上記の合言葉です。下品ですけどね。

「ワニ(の口)」についての具体的な指導手順は過去ログを参照されたし。

ワナナバニ園へようこそ

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20131030


もう一つの定番、「助動詞の番付表」では、白鵬、琴奨菊、勢の写真を見せて「大相撲」の番付から導入。いや、大相撲の番付自体を知らない生徒が多いので。

授業では、英語の助動詞も「力士」のように階層制があり、「役」がついている、という話。「横綱」の「付き人」は原形。「平幕」の「付き人」も原形。でも、位が下の平幕と同じ付き人じゃ横綱は困らない?そもそも横綱のプライドが許さないんじゃないの?などと冗談を挟みながら、「横綱」と「平幕」は一緒に使えない、という「ルール」を説いたりしています。

「横綱」は「話者の心的態度」と「可能性の査定」が主な「役」となるわけですが、用語よりも実感を掴むことが大切なので、結構大変です。使っていく中で身につけるのが一番ですけど、教室での教師対生徒の言語使用ってモダリティの観点で見ると特殊な場ですよね?

Will you open the door?

が「丁寧な依頼」などではなく、その場のその気の有無を確かめる、かなりダイレクトな「物言い」であることはきちんと教えています。まあ、「そのうち」ですよ。

高3は「表現ノート」第一回の提出。

案の定、最初は、「グロサリー」がボロボロ。読解のノートではないのですが、そこが本当に分かるかどうかは、この「表現ノート」を続けていく上で生命線でもあります。「サマリー」には疑問文を使わない、とか、「否定で終えずに、それに取って代わる肯定でサポートする」とか、この活動をやっていく中で身につくと思います。「コメント」は、正に「意味順」が身についているかが試される場です。「できない言い訳のできない活動」ですので、必ず、「自分の興味関心の持てるネタ」を扱ってください。お願いします。

そんなこんなで、中間試験の作問天国で初日に3種類試験が入ってしまい、作問、印刷、袋詰めで学校を出たのが8時半でした。帰路途中で遅めの夕食を済ませたのが9時過ぎ。普段は、9時に寝て3時に起きる生活をしているので、リズムを整えるのが大変ですけど、変拍子も偶になら大丈夫でしょう。


さて、

先日「呟き」の方で連投していた、「ライティングにおける添削とフィードバック」は結構なリアクションがありました。「ヨンギノー」が叫ばれる、日本の英語教育界ですが、こんなところもまだまだ「定見」が共有されていないのではないでしょうか?

以下、自分の呟きの「まとめ」。

ライティングの添削やフィードバックに関して、「丁寧に個々の生徒や学生に添削を施し続けた結果生徒が萎縮したことを明らかにした実証的研究」をご存知でしたら教えて下さい。気になっていることは二つ。一つは「お題設定」、もう一つは「萎縮」の指標は何によって測ったのか、ということです。「添削によって、真っ赤になった原稿を見ると、書き手は萎縮する」というのはどの程度確かめられているのでしょうか?赤ではなくて青だったら?とかで研究をやって見た方はいらっしゃいますか?

「ライティング」指導や評価では「添削」は「費用対効果」のような語られ方をしているように思っています。労多くして益少なし、のように。でも、本当に「益」は少ないのでしょうか?自分が書いたものがより良くなることを喜ばない学習者がいるでしょうか?添削が上手く機能しない原因は、もっと他にあるのではないでしょうか? 例えば、人数が多いから添削の時間がかかりすぎて、適切なタイミングで返却できていないとか?

この場合、クラスの生徒の人数と、担当する総人数の両方が少なければうまくいくでしょうか?ICTの活用で、その場で添削したものが記録として残り、しかも生徒本人へのFBとして機能するとしても、教師が教室でその場でその時に行うとすれば、うまくいくでしょうか?一人当たりの添削にかかる時間はそれほど変わらないでしょうから、クラスの人数が少ない方が上手くいきそうな気がします。でも、生徒の側から見れば、一定量の英文を書くためにかかる時間は、実際に書いている時間以上になっています。アイデアジェネレーションと構想やメモ書き、書く途中での読み返し、などなど。とすると、その時間に書き始めて、書き終え、それをその場で添削する、というのは難しい。

タスクを下位技能に分けたり、プロセスで段階を設けたりするのは、FBや添削を行う適切で有効なタイミングを設定する、という意味もあるのではないでしょうか?では、その場合のFBに求められる要件、資質とは?そういうことを考え続けて早四半世紀が経ちます。添削、FBで「適切で効果的」なものを教師が与えるには、英語の知識、運用力に加えて、「書く」ということはどういうことなのか、という理解が求められると思っています。身も蓋もない言い方をすれば、「添削がヘタだから、書き手がさらに良いものにしようという意欲を失う」とは言えないでしょうか?

「添削やFBで経験知も積んでみたけど、上手くいかない」ということもあるでしょう。私にもありました。私の場合で言えば、「お題設定」に無理や不備があった場合には、「もういいや」という反応を助長していたように思います。このお題だから、いいものを読んでもらいたい、というのが突破口かと。

そう考えると、今現場で考えなければならない「ライティング」の課題は、「書く動機づけ」と「読み手の設定」に収束するのではないか、と思います。ある編集者とのやりとりの中で20年前に私に突きつけられた課題と同じですが、その課題解決に向かう、自分の経験知は変わっています。

ESL (EFL) での研究では、「よい文章」の指標を仮に決めておいて、その指標を物差しにして、FBの種類と、その効果(の有無や差)を見る、という至極当たり前の研究 をしているわけです。それはそれで意味のあることで参考になります。

その一方で、「よい文章とは?」という研究もあるわけです。近年では「自動採点」との絡みで注目度が高まっているかも知れませんが、ある研究でFBの「効果」を測る場合に、この「よい文章の持つ資質・要件」はどうなっているのかも吟味されるべきでしょう。そこが違えば比べることが難しくなります。

それに対して、日本の英語教育系の雑誌で示される特集記事や実践発表を読むと、「誤りの訂正」に関して、「萎縮」「意欲」といった情意面への言及が多くなされているように思えるのですが、その割に「萎縮の度合い」や「意欲の指標」が同時に示されることが(ほぼ)ないように思います。

以上の連投を踏まえて、このエントリーにある私の発表資料を読み返して見て下さい。

「そのうち」はそのうちに

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141126

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/files/2014Forum_Matsui_presentation%20%E5%85%AC%E9%96%8B%E7%94%A8.pdf?d=download

このエントリーが5年前。貼り付けたDL可能な資料「…指導、この50冊」(pdf)を作成したのが2001年。そこから15年。現場の指導では何かが変わったか?

愚者なりに考えました

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110401

今日の高1課外講座では、助動詞の番付表をやったばかりでした。このエントリーは個人的に保存版です。

I will.

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140803

昨日連投した「ライティング指導における添削とFB」に関して、2年前にも言っていましたね。

そう言えば、今日は亡き母の誕生日でした

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140525

試験は始まったばかり。

高2では「定義のミカタ」の延長線(戦?)で「亀」の定義新作も披露してもらいます。

試験が終われば「採点天国」ですので、楽しみに待ちましょう。

本日のBGM: TOKAKUKA (秋山竜次)

tmrowingtmrowing 2016/05/18 18:25 「ワニ(の口)」の指導手順を示した過去ログへのリンクを追加しました。

2016-05-07 おおげさに言うのならば…。

tmrowing2016-05-07

ヴィカ様のお誕生日に贈った「呟き」をRTしていただくという、この上ない悦びもあり、ご機嫌なGWの滑り出しでしたが、ロシアから届いた別の知らせに心を痛めて送った、励ましの「呟き」に「いいね」をいただくという展開に。「スケオタ」の本懐ですね。

連休中は本業で湖に。

他県からの遠征組のお手伝いも。私も「上級コーチ」という有資格者ではあるのでお声掛けいただいたわけですが、こちらの方が勉強になりました。深謝。

授業は連休を跨いで。

高1は「四角化ドリル」をその5まで。

授業の中で強調しているのは、「名詞感」とでもいうもの。名詞の匂いとか気配。で、「その5」が意味を持ってくる訳です。

練習としては、口頭での copyが主です。その後で Read & Look up。「この練習は重要ですよ」、ということは伝えています。生徒に訊いたところでは、中学校時代に Read & Look upを授業中やっていたという者は約5分の1。同じ中学校出身でした。その他大勢は、「そういう大事なことを、自分は中学校で教わって来なかった」という心配をするかも知れませんが、その「中学校で既にやってきた」という生徒が、そのトレーニング方法に習熟していたら、既にかなりの英語力になっているはずなのですね。

クラス全体には、こう言っています。

実際にどんなに優れた練習方法でも、英語が身についていないなら効果がないということ。で、Read & Look up をやってきたのに英語が身についていないという場合には、教師側の問題が半分から7割、生徒側の問題が3割から半分くらい。

現に、その「経験者」に、「学校を離れて、家で、など自分一人で、Read & Look up で練習したことがどれくらいあるか?」を尋ねたら、皆撃沈でしたから。

結局、モデルとして私やALT、人でなければCDなどから発せられる、「音を捉まえる」ということができないと、個人練習であれ、ペアであれ、そこに「英語の音」がないわけですから、上手くいきません。ましてや、教室を離れて一人で練習するような場合には、繰り返せば繰り返すほど英語から離れていってしまうことにもなりかねません。

現任校で使用している教材の殆どにはCDでの音源がついていますが、まずは、教室で教師の音声を「捉まえる」ということにもっと注力すべきでしょう。耳と頭。身体半分、心半分ですかね。

四角化ドリルは、タテ折りで半分にした右側、英語のコラムの方で、自分がスラスラ音声化できるものには「○」を、更なる練習が必要なものには「☆」をつけて、ドリルのアイテムの中での温度差を確認。左側の日本語を見て英語がすぐに出て来るものには「○」、すぐに出てこないもの、間違えているものには「☆」をつけて、こちらも温度差。これによって、マトリクスのように、自分の重点課題が浮かび上がる、というのが「システム」なんですが、そうは上手くいかないもの。

まあ、やっていくうちにできるもの(モノ、者)はすぐできるし、できないものは時間がかかります。

bird / third を取り出して母音の練習をしたあとで、birthday の音が崩れてしまうのはやはり問題。同じ音は同じゾーンに収めることが大事。自分の音が自分の身体に響く、充ち満ちるためには、やはり自分の姿勢、身体を感じることと呼吸。アコーディオンのような呼気の使い方だと思います。

連休明けには「意味順」「番付表」そして、「対面リピート」導入の予定。


高2は、土曜日課外の「定義のミカタ」が延長戦にもつれ込んでから、連休で授業がないので、振り出しに戻らないことを期待するのみ。まだまだ、タテのものをヨコにしただけ、足し算というより並べただけ、というものが多いですね。余剰分の情報を引き算したり、共通因数で括ったり、配分したりという、かけ算・割り算も重要なんですよ。

先日のエントリーでもとりあげた「英語ネイティブによる学校英語へのダメ出し」を課外講座でも紹介し、「大事なことはそんなんじゃな〜〜い」というメッセージを伝えておきました。高2の「学級文庫」を活用することです。


高3は、「診断テスト100」を最後まで。診断結果を真摯に受け止めたノート作成が重要。個人差、温度差は必ずありますからね。

進学校嫌いで、受験指導嫌いな私でも、進学クラスの担任をして、受験学年担当だと、「入試で使われた英文素材での読解指導」もするわけです。

比較的(何と比較するかがそもそも問題なんですけど)やさしい英文を素材にした教材を採択した時の問題は、

1.入試問題そのもので、原文が書き換えられている

2.問題集に採録する際に、原文が書き換えられている

3.その両方

これ本当に困るんです。

さらに、

4.原文がそもそも、お粗末なエイブン

が悲劇。

今回、久々にこの高3の読解教材を担当したら、改訂版で、出だしの2題の英文が「詠み人知らず」のwebからのもののようでギャフン‼︎

ということで、いつものように自分でノートに視写したものをアップします。

まずは、Unit 1 。

Unit1_1_3.jpg 直

Unit1_4_6.jpg 直

Unit1_7_8.jpg 直

Unit1_9_10.jpg 直

Unit 1読み人知らず.jpg 直

途中で、「人生における優先順位」という件で、価値判断、重み付けがなされるのですが、その記述がお粗末。

原文(最後の写真のもの)では、少し具体的ではあるものの、重み付けの差が分からない点ではあまり変わらず。

結論部分の記述が「?」。学生が知りたかったのは「喩え」なのだから、名詞で対応させないとね。

「深イイ話」でしょ?というあざとさもハナにつきます。


続いて、Unit 2。

Unit2_1_4.jpg 直

Unit2_5-8.jpg 直

Unit2_9_10.jpg 直

Unit2詠み人A1.jpg 直

Unit2詠み人A2.jpg 直

Unit2詠み人B1.jpg 直

Unit2詠み人B2.jpg 直

物語として破綻しているのでは?と思う程、途中が端折られていて、これは絶対に原文では詳しい描写になっているはずと思いながら読んでいました。本文に主人公の名前が出てこないので、授業では描写・形容から「骨皮筋衛門」「丸出だめ夫」「ベンチ君」というニックネームをつけて読み進め。

案の定、原文と思しきものでは、高校時代も活躍していない、「か細いアメフト少年」と「その父親」の描写がありましたが、その少年が大学に入って “cut” をクリアーしたという、アメリカのスポーツでは重要な記述がありました。結構やるじゃん「丸出だめ夫」。

ただ、最後の「自分のプレーを見ることのできなかった盲目の父が亡くなり、天国に行ったので、ようやく自分のプレーを見ることができる」というのは、キリスト教的な 死生観としても適切なものなのかが、よくわからない。

出題校が「白百合女子大学」なのだけれども、一般入試で、キリスト教的な価値観を前提として解答には当たらないと思うので、何だかなぁ…、という感じ。

原文と思しきもの二種類 (A, B) も授業で生徒に示しています。

Bとして示した英文には、「22番、行ってこい!」というようなコーチの掛け声があるのです。これは、his worst player を示すための描写なのでしょうか?

確かにアメフトでゲーム中にフィールドに立てる選手は11人だけど、プロのNFL以外では、交代選手に人数制限はないのでは?NCAAではベンチ入り22人なのかしら?

ということで、私も生徒もモヤモヤが消えないまま、Unit 3の英文に期待するのでした。

本日のBGM: イージュー★ライダー(新山詩織)

2016-04-29 Chaos & Disorder

Princeの存在を知ったのは1980年代の前半。

N.Y.C 1983

オレは巣に戻りそこねた

魚だった

ここに来て初めての夜

ケネディ空港からマンハッタンの街中に至るまで

タクシーの中で ずっとオレは

イースト・リバーの重たいうねりを感じていた


初めの一ヶ月間

セントラル・パーク・ウエストにある安ホテルに

仮の宿をとったシャワーを浴びながらオレは

向かいの窓から聞こえてくる

Princeのファンクが

せつなく飢えた街の鼓動と

同期するのをみていた

(N.Y.C. 1983

佐野元春 「ハートランドからの手紙 #6」

『ハートランドからの手紙』角川文庫より)

天賦の才。

自分と同世代から生まれた歴史に名を残すであろうアーチストという認識でした。

Bowieの時もそうだったように、打ち拉がれながらも、日常という「うすのろ」は進むもの。

生業は生業で始まり、続いていきます。

高3は『教科書』を進めていきました。いつもより幾分かは丁寧に。

A3両面印刷で4頁構成のワークシート。表面は「フレーズ(チャンク)」でパート毎に読むページ。二つ折りをめくると、裏(内)面には、フレーズ順送り訳と、ベタ内のパラグラフを印刷。表の英文フォントはSassoonで、裏はArial。

私の作るハンドアウトやワークシートでは、フォントは基本をSassoon系で3年間ずっと通していたのですが、検定や入試など「時間との戦い」が求められる「読み」では、「読みにくさ」を感じる生徒もいるので、まずはArialで、その後徐々に「セリフ」のあるフォントに近づけて、慣れさせることを考え始めました。私も軟弱化、老化しましたかね。

でも、盛り込む内容は極力シンプルにしています。

最近は、本当に「(音であれ文字であれ)目の前に適切に用いられている英語があれば、そこから学ぶ」という感じでやっています。

語彙を「仕込む」ワークシートも作成。表面左、日本語で意味→英語の(音と綴り字で)仕込み、右側はフレーズのマッチングで、和→英の仕込み。母語で持つ知識を活かそうという目論見。裏面はflip & write など書く練習用で罫線。

どちらも「呟き」の方で、写真をアップしているので、探してみて下さいな。


高2は、「定義のミカタ」で、道具から動物など生きものの定義文に習熟する展開に。

ここで使っている教材は、

  • 長崎玄弥『奇跡の英文解釈』(1977年) 

です。

私が高2の時にやっていたもの。当時は返り読みをせず、一読了解で、「速読」の基礎訓練という位置づけの活動でしたが、今の生徒に対しては、このあとに取り組む「読み比べ」と、そこからの「四則演算(=足したり引いたり掛けたりして、いいとこ取りと却下でオリジナルの定義文を作成する活動)」に資するためにやっています。

前回扱った分の「道具」の定義文を引いておきましょう。

corkscrew

a. a device for pulling corks out of bottles

b. a tool used for pulling the corks out of wine bottles

c. a tool with a screw-like spike, used for drawing corks from bottles

d. a tool made of twisted metal that you use to pull a cork out of a bottle

e. a device for removing corks from bottles, which consists of a handle with a twisted metal rod to screw into the cork and pull it out

hammer

a. a tool with a heavy metal part on a long handle, used for hitting nails into wood

b. a tool that has a heavy metal head attached to a handle and that is used for hitting nails

c. a tool that has a heavy metal head attached to a handle and that is used for hitting nails or breaking things apart

d. a tool used for hitting things or forcing nails into wood that consists of a handle and a heavy metal top with one flat side

e. a tool with a heavy metal head mounted at right angles at the end of a handle, used for jobs such as breaking things and driving in nails

scissorsとtweezersはこちらのハンドアウトをご覧下さい。

定義のミカタその2:scissors & tweezers.pdf 直

後置修飾に習熟してから、今度は「場所」の説明で、関係副詞と前置詞+関係代名詞を用いざるを得ない課題へ。

「動物園」の定義を読み比べて、「水族館」、または「図書館」の定義文を作るグループワークです。

zoo, aquarium and library.pdf 直

高1は、ようやく「四角化ドリル」に入りました。

発音は、強弱のリズム、ビートに重点を置き、姿勢と呼吸と共鳴を確認してから調音へ。

発声と調音とは違うものなので、まずは力まないで、スッとやることが大事なんですけどね。

発音と綴り字の整理、グループ化のために『グル単』を使ってみたのは良いのですが、強勢の位置と長音、短音の整理の仕方で詰めが甘いので、結局、私が範読というかモデル音声を提供して、強勢の位置を書き込ませている、と言う感じです。結局、自作するしかないんですかね。

それでも連休前で「その4」まで進めましたので、恒例の「ポニョの上の崖」のお絵描きタイムです。先輩の作品を見て、学んだり、自信を深めたり。

連休明けには「意味順」導入の予定。

これで、「名詞は四角化で視覚化」と「助動詞の番付表」を使う土台を作れます。

語彙は『短単』の例文を書けるかチェックしていますが、返却時に生徒に言っているのは、

自分の間違ったところ、書けなかったところに、返却されてすぐ赤で正解を書き込む作業やマインドから卒業しなさい。

ということ。

正解は『短単』本編に書いてあるのです。チェックに入る前に、Read & Look upで「見なくても言えるように」して、3回とか5回とか縦書き練習をして、「見なくても書けるように」していて、正解に至らなかったものが、赤で一回正解を書くことで劇的な変化を生むとは考えられません。答えを見直すのではなく、そこまでの自分の取り組みの「お粗末さ」「甘さ」と向き合うこと、取り組みの「ムラ」や「ムダ」をこそ見直し、「適切なトレーニング」を自分に課すことの方が余程大切。

まあ、そのうち分かりますから。それが「卒業後」じゃないといいな、とは思いますけど。


さて、

先日、ある英語本を取り上げました(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160417)が、しつこく続編。

この本の表紙にも取り上げられ揶揄されている、「気をつけて」に対応する英語表現 (項目037、pp.88-89)。

この著者は、”be careful of …” は使わないといいます。

代案で "watch out for ..." をあげているのですが、他にも自然な「英語表現」はいろいろありますよね。

私がすぐ思い浮かべたのは ball parks でのwarning signsでした。

watch out for

ballpark_watchoutfor.jpg 直

https://theviewfromhomeplate.files.wordpress.com/2011/07/img_0339.jpg?w=640&h=371

be alert for

wrigley_be_alert.jpg 直

http://chicagouncommon.com/photography/wrigley_be_alert.jpg

be aware of

please be aware of.jpg 直

https://careeringcrawdad.files.wordpress.com/2012/07/img_6902-edenton.jpg?w=620

beware of

beware of objects leaving.jpg 直

http://www.sandrawagnerwright.com/wp-content/uploads/IMG_1138-292x300.jpg

「掲示」ですから、確かに書き言葉でしょうが、危険性を確実に伝えるためには、誰もが分かる英語表現であることが求められるでしょうから、このような英語を使わない、という人はあまりいないのではないかと思うのです。

ここで気になるのは、be carefulは使わないというのに、watch out forの意味を理解するためには、be careful とか、notice を知らなければならないという基本的なことに、なぜ無自覚なのか?というところ。

ケンブリッジの句動詞辞典から。

f:id:tmrowing:20160428043733j:image:w360

watchoutfor.jpg 直

このケンブリッジの辞書の用例で、1例目は、「視覚」に関連したものなので、英語を覚えたての人でも理解は比較的容易だと思うのですが、2例目の「ビスケット」のingredientsに関しては、普通は「それ、見えないでしょ?」と思う訳ですよ。

で、この "watch out for ..." というのは、 "be alert for ..." のように、 "..." の部分には、ものであれ、人であれ(「こと」もあるかな?) "potential danger/harm" が来るということと、それに対する「注意、意識を喚起する」 表現なんですよ、という部分を押さえないとダメだと思うんです。

Shorter Oxford Dictionary では、

watch out

a colloq. be alert, look out (freq. as imper.);

b (Cricket, now rare) field;

c watch out for ―, be on the watch for, be alert for.

という定義となっています。一般の英語ネイティブは、"be alert for" で語義を言い換えている訳です。

この辺りが「基礎語彙」の扱いの難しさでしょう。一定年齢以上の英語ネイティブや、熟達した運用者にとって「自然な」英語表現が、必ずしも、発達段階で、より初期に身につけるものとは限らないということですね。

指導する側での「目利き」が求められるところです。

そうそう、この英語本の079で取り上げられている、「英語をもう一度やり直す」で、自然な英語としてあげられている、”brush up (on) my English” ですが、訳者が分かっていないのか、著者本人の語感なのか、「ブラシをかけて磨き上げる」という日本語訳が気になりました。

この項目に関しては既に、このブログで取り上げていますので、過去ログをご覧下さい。久保野雅史先生のコメントまで是非。

"A Triton among the minnows"

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090412

「雨の日に靴を磨くかのように」

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090413

英語はもはやネイティブスピーカーだけのものではなくなっている、と言われて久しいと思うのですが、それに対する意見も賛否が分かれるのでしょうね。

次の Ngram viewer の各項目をよく見て欲しいと思います。

f:id:tmrowing:20160429173250p:image:w360

for or against.png 直

本日のBGM: Sometimes It Snows in April (Prince And The Revolution)

tmrowingtmrowing 2016/04/29 18:43 ファイルを追加し、一部、加筆修正しました。

2016-04-24 タテのもの、ヨコのもの、自分のもの

tmrowing2016-04-24

フィギュアスケートは、シーズンの掉尾に新たな大会。Team Cup戦なるものが、コーセーの冠で開催です。

ISUの公認大会のはずなのに、記録は公認されなくて、でも「世界初」のジャンプは認定される(?)という不思議な結果になっています。この話は、また日を改めて書こうと思います。

さて、

生業の英語教育。授業担当は、今年も進学クラスのみ、1年から3年までとなりました。

高3のこの時期は「診断テスト100」に時間を割いています。1項目でノート1頁を使って整理することになっています。今後の学習での、肉付け、加筆修正が鍵。

その一方で、この学年で昨年度扱えなかった、『話せる音読』を高3でやっています。メインは “Summary & Opinions” のセクションなのですが、Story本文がよくできているので、その素材はできるだけ消化吸収しようということで、ホワイトボードに学級文庫から用例を抜きだし、ヨコのものをタテにして、それから自分のものに、という学習活動。

encourageとinspire を取り上げました。

用例と定義を読み比べたあとで、もう卒業した先輩が書いてくれた「絵」を参考に(または却下)して、語義の理解を深めます。次の4つのうち、どれが最も適切でしょうか?

f:id:tmrowing:20140415105746j:image:w360

f:id:tmrowing:20140415105755j:image:w360

f:id:tmrowing:20140415105803j:image:w360

f:id:tmrowing:20140415105827j:image:w360

持つべきものは良き先輩・同輩。

以下、inspireの語義と用例を引いておきます。

If someone or something inspires you to do something new or unusual, they make you want to do it.

ex. Our challenge is to motivate those voters and inspire them to join our cause.

If someone or something inspires you, they give you new ideas and a strong feeling of enthusiasm.

ex. In the 1960s, the electric guitar virtuosity of Jimi Hendrix inspired a generation.

以上、コウビルド英英和

to encourage someone by making them feel confident and eager to achieve something great

ex. The country needs a leader who can inspire its citizens.

ex. The coach inspired them to victory.

to make someone have a particular feeling or react in a particular way

ex. A good teacher inspires a love of learning children.

以上,LAAD

to fill someone with confidence and desire to do something

ex. She inspired her students to do the best they could.

If something or someone inspires something else, it causes or leads to it

ex. A successful TV program inspires many imitations.

以上、CACD

to make someone feel enthusiastic about something and make them feel that it is worth doing

ex. The lecture today really inspired me to read more poetry.

ex. When I actually visited the university, it inspired me and made me want to go there.

以上、Longman Activator Thesaurus


高2は、「定義のミカタ」の時期。

今年は、例によって既に絶版となった『マクミラン・エッセンシャルラーナーズ』のワークブックを自宅の書棚から引っ張り出してきて、その構成を活かして「英英辞典」の定義に慣れ親しむところから始めてみました。

イマドキの高校生用電子辞書には2種類くらいの英英辞典が入っているのではないかと思いますが、高2の学級文庫には絶版も含め10冊以上の英英辞典があるので、その定義・説明を読み比べることで、くり返し使われる文法事項や、その辞書ならではの秀逸な言葉遣いから「英語らしさ」を学ぶことができます。これは、高校レベルの学習者個人ではなかなか難しいことですので、この教室の環境を最大限に活かすべく、お膳立てをしています。

今の高3の生徒も、高2の頃は、「レベルの違う辞書も含めて、複数の辞書を横断的に使う」ということの意義があまり分かっていませんでしたから、今の2年生にもよくわからないことが多いのだろうと思います。

最初は「ヨコのもの(辞書の見開き頁にある表現)」を「タテのもの(ホワイトボードに転記された状態)」にしただけで、分かったつもりにになり、その「タテのもの」を、今度は自分のノートに転記し、また「ヨコのもの」で終わってしまうことが多いでしょう。でも、やっていくうちに徐々に理解が深まり、「自分のもの」になるのだと思いますよ。多分、きっと。

まずは、名詞の定義のお約束ごとの確認から。

多義語のsightに始まり、可算不可算と単数系、複数形、冠詞、無冠詞など。

動詞の目的語の意味内容から、動詞の語義の絞り込みができる、などという学びを経て、また名詞の定義へ。

今度は、「いきものがかり」。

turtleの定義を各種引き比べて、キーワードを確認。

1. a reptile that lives mainly in water and has a soft body covered by a hard shell

2. (American English) any reptile that has a hard shell covering its body, for example a tortoise (以上LDOCE)

(American) an animal with a shell and four short legs that lives on the land, in the sea, or in rivers and lakes. In British English the animal that lives on the land is also called a tortoise. (MED on line)

a reptile that lives mostly in water and that has a hard shell which covers its body (MW’s Essential Learner’s)

定評ある英英辞典でも、この語の定義は意外に下手というか不十分だということに気がつきます。

これがアルマジロであっても、歩く時や泳ぐときは、甲羅 (outer shell) から手足や頭は出ているはずですから。生徒には、「甲羅の中に首や手足を引っ込める」ってどう表現する?と問うて、更に検索。

次の辞書の例だと一歩前進ですかね。いや、手足を引っ込めたら歩けませんけど…。

A turtle is any reptile that has a thick shell around its body, for example a tortoise or terrapin, and can pull its whole body into its shell. (COBUILD AAW)

a reptile having a toothless, horny beak and a soft body enclosed in a hard shell, into which many kinds can draw their heads and legs. Turtles live in fresh or salt water or on land; those living on land are often called tortoises. (WBD)

それでも、まだ、「どんな時に、何のために甲羅の中に引っ込めるのか?」が不十分。

an animal which lives in or near water and has a thick shell covering its body into which it can move its head and legs for protection (CALD)

an animal that lives in or near water and has a soft body covered by a hard shell. It can pull its head and legs inside the shell to protect itself. (LAAD)

この辺りで、ようやく安心ですね。

生きものに続いては、定番の「道具」。

ここ2,3年続けていますが、

corkscrew

hammer

scissors

tweezers

を扱っています。絵を描いてもらったりもしています。作品集はまた日を改めて。

「英語は英語で」も結構です、「多読」も大切です、「気づき」は尚更。

では、「ことば」そのものを読むのはいつ、どのように行っているのか、偶には自問自答してみるのもよろしいかと。

日曜日には、進学クラス1年生の保護者会。

保護者同士の顔合わせと、学校長、主任、担任からの指導方針の説明、ご理解ご協力のお願いなどなど。お忙しい中多数の出席をいただき感謝。

私からは、担任としての方針と教科指導の方針とを併せて。

強調したのは「目の前の人から学ぶ」「隣の人と学ぶ」そして、「テスト依存からの卒業」。入学したばかりで「卒業」という言葉遣いも妙な響きですが、偽らざる気持ちです。

定期試験、英検、模擬試験、大学入試などなど、否応なく、「テスト」はついてきます。

それぞれ、それなりですから、そのテスト結果に個人差は出ます。でも、「自分のことばが育っているか、そのことばが自分のものになっているか」ということを、誰かにテストしてもらわなくても、自分で実感できるようになることが大事。

確かに、早速、英検の校内申し込みがありますが、現任校では高校入学時に準2級を既に取得している生徒は稀です。では、英検3級の英語力には意味がないのか?そんなことはありません。3級なら3級で構わないので、その英語力で、例えば20分間、会話・対話が維持できますか?ということを自分に問うことが大切。そして、もし、そのような自問自答ができるのであれば、外部試験は手段となり、目的ではなくなるでしょうし、自分の英語力に自信が持て、機能してくれば、試験を受けることもなくなるでしょう。そういう「卒業」の仕方を求めています。

英語教育改革で、頻りに「Can-do ナントカ」が取り沙汰されます。このブログでも過去ログで何度も取り上げていますが、私が気にしていたのは、Canadian Language Benchmarks などの「指標」であり、「目標」ではありませんでした。

「今の自分の英語力で何ができるか」を気にしなければならないのは、誰よりも自分自身のはず。でも、なかなか自分一人では「気づけない」。だからこそ、それをサポートするような英語授業、英語学習の環境を整えることが、今の私の仕事であり、課題であり、「願い」でもあります。

本日のBGM: first class (大江千里)

2016-04-17 Take heed.

熊本 (&大分) での大地震とその被害のニュースに慄き、知人の安否を気づかいながらも、日常を生きる、という感じでしょうか。

怒濤の新入生オリエンテーション週間を終え、土曜日の課外講座から「授業」はスタート。

まずは、「文字の話」です。

幾つか、英国でのハンドライティングの教則本を持ち込みながら、辞書指導まで。

所謂「アルファベット26文字」の、三三七拍子を順逆で。その後、辞書の中心と見開きの確認。

タテに一本筋を通して、端々にも気を配り、背中を柔らかく使いこなしましょうということ。

「手書き」に関しては、フォントの問題は本当に大事なのに、あまりにも等閑視されている現状を憂うだけでは仕方がないので、せめて自分の足もとの実作は豊かに、と思っています。

今年度の某局のラジオ講座、『基礎英語 1』では、講師が田中敦英先生になり、文字を書くこと、に対する配慮がテキストにも表れています。顕著な変化としては、所謂「四線」の間隔が変わりました。基線 (base line) と mid-line (x-height) との間隔が、mid-lineとtop line との間隔より見るからに広いものとなっています。

このブログ記事だけでなく、至る所で十年以上主張し続けてきたことがようやく浸透しつつある実感が持てて少し嬉しく思いました。流石はNEW出身者ですね。

基礎英語1.jpeg 直

基礎英語1四線.jpeg 直

基礎英語1文字のプロポーション.jpeg 直

講座本編だけでなく、テキストで連載されている本多先生の頁でも、この四線は同じように扱われていますので、中学校のみならず、今後導入されるであろう、「小学校英語での文字指導」でも普及していくことを願っています。

更なる要望は二点。

・自分が目で読む文字と、手で書く文字の字体とのギャップを減ずるようなフォントの採用。

・ 自然な運筆、ストロークを身につけるための、基本のドリルの採用と、「筆順」の見直し。

「フォント」については、今年使っているこのハンドアウトをご覧下さい。(二次使用される場合も、出典は必ず示して下さい)

2016 英語の文字指導.pdf 直

「筆順」に関しては、過去ログのこちら(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120528)で引いた、Piggott によるものを見ていただくだけでも気づきがあると思いますが、手島良先生のブログ記事をご覧いただくのが一番良いと思われます。

VとWの書き順

http://blogs.yahoo.co.jp/tokyo_larkhill/14361424.html

一夜明けて、日曜日は本業から。

新入部員を湖まで連れて行ってコースを見学してもらいました。あまりにも風が強く試乗はナシ。学校に戻ってエルゴで少し指導。暫くは私と一緒にダブルスカルに乗ることになるでしょう。

帰宅途中で書店に寄って、かねてより耳にしていた2冊を購入。

・ 西きょうじ『英文法の核』(東進ブックス)

・ キャサリン・A・クラフト『先生、その英語は使いません!』(DHC)

f:id:tmrowing:20160417142943j:image:w360

一読してみて、項目選定と情報提示が気になったのは後者。残念ですが、マイナスの意味合いです。

f:id:tmrowing:20160417143604j:image:w360

「学校や教科書で教わる不自然な英語」を示して、代案の「英語ネイティブのくだけた日常表現」を出すというものなのですが、そこで言われる「不自然な表現」がどのようなコーパスや出典に基づくのかがまるでわからないのが悩ましい。

・ 中高の教科書や先生達はその表現をホントに最初に教えている?

・ 学習者が学校の授業や教材を通じて覚えている英語表現はホントにそれなの?

という懸念です。

これって、英文法や語法で「従来の日本の学校で教えられているのはこんなにダメダメ!」と過度の単純化をしておいて、それに取って代わる考え方を示すという手法と似ているなと思いました。ダメ出しする実態の把握が本当に適切か、妥当か、正確か、ということです。

読み進めていてビックリすることが本当に多かったのですが、その一つが、日本語の「何歳ですか?」に対応する英語表現。(項目の039、pp.92-93になります)

英語の習い始めに、「何なのか」を尋ねる疑問詞として、”what” の使い方を習います。

・ What’s the distance? (距離はどれくらいあるのですか?)

・ What’s his height? (彼の身長はどれくらい?

(中略)

というわけで、多くの人が「何歳ですか?」をこんなふうに言ってしまいがち。

Textbook English: What is your age?

というのです。そして、それに取って代わる、”Everyday English” に当たる表現が、何と、

How old are you?

なんですって。

ホントにびっくり。この表現、「おいくつですか?」というように言葉遣いが変わったとしても、年齢を尋ねるというのであれば、学校英語・教科書英語でまず教え、覚えるのが、How old are you? だと思うのですけれど。

今年度の新入生には、中学校の時に使っていた教科書と所謂プリントの類(ハンドアウトやワークシート)、ノートを持ってくるように指示しているので、回収して確認してみます。

これ以外にも、「ときどき」に対応する英語表現で、sometimes にダメ出しされています。(項目の058, pp. 132-133)

私も、sometimes や not always で表わされる「頻度」の曖昧さを指摘することがありますから、気をつけるべき項目だということはわかります。ただ、この著者は、

"sometimes" は「ときどき」という意味の、最も一般的な語です。

と言っています。これって学校や教科書で教えている「不自然な英語」の例なのですよね?「最も一般的な語」を用いて、何が不自然なのでしょうか?

さらに、この著者は、

しかし、日常表現で良く使う、あの表現がありません……。(句読点ママ)

として、"(every) once in a while" をあげ、次のように言っています。

私の感覚で言えば、会話でいちばんよく使うのが "(every) once in a while" なんです。日本人がよく使う「たまに」とか「ときたま」に近い表現であるように思われます。

済みません。日本語で「ときどき」と「ときたま」では、話し手(聞き手)が感じる頻度に差があるように思います。『新明解国語辞典』(三省堂)から引きます。

ときどき [時時]

二 ある程度の時間的な間隔をおいて、その事が(たびたび)繰り返される様子。

ときたま [時たま]

忘れかけていたといってよいほどの長い時間的な間隔をおいて、その事が繰り返される様子。

日本語の母語話者が「ときどき」に対応する英語表現を口にする時に、"once in a while" ではなく、"sometimes" を選ぶのは自然な選択ではないかと思うのです。

訳者が日本人でありながら、こういったところへの配慮がされていないのも残念です。

ちなみに、Merriam-Webster's Essential Learne'sでは、

(every) once in a while: sometimes but not often

COBUILD の英英和(米語版)では、

If something happens once in a while, it happens sometimes, but not very often. (ときたま)

と定義されています。sometimes から、頻度が高めの領域を消した感じでしょう。

Longman のActivator (アプリ版) では、この表現は、"sometimes" の下で扱われています。

f:id:tmrowing:20160419045807p:image:w360

f:id:tmrowing:20160419045808p:image:w360

sometimes.png 直

once in a while.png 直

あくまでも一つの辞書の定義ですが、これを読むと、sometimes の大雑把加減とonce in a whileでの制限が掛かっている様子、さらに、"every" がついた場合の「レア感」も伺い知ることができます。

もう一つ、「一日おきに」に当たる英語表現で、

とりわけ "every second day" なる表現を耳にする機会はまずないでしょう。あるアメリカ人のブロガーは、「誰かが "every second day" というのをこれまで一度も聞いたことがない」と書いているほどです。私も聞いたことがありません。少なくともアメリカでは全く使われていません。

とまで断言しています (項目084、pp. 188-189) 。勇気のある方だなと思います。それに取って代わる表現は、"every other day" です。確かに、そちらの方が頻度が高いでしょう。でも、"every second day" という英語表現がインフォーマルな場面で全く使われないというのは誤解を招くのではないでしょうか?

くだけた話しことばに限りなく近い書き言葉が使われる場面の一例として、SNSの twitterがあります。検索窓に "every second day" を入れてみると、このような「呟き」のタイムラインが得られますが、恐らく、これらは全てアメリカ人以外の呟きなのでしょうね。

https://twitter.com/search?f=tweets&vertical=default&q=%22every%20second%20day%22&src=typd&lang=ja

先ほど引いたCOBUILD の英英和(米語版)にはこんな記述があります。

If something happens every other day or every second day, for example, it happens one day, then does not happen the next day, then happens the day after that, and so on. You can also say that something happens every third week, every fourth year, and so on.

間隔が二つ、三つ…、と広がっていく場合にも適応可能な原理原則を導き出すなら、「序数」が無難で自然な選択とも言えるでしょう。

少なくとも私は、自分の英語指導でこの本は使いませんし、同僚にも生徒にも薦めません。

「市場で淘汰される」などと言って静観していられないのは、今売れ線の『ドヤ本』系の英語本を眺めたら分かりますよね。でも、現実に、この本を推薦している英語教師がいるようですから…。

文科省絡みの英語教育改革では、教員の英語力がががが…、高校三年生の英語力がががが…、大学入試問題がヨンギノー化されていないからだだだだ…、という喧騒に疲弊していると、今度は学校教育の外からはこんな非難というか言いがかりというか、「弾」が飛んでくるわけです。

外国語教育における、語彙・語法・表現の扱いに関して、「専門家」「有識者」がきちんとした言論・言説の場を作ってくれないと、現場はトバッチリ食ってばかりですよ。ホントに。

この本の読後に思い出したのが、このエイゴネイティブの書いたこの本でした。

f:id:tmrowing:20160417144827j:image:w360

過去に大ベストセラーもある著者ではありますが、少なくともこの本に関しては、on Sundays, Sundays, on Sunday, on a Sunday の扱い(又は、考慮のなさ)だけを見ても、一英語ネイティブの語感を盲信することは危ういように思っています。これは、自分自身の「母語」である日本語を考えてみても実感できること。

この手の「日本人英語に対する諌言本」は昔から本当に沢山でています。

f:id:tmrowing:20160417145618j:image:w360

f:id:tmrowing:20160417145512j:image:w360

f:id:tmrowing:20160417145529j:image:w360

出典やコーパスに基づいてはいないけれども、良書というのも存在することは確か。では、なぜ「良書」と言えるのか?それは、読者としての自分の英語の感覚と合致するから、としか言いようがないのが更に悩ましい。一英語ネイティブの盲信に警鐘を鳴らす、一非英語ネイティブの英語感覚、となるわけですから。

数多でている本の中でも、例えば、こちらの本だと、はしがきで、きちんとした筆者の視座が書かれています。

f:id:tmrowing:20160417151644j:image:w360

誤用診断1.jpg 直

誤用診断2.jpg 直

誤用診断_お礼.jpg 直

こちらは、成蹊大学で英語を教えていた英語ネイティブによるもの。英文です。序文も英語ですが4ページに及んでいます。日本語による注釈は河上道生氏。

f:id:tmrowing:20160417152216j:image:w360

スミス序文1.jpg 直

スミス序文2.jpg 直

スミス序文3.jpg 直

スミス索引.jpg 直

河上注釈.jpg 直

もう少し古くて、しかも作文用だと過去ログでもとりあげたことのあるこちら。

ハロルド・プライス&長谷川凡次郎の共著。私の持っているのは、1964年改訂ニ版。

f:id:tmrowing:20160417152709j:image:w360

プライスはしがき.jpg 直

プライス目次.jpg 直

プライス目次2.jpg 直

プライス凡例付記.jpg 直

凡次郎はしがき.jpg 直

「自然な英語表現」というのも難しいもの。文化の差を活かすのか、乗り越えるのか、悩みどころではやはり悩むものなのだと思いますよ。面白いのは、序文の日本語は1頁なのに、英語は1頁半。

f:id:tmrowing:20160417153631j:image:w360

村上日本語序文.jpg 直

村上英語序文1.jpg 直

村上英語序文2.jpg 直

「自然な英語表現」を志向するという点では、先程のものと通じるのですが、アプローチは全く異なります。一覧で提示し、頻度情報やオススメを注記していくことで、利用の便を図るもの。ちょっと欲張って盛込み過ぎな感じはありますけど…。

f:id:tmrowing:20160417154209j:image:w360

小山内序文.jpg 直

小山内目次.jpg 直

小山内構成1.jpg 直

小山内構成2.jpg 直

これは、ohapuruさんに教えてもらったもの。ありがとうございました。

f:id:tmrowing:20160417154828j:image:w360

竹下序文.jpg 直

竹下コピー.jpg 直

竹下凡例.jpg 直

「自然な英語表現」という時の、「英語らしさ」に関して留意しておくべきことが、この中邑光男氏のビジネス英語本(研究社、2003年)に書かれています。私自身、初めて読んで以来、ずっと心していることです。

f:id:tmrowing:20160417160929j:image:w360

中邑1.jpg 直

中邑2.jpg 直

英語教育改革は2020年の東京五輪をとかく引き合いに出すけれど、前回の東京五輪から5年でこれが出版されているのですよ。

f:id:tmrowing:20160417161555j:image:w360

長谷川堀内序文1.jpg 直

長谷川堀内序文2.jpg 直

長谷川堀内目次1.jpg 直

長谷川堀内目次2.jpg 直

長谷川堀内目次3.jpg 直

諌言に耳を傾けることは大切ですが、そのことばと聲の主には充分に気をつけたいものです。

本日のBGM: Our Mutual Friend (The Divine Comedy)

※2016年4月30日追記:

every other/second day に関連して、Ngram viewerでの検索をしてみましたので、その結果を幾つか貼っておきます。


日本語でも「毎」と「おき」って、時々迷いますよね?

f:id:tmrowing:20160430052730p:image:w360

1年おきに=2年ごと?.png 直

1920年代の、歴史的転換点に一体何があったというのでしょうか?大恐慌のせい?

「単位」と「序数」が基本?

f:id:tmrowing:20160430053027p:image:w360

毎とおき.png 直

「五輪」は何年ごとに開催?

f:id:tmrowing:20160430055402p:image:w360

四年ごと.png 直

圧倒的に、"every four years" が優勢であることがわかります。

「ハレー彗星」は何年周期?

f:id:tmrowing:20160430054223p:image:w360

ハレー彗星.png 直

"every 75th year" が19世紀前半にはかなり現れているのに対して、"every 76th year" が全然ヒットしないことにはちょっと驚きました。そして、前回現れた1986年前後でピークを見せ、その後も明らかに、"every 76 years" が優位に立っていることがわかります。

tmrowingtmrowing 2016/04/18 18:56 一部加筆修正。

tmrowingtmrowing 2016/04/19 05:08 Longman Activator Thesaurus (アプリ版) の記述をファイルで追加。

tmrowingtmrowing 2016/04/30 14:10 「…毎に」「…おきに」に関連した、Ngram viewerの検索結果を画像ファイルで追加しました。

2016-04-09 「教えて!絶版先生」第9回:『英語参考書の誤りを正す』

tmrowing2016-04-09

不定期連載とはいえ、前回から随分と期間が空きました。

その間に、新しい年度もスタートしました。

新しい教科書、新しい副教材を使う教師、学習者も多いことでしょう。

このブログの普段のエントリーでも、教科書や教材の英語、さらにはセンター試験などのテストでの素材文に関して、疑義を指摘したり、改善案を提示したりしてきました。

より良い英語で、より良い教材(学習材)

より良い素材で、より良い授業(学習)

というのが前提です。

人の業ですから、教科書等、教材の英語に全く問題がない、ということはないと思います。

ただ、教科書の英語について何かいわれる場合には、とかく個々の語句や表現に関して、「英語として不適切」「英語ネイティブはそうは言わない」という指摘が単発でなされ、そして、その単発弾が連射されるような「批評」「批判」が溢れている、という印象を持っています。

そのような教材の英文批判の多くには「理」がありますが、中には、

  • 誰が誰に対して、どこでいつ、何のために

発したことばなのか、という部分の考察が併せて示されていないものもあり、些か問題です。

このような状況に鑑み、このブログでの私の「エイブン」批評は、例えば、読解素材であればパラグラフやパッセージという「まとまり」のなかで、それぞれの英文が有機的、論理的につながっているか、主題に収束しているか、という部分を中心に吟味し、私の見解を書いてきました。英文の「つながりとまとまり」を見て取れる「素材」が主たる対象となっています。

素材としては、高校入試のリスニング問題のスクリプト、高3生英語力調査の聞き取り要約スクリプトなども「モノローグ」としての語りから、所謂、検定教科書の「モデルパラグラフ」や学参や予備校サイトで示される入試のライティング問題に対する「解答例」、さらには入試対策など、学校採択専用で使われている市販されていない教材のリスニングスクリプトや、読解素材としての英文まで、かなり幅広い対象で「つながりとまとまり」を扱っていることがわかるでしょう。

では、語彙項目や個々の表現に関しては、検定教科書や学校採択専用教材、市販の学参や英語本に改善すべきところはないのか、というと、これは「ピンキリ」ということになるでしょう。

私自身、一部の教材に対しては、個々の表現を取り上げて批判していますが、その場合でも

  • 誰が誰に対して、どこでいつ、何のために

というところに極力焦点を当てて、考えるようにしています。

残念なことに、未だに市販の英語本や、学校や塾で用いられている教科書などの準拠問題集では、個々の語句や表現の段階で、英語になっていないもの、文法的・語法的に不適切なものが散見されます。

私自身の英語学習者としての履歴を過去ログで書きました (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110301) が、私が高校2年生だった頃に買ってきたのが、この本です。

河上道生 『英語参考書の誤りを正す』(大修館書店、1980年)

※冒頭の表紙の写真はこちらからDL可能です。

河上1980.jpg 直

その冒頭、「まえがき」での河上氏のことばが当時の私に強烈なインパクトを与えました。

翻訳における誤訳はしばしば取り上げられ、誤訳を扱った本も何冊か出版されている。中学・高校の英語教科書に対する批判や注文も戦後の英語教育界ではさかんに行われており、批判や誤りの指摘は教師だけでなく、教師以外の人からも寄せられているほどである。また日本人の話す英語や書く英語における共通の誤りを取り上げた本も出版されている。

ひとり学習英語参考書のみが、その絶大な影響力にもかかわらず、あたかも聖域であるかのように、批判にさらされることなく隆盛をきわめている。わが国の英語教育に対する批判は強く、多い。英語教育の不成功の原因の一つは間違った英語や間違った文法の規則・語法を教えていることにある。この悪い傾向を助長しているものは入学試験における悪問・愚問であり、悪問・愚問を拒否するどころか、悪問・愚問への答えかたを教え、間違った文法規則、古くなって現在では通用しなくなった規則や語法を旧態依然として印刷し続けている学習参考書である。

(中略)

本書は参考書の共通の欠点を指摘することがその目的であって、個々の本や著者への批判や本の優劣の比較評価を目的としていない。対象とした参考書の中には少数の誤りにもかかわらず、全体としては優れたものがある。他方、誤りが多い本もある。

前書きに続いては、「この本の読者のために」という項があり、執筆に至る経緯が書かれていて、その最後の部分にも、前書きと同じようなことばが繰り返されています。

本書執筆の目的はわが国における英語教育の向上に少しでも役立てることにある。読者としては英語教師を考えた。入試をすませた大学生や英語に関心ある社会人が読まれても参考になるであろう。しかし、中・高校の生徒諸君を読者と想定することはしなかった。

調べた参考書の中には優れた本もあるが、それらの中にも明白な誤りがあったときはとり上げた。

どんな本にもミスはさけられないと思う。僅かな数のミスを指摘されているからといってそれらの本が優れたものである事実はかわらないはずである。この点を読者によくご理解ねがいたい。何冊かの良書も、良書だとは書かなかったが、それは良書だと書かれなかった本が悪書だと思われることをさけたかったからである。

極めて冷静で、誠実な姿勢で書かれた本であることがわかります。

河上氏が想定していなかった、「中・高校の生徒諸君」の一人として、この本を選んできた私がまずやったことは、自分の持っている英語本、学参のチェックでした。

そして、次にしたことは、この本の項目を調べていき、「僅かな数のミスをされているからといってそれらの本が優れたものである事実はかわらないはず」の本を探し、手に入れることでした。

取り上げられた『学参』のリストはこちらにあります。

f:id:tmrowing:20160409183006j:image:w360

f:id:tmrowing:20160409183020j:image:w360

参考書一覧1.jpg 直

参考書一覧2.jpg 直

私が選んだものは次の2冊でした。

13.  江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)

34. 杉山忠一『英文法の完全研究』(学研)

当時の授業で私が教わっていたM先生は、木村明『英文法精解』(培風館)の改訂版を使われていたのですが、この学参は河上リストには入っていませんでした。M先生愛用の学参では河上氏の指摘した箇所をどのように扱っているのかも確認しました。当時の学参の中には充実した「さくいん」を備えているものも多く、それらによって随分検索の時間は短縮されたのを覚えています。

全ての項目を紹介することはできませんので、当時の私が気になった文法語法の扱いの極々一部を紹介しておきます。

助動詞と心的態度

f:id:tmrowing:20160410184427j:image:w360

譲歩のmay.jpg 直

単数か複数か? アポストロフィは? ハイフンは?

f:id:tmrowing:20160410184445j:image:w360

歩いて5分.jpg 直

単純形か進行形か?

f:id:tmrowing:20160410184507j:image:w360

f:id:tmrowing:20160410184549j:image:w360

大関単独か関脇とのコラボか.jpg 直

余韻.jpg 直

所謂「付帯状況」

f:id:tmrowing:20160410190234j:image:w360

f:id:tmrowing:20160410190307j:image:w360

付帯状況1.jpg 直

付帯状況2.jpg 直

所謂「仮定法」関連

f:id:tmrowing:20160410190405j:image:w360

f:id:tmrowing:20160410190410j:image:w360

f:id:tmrowing:20160410190420j:image:w360

f:id:tmrowing:20160410190426j:image:w360

仮定法未来はない.jpg 直

可能性の査定1.jpg 直

可能性の査定2.jpg 直

可能性の査定3.jpg 直

このような確認・照合の「作業」を通じて、文法・語法における「レファレンス」となる本が手元に揃い、されにはその「玉に瑕」をも修正できたわけです。これが、その後の英語学習にとってどれだけ役立ったか、河上氏には感謝のことばしかありません。

大学に入学して、若林俊輔先生に触発され、英語教師を志したわけですが、今でいう本業のボート競技に明け暮れる中でも、英文修行は続けていました。

参考文献に上げられていたレファレンスをじっくりと読んだり、購入したりというのは、大学に入ってからでした。大学ってすごいな、東京ってすごいな、というのが偽らざる実感でした。

f:id:tmrowing:20160409183511j:image:w360

f:id:tmrowing:20160409183533j:image:w360

f:id:tmrowing:20160409183552j:image:w360

ここでレファレンスにあげられている、R.A. クロースやデニス・キーンの本がG大ではテキストとして選ばれていたのも当然と言えば当然でしょう。(W.W. スミスの『アメリカ口語表現法教本』は、教職に就いた後、同僚となったY先生の薦めで自分でも購入しお世話になりました。スミス教本.jpg 直

そんな私も大学に慣れてきて、2年生になれた頃に購入したのが、続編とも言える、

『英作文参考書の誤りを正す』(大修館書店、1982年)

でした。

その「はしがき」から抜粋。

本書は30冊の和文英訳の参考書と問題集における説明と英訳文の中の誤りをとり上げたものである。わが国では英語が明治以来教えられてきた間に、間違った規則や説明が作られてしまっている。その多くは『英語参考書の誤りを正す』の中でとり上げたが、和文英訳の参考書の中にも、文法を中心として和文英訳を教えている部分で、英文法に関する間違った記述がかなり見られる。

英訳文については、最近では多くの英米人が日本に来ているので、彼らに訳文の校閲を頼むことが可能であるから、訳文に誤りのない参考書や問題集がある反面、訳文に多く誤りを含み、高校生が使うには不適切な参考書や問題集が多い。

とりあげた30冊のリストは別に示してあるが、これらの中には誤りがほとんど、または全くない本も少数ある。例えば、参考書問題集一覧の15, 27には英文の誤りが見られぬだけでなく、参考書としてもすぐれている。

英語の誤りには正しい形を代わりに示したが、本書が示した代案だけが正しい訳ではなく、他にも正しく適切な訳がありうることは言うまでもない。和文英訳や英作文の英語は、文法的に正しいだけでは十分でなく、より効果的な表現が望ましい、換言すれば correct English であるだけでは不十分であり、good English でなければならぬ。このため文法的には可能なはずの表現を訂正したところがあることも理解されたい。

本書は主として英語教師を読者と想定して書いたが、社会人や大学生・高校生にとっても和文英訳について学ぶところがありうると信じる。

私の感謝は無駄ではなかったのだろうな、と今でも思っています。

上述の「英文の誤りが見られぬだけでなく、参考書としてもすぐれている」と評価されている2冊とは、

『チャート式シリーズ英作文』(数研出版、昭和52年3月1日 第9刷)

『新研究英作文』(旺文社、1980年 重版)

でした。

この後、しばらく月日が流れてから、1980年の本の『改訂増補版』と謳った、

『英語参考書の誤りとその原因をつく』(大修館書店、1991年)

が出版されました。

続編・増補改訂の2冊の表紙はこちら。

河上1982 1991.jpg 直

その増補改訂版の「はじめに」に、このように書かれています。

『英語参考書の誤りを正す』の上梓以来10年を経た。旧版を書くにあたっては簡潔をむねとした。少なくとも『英語教育』誌(大修館書店)のQuestion Box の読者の水準を想定し、詳しい説明は不必要だと思ったのと、詳しく説明すれば誤った英文や誤った記述を書いた参考書の著者がいかにも無知無能あるいは無責任な人に見えてしまい、失礼になるであろうと思ったことが簡潔な記述を心掛けた理由であった。

しかし読者を選ぶことはできない。いろいろの読者がいることを質問を読んで知った。このため、この改訂増補版では英語を専門として学んだり、英文法・英語語法に関心をもって日ごろからその方面の研究をしている読者以外の人にも理解されるように書き改めることにした。書店で求めることのできる英文典や語法書がとり上げている事柄については読者がさらに調べられるように参照すべき書名を示し、また今では一般に入手できなくなった書物からはかなり詳しく引用した。日本で誤解されて、間違った知識が根強く行きわたっている事柄についてはくどいくらいに説明をした。

このブログで私が「英文批評」「エイブン批判」をする際の、できる限りの出典の明記、絶版書からは比較的大量の引用というのは、この河上氏の姿勢に倣ったものです。

河上氏は続けてこうも言っています。

旧版で学習参考書の中の多くの誤りを指摘したが、同じ誤りが依然として姿を消していないようだ。誤りを指摘されても訂正せずに出版を続けている著者がいる理由の1つは、誤りを指摘されて心理的に反発を感じているのかも知れない。今回の改訂では参考書名をのせないことにした。本書はどの本が良いか良くないかを問題にしていない。

誠実で紳士的な態度で貫かれているところに敬意を表します。

  • 誤りを指摘されても訂正せずに出版を続けている著者がいる

のはそれから四半世紀が経とうとする今も同じでしょう。

しかも、単文・短文など、文法・語法レベルでの指摘はまだしも、より「つながりとまとまり」が求められる、ディスコース(談話)レベルでの「英文」に対する指摘は、する人もそれほど多くなく、したとしてもなかなか受け入れられないように感じています。

今こそ、河上氏が貫いた「わが国における英語教育の向上に少しでも役立てること」「文法的に正しいだけでは十分でなく、より効果的な表現が望ましい、換言すれば correct English であるだけでは不十分であり、good English でなければならぬ」という姿勢に倣う時ではないかと思うのです。

巷の学参に限らず、教室で使われる教材も含めて、その英文を精査し、今回とりあげた『河上三部作』で指摘された事柄はもう充分に消化され、問題点は解消しているということを確かめることが必須でしょう。河上氏の1991年の増補改訂版では、正されるべき項目だけが取り上げられ、詳細な解説がなされている反面、上述のように「書名」が消えましたが、やはり、どの本で、どの項目が、どのように記述されていて、それを正すべきなのか、ということは分かった方がいいと思います。

そして、それを前提として、その先の「つながりとまとまり」のレベルで、目利きによる新たなレビューがなされることで、英語教科書、英語教材を作成する現場の風通しが良くなり、その結果として教師、学習者ともに益するところが増えることを強く望むものです。

より良い英語で、より良い教材(学習材)

より良い素材で、より良い授業(学習)

より良い批評で、よりよい業界

ないものねだりでないことを願っています。

本日のBGM: 白と黒 (White And Black) [Studio demo/1991] (鈴木慶一)

tmrowingtmrowing 2016/04/10 09:23 一部加筆修正。

tmrowingtmrowing 2016/04/10 20:44 画像ファイルへのリンクの不備を修正しました。

2016-04-01 英語力フィージビリティ調査のフィージビリティ検証に着手

今、入ってきたニュースによれば、過去2カ年の後期中等教育最上級生(日本の高3生に相当)を対象とした英語力調査では、新たな言語教育政策の立案に資する充分なフィージビリティを確認出来なかったという合意が無識者による非公式な会合で為された模様です。

2016年早々に、国内の外部試験の実施母体とは完全に独立した第三者機関を立ち上げ、調査に使用した問題の検証と、当時の受験者のその後の英語力の追跡調査、並びに、調査へ協力した学校の英語教員への聞き取り調査に基づき、次年度には新たな枠組みで「過去2年間の問題のフィージビリティ検証のための英語力調査」を行うことを発表しました。

とりわけ、「調査に用いられた問題の難易度と内容が、受験者の英語力の実態と乖離していたのではないか」という有識者からの指摘がくり返しなされていた「書くこと」の領域では、大幅な刷新が見込まれているようです。

以下、現時点で想定されている、「書くこと」の出題形式・構成・内容です。

「話すこと」と同様に、「書くこと」も各学校で1クラス分に当たる生徒を抽出して実施する。

設問は、次の4つの小問で構成される。

1.イラスト、写真、4コマ漫画などの資料に基づき、英文の空所を補充する形で物語文を完成する課題

2.質問形式で課題が与えられ、賛否や問題解決など個人の意見を述べる課題

3.約100語の英文の読み取りに基づく30語程度の要約課題

4.約50語の英文の聞き取りに基づく15語程度の要約課題

2016年の年度中に、調査を実施し、年度末には分析結果を公表、翌年度には、そのフィージビリティ検証に基づき、正式な英語力調査を行い、2018年度中に、現行の全国的な公的試験に取って代わる英語力の試験として相応しい「外部試験」の選定に着手するとのことです。

この発表は、恥部 いや 一部の報道機関にのみ渡された資料に掲載されている情報であって、まだ、国の公式なサイトでは掲載されていない模様です。

今回の判断が国から公式に表明されると、一分一秒を争う状況下で入試改革を進めてきた審議会や、外部試験実施母体とそれに関連する企業体からの反発が大きくなることが予想され、予断を許さない状況です。

ただ、一番の問題は、この「国」が一体どこなのか、がよく分かっていないことです。

以上、2016年4月1日のニュースでした。

本日のBGM: What a fool believes (The Doobie Brothers)

2016-03-25 空の上はいつも青空(当たり前)

ようやく発表されました。

2016年3月23日付け

中教審 教育課程部会 外国語ワーキンググループ(第6回) 配付資料

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/058/siryo/1367581.htm

沢山ありますので、一点に絞って言及します。

資料3-2 平成27年度 英語力調査結果(高校3年生)の速報(概要)(PDF:2912KB)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/058/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/03/23/1367581_2.pdf

その、「書くこと」「ライティング」に限っての考察です。

昨年度の「高3英語力調査」に関しては、うんざりするくらいこのブログで追いかけて来ました。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150326

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150528

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150602

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150620

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20151117

その後、発表された政策提言で、これらの記事で指摘していた危惧が現実のものとなりそうな「悪寒」がしたので、急いで書いたエントリーがこちら。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160313

新聞やTVなど既存のメディアは、どこも、誰も「テストそのもの」がどういうものだったか確かめて論評してくれませんから。別にCIAとかFBIとか、そういう捜査をしろと要求しているわけではないのです。ただ単に、

  • 「フィージビリティ調査」のフィージビリティは誰が検証しているのですか?

ということを問い続け、一つ一つ調べているだけです。

ホントに、私しか気にしている人はいないの?というくらい。

そして、今年度の調査結果。

27年度_目的・対象.png 直

概要と目的は、恐らく昨年度と同様です。たぶん、きっと。

でもね、こちらの「3. 調査の特徴」で示されている、「設計」のところには、

(CEFRの) A1 〜 B2 までを測定できるように設計。

f:id:tmrowing:20160326065452p:image:w360

27年度特徴 設計はA1?.png 直

とあるんですね。

26年度の、設計から実施までの間の文言は、「A2〜B2」だったんですよ。それが結果を発表する報告書段階で、誰かの手によって、A1〜 と下方修正されてしまっているのです。誰も気にしていないでしょうけれど。

昨年度の「高3英語力調査」

f:id:tmrowing:20160326092643p:image:w360

26年度調査設計.png 直

「大学入試改革」での議論で、この「調査結果」が取り沙汰されていますが、そこでは、A2〜B2の英語力を測定できるように設計して実施したはずのテスト結果があまりにも酷かったためか、「最初から受験者層としては、A1〜B1を想定して作っていたんですよ」とでもいうかのようなプレゼンで使われているのです。

f:id:tmrowing:20160326104833p:image:w360

書くA1-B1.png 直

そのような「ごまかし」「まやかし」を経て、「うやむや」な「経年変化」を評価している訳です。

「テスト結果分析」の総論がこちら。

依然として課題?.png 直

依然として「書くこと」は槍玉に挙げられています。

そして、お得意の誘導。

コロンブス vs. たまご

ですね。

f:id:tmrowing:20160326065453p:image:w360

因果関係?.png 直

「書くこと」の指導が適切に行われていないから「書けない」のではないのですか?

では、調べなければならないのは、技能統合の前に、そもそも「書くこと」単独の技能はどうなっているのか?発達段階は?ということでしょう?

そして「スコア分布」。

全体はこちら。

f:id:tmrowing:20160326065454p:image:w360

経年変化一覧.png 直

昨年の夏、英授研の全国大会で、東外大の根岸先生とお話しした時に、「でもね、松井さん。これでもできないとなると大変だよ。」といわれていたライティングの結果がこれ。

f:id:tmrowing:20160326065455p:image:w360

いやー、この分布を見ると、お寒い限りで、返すことばもありません。

「等化」するから、経年変化を比較することは可能なのだそうです。

f:id:tmrowing:20160326080323p:image:w360

何と何を等化?.png 直

でも、よ〜く見てみると、昨年度ライティングで得点が5点未満だった人が29973人だったのに、今年度は14303人に減っています。受験者は激減、半減ですよ。0点だった人も20059人から、14303人に。え、今同じ数字が出てきましたね?14303。今年度は得点が5点未満1点以上のゾーンに誰もいないということですか?

昨年度は9914人がこのゾーンにいたんです。今年度は無得点も激減し、この最低得点域にも人がいなくなったということですね。

昨年度、私は「テスト設計に問題があったのではないか?」とくり返し指摘してきました。

でも、経年変化ができるように同じ問題でテストした結果、このような劇的な変化があったということは、「新指導要領」の教育成果が出たということなのでしょうか?

今年度の問題を見てみましょう。

問題のスペック・構成を先に示しておきます。

これが今年度。

f:id:tmrowing:20160326065456p:image:w360

27年度スペック一覧.png 直

こちらが昨年度です。

f:id:tmrowing:20160326065457p:image:w360

26年度スペック.png 直

ライティングの問題構成は、変わらず大問2題。

どうして、ライティングだけ、このように、大問だけで構成されているんでしょうね?

スピーキングで「音読」が課されているのと同様に、なぜ小問を導入して、A1〜A2層を拾い上げられる設計にしないのでしょう?

あ、そうか。26年度と比較できないとダメだから、同じにしないといけませんね。

でも、今年度の大問2題、出題の順番が昨年度と変わっていますね。

お題作文が先、聞き取り要約が後。

昨年の調査結果報告書が正式に出たのは、年度を超えた5月末だったんですけど、その時にこんなことを言っている人がいました。

f:id:tmrowing:20160326065458p:image:w360

スライド048.png 直

私ですね。

次の資料の中にあります。

第8回山口県英語教育フォーラム投影資料

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/files/2015_YEF_matsui_presentation%E5%85%AC%E9%96%8B%E7%89%88.pdf


今年の結果も、トータルの得点分布しか示されていないので、現時点では即断できませんが、聞き取り要約の得点は依然として低かったのではないかと推測します。

というのも、「聞き取り」単独の、リスニングの試験で課される「聞き取り」の認知負荷よりも、「聞き取り要約」で課される「聞き取り」の認知負荷の方が高いからです。

今年度のリスニング問題のうち、まとまったモノローグの聞き取りがこちらです。

f:id:tmrowing:20160326065459p:image:w360

リスニングB2想定.png 直

スクリプトの英文はこうなっています。

Although the human population on Earth's increasing, the number of languages spoken is decreasing. One language disappears every two weeks. Sometimes even natural disasters cause language loss. For example, in Pakistan, an Asian country, the world's entire population of Domaki language speakers lived in Shishkat, a remote mountain village by a river. In 2010, land fell from a nearby mountain and blocked the river. This caused a flood that destroyed the village. All the village people were forced to move to whatever housing was available. With the few remaining Domaki speakers living separately, their language is likely to die out.

101語の英文を聞く訳ですが、設問は印刷されていて、そのステムにも聞き取りのヒントとなる語彙が提示されていて、さらに選択肢も印刷されていますから、キーワードを保持しやすい出題になっています。

対して、「聞き取り要約」では、ノーヒントです。

f:id:tmrowing:20160326065500p:image:w360

聞き取り要約 B2以下?.png 直

こちらが、スクリプトです。

Many farms just sell one thing. But have you ever heard of a pizza farm? A pizza farm is a farm that grows everything that is needed to make pizzas, such as tomatoes and onions. Pizza farms also make cheese. It is easy and useful to be able to quickly buy everything that you need to make a pizza in one place.

But do you know an interesting thing about pizza farms? Pizza farms are in the shape of a pizza! If you look down on a pizza farm from a plane, you will see that the farm does not have four straight sides like a box, but is round like a pizza. And each field on the farm has only three sides, almost like a triangle. Each field is like a piece of the pizza. Something different grows in each field. Yes, it's amazing! Pizza farms are in the form of a pizza!

背景資料となる読解の英文も、絵も写真もありません。しかも154語。聞き取り要約の方が英文が長いのに、ヒントはない。

なぜ?

いや、確かに、長ければ長いほど難しくなるとは一概に言えません。それは分かっています。

Text Inspector で使用語彙のCEFR対応を調べてみました。

リスニング101語_1.png 直

聞き取り要約_1.png 直

「聞き取り要約」の英文の方が、語彙は易しいことがわかりました。

ただ、この聞き取り要約の英文。読み難いんです。

このブログで以前取り上げたことのある某教材の「エイブン」に近い、嫌な感じというのでしょうか。一読了解とならないように感じました。

Pizza farms が話題として取り上げられていることはわかると思いますが、「では、pizza farms ってどんなfarmなの?」と求められた時に、この解答例のように答えられる生徒は少ないと思います。

だって、普通、farmって聞いたら、こういうの想像しますよ?

f:id:tmrowing:20160326095448p:image:w360

Pizza Farm with Nick Offerman

https://youtu.be/0weSjPKi4cs

このコメディ動画に関しては、こちらのTIMEの記事をどうぞ。

http://time.com/3957770/nick-offerman-pizza-farm/

今回の「聞き取り要約」でも、英文を改善するだけで、結果は変わっていたのではないかと思うのですね。

Pizza farms に関して、詳しく知っている人は少ないと思います。

ただ、テストを課されていないのなら、普通のひとは、ググるでしょう?

で、Wikiの記述なんかがヒットする。そんな感じですね。

その Wikiではこんな説明をしています。

先ほどの「聞き取り要約」の英文と読み比べて下さい。

A pizza farm is an educational visitor attraction consisting of a small farm on a circular region of land partitioned into plots shaped like pizza wedges. The farm's segments produce ingredients that can be used in pizza, such as wheat for the crust, tomatoes or herbs, pork for pepperoni, dairy cows for cheese, and even trees for pizza oven firewood. Certain farms may even have access to coal or natural gas deposits that can be used as alternative pizza oven heating fuels. Many of the newer pizza farms are experimenting with alternative energy, such as installing wind turbines in the fields, to be more green. According to a 2005 article in USA Today, there are several such farms in the United States.

https://en.wikipedia.org/wiki/Pizza_farm

そりゃ、Wikiですから、ソースの信憑性など(トマト系とかクリーム系じゃなく)には気をつけないといけませんが、英文としてはこちらの方が「わかるように」書いてくれています。問題は、語彙と構文のレベルがこれではちょっと高いということくらい。

そもそも、pizza を辞書で引けば、こういう記述があるわけです。

OALD

  • an Italian dish consisting of a flat round bread base with cheese, tomatoes, vegetables, meat, etc. on top

LDOCE

  • a food made of thin flat round bread, baked with tomato, cheese, and sometimes vegetables or meat on top:

CALD

  • a large circle of flat bread baked with cheese, tomatoes, and sometimes meat and vegetables spread on top

MED

  • a food that consists of flat round bread with tomato, cheese, vegetables, meat, etc. on it

WBD

  • a spicy Italian dish made by baking a large flat cake of bread dough covered with cheese, tomato sauce, herbs, and often with anchovies, bits of sausage, or the like.

本当に、「困った時のWBD」だな、と思いますね。

このような、pizzaの原材料となる「名詞」をキーワードとして、それがどのように farmとして栽培、飼育されているのか?がまず述べられないと、定義にも説明にもならないと思うのですね。 "amazing" って、pizza farm を説明するのに重要な情報ですかね?


この「高3英語力調査」のライティングだけは、採点でこんなシステムを使っています。

f:id:tmrowing:20160326065501p:image:w360

ライティング採点体制.png 直

恐らく、B社のやっているGETC for Studentsと同じレイターと契約しているのではないかと思うのですが、6万4千人以上が、何か書けたわけですから、それを米国に送って採点するのには、相当なお金がかかるだろうことは想像に難くありません。

そのお金を、優秀な英文ライターを確保する部分に、また、適切な問題を設計できる人材を確保する部分に投入してはどうなのでしょうか?

易しい語彙でも、充分に深い内容の英文は書けるはずです。それは何も、「ナラティブ」「物語文」に限らないと思うのです。

英語ネイティブの子供用の、このような事典類を、私は「学級文庫」に入れています。

「高校生対象の聞き取り要約」であれば、このくらいの英文で十分なのではないかと思うのです。

f:id:tmrowing:20160323144849j:image:w360

f:id:tmrowing:20160223171829j:image:w360

f:id:tmrowing:20160324182529j:image:w360

例えば、上記、2枚目の写真にある事典だと、energyであれば、次のような記述となっています。

Solar power farm

A solar power farm is a place that produces electric power instead of crops. In 1960 some scientists suggested that 5, 000 square miles (about 1, 300 square kilometers) of desert in the southwestern United States be covered with solar collectors. This power farm could generate enough electricity for the whole country. There are no plans right now to build such a large power farm. But a smaller one is now being built in California that will provide electricity for 2, 500 homes.

f:id:tmrowing:20160223172016j:image:w360

全国規模の英語力調査を、文科省主導で行っているにも関わらず、作問から評価までは民間企業に丸投げ、その結果を分析したといって、次の政策立案や提言に使う、というので、本当に大丈夫なのでしょうか?

こちらが、今回の「英語力調査」の「責任者」に当たる「有識者」の方たちです。

f:id:tmrowing:20160326075915p:image:w360

有識者とは誰のことか?.png 直

前回もそうでしたが、今回の調査結果も、今後色々なところで用いられていく(であろう)ことを考えたときに、「一体問題はどんなものであったのか?」を検証しないことは、それこそ大問題だと思うのです。

一次資料を精査することなしに、また「数値」だけが独り歩きしていくことを危惧します。

警鐘は、聞くべき者の耳には届かないのかもしれませんが、希望は捨てずに、私は私にできることを続けていくつもりです。

今日のタイトルのように。

本日のBGM: 探偵物語(大滝詠一 from “Debut Again”)

tmrowingtmrowing 2016/03/26 07:55 本日のタイトルの言葉は浦野研先生のご好意で使わせていただきました。ありがとうございます。

tmrowingtmrowing 2016/03/26 09:35 リンクの不備を修正し、一部加筆しました。

2016-03-15 本当に大切なことなら、それを「ことば」に

国公立大学の後期試験(英語)から気になった問題を取り上げる第二段。

前期試験も合わせると「ライティング」のテスト作成や解答では何に留意しておくことが望ましいか、というチェックリストとしても使えると思いますので、よろしくご活用願います。

Scary Monsters (and Super Chickens)

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160228

”And I don’t know where to quit”

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160301

Witness

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160305

窮象台を転がす

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160306

すみませんですむなら…。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160313

そして、この記事も問題の在り処を考えるには格好の材料かと。

まだまだ改善されない「ライティング」解答例公表と過去問対策

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160224

私立大の特徴的な出題での特筆は「慶応義塾大学・経済学部」の技能統合型でしょうから、昨年度の問題を取り上げたこのエントリーを。

「そう 行かなくちゃ」

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150309

さあ、それでは、今日の一題。

大阪大学の外国語学部の問題を見てみましょう。

個人的には母校と長らく友好関係にあった「大阪外語」のイメージがまだまだ強いのですが、「大阪外語」時代も含めて、このブログでこの学部の入試問題、しかも「お題作文」を取り上げるのは、初めてかも知れません。

大問のII が特徴的な「お題作文」になっています。設問は2つ。

II 下記の設問に答えなさい。

(設問)

(1) 国内外のよく知られているおとぎ話,昔話,童話のなかからーつを選び,そのあらすじを150語程度の英文にまとめなさい。(語数を末尾のかっこ内に記入すること。但しピリオドやコンマは語数に含めません。)

(2) あなたは (1) で選んだ話を,子供に読ませたいと思いますか? 読ませたい,あるいは読ませたくないと思う理由を100語程度の英文で書きなさい。(語数を末尾のかっこ内に記入すること。但しピリオドやコンマは語数に含めません。

(1) ではnarrative な、(2) では argumentative な作文が求められていることは容易にわかるでしょう。

ここで気になるのは、「日本語の指示での『形容』『限定』」です。

(1) 「国内外のよく知られている」と書いてあります。「国内外でよく知られている」ではないのです。その時の、「知っている」のは一体誰なのか?が曖昧。国内なら「日本の人に」なのか、国外なら「その国の人に」なのか、それとも、もっと大らかに、気前よく「あなたがよく知っている」とほぼ同義と見做して書いていいのか?心配になります。もし、解答の条件として「あらすじを書くことを求めているので、絶対にその話のタイトルを書いてはならない。そのあらすじを読んで、タイトルが思いつけば合格である。」などという採点基準なら面白いんですけどね。

そこがクリアできたら、あとは「Story Grammar の6つの観点」などを活用して、つながりとまとまりを確保して切り抜けましょう。「ナラティブ」への対応での、体系的な指導法って、巷の「英語本」や「学参」では意外に明示されていないんですよね。詳しい指導手順は、『パラグラ・フライティング指導入門』か、今は閉講となった通信講座 “GTEC Writing Training” のテキストをご覧下さい。

ここでは、解答例の代わりに、「ナラティブ」のお手本として、プロの筆による「寓話」を。過去ログでも紹介していましたね。

良い英文のインプットには、音読と視写が効果的なのですが、いかんせん単調ですよね。そこで、完全復元を求めるDictoglossの活用がお薦めです。

Aesop’s Fables, North-South Books, 2006

A Hare was always boasting about his speed and making fun of a Tortoise because he was so slow. One day the Tortoise challenged the Hare to a race. “You may laugh at me,” he said, “ but I know that I could beat you if we ran a race.” The Hare was greatly amused at the idea of racing with a Tortoise, and so accepted the challenge. A course was set, and although the two started off together, the Hare quickly outran the Tortoise. He was so far ahead, in fact, that he decided to just lie down and take a nap. But the Hare overslept, and when he dashed to the finish line, there was the Tortoise. He had been plodding steadily forward all along, and had already won.

(131 words)

寓話ですから、普通は最後に “Slow and steady wins the race.” などといった moral が添えられて、「チャンチャン」という終わりなのでしょうけれど、ここでは「あらすじ」ですから。

(2) で手こずる人もいるかも知れません。

指示で気をつけるところは、もちろん「あなたが選んだ話」であって、「あなたが書いた話」ではありません。

気になる物言いは、

(2) 「子供に読ませたいと思いますか?」での、「子供」とは誰のことか?これは、実は (1) と密接に関連するはずのところです。「自分に子供が産まれたら、その子供に」ということなのか?一般論で「(古今東西の)子供」ということなのか?

一般論で書くとして、もし「読ませたい」という「肯定的・積極的」な立場を選ぶとすると、どのような「理由」が想定できるでしょうか?

  • 「語り」という文化の継承・伝承
  • 価値観や行動の規範、倫理の共有・育成

などといった、「おとぎ話」の存在意義・機能・目的などを何か選んで記述することになるだろうと思います。100語あれば、まあなんとか書けるかな、というところでしょう。

このブログの過去ログであれば、

書き言葉を手に入れる遙か以前から、人類は何故に、忘れてはいけないことを「歌」や「物語」に託して後世に伝えてきたのか、その伝統を今一度思い返すことが大切だと思います。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120905

我々人類は言語を手にして、他の動物から差異化を果たした。その我々は書きことばを手に入れる遙か以前から、物語ってきたことを忘れてはいけない。というよりは、我々は時が経とうとも忘れてはいけないことを、物語ることで伝承してきたという歴史を生きてきたと言えるのだから。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120715

などといった物言いが援用できるかと思います。

私が難しいと思ったのは、「『自分の子供』に読ませたい」という時の支持。

個人の体験や嗜好をもとに「理由づけ」するのは結構大変です。「私が好きな話を子供にも好きになって欲しい」というような理由付けを許容するか否か?

個人からもう少し拡げて「一般性」「普遍性」を求めた場合には、上述の「存在意義・機能・目的」のどれかを取り入れて、自分の子供にも、それらの「社会的価値」を理解して欲しい、とでもいうことになるでしょう。

では、反対に「読ませたくない」という「否定的・批判的・消極的」な立場に立つとしたら、どのような理由付けになるでしょうか?

「古(くさい)いから」というのは論外でしょう。「伝統的価値観の刷り込みや押し付けになるから」というのは一見良さげですが、そうすると、「伝統的価値を刷り込むのはなぜいけないのか?」を次に説明する必要が出てきますから、「封建的で個人の自由が制限されている」とか「社会における性的役割のステレオタイプが強すぎる」とか「人物設定が偏見を助長する」などという部分を丁寧に書くことになります。結構大変です。


『政治的に正しいグリム童話』などの類いが話題になって久しいのですが、何が問題なのかを、英語で語るとなると、そういった英文をどれだけ読んでいるかが前提となるでしょう。

次の資料は、南アフリカ共和国の “Film and Publication Board” が出している「映画視聴の年齢基準 (ratings) の分類」に関するガイドラインです。

(http://www.fpb.org.za/classifications/classification-guidelines/305-classification-guidelines/file)

Wikiから、南アフリカのRatingsの概要を転載しておきます。

(https://en.wikipedia.org/wiki/Motion_picture_rating_system#South_Africa)

In South Africa film are classified by the Film and Publication Board.[81] All broadcasters, cinemas and distributors of DVD/video and computer games must comply with the following:

• A: Suitable for all.

• PG: Parental Guidance

• 7–9PG: Not suitable for children under the age of 7. Children aged 7–9 years old may not be admitted unless accompanied by an adult.

• 10: Not suitable for children under the age of 10.

• 10–12PG: Not suitable for children under the age of 10. Children aged 10–12 years old may not be admitted unless accompanied by an adult.

• 13: Not suitable for children under the age of 13.

• 16: Not suitable for persons under the age of 16.

• 18: Not suitable for persons under the age of 18.

• X18: No One Under 18 Admitted; restricted to licensed adult premises.

• XX: Must not be distributed or exhibited in public.

このような分類のもととなる「ガイドライン」を出している訳です。その記述の中から、「子供」への影響が懸念される「概念・用語」を私が思いつくまま選んでみました。自分の語彙の守備範囲のどの辺にいる語句でしょうか?

"abuse" means to treat in a wrong, harmful or improper way or to misuse;

"cultural insensitivity" means insensitive, offensive, demeaning, derogatory, disrespectful or irreverent expressions about any cultural tradition but does not amount to the advocacy of hatred based on race or ethnicity and that constitutes incitement to cause harm;

"explicit sexual conduct" means graphic and detailed visual presentations or descriptions of any conduct contemplated in the definition of "sexual conduct";

"extreme violence" means exceptionally intense, graphic or prolonged scenes of violence;

"horror" means the use of frightening elements to scare or unsettle the audience;

"menace" means an intention to inflict harm, a source of danger or threat and the act of threatening and arousing fear; "menacing" has the same meaning;

"moral harm" means desensitising to the effects of violence, degrading empathy, encouraging a dehumanised view of others, suppressing pro-social attitudes, encouraging anti-social attitudes, reinforcing unhealthy fantasies, or eroding a sense of moral responsibility, retarding social and moral development in children, distorting a child's sense of right and wrong and limiting a child's capacity for compassion;

"prejudice" means a pre-conceived judgment or an adverse opinion or leaning formed without just grounds or before sufficient knowledge is gained or which is based on group stereotypes;

"stereotype" means a set of inaccurate, simplistic generalizations about a group that allows others to categorize them and treat them accordingly;

"violence" means any physical, psychological or verbal abuse whether self-inflicted, interpersonal or collective, including gender-based violence.

いいことを思いついたとしても、それを英語で論じるには、適切な英語のインプットが必要不可欠ですから、まだまだ相当な道のりを進まねばなりませんね。坂の上にまだまだ坂が続いているという感じです。現時点で、これらの表現が頭の中にストックされていて、使いこなせる高校生は少数派でしょう。読解問題として資料を与えておいて、それに基づいて書かせればいいのになぁ、と思います。

同ガイドラインの、 “1. PURPOSE OF GUIDELINES” の中には、こんな記述が出てきます。参考にして下さい。

To protect children from exposure to potentially disturbing or harmful materials and from premature exposure to adult experiences, as well as to provide such information as will allow adult South Africans to make informed viewing, gaming and reading choices, both for themselves and for children in their care.

"cultural insensitivity" に関しては、ハリウッド映画での人種のステレオタイプなどもかねてより指摘されていましたね。

1983年にDavid BowieがMTVにおける「人種」の扱いを指摘し(非難し)たインタビューの動画とスクリプトがこちらにあります。ここで Bowie は相手には「見えていない大切なこと」をことばにして、問題点を指摘している事が見て取れます。

動画

https://www.youtube.com/watch?v=XZGiVzIr8Qg

スクリプト

http://www.latimes.com/entertainment/music/posts/la-et-ms-david-bowie-mtv-interview-race-racism-transcript-20160112-story.html


「お題作文」への解答ということであれば、「差別的な表現」「残酷な描写」「性的にあからさまな描写」「今日の基準に照らしてモラルに反する行動」などが描かれていることを主張するのが穏当な道筋ですが、その場合には、 (1) のあらすじで、どこまでその「不穏当な描写」を盛り込めるか、腕の見せ所です。

伝統的寓話であっても、最近のものは「穏当」な記述に書き換えられているものも多いので、自分が知っているバージョンが多数派・主流派なのか、という部分も心配になるところです。

例えば、次の「お話」は、日本で「よく知られている寓話」のバージョンとはちょっと違うオチになっています。

(http://www.bbc.co.uk/learning/schoolradio/subjects/english/aesops_fables/1-8/frogs_ox)

A young frog sees an ox by the pond. Excited, he calls for his mother to come and see the ‘monster’. The mother frog, who is very fat, does not believe that any creature in the pond can be bigger than she is, but agrees to come and see it.

Being so fat, she is unable to move very far without breathing heavily. This extra air makes her blow up like a beach ball. Still not wanting to admit that any creature in the pond could be bigger than her, she asks the young frog whether the monster is as big as this. When she hears that it is still bigger, she sucks in more and more air, until flying off like a balloon does when you let go of it.

(131 words)


個人的には、良質のナラティブを書くのは難しい、ということが今以上に認識されて、指導が改善されれば嬉しいので、こういう出題が継続し、精選され、良い問題が残っていって欲しいとは思います。

でも、大阪大学の後期試験って、今年が最後なんですよね。残念です。


本日のBGM: Starman (David Bowie)

tmrowingtmrowing 2016/03/16 04:11 一部加筆修正。

tmrowingtmrowing 2016/03/16 14:12 昨年度の「慶應大・経済」での出題を取り上げた過去ログへのリンクを追加しました。