You might otherwise have been a logger.

朝の講話は、職業選択に関連した話におちついた。
1番好きなものを職業に選ぶな、という亡き母の助言から。

  • 自分の好きなことはいろいろあるだろうけれど、1番好きなことを仕事にするのはやめなさい。そのことで周りとの争いができて、勝っても負けても幸せになれない。2番目に好きなことを仕事にしなさい。2番っていうのは「負け」じゃないの。2番を選べば、その仕事で辛いことがあっても、自分にとって1番好きなことが自分を待っているし、その2番の仕事の世界でもし自分が1番になった、とうぬぼれることがあっても、自分の1番好きな世界にはまだまだ知らない人が一杯いて、知らないことがいっぱいあるから謙虚になれる。

というような内容です。私が教師になることに最後まで反対していた母でした。
ちなみに、小さい頃一番好きだった職業は「木こり」です。
2番目以降というか、その後普通に職業を考えるようになってからの憧れの職業は、「さしすせそ」。

  • さ・魚屋
  • す・鮨屋
  • そ・蕎麦屋
  • せ・先生
  • し・詩人

という感じです。
授業はといえば、進学クラスの英語は3年センター対策で、先日の福山で使われていたPro-visionの英文を紹介。ちょうど第3問対策なので、主題文と支持文に求められる要素を徹底。主観的な形容詞、価値判断を含む反証可能な語句の説明責任を力説。その後、問題演習。却下系のつなぎ語に関して『東大特講リスニング』(ベネッセ)から抜粋。<Unlike 1, 2. Instead, 3.>という情報の提示をしっかり整理できるかを問う。

高1は語彙指導・辞書指導。Small talkは福山駅からバスを乗り間違えて紆余曲折の末、授業5分前に会場入りした話。
で、ここが伏線でHe came over to talk with me. の “over”を導入。私もやっていますよ、コアミーニングの図解。板書をちょっとレイコフ風な味付けで。
続いて、divide A (=全体・大) into B(個・小)という語法の説明で、製図などに使うdividerをダシにして、円の半径と円周の関係を問うたのが敗因。よく分かっていないようなので、「算数でやったでしょ?」と円に内接する正多角形の面積 (a)、円に外接する正多角形の面積 (b)、それぞれ限りなく円の面積に近づくから、a < 円の面積 < b となって、近似値を元に、円の面積と半径の関係を数値化する試み (=無理数を扱うこと) が可能となる、という話をしたのだが、生徒はこの問いを今までに全くやったことがないというのだ。私は小学校6年生の時、今は亡きO先生の授業で、細い三角形を紙で切り抜いて貼り付けていった記憶があったのだが…。
放課後に、この話をいつもお世話になっている数学の先生にしたところ、

  • 今の小学校の算数の課程を知らないと、高校に入ってくる数学の苦手な生徒の頭の中は想像できない。

と詳しく説明してくれた。高校の教科書の変化だけ見ていてはだめなんだなぁ、と痛感した次第です。

  • 内容を減らしたからといって、理解できるというものでもないでしょう。その知識を支えてくれるものが他にあるから、それが成立するわけだから。

との私の発言に激しく同意してくれていました。その先生は、小学校の算数の教科書を全部見ているとのこと。私も、中学校の英語の教科書全部読まなきゃ。でも、新指導要領ではどんな教科書になるのでしょうか?
と脱線したところで授業での語彙指導・辞書指導に話を戻すと、divideでは名詞用法の「格差」関連の具体例を示したあと、動詞としての類義語を調べさせた。「和英の活用」とヒントを出して、「分ける」「分離する」から、separateへ。その後、英英辞典の定義でseparateを用いた表現に。他、moved on to the sound of each letterの ”on” を辞書で確認。これは英語でパラフレーズ。「お引っ越し」の比喩から、 to stop discussing or doing something and start discussing or doing something differentというMEDの定義から板書。ここは結構難儀するところなんですよ。なぜ、ここでのonが「同じ動作の連続」にならないのか?語彙は奥が深いね。at onceでは、「atを引いても出てないよ」とonceを引かせて、訳語を見つけさせる。「訳語を見つけて安心しない」とハッパをかけると生徒は和英に。だいたい引いたかな、という頃合いを見計らって、「今調べている語は何?」と問うた。「すぐに」でsoon; immediatelyなどにたどり着いているもの多数。「同時に;一度に」でat the same time; at a timeが少数派。教科書本文を確認させる。”all the letters at once” のallを見落としている者に注意を与え、「副詞」の難しさ、注意点をコメント。ここまで確認して、本文を再読。まだ、経過時間の ”in” と期間の ”in” のコアミーニング的解説とか、動詞inspireと名詞inspirationと態・格の話とか、meaningの元になっている動詞meanと、派生語のmeaningful反意語のmeaninglessでの語形成・接辞の話とか、やるはずのことが残ったまま終了。サマリーにたどり着くのはいつになるやら。
午後の普通科・英語Gは、someとanyとフォニクス。たとえば、『Eゲイト英和』(ベネッセ)でコアミーニングの充実とか言うけれども、この基本語には二つとも図解はないのですよ。言葉による説明・定義・解説の記述を整備することが図解以上に大切なのです。

今日は、本業はオフの日なので、教材研究などなど。
ネット環境で知り合った、「英語授業工房」の方とワークシートのことでメールのやりとり。チャンクやフレーズ訳をどのように活用するか、基本的なことで結構悩みは多いものです。同僚など身近な人に相談したり、目的や方法論を共有できたりすれば理想的なんでしょうが、そうでないことの方が多いわけです。ネットの利点を活かしつつ、身近な接点を増やしていければそれに超したことはないでしょう。私も少しずつ、新たな勤務校で学び、自らの取り組みを固めています。
先日に続き、桐原のPro-vision Writingの英語に難あり、と書いたのだが、教科書を検定する教科書調査官はいったい教科書の何を見(てい)るのだろうか?私もまかり間違えば、教科書を書く側でなく、向こう側にいた可能性もあるので、責任の重さ・畏れ多さを少しは感じるのだ。
過去ログで、http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060312 に書いた部分(旧版=現行版の第28課)は、今年の改訂(新版の第33課)でもまったく訂正されていないのである。今年度までに、ここを授業で扱ったことのある英語の先生にもお尋ねしてみたい。
改訂新版の腰帯コピーには、こうある。

  • Unit 2 = パラグラフを書く 
  • 英文読解の向上につながるパラグラフ・ライティング 

「読解の向上」などと言う前に、まず、ライティングをライティングとして成立させることから見直してはどうなのか?教科書がこんなていたらくだから、ヨコ糸どころかタテ糸も紡げないのだ。生徒にしてみれば、こんな上滑りな学習を進めた先で、大学入試問題の和文英訳を前にすれば、誰しも不安になって不毛な「書けそうにないことは書かない」方略に堕してしまうだろう。中途半端な「和文和訳」を過去問を使ってやるよりは、『和文英訳の修業』や『松本亨英作全集』のような伝統的なテキストで段階的に学ぶか、『日本語から考える英語表現の技術』、『伝わる英語表現法』などからノートに書き出して自分の中で体系化していくことで、英語のライティング力をこそ養い、鍛えることだ。

  • 充実した関連教材
  • 生徒用ガイドはありません

このような周辺的特徴が教科書の採択に影響を与えることがないことを願う。
私が監修したGWTでも現行版(初版)には直したいところがいろいろあるので、早く改訂したいくらいなのだが、売れないことには改訂も難しいのが正直なところ。検定教科書は改訂のチャンスをわざわざ与えてもらえるのだから、いいものにするのが筋ではないのか?
とある英語研究会で、急遽ライティング指導に関してビデオで登場することになった。私の名前を出してリクエストして頂いたことに感謝。今述べたようなことも含めて高校ライティングで実践可能なことと、それを阻む要因に関して歯に衣着せず語った方がいいのではないかと思っている。会の詳細は明かしていいものか、よくわからないので、もしご覧になる機会を持った方は、その暁に、「ああ、これのこと言ってたんだ。」と独り言ちて下さいな。ご覧になって質問疑義が生じた場合には遠慮なくメールでどうぞ。

朝の講話のネタを考える中で、自分の中で候補に挙がったのが、竹内敏晴氏と石原吉郎氏。
時代も背景も異なるが、言葉を失って、言葉を取り戻した人である。
「言葉を失う」「言葉を取り戻す」ということをどう生徒に実感させるか、いい方法が見つからなくて諦め、結局自分の話に。ただ、国語科の先生がお一方、職員室の私の席の近くに来て、「久しぶりにいい話を聞きました」とフィードバックを与えてくれたのが何よりだった。

本日のBGM: Stop and Start (Mari Wilson/ A Young Person’s Guide to Compact)