P.P.S.

高2、2コマに高1、1コマ。
高2は分詞の「肝」でいつものことわざ2つ。

  1. A drowning man will clutch at a straw.
  2. A watched pot never boils.

1. は、最近の英和辞書ではcatchの例が少ないのだが、『ユースプログレ』では、catchで載せていた。clutchのバリエーションとして、grab/ graspを提示。ここでのatの用法に関して『ハンドブック』で該当例文と解説を読む。その後、drownの語義「溺死する」を確認。-ingとなることで、「溺死始め」と「溺死終わり」の途中にあることをイメージさせる。似た意味特性を持つ動詞として、die/ endなどを生徒から引き出し伏線に。a straw とあるが、実際には何本くらいあったら浮き輪として機能するか考えてもらった。はじめは200本などという者もいたが、「100万本くらい?」という線で落ち着く。

  • 裏返せば、1本の藁は、浮き輪の機能を果たすものから見て100万分の1の頼りなさ、ということです。

とこのことわざの「意味」「教訓」を確認。高2ではこの辺までですかね。
2.からの発展では、potの絵を描いて生徒同士で比較。『グラセン和英』で「植木鉢」を引き、a flower potも確認。「-ingは動画、-ed/enは静止画」という目安を与え、「深さのあるのがpot。では浅い調理器具は?」と ”pan” を引き出す。生徒のイメージは当然、

  • a frying pan

この “-ing” は現在分詞だろうか?という問いかけ。

  • もし、現在分詞の-ingだったら、どんな意味になる?どんな情景?

とさらにたたみかけ、a swimming poolの例を出す。

  • 「さまよえる湖」じゃないんだから、水自体がおよいでいっちゃぁ大変でしょ。

と言われて、どうやら現在分詞ではなさそうだというところまでは全員納得。英語が苦手な生徒にはなかなか識別は難しい項目なので、類例を示すために、「寝台車」、「寝袋」、「睡眠薬」を『グラセン和英』で引き、

  • a sleeping car/ a sleeping bag/ sleeping pills [tablets]

を得る。このタイプは、分類するならば動名詞の形容詞化で、something for –ingと「用途」や「目的」を示すのに用いられるもの、と解説。生徒にそれぞれパラフレーズさせる。そういえば、どこかの問題集で、この-ingを現在分詞として解説していたものがあったなあ。もう訂正は済んだのだろうか。
現在分詞と動名詞との区別を確認するために、

  • the Sleeping Beauty

でだめ押し。自分の頭で考えることの重要性も指摘。
さらに、「絶滅危惧種」を引かせてみたが、そのもののエントリーはなし。それでも「絶滅寸前の種」はあったので、”endangered species”の説明。endanger(ed) の語形成は、encourage(d) の語形成と同じとは言えない、という突っ込みを入れ、まずは「他動詞感覚」をしっかりと身に着けることが先決、巷を席巻する「語源」の衒学的解説には気をつけよ、と警鐘を鳴らしておいた。(過去ログ参照→ http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080611)
ついでに、unpluggedとの対比で、「片思い」を辞書で引かせ、

  • unrequited love

を得る。unplugはplug (in) とペアをなして、「元通りにする」「以前の状態に戻す」という意味の動詞として機能している。類例には、女子生徒のリボンを示し、

  • tieとuntie。首元を緩めれば「安泰」。

といつもの親父ギャグ。ペアが存在するから、unplugという動詞から過去分詞を作って、「元に戻したまま、元通りの状態で」という形容詞として用いている、と説明。
それに対して、requiteはそれ自体が、「報いる」「お返しをする」ということだから、(?) unrequiteという動詞がもしあったとしても、その表す実体は想起しにくい。従って、requited「報われた」「お返しされた」という過去分詞が先に作られて、その裏返しで、unrequitedという分詞形容詞を得る、という話し。見た目が同じでも、作られ方は全く違うので、接頭辞・接尾辞などで簡単にわかったつもりになってはいけないとしつこく戒める。
「片思い」には、他にも “one-sided love” などという言い方があるので、名詞をもとに-ed/enをつけてあたかも分詞形容詞のように用いる例を追加。このあたりは、最近の学参ではあまり触れられることがないのだが、木村明『英文法精解』 (培風館) などはきちんと整理しているので流石だと思う。
分詞の肝の総仕上げに、『やれでき』から withの付帯状況。

  • She was reading a letter, with tears running down her cheeks.
  • Can you walk with your eyes closed?

それぞれ、過去分詞だったらどんな意味・イメージ?現在分詞になったら?と問う。
「動画と静止画」の判別の補足で、-ingになると「スローモーションの中継」とか「反復による連続」を表す、explodeとかknockの例を引き、「原理原則」の確認。R.A. Closeの受け売りですな。
動詞closeの類例として、fold 「(腕を) 組む・(紙などを) 折りたたむ」、 cross 「(脚を) 組む」を提示し、宝塚的ジェスチャーやフレンチカンカンの動作を交えて、なぜ -ed/enが基本・標準的表現なのかを説く。その勢いのまま、確認問題を解く。4択ならみな一瞬で解き終わりますから、さらに和文英訳課題に落とし込んで宿題に。思い返すと、この教え方、もう20年くらいマイナーチェンジしながらもやり続けてるのね。マンネリ万歳!

高1は、前時の続き。キーワードのみを与えておき、その前後をディクテーションして全文の復元、全体像の構築を図る。当然、書き取りは不十分ながら、その前の内容理解の設問に対する答えが拾えたりするので前のステップに戻って見直し。書き取った英語を音読して、自分がどこまで理解できたかを自覚したら、その書き取った面を内側に折り込み、見えなくする。その後、新たな用紙を配布し、複数の下線部に該当する英語をディクテーション。この前の段階では、キーワードとして与えられていたものでも、今度は書き取らないといけないものもあるので、難易度は高い。読み上げ2回に対してグループでの情報交換2回を経て、机間巡視で出来を確認し、

  • でも、みんな昨日、一人3つの文を与えられて覚えていたんだよね?

と振ってみる。案の定半分以上、そういやそうだった、とここに来て気づいた模様。そこで、もう一回読み上げ。鉛筆が動く動く。今度は、折りたたんであった前の段階の書き取りと比べて、補える情報を補う。昨日からここまでで、合計で20回くらい私が読み上げているのだが、そろそろ飽和状態。意味の理解が的確で、かつ英語で保持できていないとここから先の正確な聞き取りは難しい、ということがわかってもらえれば今日の授業は成功。ということで、用紙を裏返すと、フレーズのまとまりごとに改行された「対面リピート」用のページが出現。ディクテーションの正答確認で、ただ自分で英文を見て朱で訂正してもあまり効果はないのです。その時の訂正はできるのに、なぜ、その英語を頭に残しておけなかったのか、その部分がそれぞれの生徒が抱える現時点の英語力での課題なのですから。故に、正答の確認と同時に対面リピートです。140語の英文とはいえ、高校入試のリスニング素材ですから、中2の終わりくらいの難易度であるにもかかわらず、フレーズでのリピート、expandしてのより大きなまとまりでのリピートとダメ出ししながら何回も挑戦して最後まで辿り着くと約10分かかります。が、この10分が無駄だとは思いません。このような英語を英語で残す回路を鍛え、日本語の助けを借りて、思い出しながら自分で英語を組み立てていく基礎訓練が中学校段階で足りないから、高校でいくら単語集を棒暗記し、文法の小テストをひたすら繰り返し、英語の教科書を何回も音読していても、さっぱり英語に自信が持てないのだと思っています。
家庭学習での指示は、

  • 自分一人でフレーズまたは1文単位でRead & Look upしてから、ディクテーションの訂正・修正を色ペンでしてくること。

自分自身の朗読トレーニングをさぼっていたツケが出て、喉の違和感と肩胛骨の間のこわばりが現れる。いかんなぁ、自分が楽してちゃ。パバロッティ、パバロッティ。

仕事帰りに、図書館へ。9冊返却して、8冊借りてくる。英作文の先哲・先達を読もうという高い志で、全て書庫の中から出してもらった。

  • 山崎貞『新々和文英訳研究』 (第四版、研究社、1929年)
  • 赤尾好夫『改訂版入試突破の対策を語る』 (旺文社、1935年)
  • トマス・サッチェル、内山源一『新和文英訳法』 (川瀬日進堂、1936年)
  • 村上塾指導部『新和文英訳の建設と完成』 (駸々堂、1940年)
  • 青木常雄『標準新英作文』 (清水書院、1949年)
  • 林語堂著、山田和男訳『開明英文文法』 (文建書房、1960年)
  • 山田和男『新版英作文研究 ---方法と実践---』 (文建書房、1979年)
  • 柴田徹士『英語再入門』 (南雲堂、1985年)

初めて目にするものも多くちょっと興奮。ただし、戦前・戦中のものは書き込みあり、紙焼けあり、虫食いありと、コンディションが極めて悪いので、コピーをとるのは難しそうです。大事に読もうと思います。

帰路途中にScotland Martに寄って自分のシャツを一枚購入。気分は夏!
明日は、自分のコマが午前までなので、午後から九州大学に行ってきます。入試標準解答例、楽しみです。

本日のBGM: the loved ones (Elvis Costello & the Attractions)