「それでも地球は廻る」

鹿児島TEFL初参加。
一昨年の全英連への参加が叶わなかったので、karishimaさんに新年のご挨拶を兼ねて。「鹿児島スイッチ」をオンにしてみました。思いついたのはその前日、karishimaさんには無理をきいていただき本当にありがとうございました。
私自身、「長州英語指導研究会」の事務局長をしているので、会の運営など「組織」としてどのように機能させ、維持発展させているのか、勉強してきました。鹿児島TEFLはスポンサーがいるわけでもなく、志の高いみなさんが手弁当で県のあちこちから集まっています。研究会の中には班がいくつかあり、その班長を中心として実践・研究が摺り合わされ、大会での発表をリーダーがまとめていくというような流れと見ました。今回の参加者は高校がおよそ8割、中学校が2割くらいでしょうか。その他の参加者は、教育庁など行政の方、大学の英語教育関係者など。県外からの私の参加を許してくれたことに感謝。さすがは薩摩、懐が深い。
研究テーマは「リーディング」。さらには、「鹿児島スタンダード」で分類されたCan-doの記述に照らして、リーディングのサブスキルズを授業でどのように扱えているか、または扱っていないのか、などを考えるもの。
個人的に私の今年のテーマは「パラフレーズ」なので、そういう観点からも見てきました。
計4班のプレゼンを聞いた後、5〜6人の小グループに別れてのワークショップ。

  • 今うまく行っていることは何?
  • 各班の発表に関する質問・コメント
  • 鹿児島スタンダードとの整合性
  • 自分自身の実践

などなど。

私が今回の発表で一番印象に残ったのが、中高共に実践の中で、「生徒の情意面の変容」をしっかりと捉えようとしていること。これがCan-doを下支えする大きな足場となるのだと感じました。とりわけ、今回の発表では中学校での実践で、中1の疑問文、指示語・代名詞に習熟するタスクとしての、「このひと誰?」のゲーム的帯活動が良かった。
おそらく、平成になったばかりの「コミュニカティブ」が流行りだした頃であれば、失礼な言い方になるが、それほど注目されることのない活動だったのではないかと思う。しかしながら、教室の中での日常,母語で交わされる「コミュニケーション」が極めて表面的な情報のやりとりだけで終わってしまいがちな今だからこそ、「どこかでやっておかなければならない」活動を英語の授業の中で行うことの意味が出てくるのだと思う。「どこかでやればいいのだから,別に英語でやらなくてもいい」というのは簡単。でも、「結局、どこでもやっていない」で終わってしまっては何にもならないのだ。学ぶ者が、自分の居場所として感じられる教室であり、英語が苦手な生徒も、その一員としての承認欲求として、英語という「教科」にアクセスし始める、そんなアプローチだって、そのひとりの学びとしては「正統」なのだと思う。このあたりは、自分の授業では最も脆弱な部分だと痛感した。

自分のメモを振り返ると、

  • targeted skills とtraining specificationと”in-the-real-life” performance
  • reading speed と素材文の長さと一文の長さ・複雑さ、語彙と異語数
  • 日本語要約と英文要約
  • skimmingからscanningへのgapをどう越えるか
  • worksheetの余白は、incidental reading/writingの糊代でもある
  • classroom dynamicsの前に、comfort/confidenceそしてcompetence
  • appropriate vs. effective
  • taking hold/control → guidance/ modeling → assistance→ feedback → letting go

というようなことが書かれていました。

研究会の後半は、記念講演。
東京学芸大の金谷憲先生。

  • 英語基礎力の定着

というものすごく大雑把なテーマ設定。故に、金谷先生らしい話しが盛りだくさん。
パターン別の名詞句の限定表現に関わる中学生、高校生の習熟度 (正答率)は高校の先生方にとって有益だったのではないか。
金谷先生から会場に投げかけられた質問で、

  • 中1から出てくる、後置修飾にはどんなものがありますか?

というものがあり、私が答えたのは、「前置詞句」そこから、

  • 前置詞句による後置修飾

という、私の師匠が聞いたら激怒したであろうという名前で、その「もの」を取り上げることになったのだが、端的な例は

  • a girl from Canada

その他にも、

  • some countries in Asia
  • a big box on the desk
  • that pretty doll on my bed
  • two large rooms to study English
  • a long letter about animals
  • something warm to wear
  • the story of the old American movie

などに関して、取り出された句を見て意味がわかるか、文の中でそれが「まとまり・かたまり」として主語になったり、目的語になったりしていることが認識できているか、ということをチェックし、それを整理分類したものを下敷きにしていた。
私が、「名詞は四角化で視覚化」といっているのは、まさに、この名詞句の限定表現の正しい理解と「習熟」を目指すためのものなのだが、私が思っている以上に、認知学力レベルのあまり高くない高校での正答率が低かった。特に、低位ではなく、中位といわれる学校の生徒の正答率が中3の終わりの平均とあまり変わらないのであった。
詳しくは、金谷ゼミ生の卒論で明らかにされるということなので、春になったらまた訊いてみようと思います。
個人的に笑っていられないな、と思ったのが、

  • 「授業を作る」には、アクロバティックな技ではダメ。成果を広めるためには、広められるような成果をあげなければならない。名シェフの創作料理は真似しにくい、真似できない。凄すぎる授業は、見終わって家に帰ってから振り返ると、「凄かった」ということしか頭に残っていないもの。

という指摘。
質疑応答で、進学校の先生から、効果的なオーラルの活用のためのアドバイスを、という声があったのだが、それに対して金谷先生は、

  • オーラルで処理する文整序

を薦めていました。そう、「イカソーメン」ですね。それが難しいようだったら、語句整序をオーラルのみで行わせるとよい、という助言で少しバリエーションが増えそうな予感がしました。

夜は慰労会・懇親会。
karishimaさんの紹介に続いて、初めての方々にご挨拶。
山口県も広いけれど、鹿児島県も広いのですね。種子島から,この会のためだけにこられている方もいて、頭が下がる思い。例によって、私は飲み会だと食べる暇なく、いろいろな方とのお話。主宰のA先生には、初めてお会いしたのですが、優しい笑顔で活を入れていただきました。今年の「山口県英語教育フォーラム」には、誰か必ず派遣してくれるとのこと。ありがとうございます。

二次会では場所を移してカラオケ。
衝撃的なオープニングの『祭』で覚悟を決めたのか、持ち歌と思しき曲を歌い上げる方や、指定曲を歌わされ照れながらもこなしてしまう芸達者な方などなど、皆さん、高いテンションを維持。そんな中、私にもマイクが回ってきたので、久しぶりに、このブログのテーマ曲としている、

  • 『明日はどっちだ!』(真心ブラザーズ)

  • 『狂い咲きピエロ』(爆風スランプ)

を絶叫。血管が切れるかと思いました。

終電で帰られた方以外は、日付も変わるまで歌い続け、そこからさらに締めはラーメンという王道。
karishimaさんとしみじみ英語教育について語り、ホテルに戻ったのが2時。
こうして鹿児島の夜は更けていったのでした。karishimaさん、TEFLの皆さん、本当にお世話になりました。

翌、日曜日は、帰路途中で太宰府に寄り、自分のクラスの合格祈願。もう10日なので、鷽替も終わってると思ったのですが、連休ということもあるのか、ものすごい人手でした。自分の分で引いたおみくじは中吉。小林一茶ですかね。
妻へのお土産をちょっとだけ買って、博多発。
車中で A Short Guide to English Styleを読んでいたら、第14章の “The Growth of Plain English” のところから、Drydenの名前が頻繁に出てきて、次の 第15章の “The Pursuit of Elegance” では、Lord Chesterfieldが取り上げられていて、なんとか自分の中での物差しが見つかりそうな気がしてきた。

駅からの運転中に、福山雅治の「Talking FM」で大笑い。
日が暮れる前には無事に帰宅、娘がはしゃぐ、はしゃぐ。
留守中に、語研の冬期講習会の受講者からのメッセージが届いていた。深謝。こういったフィードバックのおかげで、もう少しだけ、前に進めます。

ここで告知です。

twitterで繋がった、渡辺由佳里さんが企画している、「洋書ファンクラブJr」のパイロットプログラムに参加する人を募集しています。
詳しくはこちらを↓
http://watanabeyukari.weblogs.jp/youshojr/

渡辺さん自らが書いていますが、

  • 本ブログと読書プログラムは、日本語圏で育つ子供たちが"言語の壁を超えて世界からの知的興奮を得られるようになる"ことと、「本を読むことの喜び」から始まり「知識を得ることの喜び」を身につける、きっかけになることを目標としています。「英語の成績が上がること」や「良い高校、大学への入学に役立つ」ことが目標ではありません。そういった点数主義や競争主義とは反対の立場を取っておりますので、ご理解いただけると幸いです。

という部分に深く共鳴しました。


さあ、連休中に、

  • Book Reviewのチェック
  • 国体チーム強化プラン策定
  • 書籍の整理
  • メール返信

です。

本日のBGM: 17歳 (森高千里)