reverence

朝も雨。
お月様はまたしてもお預け。haratomo様が感激したリングはこちらでは見られず終い。ozone の女神には天気も味方するのでしょう。
自動車免許の更新で本業は休み。
受付は8時半からだったので、8時過ぎに家を出て予定通りセンター着。
簡単に済むと思っていたのだが、中に入ってビックリ、有楽町の宝くじ売り場状態。
人が多くて申請手続きを済ませるまでに1時間半以上。
講習そのものは2時間で終了。無事に更新を終え家に戻ったのは2時。ふうーっ。

遅い昼食を取り、娘と炬燵でじゃれている内に睡魔が訪れ、仮眠。

頭がスッキリしたところで、「和文英訳」の指導にまつわるエトセトラを考える。
世間は「受験英語」などと簡単に絡げてくれるが、短文を越えた「和文英訳」を要求される高校生はほんの一握り。現行の指導要領どころか、旧課程の「英語 II C」時代の指導要領でさえ「和文英訳」を明示的に指導する根拠はない。にもかかわらず、多くの高校用「ライティング」教科書が、文法シラバスに回帰した現行カリキュラム最後の改訂。この事実というか現実を正しく分析・解釈することが必要だろうと思う。「自己表現」や「アウトプット」が、機能しない教室内リーディングを延命させるためのカンフル剤として使われているのと対照的に、和文英訳は今、行き場のない文法指導を生き返らせるための「命の出汁」に使われているのである。
典型的な構成では、まずは文法項目毎に単文 (ここでは1 sentenceという意味) の和文英訳に準じた作文が課されている。その先に、機能別あるいは場面別の和文英訳が課され、最後にパラグラフライティングもどきの指導がなされて終わり。「英語II C」時代より進んでいるとはとても思えないものが多い。そして、その現行の「ライティング」も、新課程では姿を消す。どのような教科書が出てくるか、著者の腕の見せ所だろうが、「英語表現 II」で、現行の「ライティング」の教科書のうち、Planet Blue (旺文社) のレベルを超えてwritingを扱える教科書が出てくるのか、そこに注目している。
私自身は、どの教科書を使ってもやることは変わらないので、あと数年の間は、毎年、「ライティング」で採用する教科書を変えて、教師用指導書を揃えておこうかと考えている。

今読み進めている、小倉弘 『例解 和文英訳教本 長文編』 (プレイス) で、興味深い項目があった。

  • 第1文の「〜してから一か月後に…」という表現はよく英文で見かけるが、文法書には掲載されていない場合が多いので、けっこう盲点のようである。 (p. 126)

今も相変わらず、「盲点」なのだろうなぁ、と実感。
この項目は、金子稔氏の指導では必ず注意されるもので、久保野雅史先生と英作文の話しをするとよく話題にのぼったものだ。

  • 「家を出て2,3分したら」の表現がなかなかむずかしい。日本人の最も苦手とするものと言えよう。 a couple of (two or three) minutes after I left home となる。afterの位置、 a couple of minutes の前には前置詞は不要ということに注意したい。afterを before に換えると「家を出る2,3分前に」という意味を表すことができる。 (金子稔 『ルール48 英作文の解法』洛陽社、pp.38-39)

同じ項目を金子氏は、『現代英語・語法ノート』 (教育出版、1991年) の pp.22 – 24で豊富な用例とともに、簡潔にして明晰な解説を示してくれている。検定教科書でも、かつての英語IIC の時代に Enjoy English (教育出版) のLesson 8 (p.47) では、

  • Last year we moved to a small town, about 60 kilometers north of Tokyo, where my parents were born. For a couple of months after we moved, we were without a telephone. I realized then how inconvenient it was not to have a telephone.

という実例で示してくれていたものである。この Enjoy English はモデル文がとにかく秀逸で、勉強になる。しかも、教科書本編には対訳の和文は与えられておらず、Q&Asなどを通じて内容の理解も図れるように作られている、時代にかなり先んじていた教科書であった。こういう時に、対訳や解説が載っている教師用指導書は便利である。この英文の対訳は次の通り。

  • 昨年、私たちは東京の北約60キロのところにある私の両親が生まれた小さな町へ引っ越した。転居後2,3ヵ月の間は電話なしで生活した。電話がないことがどんなに不便なことかがよくわかった。

他社の教科書でも、旧課程の英語IIC の頃は、直球の文法シラバスをとっていたものが多いので、何社か吟味して採取すればコンパクトにまとまったモデルパラグラフがいくつも得られるだろう。これをどのように今に活かすか?私は、どうせ、dictoglossをやるなら、このような学ぶべきポイントが凝縮された英文を用いるのが良いと思っている。文法シラバスに回帰した「ライティング」教科書も、今風の「パラグラフライティング」を装い、パート2以降などで、モデル文をパラグラフにしているものが多い。教師用指導書で、その英文の指導上の留意点を明確にしておけば、dictoglossに転用したとしても指導の効果が上がろうというもの。
今、40代後半の教師は、「グラコン」世代で育った。それでも、ちゃんと英語の運用力を磨き、指導力を磨いてきたのだから、自分が生徒として通過してきた指導法も含め、きちんと「評価」をした上で、ふるいにかけ、効果的な指導法や適切な教材・教案を後輩に伝えていくべき責任があると思う。

明日は、0限から。
Music Lovers で目の保養をしてから寝る。

本日のBGM: Grace - Acoustic version (Jonathan Kingham)