英語教育の明日はどっちだ! TMRowing at best Twitter

2011-06-30 Explaining English Grammar

※2012年10月10日追記

この日の内容に関連する過去ログのエントリーは、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120617

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120718

になります。併せてお読み下さい。

※2016年9月27日追記

このエントリーも関連しているので、こちらも併せてお読み下さい。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20121014

梅雨の晴れ間。

期末試験も今日を入れて残すところあと二日。

今日は進学クラス高1の「オーラル」。当然、ライブリスニングでテストです。『レベルアップ英文法』のダイアローグが試験範囲なのですが、ダイアローグをモノローグにまとめ直しておいて、その空所補充とか、テキスト通りではなく、ターンを増やしたり、分割したりなど部分修正を施したダイアローグの空所補充が中心です。一度テキストで読んでしまっているので、「内容理解」の設問は一切なし。個人的には4択で内容理解を問うよりは、表現の言い換えを求める方を選びますので、2学期はその方向で。「オーラル」のテストなのに、ダイアローグの全ての文を続けて印刷しておいて、話者毎に分けるというのも1題入れてあります。視写の活用ですね。ダイアローグの中に今回、「水泳」が話題として出てきたので、書き換えの段階で “kanazuchi” という日本語を対話に入れ、それを英語母語話者に対して説明させるという設問を入れました。不定詞や関係詞・接触節など名詞句の限定表現の運用力、定義・説明というスキルを見るものです。出来は今ひとつでした。私の指導が今ひとつだったということですね。

明日は、高3の「ライティング」。NarrativeとExpositoryなパッセージを書くことを求めています。

空き時間で採点して気が滅入るのはいやだったので、英語関連の書籍などを読んでいました。日向先生から献本していただいた『知られざる英単語…』も読了。機会を見てレビューをしてみたいと思います。

さて、

学習英文法というのが今年の自分自身のテーマでもあり、古い文献から最近のものまで多くに目を通していますが、最近のものはとりわけ「暗記に頼らない」とか「フィーリングで本質を」などという謳い文句ばかりが目だって、恣意的で不徹底なルールの記述が目に付きちょっとうんざりしているところです。

今年度の『朝日ウイークリー』の連載に、「丸暗記不要の英文法」という講座があり、関正生さんという予備校の講師の方が書いているのですが、その第5回 (Sunday, June 12, 2011号) の

  • 「現在形」が持つ本当の意味 (p.7)

が気になりました。あくまでも、ここで取り上げて、論じるのは、「文法の記述の確からしさ」に関してであって、個人的な批判ではないので、はじめに念を押しておきます。

※2012年10月10日追記

この日の内容に関連する過去ログのエントリーは、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120617

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120718

になります。検索ワード「関正生+批判」でお越しいただいた方は、何卒併せてお読み下さるよう重ねてお願いいたします。

以下、当該記事の引用です。

現在形は「現在」という言葉にとらわれているとうまく理解できません。

現在形は、現在のみならず、「昨日も起きたこと、明日も起きること」に使われるのです。

これからは「現在形=現在・過去・未来」という視点で考えるようにしましょう。

という説明があり、いわゆる「学校文法」とは異なる目の付け所・頭の働かせ方で丸暗記に頼らない英文法の理解と習熟を目指しているようです。「学校文法」との差異をことさら意識している様子は、学校文法での現在時制の扱いを取り上げたすぐ後に、

しかしながら、このようなルールを暗記するより、「現在形=現在・過去・未来」ととらえることで、「現在形」の真の姿が見えてきます。

などという物言いに強く感じることが出来ます。

私が気になった部分、引っ掛かった解説は次の件。

英会話の教本によく登場する表現に、What do you do? (仕事は何ですか?) があります。

直訳すると「何をするのですか?」の意味になりますが、これがなぜ職業を尋ねる質問になるのでしょうか?

What do you do? の最初のdoは「現在形」です。「現在形=現在・過去・未来」という点からいうと、

「あなたは (今日も・昨日も・明日も) 何をしますか?」となります。

これが転じて、仕事の種類を尋ねる慣用表現になるのです。

この英文の用例の「最初のdo」は助動詞 (特別動詞) のdoだと思うのですが、ここでの突っ込みどころは、そこではなく、

  • 「あなたは (今日も・昨日も・明日も) 何をしますか?」

の部分。この表現の何がどのように「転じ」て、職業を尋ねる慣用表現になるのか初学者に分かるのでしょうか?この講師はこうまで言い切っています。

このように丸暗記をしないで、理論を踏まえて覚えた英文法は、日常生活の様々な場面で応用できます。

今回の記述のどのあたりが「理論」なのか、ちょっと理解に苦しみます。

ちょっとまずいのではないか、と思ったのは、

英文法の参考書には、しばしば現在形の特殊用法として「確定した未来には現在形を使う」という難しい説明があり、The train arrives at seven. (列車は7時に着きます) といった例文が示されています。でも、これもarrivesという「現在形」に着目すれば、「(今日も、昨日も、明日も) その列車は7時に着く」を意味する文であることがわかるはずです。これが「確定した未来」と言い換えられているだけなのです。

「習慣・不変の真理・確定した未来」というなんとなくはっきりしない説明を丸暗記するのではなく、「現在形=現在・過去・未来」だけを頭に入れておけば万全です!

という解説。 取り上げた「事柄・概念」と「用例」とが一致していないだけではなく、その「理屈付け」もうまくいっているとは思えません。

  • 丸暗記はよくない。
  • 理解した上で覚えるべし。

というところには異論はありません。しかしながら、あまりに恣意的な、また不徹底な記述で、過度に単純化した「理屈付け」を与えることが学習者の益となるのか、私には疑問に思えてなりません。

以下に、英文の用例をいくつか示します。

  • I take the ship that sails on Sunday next. (私はつぎの日曜日に出帆する船に乗る)
  • The house is finished next year, and then they live there. (家は来年完成する、それから彼らはそこへ住むのだ)

以上、木村明 『英文法精解・改訂版』 (培風館、1967年)

  • Another marriage that concerns us a little takes place tomorrow.

宮部菊男 『現代英文法』 (南雲堂、1967年)

  • Next Christmas falls on a Wednesday. (次のクリスマスは水曜日にあたります)
  • The examinations start on February the 15th. (試験は2月15日からはじまる)

以上、毛利可信 『ジュニア英文典』 (研究社、1974年)

  • I start for the United States tomorrow afternoon. (私は明日の午後、合衆国へ向けて出発する)
  • My son graduates from the university next year. (来年、息子は大学を卒業する)

以上、西尾孝 『実戦英文法活用事典』 (日本英語教育協会、1976年)

  • The gates of the park open in about fifty minutes.
  • The delivery van calls again tomorrow.
  • The sun sets at 9.36 tomorrow.

以上、レナート・デクラーク 『現代英文法総論』 (開拓社、1994年)

  • Does the moon shine tonight? (今晩、月はあるかしら)

安井稔 『英文法総覧・改訂版』 (開拓社、1996年)

  • What do I do next? (次は何をしますか)

杉山忠一 『英文法詳解』 (学研、1998年)

手元にある本から思いつくままに拾ってみた、「確定した未来」を表す現在時制の用法です。ここにあげた例の全てが「昨日も・今日も・明日も」当てはまるものではないことは逐一説明するまでもないでしょう。今日の英語の実態から言って、このような「現在時制」の用法の頻度は高くないのは事実。でも頻度が低いからといって、適当に扱ったり、乱暴にまとめたりしていいというものではありません。さらに詳しく知りたい方は、

  • 今井邦彦 『英語の使い方』 (大修館書店、1995年)
  • 柏野健次 『テンスとアスペクトの語法』 (開拓社、1999年)

あたりを参照するとよいでしょう。

中学校では文法指導を前面に出したり、体系的にまとめ直したりすることは稀でしょうから、高校段階での英語指導では文法の扱いは極めて重要です。さらには、新課程では、ますます「実際の運用」に比重が置かれるので、「論理的思考」や「概念形成」がうまく行かない場合に、学習者は、いきおい塾・予備校に通ったり、参考書で自学したりすることになるでしょう。自分の教え子が教室の外で「目から鱗」を落としてばかりいることにならないよう、文法指導を今一度見直し、整理することは一人一人の英語教師の責務だと思います。9月の慶應シンポでそのあたりの意見交換も出来ればと思います。

最後に引用を2つばかり。

一つ目は、林語堂 『開明英文文法』 (文建書房、1960年)

時間を一直線の流れだと考えて、「現在」の範囲を決めようとすると、即座に、現在とは極少の絶えず移り動いている時点に過ぎないことがわかる。理論的には、現在と称する時は、ほんの一瞬間で、それ以前は (たとえ一瞬前にしても) すべて過去に属し、それ以後は (すぐ次の瞬間でも) 未来に属する。現在が常に過去や未来の領域に侵入するのはこのためである。I have just seen him.は名目上は現在であるが、事実上は過去の動作であり、I shall do it now. は、実際には動作が未来に起こることを示している。故に、現在に於いて何かを「する」ことは極めて困難なのである。従って、厳密な意味での現在の動作を表すには現在形は殆んど全く用いられず、その替わりに、幅を持った時間を表すI am doing it now のような現在進行形を用いる。その結果、現在に関して得られる文章は、we have done a thing か are going to do itか、またはwe are doing it right now である、ということになる。 (「現在とは何か」、pp. 386-387)

現在時制の用法を語る前に、「現在」そのものに切り込むあたりが流石にイエスペルセンも認めた中国の叡智である。

二つ目は、毛利可信 『動詞の用法・下』 (研究社、1960年) の「現在時制」 (pp.3-9) から。

一般に、現在時制は、実際に現在時におこっていることのほか、真理・習慣に属すること、それから未来の代用として用いられるということが言われている。さて、この真理・習慣ということであるが、これを叙述するのに現在形を使うことは、真理・習慣の中には現在時も含まれている、すなわち、これらは現在ということを、幅広く解した場合であると考えられる。

  • We often say that things have colors. ---Globe II, p. 76

この場合、we often say ということは、現在も言い、過去にも言ったし、未来も言うであろう、というので、習慣として現在形を用いてあるが、現在時を含むのである以上、やはり、幅の広い現在として感じられている。(中略)

しかし、一方において、現在時に関係なく用いられる現在形もある。たとえば、劇のトガキ (Stage direction) の類である。これは明らかに、本来、時間とは無関係なものの表現である。そこでわれわれは、現在時制が、直接現在時を表す場合以外のものについては、次のように分類することができると思う。

1. 拡大された現在: 真理・習慣

2. 現在として把握されたもの: 近い未来、史的現在

3. 時間を超越したもの: 見出し、トガキ、記録的現在 

(中略) これらの現在形を先に「時間に無関係なもの」 (Timeless) と言った理由を述べてみたい。

ここで毛利は、3.の根拠として、英語の抽象名詞は直接に「時制」に関係ないこと、日本語における「名詞止め」の用法を踏まえて、「時制のうちで『最も無色透明なもの』として現在時制が選ばれる」という見方を示しているところが注目に値する。今から約50年前の記述である。

ハートで感じるのもいいでしょう、コアを鍛えるのもいいでしょう。そういった「今風」の文法の捉え方を提唱し、その指導を広めて行くのはまったくもって結構です。ただし、その際には、従来の学校文法、伝統文法、規範文法を越えた、記述の確からしさを求めたいと思うのです。

「ハト感」については過去ログでも何度か言及したので、機会を見つけてあらためて、「コアミーニング」関連教材も取り上げてみたいと思います。

日が傾きかけた頃にまさしく夕立。

今日届くはずだった奈良からの宅配便が配送中に破損し再配送となってしまった。割れ物を割ってしまうのは偏に運送業者側の落ち度。済んでしまったことは仕方がないけれど、残念でならないのは、蔵人が丹誠込めて仕込んだ滴のひとつひとつを無駄にしてしまったこと。本当にごめんなさい。

雨足が落ちたところで、地元の酒屋まで晩酌用の買い出し。

夕飯は担々麵。

暑い時こそ汗をかけ!という感じでしょうか。

夏バテなんかしていられませんから。

明日は大阪で高野寛さんのライブがあるそうな。私は出張で大学説明会があるので、流石に行かれません。サポートで、Little Creaturesの鈴木正人さん、そしてママレイド・ラグの田中拡邦さんもいるというではないですか。盛会をお祈りしています。

twitterでtmymo 1983 – 2011の奇跡の写真を見て感激。ファンというのはこういうものなのです。

本日の幻の晩酌: 玉川・純米吟醸・無濾過生原酒・一年熟成・20BY (京都府) & 奥播磨・純米吟醸・夏の芳醇超辛・青ラベル・無濾過生原酒・22BY (兵庫県)

本日のBGM: Timeless (Hiroshi Takano)


※2012年10月21日追記を再度繰り返し強調しておきます。

この日の内容に関連する過去ログのエントリーは、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120617

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120718

になります。検索ワード「関正生+批判」でお越しいただいた方は、今日のエントリーの記事だけではなく、上記リンク先の記事を併せてお読み下さい。

※2016年9月27日追記

このエントリーも関連しているので、こちらも併せてお読み下さい。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20121014

tmrowingtmrowing 2012/10/13 17:41 現在、「荒らし」や「なりすまし」への対応として、コメント欄は凍結しておりますので、はてなメンバーからの投稿も一切反映されません。ご了承下さい。
どうしても、この日のエントリーについて何かコメントをされたい方は、この日の内容に関連する過去ログのエントリーの、
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120617
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120718
も併せてお読み下さい。その上で、左のアンテナからプロフィール欄に入って頂き、そこにあるアドレスから、私宛にメールをお送り下されば、誠意を持って返信させて頂きます。