"to my dismay" という表現に関して、失望したことには…

新年度の準備に余念のない日々ですが、昨年から継続する教材などは、十分精査してよりよい使い方を考えておくことが大事。
私の使ったもので言えば、例えば、このような英文。

To her great surprise, her uncle failed in the business. 
彼女がとても驚いたことに,おじさんが事業に失敗した。
Much to her disappointment, the fireworks were canceled due to rain. 
彼女がとてもがっかりしたことには,雨のために花火が中止になった。

イントロで総括するかのように「主語の感情」を述べる「どどいつ」=前置詞+名詞のチャンクの用法で、学参や問題集だと数例が箇条書きやパネルでの一覧で対訳がついて終わり、という感じ。

辞書ではそれなりに用例がありますが、「生息域」はなかなか。
例えば、Oxford類語には、フォーマルな文脈で用いられるという注記がありますが、そこでの用例はこの一文。

To her chagrin, neither of her sons became doctors.
残念なことに,彼女の息子は二人とも医者にはならなかった

フォーマルと言うからには、誰が誰に対して、どのような場面で、何を目的に発する文なのか?
といった実感に少しでも迫りたいと思うのですよね。
「辞書にも、もう少し、バラエティ豊かな用例を配して欲しい」という思いで、前任校では、学級文庫に異なる辞書を数多く用意していました。
当時の写真を参考までに。

表現のバラエティ、という点では、代名詞の所有格以外の用例も欲しいところです。
所有格は所有格でも、アポストロフィの例が、Longman連語にあります。

To everyone’s surprise, they announced that they were getting married.
To Edward’s disappointment, Gina was not at the party.

同辞典には感情の程度を強調するものもあります。

To my utter surprise, I won first prize for my essay.

BBIの連語辞典は、私の世代やその上の世代では人気のあった辞典ですが、「強調」の例をところどころ載せています。

To everyone’s great disappointment, she failed the course.

BBIでは、かっこづけで用例のオプションも示しています。

To my great dismay, she was absent again.
= Much to my dismay, she was absent again.

(Much) to my relief they got home safely.

(Much / Greatly) to my regret, she retired last year.

BBIで気になるのは、

  • オプションで強調形を示している名詞と、示していない名詞の差に何かあるのか?
  • 強調での修飾語が前置の場合と後置の場合での差は?
  • 前置のmuchとgreatlyが両方とも使えるものと、muchしか使えないものがあるのか?

というようなこと。

特に、「強調形」は、入試問題でも時折出題されているようですから、「頻出問題集」の類いでは、一例・一題くらいは収録しているものが多いでしょう。

入試問題の実例を少し眺めてみました。

To my great surprise, she won first prize in the speech contest.

これは、誤文指摘で出題されていたもの。誤文の方は示しません。

Much to the dismay of my Singaporean friends, the first app I ever downloaded was LINE, the instant messaging app that is popular in Japan but apparently not in Singapore.
(シンガポール人の友人たちを大いにがっかりさせたのは、私が初めてダウンロードしたアプリがLINEだったこと。日本では人気のあるメッセージアプリだが、シンガポールではそうではなさそうだったので。)

これは長文の中での空所補充。選択肢はあるので、まあ容易な部類かと。

そうかと思うと、次のようなのもあります。文章全体の第一段落です。

Dr. Jekyll and Mr. Hyde came to Robert Louis Stevenson in a dream, in October 1885, on a wind-whipped night by the sea. He'd fallen asleep uneasily, and as his wife, Fanny, remembered, "my husband's cries caused me to rouse him, much to his indignation. 'I was dreaming a fine bogey tale,' he said reproachfully"
ジキル博士とハイド氏がロバート・ルイス・スティーヴンソンの夢に現れたのは、1885年10月、風が吹きすさぶ夜の海辺でのことだった。彼は眠ったものの落ち着かない様子で、妻のファニーはこう回想している。「夫が何度も叫ぶので、私は起こしたんです。で、彼に物凄く怒られました。『せっかく、怪物の出てくる良い話で夢を見てたところだったのに」と恨めしそうに言ってましたね。」

出典はリンク切れが無ければこちらで読めます。

Findings: A Bogey Tale
By Brian Doyle | June 1, 2006
theamericanscholar.org

こんなものを語句の注無しで読まされる受験生も大変ですが、大手予備校の解答速報ではまず出てこないし、過去問を一般の教材として活用しよう、とはならないような出題校だと、殆ど話題にもなりませんね。

このタイプの感情表現で使われる名詞の代表例は

驚き surprise
落胆 disappointment
歓喜 delight
安堵 relief
後悔 regret
悲嘆 sorrow

など。
ただし、感情・情緒は重なる領域も多分にあるので、

  • chagrin = annoyance + disappointment

だったり、

  • indignation = shock + anger

だったり、はたまた

  • dismay = fear, worry, or sadness

だったりするので、ばっさりと境界線を引くことは難しいものだということは知っておくのが良いと思います。

その意味では、次のような入試での問い方は要再考ではないかと。

An opposite situation is described in Somerset Maugham's story "The Alien Corn." Here the elegant young son of a newly ennobled family, being groomed for a gentleman's life of hunting and shooting, develops, to his family's dismay, a passionate desire to be a pianist.

What does the underlined phrase, "to his family's dismay" imply?
(a) His family had always expected him to be interested in music.
(b) His family was shocked that he had developed an interest in music.
(c) His family believed that he would lose his interest in music.
(d) His family assumed that he would grow interested in music in Germany.

上智大学の2019年の出題で dismayを文脈に則して解釈させるもの。
本当に (b) のshocked で適切でしょうか?

私が類義語や反意語を確認する際によく引くのはCollinsの辞書ですが、そこでは適切な文脈を当てはめられるように、

  • Much to her dismay, he did not call.

という用例を配して、次のような類義語を載せています。

dismay
a feeling of alarm or depression
disappointment, upset, distress, frustration, dissatisfaction, disillusionment, chagrin, disenchantment, discouragement, mortification

ここには、"shock" は出てこない模様。
語義が分かっている人のほうが悩んだりしませんかね?

もう少し、語義や類義語を見てみましょう。
同じ辞典で、

  • consternation

を引くと、その語義と類義語はこうなっています。

consternation
a feeling of anxiety or dismay
dismay, shock, alarm, horror, panic, anxiety, distress, confusion, terror, dread, fright, amazement, fear, bewilderment, trepidation (formal)

語義では "anxiety + dismay" で、こちらの類義語には "shock" が入っているのですね。

上述の『Oxford類語』では、「類語スケール」で、意味の強さを表す工夫をしています。

<<

こちらでは、shockを上位語として、そのスケールの一番弱いところに dismayを配しています。
collinsで語義を説明するのに使っていた "alarm" の入るスケールが右にありますが、そちらを見てみます。
fearを上位語としていますが、そのスケールには shockは見当たりません。

米国の辞書出版社の定義に目を移すと、MW's の学習用では

dismay
a strong feeling of being worries, disappointed, or upset

となっています。shock に近い要素があるとすれば、これまた悩ましい、形容詞の "upset" に求めることになるでしょう。
同辞書で形容詞のupsetを引くと、

  • angry or hanhappy

と、そっけない返事。
米語で頼りになる学習者用辞書があまりない現状なので、少し古いですがマクミランの米語辞書から、形容詞のupsetの定義を、

  • very sad, worried or angry about something

なかなか、shockへ辿り着けず凹みます。
同意語、類義語などとよく言いますが、「語義」と「言い換え」の難しさを感じます。

他にも、上述の辞書からの引用例、入試出題例でも見られた「強調形」で典型的な、

  • much to one’s 名詞

  • to one’s great 名詞

とは、いつでも置き換え可能なのか?
も悩ましいところです。

実例を見ておきましょう。


The past two years, the Braves have closed in Philadelphia, much to their dismay. This time, they opened celebrating with a 9-3 comeback victory Friday.
(過去2年間、ブレーブスはここフィラデルフィアでは試合が開催されないままだった。今回、金曜日の試合で9-3の逆転勝利で祝杯をあげた。)

報道見出しですが、ここでは、 "much to their dismay"です。


Deputies said, "To our great dismay, the dogs have been identified as the two black labs, Colby and Caleb, that were stolen from the Waid Park area last week."
(副保安は、"大変残念ですが、この犬は先週ウェイド・パーク地区から盗まれた2匹の黒ラブの、コルビーとケイレブであることが判明しました "と語った。)

こちらは、 "to our great dismay" で文頭。公的な立場にある人の話しを引用した部分なので、話しことばではあっても、ある程度改まった場面、とは言えると思います。
どちらの表現も使われていることはわかりますが、そこから先の「使われ方」は、これだけではよく分かりません。

辞書や教材で、こういう「痒いところ」を押さえておいて欲しいと、無い物ねだりをしながら、いつもいつもいつも、ざっくりと検索し、比較検討して、授業に臨んできました。

それでは以下、検索結果を。
COCA系では、単語レベルではありますが、キーワードを元にした「類語」での検索が可能ですので、そちらを見て、語義と類語同士の頻度の差を確認します。

COCAで、surpriseの類語で検索

COCAで、dismayの類語で検索

COCAで、disappointmentの類語で検索

注目すべきは、 "dismay" から類語検索をすると、"disappointment" も "shock" も出てくるのですが、"disappointment" から検索すると、 "dismay"も"shock"も出てこない、というところ。相互に置き換え可能というわけではないということですね。
同様のズレは、chagrinにも当てはまります。

COCAで、chagrinの類語での検索

COCAで、regretの類語での検索

ここでも disappointmentが出てきます。

COCAで、sorrowの類語で検索

disappointmentの磁場に引き寄せられていますね。

COCAで、horrorの類語で検索

dismayやshockが出てきました。

プラスの意味合いの語も見ておきましょう。

COCAでdelightの類語

COCAでsatisfactionの類語

COCAでreliefの類語

relief一択ですね。

続いて、「強調形」の比較。

COCAでmuch to one's surprise

同じく to one's great surprise

頻度では、ダブルスコア以上で "much to" が優勢です。

COCAで much to one's disappointment

同じく、to one's great disappointment

大きな差は見いだし難いです。

COCAで much to one's dismay

同じく、to one's great dismay

disappointmentの磁場に影響されつつも、much to優勢。

COCAで much to one's chagrin

同じく、 to one's great chagrin

圧倒的に、much to 優勢。to one's greatの方はdisappointmentの磁場に呑み込まれた感じ。

COCAで much to one's regret

同じく、to one's great regret

disappointmentの磁場に呑み込まれ、大きな差は見いだせません。


最後は、Ngram Viewer で見てみましょう。

surprise/relief/joy で
全体




reliefeをベンチマークにして、dismay/delight





dismayをベンチマークにして、chagrin/regret
全体




<much to one's 名詞>と <to one's great 名詞>との間にそれほどの差がない名詞もあれば、明らかにどちらかが優勢な名詞もある、ということが確認できたと思います。
公式化して、過度の一般化でわかったつもりになるのではなく、

  • 「何が自然な結びつきで、英語らしい表現か」

というのも名詞によって変わってくることを理解しなければなりませんね。

本日はこの辺で。


本日のBGM: the disappointed (single version)/ XTC

open.spotify.com

eatables and drinkables

4月に入ってから、10年以上も前のこの過去ログのアクセスが急増していたのが解せなかったのですが、「もしかしてだけど…」案件が浮上。
ツイッターでも紹介していました。


もしかしてだけど…
これからやって来た?

こちらでも写真をアップしておきましょう。



ありがたいやら、驚くやら。


私がレジェンドというか巨人の本を読むのは、まあ、借りるなら高い肩だからそうするだろ、とは思うけど、レジェンドが市井の英語教師のブログを読んでいるって、あらためて凄いなと。
こちらの本は、チャンキングのところと、最後のコーパスの分析のところくらいしか読んでなかったけど、再読します。

今日は花祭り。
今年は桜の開花が遅く、お花見シーズンなのに、雨模様が続いたので、結局一度も花見に行かずに終わりました。

旨い日本酒で花見酒、は来期にお預け。

ということで、気になる語法シリーズは、飲食に関わる名詞の単複です。

まずはベタに、「飲食物」そのものから。
「食」を表す名詞foodの単複。

  • The basic necessities of life are food, clothing, and shelter. 生活必需品は衣食住です。
  • The season finale provided thought for food. このドラマの最終回には考えさせられた。

では不可算扱いが基本だけれど、具体的な「食べ物」を指す場合に、単複は悩ましいもの。

辞書で「飲食物」を引くと、日本語の「飲」先、「食」後との違いばかりが強調されている印象。

food and drink 飲食物(!この語順で用いる) (ウィズダム英和;以下W4)

food and drink 飲食物 (通例この語順) (ジーニアス英和、第6版;以下G6)

一方で、次のような記述もあるのですね。

food and drink (英)/food and drinks (米) 飲食物
Gina had prepared food and drink / drinks for the party.
ジーナはパーティーの飲食物を準備していた (Oxford コロケーション;以下Oxford連語)

辞書で検索できる範囲で用例を見てみると、同じOxford系でも、「類語辞典」では、

Gina had prepared food and drink for the work party.ジーナは作業班のために飲食物を用意してあげていた

とdrinkは単数形(辞書形)表記の用例だけが示されています。原著の出版年は類語が2008年、連語が2009年で1年しか違いませんから、コーパスが改訂された、とは考え難いです。

同じジーニアス英和でも、第5版 (2014年;以下G5) では、

Food and drinks may not be consumed in this room.
この部屋で飲食はできません.

と "drinks" は複数形になっていたものが、G6では、

Food and drink may not be consumed in this room.
この部屋で飲食はできません.

と単数形(辞書形)の表記になっています。G6は2022年ですから、この8年で単数形にしようという見直しがなされたのでしょうか?
同じG6の用例でも、

The old table groaned under the mountain of food and drinks.
古いテーブルは山のような食べ物と飲み物の重さにきしんだ.

ではdrinksと複数形ですし、ジーニアスの和英では

先日取引先から飲食の饗応を受けた
The other day our business partner treated us to food and drinks.

と複数形で対応させています。ジーニアスの和英第3版は2011年ですから、時代の変化に合わせた、というのは当たらないように思います。
O-LEXでは、英和も和英も

food and drink 飲食物
飲食物 food and drink

と、drinkには単数形(辞書形)を示していますが、O-LEX和英(第2版、2016年)の用例の中には、

高級レストランでの飲食では,しばしばサービス料が別に取られる
At fancy restaurants, they often charge you for service on top of your food and drinks.
飲食物を集会所に持ち込んでもいいでしょうか
Is it alright to take food and drinks into the assembly hall?

と 複数形drinksの例が見られます。そして、どこにも注記はありません。


ということで、オンラインコーパス等に頼って、いつものざっくりとした検索。
Ngram Viewerで。

全体

米。これを見る限りでは、米でも food & drink are [were] >food & drinks are ですね。
food & drinks は1980年代終わり頃から増加傾向。
food & drink の足し算/合算でも単数扱いでis [was]は少ないです。

英。英でも、food & drink で複数扱いが優勢だけれども、合算でも is と単数扱いするのは、米よりも比率は高いか。 これを見る限りでは、food & drinks はそれほど頻度が高くない。

COCA系で見てみましょう。

ベンチマークを期待してCOCAを見るも、ヒット数が少なく、得られる情報も少ない。

GLOWBE。 やはり文頭縛りは厳しい。米でヒットなしという衝撃。

ヒット数を期待してNOWで。food & drinks とdrinksだけ複数のものの頻度上昇。
food & drinkの合算で複数扱いするものと単数扱いするもののヒット数自体にはそれほど差は表れず。最新の地域差データを知るには、NOWの用例をしらみつぶしにするしかない?

ということで、”food & drinks” で78ヒットの用例で出典を見て、

US 35
UK 7
AU 6
CA 5
NZ 2

という結果。所謂「6大メジャー」で、約70%。米&加の北米で50%強。米のみで約45%という割合になりました。
NOWコーパスは均衡コーパスではないので、この数値から何かを断定するのは難しいですが、Ngram Viewerでの米の概況で、

  • food & drink > food & drinks

という頻度であっても、food & drinks という言い方が、より多くなされる文脈は地域や文化圏で言えば米国、北米ということは言えなくはない、と感じます。
今回は文頭が Foodで始まるもの、という縛りで検索していますので、もう少し柔軟に文中の環境で、コロケーションの指定で拾ったりすれば、もう少し言語事実が明らかになるかも知れないと思います。

「飲食物」のついでに、「野菜と果物」でも、fruit and vegetablesか、fruits and vegetables か、そして単複での動詞の呼応は?という悩みどころかを見ておこうと思います。
学習用の辞書ではこんな扱いです。

種類をいうときはCだが, 複数形はfruitの方が普通)
いろいろな果物
various fruits / various kinds of fruit. (!後の方が普通)
新鮮な果物や野菜は健康によい
Fresh fruit and vegetables are good for your health.
(W和英)

そうかと思うと、英和では次の用例を収録。

I eat a diet rich in fruits and vegetables.
私は果物と野菜の多い食事をとっている
(W4)

ジーニアスでは、

数えるときはa piece of fruit; 特に種類を表すときはC
fruit(s) and vegetables
果物と野菜, 青果(物)
(G6)

O-LEX英和では、

(果物全般を表す場合は集合名詞 U,種類を表す場合は普通名詞 C,食品を表す場合は物質名詞 U扱い.ただし個々の果物を指すことはまれ)
Eat more fruit and vegetables to stay in good health.
健康を保つためにもっと果物と野菜を食べなさい

こちらもざっくりと検索してみましたので、そちらを載せて本日はお終いです。

Ngram Viewer全体


英。この英での近年の動きは、更なる精査・吟味に値すると思います(既に先行研究がありましたら、教えて下さい)。

COCA

GLOWBE

NOW


本日のBGM: ベジタブル live version 2022 (大貫妙子)

open.spotify.com

of の細道 2024

気になる語法シリーズ、本日は拙著 『チャンクで積み上げ英作文』(Standard編) に収録のこちらのチャンクの確認から。

動物が虐待されている動画 a video of animals being abused
私の冗談で彼が笑い出した思い出 a memory of him laughing at my joke

映像や記憶系の名詞に続く「同格的」表現の定型を扱う「ドリル27」に収録されているものです。
このタイプの -ing形を「節」と見る一派もありますが、私は 映像系名詞+ of +所謂「意味上の主語」+動名詞 として整理して、提示しています。

この教材は学校採択専用ですので、中高(大学)現場の英語の先生のみが見本本の請求をしていただけます。年度途中での採用も実績がありますのでいつでもお問い合わせ下さい。平常の補習でのテキストや、夏期冬期休業期間の課題としても最適です。
Basic 編(中3から高1に向いています)
tb.sanseido-publ.co.jp

Standard編(高2から高3に向いています)
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この表現形式は、英語ニュース引用RT140字紹介&詳解でも取り上げていました。


AV/記憶の定番表現。A(= 映像・音声・記憶の名詞) of B (=意味上の主語となる名詞)+C (= ing形) 「BがCしているA;BがCするA」。kneeling と同時並行の分詞構文beggingで目的を表す 。
A photo of a man kneeling in the snow begging for food on the medieval Charles Bridge in the Czech Republic

名詞句の限定表現の定型 A(=動画などの映像や記憶) of + B (= 意味上の主語となる名詞) + C (= v-ing) BがCしているA


An old video of late Bollywood actor Sushant Singh Rajput playing guitar with his friend Samuel Haokip has surfaced on the internet
https://twitter.com/news18dotcom/status/1298511076145819648

このような名詞のチャンクの中核をなす、記憶や映像の名詞が主語として立てられて、話題(主題)化されたときの補語の形合わせが結構悩ましいと思っています。


The first picture is of some kids from UAE wearing t-shirts that say "let us live in peace" while the second one is 12yr-old Muhammad Al-Durra was shot dead on live TV. Since then, Israel has killed over 2000 Palestinian children ,,, What peace are they talking about!!
https://twitter.com/MenofCrises/status/1298245102964477953

この解説ツイートで私は、「規範的には ofが必要」と書きましたが、実際はどうなのでしょうか?

noteで公開中の記事から一部引用しながら実例を眺めていきましょう。

類例との比較など詳しくはnoteの記事もお読み下さい。
note.com


LDOCEの第5版 (2008年) には、次のような用例がありました。

One of my earliest memories is of being at a busy railway station, trying to find my mum.
(多分、私の最も古い記憶というと、混雑した鉄道駅で母を探していたことです。)※以下和訳は松井による。

My earliest memory is of being bitten by a dog.
(一番昔の記憶はというと、犬に噛まれたことです。)

※この最上級が主題化に貢献していることと、補語に来ている of + ing のうちの前置詞 of は省略不可であることを確認。
同じLDOCEでもさらに古い版では、

One of my earliest childhood memories is of my father reading stories to me by the fire.
(私の幼い頃の記憶で一番古いものと言えば、父が暖炉のそばで物語を読んでくれたことがあります。)

と「意味上の主語つきの動名詞」、となっています。この of のように、主語に来る語句を修飾する表現が補語の位置で不可欠になるのですが、主題化/焦点化によって、離れてしまうため、慣れないうちは不要だと思ってしまいがち。そして、実際に、そのofを言わなくなってきている、という実態があります。因に、現行(2016年版)のLDOCEでは、このタイプのof -ing形を含む用例は、上述の「犬に噛まれた記憶」のみで、-ing形の意味上の主語があるものは載せていません。

この手の表現は、記憶(memory)に限って言えば、大昔の過去ログで既に書いています。
18年ほど前のことになりますね。

英作文添削者の孤独
tmrowing.hatenablog.com

当時は、金子稔先生の著書を通じて得た知見などを下敷きにして考えていました。今から振り返ると詰めが甘いところが色々と気にはなりますが、それもまた自分の考察です。


現行のLDOCEの第6版より、少し古い、Longmanの連語・類語辞典(2013年)では、of のないものが示されています。

My earliest memory is playing in my grandmother’s garden, when I was three years old.
(私の一番古い記憶は、祖母の家の庭で遊んだことで、3歳のときでした。)

同じ辞書で、類例には of つきがありました(この例文はLDOCEの第6版にも収録)。

The children’s abiding memory of their father is of his patience and gentleness.
(その子たちの父親に対する忘れられない思い出は、彼の気長で優しい性格である。)

COBUILDでは、比較的新しいところで、第3版(2001年)で、初版にはなかった次の用例が見つかります。

Her earliest memory is of singing at the age of four to wounded soldiers.
彼女の最も古い記憶は、4歳のときに負傷兵のために歌ったことです。

この用例はその後、第9版、そして米語版まで引き継がれています。米語英英和では、次の訳語がついています。

  • 彼女が最も幼い頃の記憶は、4歳のときに負傷兵に歌を歌ってあげた記憶である。

「記憶」を二回繰り返すことでof の居場所がよく分かる、親切な訳だな、と思います。

Cambridgeのアプリ版では、語義の2番目(event remembered) で、補充用例をクリックすると見られる数例の中に、

My earliest memory is of being shown around our new house.

が見つかりますが、show aroundが受け身で用いられている状況が、これだけでは掴みにくいものになっています。

現行版のアプリ辞書で検索できる用例は少ないのですが、『ウィズダム英和』では、この ofを(   )に入れて提示しています。ofのある『OXford連語』と並べて引用しておきます。

ウィズダムの第4版は2019年、Oxford連語は、原著が2009年(小学館版は2015年)です。この10年の間に語法に変化があったということでしょうか?

日本の教科書や教材ではあまり見聞きしないのですが、このタイプは結構昔から入試にも出ているようです。

まずは、動名詞のない名詞だけのもの。

The traditional image of the United Kingdom is of a country with a mainly white population。
(イギリスの伝統的なイメージは、白人が中心の国というものだ。)

Let me see. Oh yes, this was taken in Singapore, the last port we visited before arriving in Australia. This photo is of your grandmother and me in the market there.
(どれどれ。そうそう、これはオーストラリアに到着する前に訪れた最後の港、シンガポールで撮ったものなんだ。この写真は、そこのマーケットにいるおばあちゃんと私を撮った写真。)

次は分詞で修飾された名詞。2000年代の整序完成。日本文つきで、 is of を含む my 以下の部分はかっこの外で既に示されていました。

祖母について覚えているのは,ロッキングチェアに座って微笑んでいる年配の女性ということだけだ。
The only memory I have of my grandmother is of a smiling old lady in a rocking chair.

次は2010年代の整序完成。日本文なしで、整序部分に is of を含むもの。me walkingのmeは目的格で意味上の主語の働き。これは一語一語バラバラだとハードルが上がりますが、is of me walking をチャンクで選択肢にしているので、まあできるでしょう。ということは英語力の何を診たいんですかね?

The first memory that comes to mind is of me walking along the streets of London in the rain.
(まず最初に思い出されるのは、ロンドンの通りを雨の中、歩いていたという記憶だ。)

読解系では注釈なしで入っていることが殆ど。

We slept in their huts, played soccer with them, tried traditional dishes such as cassava bread dipped in a beetle-based hot sauce, and even learned a few phrases in the Pemón language, although most speak at least some Spanish. My fondest memory is of spending an evening watching three generations of Pemón, wearing their traditional clothing, perform a ceremonial dance.
(彼らの小屋で寝たり、一緒にサッカーをしたり、カブトムシをベースにした辛いソースに浸したキャッサバ・パンなどの伝統料理を試したり、ペモン語のフレーズを学んだりした。私の一番の思い出は、伝統的な衣装を身につけた3世代のペモンが儀式用のダンスを披露するのを見たことだ。)

Pemónは南米の先住民族のひとつ。詳しくはこちらなどを。

Pemon - Wikipedia

A long-lasting memory of my childhood years in India is of my mother writing letters for our domestic help, Kailash. Kailash was 50, he was from the neighboring state and had never been to school.
(インドで過ごした幼少時代で今でも覚えていることといえば、母がお手伝いさんのカイラシュに手紙を書いていたことだ。カイラシュは50歳で、隣の州の出身だった。)

こちらはwriting の意味上の主語がmy mother。アポストロフィーなしを確認。

COCAで検索できるもので、まだリンクが生きているものから。

The first Wendy McNeill video is of her playing her song "Holly O" while walking through a street market in São Paulo. Most of the people in the market are fairly non-plussed about the experience, but there are a few who get into it. It's really charming. The second video was shot on a balcony and is of Wendy playing the song that got me interested in her music when I heard it on CBC Radio 3, "Such a Common Bird".
(ウェンディ・マクニールの最初のビデオは、サンパウロのストリート・マーケットを歩きながら彼女の曲「Holly O」を演奏するものだ。市場にいる人々のほとんどは、この体験にあまり驚いていないが、何人かは熱中している。実にチャーミングだ。2つ目のビデオはバルコニーで撮影されたもので、CBCラジオ3で聴いたときに彼女の音楽に興味を持つきっかけとなった曲、"Such a Common Bird "をウェンディが演奏しているもの。)
There Is No Cat - Accordions FTW

当然ながらvideo(ビデオ;動画)は演者本人・実物ではなく、実物を写したものですね。この記事自体は2008年に書かれたものです。二ヶ所に、<is of 代名詞 + playing>が出てきますが、特に二つ目は、andの但し書きに続く部分で、ここでもちゃんとofを使っています。

全体の数からいえば映像系よりは少ないかと思いますが、音声でもこのパターンの表現形式をとることがあります。

The noise is of the wind blowing against InSight’s solar panels and the resulting vibration of the entire spacecraft. The sounds were recorded by an air pressure sensor inside the lander that’s part of a weather station, as well as the seismometer on the deck of the spacecraft.
www.voanews.com
(この音は、インサイトの太陽電池パネルに吹き付ける風と、その結果生じる宇宙船全体の振動によるものである。この音は、気象観測所の一部である着陸船内の気圧センサーと、宇宙船のデッキにある地震計によって記録された。)

冒頭の “the noise is of A -ing” の部分を確認。NASAの火星探索機インサイトが「火星の風を捉まえた」と話題になりましたね。

さて、ここからが本日の本題。
先日、こんなツイートをしていました。私のフォロワーの方でも殆ど覚えていないでしょう。

表現の学びどころ満載の記事。まずは見出し。
This year’s Pritzker Architecture Prize went to a Japanese designer whose work fosters community yet dignifies the individual.
関係代名詞所有格のwhose確認。a designer whose work V1 yet V2 「1でありながらも2である作品を手がける設計者」。

元記事のツイートはこちらです。
https://twitter.com/csmonitor/status/1765538020088803520

さらに、CSMの元記事
www.csmonitor.com

その中から、当該の表現を取り上げます。

https://twitter.com/tmrowing/status/1768744569758474300
記事本文続き。
One of his most famous designs is of a fire station in Hiroshima.
記憶や映像・音像ではよく見られるof はここでも!最近の人は、このofを言わない印象です。確かに「それはそれ」ですけど、記憶や映像・音像は「実物」ではないので。図面と建物の違い。 生息域確認の上採取。

一応、記事の結びまで。
https://twitter.com/tmrowing/status/1768763323112403053

ここで注目したのは、 “design” という名詞です。

One of his most famous designs is of a fire station in Hiroshima.
彼の最も有名なデザインのひとつに、広島の消防署(のデザイン)がある。

先ツイートでも、私の理解を書きましたが、設計の「図面」と「記憶」「映像」「音像」との共通点は、「実物ではない写し」であるという点。

類例を。

Crazy to me that the most practical character design featured on this image is of a character that shows up twice in the whole series, and is likely not even designed by Vivian


design の類例。こちらは建築の設計ではなく、アートのデザイン。

この “design” の類例は入試問題にも見られます。先日のツイートから。


図面と建造物と同論理で「筋書き」。入試問題から。
The scenario that is invariably used is of a simple fishing raft probably little more than a floating platform accidentally carried out to sea, probably in one of the sudden storms that are characteristic of this part of the world.

便宜的に和訳を。
(お決まりで使われる筋書きは、おそらくは浮き台に過ぎないシンプルな漁船が、この地域特有の突発的な嵐に見舞われ、誤って海に流されてしまうというものです。)
「筋書き」「シナリオ」も実物ではないですよね?

2010年代の入試問題から。

The most alarming scenario is of AI turning evil, as seen in countless sci-fi films. It is the modern expression of an old fear, going back to Frankenstein (1818) and beyond. But although AI systems are impressive, they can perform only very specific tasks: a general AI capable of outsmarting its human creators remains a distant and uncertain prospect.
(最も憂慮すべきシナリオは、数多あるSF映画にあるように、AIが悪に転じることだ。これは、フランケンシュタイン(1818年)まで遡れる古い恐怖を現代的に表現したものである。しかし、AIシステムは印象的ではあるが、非常に個別のタスクしかこなせない。人間の創造者を凌駕できる一般的なAIの展望は、依然として遠く、不確かなものにとどまっている。)

類例で “picture” の例。文字通りには「絵」だけれど、「考え (= idea)」とか「理解 (= understanding)」と互換性のある語。これも「実物」「実体」とは違うものですね。

The general picture these snapshots conjure is thus of an increasingly interconnected world. It is of a world where borders and boundaries have become increasingly porous, allowing more and more peoples and cultures to be cast into intense and immediate contact with each other.
(故に、これらのスナップ写真から連想されるのは、世界の相互の結びつきがますます強まっているということである。国境や境界線がますます多孔質になり、より多くの民族や文化が互いに激しく、即座に接触できるようになった世界である。)

ここでの increasingly interconnected は変化の先取りをする過去分詞の用法で、修飾されているのは名詞のworldだけれど、は実質はそのworldの変化を「ことがら」として捉えるもの。潜伏命題的な解釈が吉。

さらなる類例で、 “stereotype” を。 既成概念も実体とは異なりますね。

What do research scientists do? Mostly they are involved in laboratory research. A common stereotype is of someone in a white coat examining samples with a microscope. But this is simply a generalization and their work is considerably more complex and demanding. Typically, they will set up and carry out experiments in order to gather data on a particular topic.
研究科学者はどんな仕事をしているのだろう?たいていは実験室での研究に携わっている。よくあるステレオタイプは、白衣を着た人が顕微鏡でサンプルを調べるというものだ。しかし、これは単なる一般化であり、彼らの仕事はかなり複雑で厳しい。一般的には、特定のテーマに関するデータを収集するために実験を設定し、実施する。

someone が意味上の主語で、後置修飾のin a white coatに続いて examining …の -ing形。

変化球にも対応可能? “paradigm” は「モノの見方考え方・枠組み」。

It may be argued that it is possible to be both a multiculturalist and committed to one particular culture. The paradigm here is of the devout Muslim or Christian who nonetheless has a profound respect for other religions and belief systems and is always prepared to learn from them.
(多文化主義者であると同時に、ある特定の文化に傾倒することも可能であると言えるかもしれない。ここでいうパラダイムとは、敬虔なイスラム教徒やキリスト教徒でありながら、他の宗教や信仰体系を深く尊重し、それらから学ぶ用意を常に持つことである。)

この焦点の部分も、 the … Muslim or Christianと人でありながら、関係詞の内容を含めて潜伏命題化して、実質ことがらで軟着陸させているもの。

2024年4月5日注記: ここまでで取り上げた中で「潜伏命題」での解釈が望ましいものに関して、詳しくは

  • 福地 肇 『英語らしい表現と英文法』(研究社、1995年)

の、第2章「関係詞節と潜伏命題」 (pp.25-48)をご覧下さい。所謂「縮小関係詞節」の例もありますので。

アカデミズムや入試素材だけでなく、日常の実用的な媒体でも、この表現形式が使われているところを見ておきましょう。

The first impression is of a small rose bud blooming in a green garden.
第一印象は、小さな薔薇のつぼみが、緑の庭で花開くというものです。
https://alphonsemucha.jp/Page/LP/2023/0907_LOOK/img/MUCHA_LOOK.pdf?20230907

フレグランスの商品説明の「お洒落な文言」からです。 impression(印象)も実体とは異なりますね。

Phishing is a type of cyberattack that uses disguised email as a weapon. These attacks use social engineering techniques to trick the email recipient into believing that the message is something they want or need — a request from their bank, or a note from someone in their company — and to click a link or download an attachment.
“Phish” is pronounced just like it’s spelled, which is to say like the word “fish” — the analogy is of an angler throwing a baited hook out there (the phishing email) and hoping you bite.
medium.com
(フィッシングは、偽装された電子メールを武器とするサイバー攻撃の一種です。これらの攻撃は、ソーシャル・エンジニアリングのテクニックを使い、電子メールの受信者を騙して、そのメッセージが自分にとって必要なもの、つまり銀行からの要請や会社の誰かからのメモであると信じ込ませ、リンクをクリックさせたり添付ファイルをダウンロードさせたりするものです。
“Phish” の発音は綴りと同じ、つまり "fish" という語と同様です。例えとしては、釣り人が餌をつけた釣り針(フィッシング・メール)を投げて、あなたが食いつくのを期待すること、の類推ですね。)

analogy (類推)は共通点に着目するのであって、実物・実体と同じではありません。

picture, photoやimageなどの映像系、memory (記憶) 以外にもこのパターンで使われるものがいくつか確認できたと思います。
他にも、どんな名詞がこの環境に現れ得るのか?
ノイズも含まれますが、ざっくりとした検索結果を。

均衡コーパスではないので、あくまでも実態に触れるNOWで。
名詞 + is of + 代名詞 + ing形で上位30。

記憶や映像以外にも同格で使われるものが多く、ここから何かを言うのは難しいですね

同様にCOCAで検索

ここでは複数ヒットを得られませんでした。ただ、tale(話し)、statue(銅像;彫像)、format(様式)など、興味深い名詞が実際にこの環境で出てくるのだなぁと。

個別に見ていこうと思います。

NOW memory / ofあり

NOW memory / of なし

NOW でvideo。 of あり

NOW でvideo / of なし

GLOWBEでvideo / of あり。

GLOWBEでvideo / of なし

COCA memory のみ / of あり

COCA memory のみ / of なし

ヒット数が少ないので、隔靴掻痒の更に前、という感じです。

代名詞と所有格だけでなく、一般的な冠詞類での検索に、memory / video / picture の3点盛りで。 is / is of + 冠詞類 + 名詞 + -ing形

NOW で3点盛り / of あり

NOW 所謂3点盛り / of なし

若干 ofなしの方がヒット数は多いか?
memory だと of ありでvideoだとofなし優勢?

COCA 3点盛り / of あり

COCAで 3点盛り / ofなし

全体のヒット数で若干、ofありが多い。ただし、ofありはmemory優勢。ofなしはmemoryの「記憶」とpicture + video の「映像」で同じくらい。

GLOWBEで3点盛り / of あり

6大メジャー+南アで約8割を占める。65%強が memory。

GLOWBEで3点盛り / ofなし

圧倒的に6大メジャーでの使用。ofなしはvideo + pictureが若干優勢。


ようやく、尻尾が見えてきた、という感じです。全体像をはっきり掴むには、もう少し具体的なデータを集めて考える必要がありますね。
「語法研究で既にこの辺りは解明されているよ」という情報がありましたら是非、お寄せ下さい。

本日はこの辺で。

本日のBGM: True To Life (Roxy Music)

open.spotify.com

when spring comes around

ツイッターやFBでも紹介していましたが、2024年度入試関連の情報提供。
私の母校でもある東京外国語大学のリスニング&ライティングの技能統合問題に関連して。


問題冊子のレジュメにあるタイトルとキーワード&合格した受験生の聞き取りの際のメモを元に出典を検索しています。
「思しき」と書いたのは、出典はこれに間違いないはずですが、年によって実際のスクリプトが部分的に書き換えられている場合がある(当然音声も新たに収録することになる)ためです。

大学入試に関わる情報、と言えば、田中健一先生のツイートで紹介されていた某記事は、読んで見て結構な衝撃を受けましたので、今日の記事はその辺りを中心に。

当該のツイートがこちら。

元記事はこちら。

「I made for the school.」「I am.」を訳せる?東大生が伝授!英語攻略法 | ニュースな本 | ダイヤモンド・オンライン

私の率直な反応はこちら。

ここで私が書いた、「義務的な要素を含むSVAの動詞型」というのは、例えば次のようなものを指します。

  • I live in Chiba prefecture. 私は千葉県に住んでいます。

ここでの「場所句」である in Chiba prefecture は省略することができません。

  • I shouldn’t belong here. ここは私のいるべきところではない。

ここでのhereも省略することはできません。
イマドキの学参でも、この辺りとの兼ね合いは押さえているでしょう?という趣旨のツイートです。

既にnoteの記事/マガジンでも公開していますが、私はもう随分長い間、所謂「文型」の扱いの再考を訴えてきました。
「目的語感覚を養う #6」で取り上げている内容とも重複しますが、SVで意味が整合する動詞の用法からいくつか抜粋して、ここでも考えてみたいと思います。

記事単体では販売していませんので、こちらのマガジンをご検討願います。

note.com

それでは本題です。
日本の「英文法」の教材の多くが「文型」という名の「動詞型」を重視しています。
中でも根強いのが「五文型」という考え方。最近では S/V/O などの記号で示されることが多く、「第何文型か?」と型の番号を使うことは少ないのではないかと思うのですが、教材や指導者によっては今でも、第1文型から第5文型までに動詞型を分類し、当てはめているようです。

その中で、基本的にS+Vで構成される表現なのに文型=動詞型ではSVの典型例として扱われ難いものがあります。
そのような表現で使われる動詞をいくつか取り上げます。

まず、「変化」に関わる動詞のdiffer。
1. Tastes differ.       
人の好みはお互いに似ていない/人の好みはそれぞれです。 

無冠詞・複数形の名詞tastesと動詞differの現在形で一般論を述べる文です。ここでのtastesは可算扱いで「人の好み;嗜好」。動詞differは「お互いに似ていない」という意味ですが、その意味を形容詞ではなく動詞一語で表します。主語が複数(形)の場合には、その主語相互の相違を表すので、from each otherなどの前置詞句がなくても文として成立します。
敢えてパラフレーズすれば、次のような言い方になります。
  1’ Everybody has their own likes and dislikes.
   誰でも皆、その人ならではの好き嫌いがある。
また、諺でよく知られた文であれば、日本語の「蓼食う虫も好き好き」に対応する次の文になります。
  1’’ There is no accounting for taste.   「人の好みは説明できない」
      
※因に、この諺での「好み」は、かつてはtastesと複数形で使われていましたが、現代英語では無冠詞のtasteが優勢となっていることは知っておいた方が良いでしょう。

COCA系


Ngram Viewer

話しを戻して、Tastes differ. の類例を見ていきます。
「意見は分かれます/意見は人それぞれです。」
という意味では、
2. Opinions differ.         
3. Opinions vary.
の二つの表現をよく見聞きします。
動詞 vary にも、複数形主語を取り、「様々である」意味を表す用法がありますので、differとの差をちょっと見てみましょう。

NOW

GLOWBE

COCA

動詞varyの典型的な主語には、prices「価格;物価」 がありますが、意外(?)なところで、answer(s)があります。
4. The answers vary. 答えは一つに決まりません。/回答はバラけます。

※状況によっては、定冠詞で単数の the answer varies も使われますが、その場合は通例、specificな状況を同じ文中か前後(背景)の文脈で示すことになるでしょう。
Q: What do the crews eat on long flights? – Harry Carley, Japan
A: Pilot meals vary from airline to airline. Usually on long flights, the crew meals are prepared in a similar way to passenger meals. The flight attendants bring the meals to the pilots once the passengers have been served. The menu varies depending on the departure airport and the catering request.
www.usatoday.com
(Q: 長時間のフライトで乗務員は何を食べていますか? - ハリー・カーリー、日本
A: パイロットの食事は航空会社によって異なります。通常、長時間のフライトでは、乗務員の食事は乗客の食事と同じように用意されます。乗客の食事が終わると、客室乗務員がパイロットに食事を運びます。メニューは出発空港やケータリングのリクエストによって異なります。)

「重要である」という意味の動詞。
「…である」という日本語の感覚では、形容詞として捉えてしまうので、動詞の用法を用例でしっかりと押さえておくことが重要な動詞がmatterです。
5. Context matters. 文脈が重要な意味を持ちます。
  matterには「重要な意味を持つ;重要な影響を与える」という意味があり、形容詞ではなく動詞として使われます。否定の文脈で使われることが多いですが、このように、肯定文でも使われます。noteの記事でも、次の文を取り上げていました。
6. Quality matters more than quantity.   質が量より重要です。

このmatterと意味が似ている動詞に countがあります。
countは、主語が人・ものに関わらず、「重要である;価値がある」という意味で使われます。
7.Every Mother Counts.  
一人一人の母親に皆意味がある/大切じゃない母親なんていません。
everyは単数扱い。「ひとつひとつ取り上げ、漏れなく」です。
私も継続的に支援している米国の団体にEMCがありますが、そのイニシャルの元になる文で、メディア等では上述のようにEMCを大文字で示すことが多いです。
元スーパーモデルの、Christy Turlington Burnsさんが主宰している団体です。
直接のdonationも、関連・提携グッズの売り上げからの一定の割合の寄付も可能です。
詳しくはこちらを是非。

Pregnancy and childbirth should be safe, respectful, and equitable for everyone, everywhere.
everymothercounts.org

本来は人主語の筈の伝達動詞がモノやことがらを主語に取る場合に、 SVのみで意味が整合することがあります。
動詞はtellやtalkが使われますが、主語に来る名詞で結びつきには相性の善し悪しがあったり、時制による頻度の差があったりするので注意が必要です。
「血は争えない; 血統がものを言う」
という意味では、
8. Blood will tell.
9. Blood tells.  
の両方が使われますが、諺・格言のような使い方では頻度は極めて低いので注意が必要です。

Ngram Viewerの頻度では will tell > tells となっています。

一方のCOCA系で見ると

NOW でwill tell。 ことわざ的言い切りの例も少しは拾えそうです。

NOWでstands。目的語を取る例の方が優位で、言い切りの例は極めて少ないことが見て取れます。

やはり一つ一つみていかないとダメですね。

noteの記事でも取り上げていた「お金」と「経験」。
主語になる名詞と動詞の結びつき・組み合わせを確認。

10. Money talks. お金がものを言います。
11. Experience tells.  経験が物を言います。
が、あるある、ですね。

以下、noteの記事とも重複しますが、動詞standを取り上げます。
12. My decision stands. 私の決断は揺るがない。
直立している=揺らがない;崩れない;倒れない という比喩的な意味。
この動詞standの用法に関しては既にツイッターで、有益な投稿が成されていますので、是非お読み下さい。

興味深いのは、このstandが現在時制で使われるときの副詞の扱い。
主語として典型的な名詞は、offer, point, decision ですが、これらと副詞のstillが結びつく強さと、使用頻度には関連性があるようです。

全体概況



小説

offerではstillのある、なしで2倍ほどの使用頻度の差があるのに対して、pointでは英米で差があり、米はなし優勢、英はあり優勢、decisionではほぼほぼstillなし、という結果です。

COCA系でも見ておきましょう。

NOW でstill stands

NOW でstandsのみ

GLOWBEでsill stands

GLOWBEでstandsのみ

COCAでstill stands

COCAでstandsのみ

この3つの比較で見る限り、decisionの頻度そのものが低いことが見て取れます。
日頃の観察がより重要であるということですね

ここまでに出てきた主な動詞の使用頻度をざっくりと見てみましょう。

全体



英 (1985-1995までに「一分一秒を争う」 何があったのか、凄く気になります。)

小説

本日はこの辺で。
Whatever works.

本日のBGM: 春になれば (中村一義)

youtu.be

open.spotify.com

2024年4月4日追記: 
このエントリーでは、基本的にSVのみで意味が整合するものを取り上げましたが、他にも

  • Day breaks. / Day dawns. 夜が明ける。
  • Her voice broke. 彼女の声が詰まった/彼女は声を詰まらせた。 ※「悲しみや恐怖など、感極まって」が多い。男子の変声期の声変りにも使うことがある。

など、SVのみで意味が整合するものは色々あるのに、英文法の学参等では
<SVの文型>
という項目では取り上げられられていないようです。

また、英文法の一般書でも、英語学の知見を借りてくるのか、「1項動詞」「2項動詞」などの概念を用いて動詞型(文型)の異同の説明をしているものがある印象ですが、例えば、

  • I don't drink. 私は酒はやりません。/お酒は呑みません。 
  • He doesn't smoke.  彼はタバコを吸わない。

はどう扱っているのでしょうか?

上記2例では、目的語はないけれども、動詞そのものの中に「アルコール飲料」「タバコ類」という目的語の意味を含んでいるわけで、このような動詞の用法はハナから例外的な扱いをして、都合の良いものだけを奇麗に分類しがちなところが、本当に大嫌いです。

この  drink/smoke 程には明確ではありませんが、

  • It stinks! 全くダメ/酷いね /クソ
  • It sucks!  最低/むかつく
  • His new song rocks! 彼の新譜サイコー!

のような SVのパターンも主語に来る名詞の内容・性質・実態は当事者には共有可能であり、その上で、動詞の元々の意味よりも広い・深い意味を比喩として表している、と柔軟に捉えた方が良いでしょう。

  • That depends. それはことと次第による。

というときも、聞き手・読み手はともかく、話者には "On what?" に当たる 「ことと次第」の思惑くらいは見えているわけで、

  • Only time will tell.  時が経てばわかるさ。

という時も、「何が分かるか?」の前提である、 that SVや、whether/if SVや wh-は通例、共有済みでしょう。

「文型」分類が大好きな指導者の方々におかれましては、このような例も大きな心で受け入れて丁寧に扱って欲しいと切に願います。

first things first

年度末のオンラインセミナーも二つ終えました。
・文字指導/handwriting指導法
・辞書活用法/辞書指導の留意点

今日から4月。所謂「新年度」です。
文字指導は新年度も継続して開催しますので、まだ受講されていない方は是非、既に受講された方は同僚の方などお知り合いの方に薦めて下さい。

辞書活用法に関しては、おそらくこの4月中に「物書堂」さんのセールがあると思うので、それに合わせて、同じ内容の講座を再度開催します。

2024年4月20日(土)午後


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この機会を逃さず是非!


さて、今日も気になる語法シリーズ。

「はじめて」界隈を初めて探ります。
入試問題でも「英作文」で時折出題されている日本語表現がありますよね。

  • ロンドンを訪れるのは今回が初めてなんです。
  • 日本で景色がきれいな所へは他にも行ったことがありますが,山に行ったのは,今回が初めてでした。


学習用の辞書でも古くから、

海外旅行をするのはこれが初めてです。
This is the first time (that) I’ve made an overseas trip.
This is my first trip abroad.
(『アンカー英作文辞典』学研、1993年)

のように定番、鉄板の用例が示されていました。

とりわけ前者の表現は「文型」として

  • 「…するのはこれが初めてだ This is the first time [that] S+V」

として示されているものです。

最近の辞書の用例でも、

This is the first time I've ever brought a girl home.
女の子をうちに連れてくるのはこれが初めてだ。(ウィズダム英和)

This is the first time we've been to India.
インドに来たのはこれが初めてだ. (ジーニアス英和)

This is the first time I've driven a car.
私が車を運転するのはこれが初めてだ (O-LEX英和)

と定番のごとく収録されています。

その一方で、上述の『アンカー』の第2例の、

  • my first trip

のように、<所有格 + first + 活動や行為を表す名詞>を使う例も多く見られます。

This is my first visit to Canada.
カナダには初めて来ました (ランダムハウス英和)

This is my first trip to New York City.
私はニューヨークはこれが初めてです (ジーニアス英和)

この試合が初陣だ
This is my first appearance in a game. (O-LEX和英)

最近の学習用の英和・和英ともに、ほぼ同じ意味内容を表す複数の例を示したり、同意での言い換え表現を示したりすることが多い印象です。

この博物館を見るのはこれが初めてです
This is my first visit to this museum.
This is the first time I've visited this museum.
I've never visited this museum before.
(ウィズダム和英)

This is my first visit to this town.
この町へ来たのはこれが初めてだ
(=This is the first time that I have visited this town.).
(ジーニアス英和)

教師として教壇に立つのはこれが初めての経験です
This is my first experience as a teacher.
This is the first time that I have taught.
(O-LEX和英)

この<所有格 + first + 活動・行為の名詞>は<the first time (that) SV>に比べて、動詞の時制で悩まなくていい分、簡潔に表現できる便利な表現ですが、そもそもの「活動・行為の名詞」の持ち駒がなければ上手くいえないという問題が出てきます。

動詞 visit → 名詞 visit to
動詞句 make a trip to → 名詞 trip to

は容易でも、上記用例の “experience as a teacher” などのチャンクがスッと口をついて出てくる中高生はそれほど多くないように思います。

冒頭の入試カコモン「ロンドンを訪れるのは今回が初めてなんです」はどうでしょう?

This is the first time I have visited London.
This is the first time I have paid a visit to London.
This is my first visit to London.

で最後の英訳例が最も簡潔ですね。
因に、この問題を扱っている某教材の解答例では、(?) “this is the first visit to London” と定冠詞のthe にfirst visitが続いていましたが、現在はあまり一般的な言い方ではないという印象です。

NgramViewerで

活動や行為を表す名詞を的確に使うにも、英語力は必要ということですね。

It's my first view of the sea!
海を見るのはこれが初めてです. (ウィズダム英和)

This is my first view of a desert.
砂漠を見るのはこれが初めてです. (ジーニアス英和)

教室で何割の生徒が、ここでの<my first view of 名詞>がスラスラ口をついて出てくるか?
名詞 visitでは前置詞はto、名詞view なら前置詞はof というところも悩ましいです。

それよりは、

  • This is the first time I’ve seen a desert.

の方が簡単なのでは?
活動・行為の名詞がすぐには思いつかないものは、『アンカー』で「文型」とされていた、the first time SVの Vの部分で完了形で活動・行為を述べる方が、ミスが減らせるように思います。


冒頭の入試過去問の2例目、「山に行ったのは,今回が初めてでした。」であれば、基準時制が過去ですから、

  • That was the first time I’d been to a mountain.

のように、主節をwasで過去形、timeに続く部分は過去完了形にしておくのが無難でしょう。

辞書にも、過去基準の例は収録されています。

It was the first time she had experienced real fear.
彼女はその時はじめてほんとうに怖いと思った
(Oxfordコロケーション)

It was the first time I had climbed Mt. Fuji.
富士山に登ったのは初めてだった
(≒ It was my first time climbing Mt. Fuji.
≒ I climbed Mt. Fuji for the first time in my life.
≒ I had never climbed Mt. Fuji before.)
(ウィズダム英和)

英訳の2例目の “my first time climbing …” が見慣れない形かも知れません。全体が活動を表す動名詞由来の名詞句のチャンクになるもの。『ウィズダム和英』にも例があります。

山登りはそのときが初めての経験でした
That was the first time I had climbed a mountain.
That was my first-time mountain climbing.
(ウィズダム和英)

これは比較的新しい言い方になるのでは?以下、COCA系での検索結果から。

COCAでベンチマーク。2000年代以降で色が濃くなっていますね。

COHAで初出に探りを入れる。2010年代以降に拡がりを見せている?

NOWだと絞り込めなくて、経年変化は探れず

NOWでハイフンつきで検索。

Ngram Viewerで眺めてみますか。
my first time -ing形で。

seeingの一人勝ち模様ですが、それでも顕著に頻度が上がっているのは2010年代以降ですね。
この表現に似ている、<my first time ever -ing形>も使われているようです。

COCA

COHAで見ると1990年に1例ありました。

NOW

ということで、

  • 🎵そんな言い方しないなんて、言わないよ絶対🎶 案件

だということが分かると思います。

ここまで見てきた「定番・鉄板表現」に加えて、ingのイマドキ表現に対して、次の表現は誤用と言われることが多い印象です。
冒頭の過去問の「ロンドンを訪れるのは今回が初めてなんです。」に対して、

This is the first time (for me) to visit London.
This is my first time to visit London.

という解答が出てきた場合には、誤りとして修正したり、避けた方が無難だという指導をしたりする先生が多いと思います。私もこの2例のうち、上の英文は×をつけて直すと思います。

ほぼ同じ意味の文が『ウィズダム英和』にありました。

This is the first time I have visited London.
ロンドンを訪れるのはこれが初めてだ
(≒ This is my first time visiting London.
≒ This is my first visit to London [my first visit in London].)
((1)This is my first time to visit London.の形は(非標準);
×This is the first time (for me) to visit London. としない.
(2)主節が現在形の場合that節中は通例現在完了形で, 現在形や過去形は(まれ); ↓ )

ここでの1例目が鉄板。≒で言い換えられた2例目の my first time visiting が先ほど取り上げたイマドキの表現。3例目が、活動・行為の名詞で所有格。
この辺りまでが教育的配慮でしょう。『ウィズダム』では、(X) <the first time to 原形>は誤用と断じていますが、<my first time to 原形> に関しては、「非標準」というラベルを貼るにとどめている印象です。

COCA

NOW

Ngram Viewerでざっくり見てみると、to beが続くと頻度が上がっていることが見て取れます。

全体

米。米語法では、to beが続く頻度もそれほど高くはない模様。

英。米とは異なり、to beはbeingよりも高頻度。

SKELLで網を投げて見ますか?

seeing 0.02

to see 0.01

being 0 で用例は4つ。

to be 0 で用例は一つ。

所有格first timeに続く動詞によって容認度に差がでるのではないか、という印象です。

『ウィズダム英和』の扱いを再確認しておきましょう。

It is the first time I have lived in Kyoto.
京都に住むのは初めてだ
(≒ It is my first time living in Kyoto.
≒ I'm living in Kyoto for the first time in my life.
≒ I've never lived in Kyoto before.)
(×It is the first time for me to live in Kyoto.としない).

ここでは、やはり『ウィズダム』ならではの、 my first time + ing形は正しいものとして用例を示し、『…和英』では「非標準」として用例をあげていた my first time to原形は示していません。

liveで再確認。

COCA

GLOWBE

NOW

『ウィズダム』の扱いを裏付けるような検索結果ですね。

主として過去時制での、副詞firstと副詞句for the first time 、裏返しの否定での完了形を確認しておきます。

He first assumed power in 1970.
彼は1970年に初めて政権に就いた.(COBUILD米語英英和)

副詞で用いるfirst (初めて)は、動詞・助動詞でnotならどの位置に来るか?を確認して配置。

Animal life first appeared on the earth about 400 million years ago.
動物が初めて地球に出現したのはおよそ4億年前である (ウィズダム英和)

I will never forget the day we first met.
私たちが初めて会った日のことを決して忘れません. (ジーニアス英和)

firstを強調したともいえる、for the first time は動詞句の後ろに置かれることが多いが、文末だけでなく、目的語との間に割り込んだように見えることもあるので、ある程度の場慣れが必要。もっとも、副詞句の場慣れが必要なのは、not at allの位置なども同じで基本といえば基本。

I sampled the delights of Greek cooking for the first time.
ギリシャ料理のおいしさを初めて体験しました (Oxford類語)

これは文末。

She went for the first time to a press conference.
彼女は初めて記者会見に出た. (ジーニアス英和)

ここではwentの後、toの前。

She spoke for the first time about the traumas of a broken marriage.
彼女は破局した結婚の精神的衝撃について初めて語った.(COBUILD米語英英和)

ここでは、speakの後、about の前。

完了形は、これまで/それまでに経験がない=初体験であることを間接的に伝えるもの。
辞書の用例では、和訳で「初」を表にだしているものもありますが、単純に否定のままの訳をつけているものが多いでしょう。

I’ve never seen Terry laugh so hard.
私はテリーがあんなに大笑いするのを初めて見た. (COBUILD米語英英和)

初めて彼が自分の過去を語った.
It was the first time he ever talked about his past.
He had never talked about his past before.
(研究社和英大)

以上、「初」を前面に出したもの。

He's never had a holiday abroad.
彼は海外で休暇を過ごしたことがない

I had never encountered such resistance before.
私はそのような抵抗に遭ったことがそれまで一度としてなかった

She had never tried to put this feeling into words.
彼女は決してこの気持ちを言葉で表そうとしたことはなかった
(以上 Oxford類語)

この3例は、否定のまま。

その文脈、前後のつながりで決まってくるので、一つ一つ丁寧に、といういつもの話しですね。

最後に、老婆心ながら二点。
一点目は、

  • 日本語で「はじめて」とあったからといって、それが全てfor the first timeで表されるわけではない

ということを説明するためによく取り上げられる例が、not/untilの文例なのだけれど、過度の一般化には気をつけましょうということ。

It was not until I came to Hokkaido that I learned the meaning of cold.
北海道に来て初めて寒さとは何かを知った(◆ 副詞句[節]の強調) (O-LEX英和)

の英文の意味を、

  • I learned the meaning of cold for the first time when I came to Hokkaido. (北海道に来て、初めて寒さの意味を知った)

と言っても間違いではないので。

生成系AIのClaude3で訊いてみたら、

両方とも文法的に正しい英文です。しかし、意味合いは若干異なります。
1. "I learned the meaning of cold for the first time when I came to Hokkaido."
• この文は、北海道に来た時に初めて「寒さ」の意味を学んだことを表しています。[1]
2. "It was not until I came to Hokkaido that I learned the meaning of cold."
• この文は、北海道に来るまでは「寒さ」の意味を学ばなかったことを強調しています。[2]
つまり、1は単に事実を述べているのに対し、2はその事実への強調があります。

と回答がありました。

また、

I did not know that he was my cousin until yesterday.
昨日になって初めて彼が私のいとこだと知った (O-LEX)

を書き換えた、

  • I came to know that he was my cousin for the first time yesterday.

という英文に関しても、Claude3は次のように回答しました。

両方の英文とも文法的に正しく、自然な表現です。
1. "I did not know that he was my cousin until yesterday."
• この文は、昨日までその人が自分のいとこだと知らなかったことを意味しています。
2. "I came to know that he was my cousin for the first time yesterday."
• この文は、昨日初めてその人が自分のいとこだと知ったことを表しています。"for the first time"が重要な語句です。
後者の文は、言い換えれば「昨日がその人が自分のいとこだと知った最初の機会だった」ということを表しています。文法的にも語法的にも問題ありません。

辞書にも類例は見つかります。

The essay appeared in print for the first time in the year 1650.
そのエッセイは 1650 年に初めて活字になって現われた(研究社英和活用大)

就職して初めてネクタイを締めた
I wore [OR put on] a tie for the first time when I started work. (O-LEX和英)

『ウィズダム英和』には次のような注記があります。

for the first timeとfirst
for the first timeはその出来事が初めてであること自体に重点があるが, firstは何度か経験したうちの最初の出来事である点を重視する言い方
I came to Hokkaido first on honeymoon in 1992, when I saw snow for the first time.
私は1992年に新婚旅行で最初に北海道に来たが, そのとき初めて雪を見た.

この機会に、自分の使っている教材を一度精査してみると良いかも知れません。

老婆心の二つ目は、比較的新しく物書堂のアプリ辞書のラインナップに入った「小学生用の和英辞典」の記述に関して。
『プログレッシブ小学和英辞典』(小学館、2022年)

という売り文句がついていたので、購入して、用例をいくつか眺めてみました。
小学生用とはいえ、いや、小学生用だから、ちょっと気になることがありました。

この辞書を “first time” で検索すると、次の用例が出てきます。

生まれて初めて飛行機に乗った。
I rode on an airplane for the first time in my life.

ユミは去年スキーを初めて経験した。
Yumi experienced skiing last year for the first time.

最初に海外に行ったのはいつですか。
When did you go abroad for the first time?

私は初めてその映画を見た。
I saw the movie for the first time.

“はじめて” で検索して、上記用例以外にヒットするのは、

スーに初めて会ったのはいつですか。
When did you first meet Sue?

今回が初めての来日ですか。
Is this your first visit to Japan?

初めてのアメリカ訪問
a first visit to America

お気付きですか?
そう「定番/鉄板」のあの表現が全く出てこないのです。

<所有格 first 名詞>も検索してみましたが、上述のもの以外でヒットしたのは次のものだけ。

明治神宮に初もうでに行った。
I made my first shrine visit of the year at Meiji Shrine.

ここでのfirstは、一年の初め、ということですね。

小学生には、完了形は難しいから、裏返しの「初体験」の表現は向かないのか?と思って検索してみると、

この果物は一度も食べたことがありません。
I have never eaten this fruit.

私は田植えを体験したことがない。
I have never experienced planting rice.

九州には一度も行ったことがない。
I have never been to Kyushu.

という用例があり、小学生相手でも、現在完了形を含む用例を載せていることがわかります。
肯定で経験を語る現在完了の基本例文も、

上野動物園に行ったことがある。
I have been to Ueno Zoo.

ここにはいつか来たことがある。
I have been here before.

私は広島に2度行ったことがあります。
I have been to Hiroshima twice.

と複数の用例があり、疑問文も、wh-まで収録。

スカイツリーに行ったことがありますか。
Have you ever been to Sky Tree?

京都には何回行きましたか。
How many times have you been to Kyoto?

小学生にtoo muchではないかと思わないでもない、

最高の試合だったね。
It was the best game ever.

の最上級の母集団設定のeverを含む用例まで入っているのです。

それなのに、なぜ、「定番/鉄板」の表現を避けたのか?

コアラは見るのも触るのもこれが初めてだ
This is the first time I've ever actually seen or touched a koala bear. (O-LEX和英)

のような現実味のある用例は小学生には難しいとしても、

  • This is the first time I’ve seen a Panda. パンダを見たのはこれが初めてです。

くらいは言えるのではないか、と思うのです。

「1800人の声」は確かに有益でしょう。でも、教材として考えた場合に、発達段階を踏まえて、何が基礎基本なのか、

  • これが言えて、それが言えるなら、その組み合わせで、あれが言えるよ。

という改善・改良の余地は多々あるな、と思った次第。

本日はこの辺で。

本日のBGM: 初恋 (tele)

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2024年4月2日追記:
for the first time の関連表現で、副詞句 in ten years など「間隔」を表すものは、日本の教材、辞書でもよく見聞きすると思います。

5年ぶりに里帰りします
I'm visiting my parent's home for the first time in five years. (ウィズダム和英)

The team won for the first time in ten games.
そのチームは10試合ぶりに勝った (O-LEX英和)

入試での出題もそれなりに。

I came back to Japan for the first time in years. 5年ぶりに日本に帰ってきた。

I wnt skiing for the first time in fifteen years. 15年ぶりにスキーに行った。

など、空所補充で in を答えさせるものが多い印象ですが、次のような変化球もあります。

10年ぶりに故郷に帰られてどうでしたか。
How did it feel to be back home in ten years?

では、"for the first time in ten years" は与えた上での整序完成作文でした。

上記用例では、全て間隔を前置詞の "in" で表していますが、ここに "for" を使う話者もいるようです。

先日,久々に心を打つ映画を見た
I saw a moving film for the first time in [OR for] a long time the other day.

同窓会で級友たちと20年ぶりに再会した
At the reunion, I met my classmates again for the first time in [(英) for] twenty years.

以上2例は『O-LEX和英』からの引用。特に後者の例では(英)というラベルでforが示されているのが気になりました。

ということで、Ngram Viewerで見てみましたが、殆ど地を這うくらいの頻度でした。
COCA系のGLOWBEでは

と少ないながらも「英文化圏」が窺える結果でした。
私自身は、この文脈、表現ではin一択で、forを使うことがなかったので、今後、気をつけたいと思います。
断定はできませんが、この「…ぶり」のバリエーションで、

We've recorded the fastest rate of increase for several years.
我々は数年間で最も速い増加率を記録した (Oxford類語)

It was the hottest summer in [OR for] five years.
5年間で最も暑い夏だった (O-LEX英和)

the severest winter in [(英) for] ten years
10年来の厳しい冬
(ジーニアス大)

これは10年の間で最大の積雪です
This is the heaviest snowfall in [for] ten years. (◆ 最上級が先行する場合は in がふつう)
(ジーニアス和英)

ここ10年で最も寒い日だった
It was the coldest day for [(米) in] ten years.
(ウィズダム和英)

のように「最上級」の母集団設定に間隔を表す副詞句が使われるときには、英系でのforの頻度が高いことが、同じ「…ぶり」の表現の "for the first time + 間隔" にも影響しているのではないかと勘ぐっています。


"for the first time"の補足にさらに補足で、 一度ならず二度、三度…、という意味を表す "for the second [third など序数] time" に期間の副詞句などが続く場合の留意点を。
ツイッターでも鐘を鳴らしてはおいたのですが、まあ、殆どスルーですので、こちらにも。

「前回との間隔」ではなくて「全体のスパン」を表していることを確認するのが重要ですね。
この項目は、noteで公開している「診断テスト」の79番とその解説で詳しく扱っています(恐らく、他で目にすることはないのでは、と思います)。

note.com

辞書ではなかなか見つけられないのが悩ましいですが、用例検索を駆使すればこのツイートで示したくらいには拾えます。

こちらでも引用。

物書堂アプリ辞書での用例検索で得られたもの

LDOCEのアプリ辞書の用例検索で得られたもの

以上、結構重要で貴重な追記でした。

判断基準

https://blog.hatena.ne.jp/-/odai/list?utm_source=edit&utm_medium=referral&utm_campaign=odai_listツイッターでも紹介していましたが、昔の入試問題にこんなものがありました。

「下線部の語にもっとも近い意味になる語を選べ」という指示で、coherentに下線が引かれていました。

Judging from the short speech he has just made, I think he is a very coherent speaker.
(1) careless
(2) clear
(3) dull
(4) passionate

これは空所補充だと何でもありになりますが、coherent を言い換えるものなので、答えは (2)の clear 一つに絞られるでしょうし、その語に置き換えた方が英語としてもより適切・的確だとは思います。でも、「じゃあ、このもともとの問題文ってどうなの?」って感じがしますね。
え?言ってることがよく分からない?

では、まずcoherentの語義・定義から見て行きましょう。

1. (of ideas, thoughts, arguments, etc.) logical and well organized; easy to understand and clear
2 .(of a person) able to talk and express yourself clearly
以上OALD

1. If something is coherent, it is well planned, so that it is clear and sensible and all its parts go well with each other. 首尾一貫した
2. If someone is coherent, they express their thoughts in a clear and calm way, so that other people can understand what they are saying. 理路整然とした
以上COBUILD米語英英和

1.[C2] If an argument, set of ideas, or a plan is coherent, it is clear and carefully considered, and each part of it connects or follows in a natural or reasonable way.
2.[C2] If someone is coherent, you can understand what they say
以上Cambridge

1. logical and well-organized: easy to understand
2. able to talk or express yourself in a clear way that can be easily understood
以上MW’s Learner’s

1. if a piece of writing, set of ideas etc is coherent, it is easy to understand because it is clear and reasonable
2. if someone is coherent, they are talking in a way that is clear and easy to understand
以上LDOCE

words, thoughts or ideas that are coherent are arranged in an order that makes them easy to understand
a piece of writing or speech that is coherent is easy to understand because it is clear and well-planned, so that all the parts fit well together
以上Longman Activator Thesaurus

ことばであらわされる「モノ」に使う場合と、その言葉遣いをする「ヒト」に使う場合があることが分かるでしょうか?

ここで気になるのが、名詞の限定で前置修飾として用いるcoherentの「モノ」と「ヒト」での結びつきの強さの違いです。
私は英語に関してはnon-native speakerですが、私の語感では、coherentがヒトを表す名詞の限定で使われるのは稀です。

Google のNgram Viewerでざっくりと。

coherent + speech は相当に強い結びつきですが、coherent + speaker は相当に弱い結びつきになります。この結果は、英米に限らずほぼ同じです。


COCA系で類語比較を見てみましょう。 NOWコーパスで、“=coherent speech” での検索。

NOWで “=coherent speaker”


COCAで生息域込みで検索。 “=coherent speech”


COCAで “=coherent speaker” で検索するも、coherentとの結びつきは確認できず。

このように見てくると、冒頭で紹介した入試問題の問題文の

  • Judging from the short speech he has just made, I think he is a very coherent speaker.

の “a very coherent speaker” という使い方に「?」となりませんか?
“coherent” という語が使えるレベルで身についているのかを問いたいのであれば、

  • Judging from the short speech he has just made, I think he is very coherent.

で必要十分だったのでは?という気がしてなりません。
日本語を介在させない、多肢選択での「客観的」な設問で問うことの問題点が現れているように思いました。

さて、ここからが本題です。
ここからがとても長いので、お急ぎの方は日を改めてお読み下さい。

先ほどから取り上げている問題文の文頭、イントロのどどいつに当たる表現を取り上げます。

  • judging from+名詞のチャンク

は「大学入試」では頻出の表現とされているのか、多くの教材で取り上げられている印象があります。

学習用の英和辞典では、

Judging from [by] A. ≒ To judge from [by] A.
A<見たこと・聞いたことなど>から判断すると
(ウィズダム英和)

Judging by [from] the look of the sky(↘↗), I'd say it's going to rain.
空模様からすると雨になりそうだ
(ジーニアス英和)

júdging [OR to júdge] from [OR by] ...
…から判断すると
Judging from her clothes, she is not so young.
着ているものからみると,彼女はそんなに若くないね
(O-LEX英和)

júdging [to júdge] from [by] …
副 文修飾語 …から判断すると, …から察すると
Judging [To judge] from [by] what you say, you are not happy with your wife.
君の言うことから判断すると, 君は奥さんとはうまくいっていないね.
(コンパスローズ英和)

と、どの辞書も、judgingに続く前置詞にはfromとbyを並記していますが、『ジーニアス』を除いてfromを先に示して、byを( )に入れています。

所謂「英英辞典」ではどうなっているかというと、

You use judging by, judging from, or to judge from to introduce the reasons why you believe or think something. 〜から判断すると
Judging by the opinion polls, he seems to be succeeding.
世論調査によると,彼は成功しているようだ.
Judging from the way he laughed as he told it, it was meant to be humorous.
彼がそれを言ったときの笑い方から判断して,ユーモアのつもりだったのだ.
(COBUILD米語英英和)

judging by something
Judging by her last email, they are having a wonderful time.
to judge from something
To judge from what he said, he was very disappointed.
(OALD)

judging by/from (ALSO to judge by/from)
[B2] used to express the reasons why you have a particular opinion:
Judging by what he said, I think it’s very unlikely that he’ll be able to support your application.
(Cambridge)

judging by/from something
used to say that you are making a guess based on what you have just seen, heard, or learned:
Judging by his jovial manner, he must have enjoyed his meal.
Judging from what you say in your letter, you don’t sound well.
(LDOCE)

MW’s の学習者用は、特に成句としては扱わずに、

Judging from this schedule, we have a busy week ahead. [= this schedule indicates that we have a busy week ahead]
Judging by its smell, I’d say the milk is spoiled. = To judge from its smell, I’d say the milk is spoiled.

のように、用例のみを示し、必要に応じてパラフレーズしています。
学習用の英英辞典では、並記してあるものばかりでした。

この表現に関してはいくつか気になるところがあるのです。
・-ingとto原形での頻度の差
・前置詞 byとfromでの頻度の差
・前置詞に続く名詞チャンクが、句と節での頻度の差

とでもなるでしょうか。

田中茂範 『データに見る現代英語表現・構文の使い方』(アルク、1990年)では、judging from のみが取り上げられていたので、「表現自体や堅い響きがある」「続く表現については、情報源となる名詞句がふつうだが、what I’ve seen, what’s written, what’s been said のような名詞節も5例見られた」程度の知見しか得られていませんでした。
前回のエントリーでも引いた、林&鷹家『詳説レクシス プラネットボード』(旺文社、2004年)では、

Q. 次の(a)(b)の表現を使いますか。
(a) Judging from the look of the sky, it’s going to rain this afternoon.
(b) Judging by the look of the sky, it’s going to rain this afternoon.

という問いを立てて、英語ネイティブの回答を分析しています。
もっとも、2000年代前半にこの問いが設定された背景には、当時の日本の学習参考書の多くが、所謂「独立分詞構文」の項目で、judging fromしか取り上げていなかったことがあるようです。

入試出題の実例をちょっと眺めてみましょう。
私が嫌いな四択から。

Judging from the sky, it is ( ) to rain soon.
1.alike 2.likely 3.seemed 4.Seeming

ここでは、<from + the + 名詞>です。

Judging from the ( ) she speaks, I'm sure she is a native of Hakata.
1. way 2. how 3. how to 4. what 5. accent

空所の直後には代名詞の主格が続いているので、錯乱肢として入れているhow to には全く効き目がない、作問センスの欠片も感じられないものですが、ここでは、<from + the way SV>の知識を問うています。

A: If you go out today, don't forget to take an umbrella with you.
B: Why? Judging from the ( ) the sky looks, I don't think it'll rain.
1. way 2. fact 3. atmosphere 4. appearance

ここでも<from + the way SV>の知識が問われています。
続いて、私が大嫌いな誤文指摘/訂正問題。

(1)Judging by the (2)incoherence of Margret’s speech, her mind (3)must be very (4)confusing.

ここでは、分詞形容詞が -ing形か -ed/en形の部分を訂正することが求められていて、今回問題にしている表現では、<by + the +名詞句>と前置詞byが適切な表現である知識が求められています。

Among the many problems (1)facing our modern civilization, the fate of the aged is certainly one of (2)those foremost in the public mind, (3)judging by the number of articles on this subject (4)on magazines and newspapers.

これも、瑣末ではありますが、(X) on magazines and newspapersの前置詞onをinに訂正すべきもので、judgingに関してはいじらない。
<by + the + 名詞句>が続くことを知っていればOK。

Judging from the way she looked, I should say she was fair rich.

これもjudgingはいじらず、形容詞richの前を副詞のfairlyに訂正すべきもの。
<from + the way SV>が続くことを知っているかどうか、です。

(a)Judging from what she (b)has achieved (c)so far, she is (d)cleverer than wise.

これもjudgingはいじらない。同一物でのより適切・的確な形容を表す場合には、比較級を持つ形容詞でも more + 原級で表し、more clever than wise (wise というよりはcleverという感じ) に訂正する。
ここでは、<from + what SV>でwhatの名詞節のチャンクが続くという知識が問われている。

実際の入試問題でも、

  • judging by と前置詞byが使われている
  • the way SVや what SV の名詞節が使われている

ということは確認できました。

ただ、

  • by the way SV
  • by what SV

の結びつきが問題文で使われたり設問で問われることは稀なようです。

読解の素材文では、某女子大で使われていたものに、judging by what SVがありました。

It is a curious truth that grasshoppers have their hearing-organs in the sides of the abdomen. Your daughter Vanessa, judging by what she's learnt this term, has no hearing-organs at all.

これは、もうご存知の方も多い、ロアルド・ダールの『マチルダ』の一節ですね。

因に、1988年の作品発表以来、修正箇所も多いことでも知られていますが、この部分は、2023年版では、

  • It is a curious truth that grasshoppers have their hearing-organs in the sides of the abdomen. Judging by what your daughter Vanessa has learnt this term, this fact alone is more interesting than anything I have taught in the classroom.

となっているとのこと。
www.telegraph.co.uk

ということで、現代英語でのjudging by/what界隈をオンラインコーパス等で検索した結果をひたすら貼りますので、生息域、使用実態に思いを馳せて見て下さい。

COCA系で<judging + 前置詞 + the + 名詞>

COCAで上位20

wayが上位にあるので、その続きに、SVが続くかなど、深堀は必要。

GLOWBE で上位20

NOW で上位20

TV で上位20

名詞節での比較。

ベンチマークとなるCOCAで the way SV。 27:16 でbyが優勢。

COCA でwhat SV。単純なヒット数は、こちらの方がthe wayよりも多い。
the wayとは異なり、by/from でほぼ同じ。

GLOWBEでthe way SV。 58:31で、byがかなり優勢。

GLOWBEでwhat SV。こちらも、単純なヒット数は、the wayよりも多い。
98:77 で若干 byが優勢に見える。

TVでthe way SV。byがかなり優勢という印象。

TVで what SV。ここでは、the way とは異なり byとfromで半々くらいの印象。

NOWで the way SV。312:85でby優勢。

NOWでwhat SV。ヒット数はthe wayの倍。 509 : 355 でややbyが優勢。

Google BooksのNgram Viewerで名詞句と名詞節で比較。

全体
judging by the way の独走で、残りはどんぐり状態。from what/by what はほぼ同じ。from the wayとby howとby the lookでほぼ同じ。

米。by the way独走は同じ。傾向としてはfromが2010年代から下降気味。

英。judging by the wayはここでも独走。by the look粘り強し。fromの下降傾向はここでも。

個人的には、

  • judging by the way SV
  • judging by what SV

の実例をもっと教材で示しておく必要があると思っています。

学習用の辞書の用例だと、

彼の口調からすると試験の出来はよくなかったらしい
Judging by the way he spoke, he didn't do well in his exam. 
彼女の話ではすべて順調にいっているようだ
Judging from [by] what she said, everything is going well.
(ウィズダム和英)

の他には、今日のエントリーで、英和の定義とともに既に引いていた、

Judging [To judge] from [by] what you say, you are not happy with your wife.
君の言うことから判断すると, 君は奥さんとはうまくいっていないね.
(コンパスローズ)

くらいしか収録されていません。しかもfromが先でbyは( )づき。

特に、whatの名詞チャンクが続くものは、what (has) happenedなど、SVではなく、Vがすぐ来るものもありますから、理解と表現の両面で、有益度はかなり高まると思われます。

What if there is no real exit from easy money for the rest of our professional lives? Judging by what's happening in Australia, that's no longer a rhetorical question, writes @Moss_Eco
https://twitter.com/opinion/status/1359397495021912065
(私たちの職業人生の残りの期間、イージー・マネーからの本当の出口がないとしたら?オーストラリアで今起こっていることから判断すると、それはもはや修辞疑問ではないと@Moss_Ecoは書いています。)

ということで、私のこのざっくりした検索よりも、もっと精緻な研究をどなたかがしていることでしょうから、その情報をお寄せいただければ幸いです。

本日はちょっと長い記事でしたがこれにて。

本日のBGM: What’s wrong with the world? (Fairground Attraction)

open.spotify.com

言う?言わない?言えない? 

所謂「春休み」の期間となり、出講先への往復の車中がなくなりましたので、ツイッターの英語ニュース紹介&詳解も激減しました。日頃は、オンラインコーパスの検索結果なども貼りまくっているのですが、反応は殆どありませんね。
もうとっくに知っていることなのか、試験の合否やスコア以外の英語ということばそのものには興味はないのか、よくわかりません。
昨年、古いつき合いのベテラン編集者とのやり取りの中で出てきたのが、「私が何を問題視しているのかということがなかなか理解されない」問題。
いや、そのベテランの方は分ってくれていると思うのですが、巷の方々がなんとも…。

今年に入ってからの、このブログの記事は努めて「英語そのもの」を取り上げているのは、そこに対する精いっぱいの抵抗です。

ということで、今日も英語の語法の話し。
「テスト」ではすっかりお馴染ではないかと思われる

「副詞句just now は現在完了形とは使われない」
「現在完了でjust now を使うのは間違い」

という「通説」です。
ツイッターの英語クイズに限らず、WEBで英語を教えている方たちのありがたい教えや、市販の英語教材の多くが上記のように説いているような印象です。

でも、例えば、次のような説明って、本当に今でもされているんですかね?

I have written it just now. [誤]
I wrote it just now. [正]
私は今しがたそれを書きました。
I have just written it. [正]
私は今それを書いたところです。
[注意] Just nowはa minute ago (今しがた)の意味であるから、やはり過去を表す副詞句であり、現在完了形と共に使うことは避けるべきである。
大塚高信 『英語百科小事典』 (垂水書房、1958年)

解説では「避けるべきである」という書き方にはなっているけれども、その前の用例提示では明らかに「正誤」の判定を下している。

justもnowもともに「現在」を表す語で、どちらも現在完了に用いることができるが、これがいっしょになってjust nowとなると、純然たる過去の一定時を示す語句になり、現在完了には用いられない。
He has just come home from school (彼はちょうど学校から帰ってきている。)
He has come home from school now. (彼はもう[いま]学校から帰ってきている。)
He came home from school just now. (彼は少し前 [たった今さっき ー 少し前に] 学校から帰ってきた。)
(木村明 『英文法精解(改訂版)』培風館、1967年)

「用いられない」と明記。

[正] He went out just now.
[誤] He has gone out just now.
彼はたった今出かけたばかりだ
(西尾孝 『実戦英単語活用辞典』 日本英語教育協会、1981年)

justに関する補足で、この正誤が示されているが、just nowそのものの但し書きは無い。

大昔の教材ならいざ知らず、いくらなんでも、20世紀末くらいでは、もう少し柔軟な扱いになっていたかと思います。例えば副詞句の位置の制約とかで但し書きがある、とか。

now (今)は現在形に、justは現在[過去]完了と過去形とともに用いられるが、just now は普通文末において過去形とともに用いる。
(○) I have just received your letter. (ちょうどあなたの手紙を受け取ったばかりです)
(×) I have received your letter just now.
綿貫陽 『英語語法の征服(改訂版)』 (旺文社、1996年)

1996年の出版なので、時代としてはインターネット普及前夜。でも、入試問題正解の執筆時に出た私の疑問に対して、綿貫氏はご自身が作っているコーパスから用例を示してくれたくらいには、当時の「現代英語」には精通していらしたと思うのですよ。それでていて、いくら「普通」と但し書きがあるとは言え、×って、ねえ?

追記: 因みに、綿貫氏が著者の一人でもある、『ロイヤル英文法(改訂新版)』(旺文社、2000年)では、p. 421 の「<just now>と現在完了」と題したコラムで、just now が現在完了と共起する例を挙げています。この4年で何かあったのでしょうか?

いや、比較的新しいものでも次のような記述だったりするんですよ。

現在完了形は、過去のある時点の出来事の「現在との関連」を示す時制。
過去形は、現在と切り離された「明らかな過去」の出来事を表す時制。
a) I have just finished reading the book. (= already)
b) I finished reading the book just now. (= a moment ago)
宇佐美修 『新・英文法ノート』(日栄社、2009年)

位置の制約など一切言及なし。

ある程度現代英語の実態を踏まえた学参だと次のように「教育的配慮」としての記述になっています。

just now (つい先ほど、ちょうど今)は過去形あるいは現在形の文で使われ、現在完了形の文での使用は避ける。ただし(米)では使われることも多い。
野村恵造 監修 『アルティメット総合英語(2nd Edition)』(啓林館、2022年)

  • いや、入試では出るでしょ?

って言う人が必ず出てくるので、実例を。

He ( ) home just now. Didn’t you know that?
① comes ② came ③ has come ④ had come

第二文に過去形の疑問文を続けることで、無理やり過去文脈へと引きずり込もう、という企みですね。

こんな出題もあるにはあります。問題文本文ではなく、錯乱肢の中にjust nowがある、というパターン。

Have you finished your homework ( )?
① still ② until ③ just now ④ yet

She has worn the same jacket ( ).
① when I met her ② for a month ③ just now ④ one year ago

どちらも、本文で現在完了形を示して、副詞(句/節)を答えさせるもの。

次の出題などは、正解として何を想定しているのか公表するべきだとさえ思います。

次の文の下線部を日本文の意味になるように訂正し,英文を完成させなさい。
I have been seen her just now.    (つい先ほど,私は彼女と会った。)

はてなブログでは下線が見えずらいのですが、どの語句に下線が引かれているかわかりますか?
そう、“have been seen” の部分ですね。明らかに「態」の誤りがあります。では「時制・相」は?

誤文指摘・誤文訂正の出題で、現在完了形と共起しない副詞(句/節)を問うとしても、just nowを問うことは近年では稀ではないかと思っています。

次の英文の下線部(a)~(d)のうち,誤りのあるものを一つ選びなさい。

Last year, a curious nonfiction book (a)has become a Times best-seller; a dense meditation on artificial intelligence (b)by the philosopher Nick Bostrom, (c)who holds an appointment (d)at Oxford.

(a)Although I am not sure about this, (b)I think that, when my brother (c)was in Europe last year, (d)he has been to England.

どちらも同じ大学の異なる年度の出題ですがlast yearが使われている文脈で、現在完了形が使えるのか、という知識を診ているようです。

誤文に注意喚起をしたい気持ちはよくわかります。
でも、英米の出版社から出ている定評ある「コモンエラー」系の書物で、just now が取り上げられることはあまりないような印象なんですけど…、

現在完了形は過去を明示する語句と共には使うことはできない
(X) I have seen a good film yesterday.
(○) I saw a good film yesterday.
(昨日、良い映画を見た)
文を述べる時点から見て過去に完了した行為を表す場合、過去形を示す単語や句(yesterday, last night, last week, last year, then, agoなど)がある場合は、現在完了形ではなく、必ず過去形を使う。
T.J. フィチキデス著、倉谷直臣訳編 『ロングマン 英語コモンミステイク500』北星堂、1989年)

ジャンルとしては同じ「コモンエラー」系で、これよりも新しいもので、「日本人学習者向け」を謳うものには、こんな記述が…、

(×) Rebecca has returned to her office just now.
(○)Rebecca returned to her office just now.
(レベッカは今しがた会社に戻ったところです)
☞「つい今しがた、たった今」を意味するjust nowは通例過去時制と共に用いられる。なお、同じ意味でjustだけが用いられる時は、次の例のように、通例現在完了形をとる。
Rebecca has just returned to her office.
木塚晴夫、ジェームス・バーダマン 『日本人学習者のための米語正誤チェック辞典』(マクミランランゲージハウス、1997年)

「通例」とあるのに、○×で正誤を示しているところが気になります。同じ木塚氏の著書『日本人が間違えやすい 英語使い分け正誤用例辞典』(ジャパンタイムズ、2002年)でも「たった今」の項目で、同様に正誤を示していますが、そこでも「通例」という書き方です。

個人的には、20年前に出た次の書籍でもうとっくに解決済みだと思っていて、なぜ未だにこの項目が根強い人気があるのか理解に苦しみます。

14 just now 「たった今」を現在完了形で用いるか?
Q. 次の (a)〜(d)の表現を使いますか。
(a) They have just now arrived.
(b) They have arrived just now.
(c ) They arrived just now.
(d) They just now arrived.

林龍次郎・鷹家秀史 『詳説 レクシスプラネットボード』(pp.42-43; 旺文社、2004年)

ここでの解説から少しだけ引用。

just nowを現在完了形の文で用いる (a)(b)の使用率は必ずしも低くない。(中略)特に(米)の使用率が高い。(英)でも(b)の使用率は60%を超える。なお、just now という表現そのものが(堅)または(旧)という指摘もある。(p.42)

通説に反し、just nowを現在完了形で用いた(a)(b)を使用すると答えた人はかなり多い。(中略)just nowについては、一般的には(c )のように過去形で文末に置く例を覚えておくのがよいが、通説「現在完了形でjust nowは使わない」を規則のように考える必要はないと思われる。(p.43)

英語ネイティブインフォーマンツによる回答結果の集計やコメントの詳細は、上記書籍をご覧下さい。

この『プラネットボード』以前の、私の理解・認識は

柏野健次 『テンスとアスペクトの語法』(開拓社、1999年)
5.1.2. 現在完了形と過去時制の比較 (pp. 160-171)

の記述におんぶに抱っこでした。先行研究や用例を整理していて、今でも、参考になると思います。

みんな大好き(主語が大きい!)『安藤講義』ではこんな記述です。

② [過去時制または現在完了形とともに] 「ついさっき」 (a moment ago)
(11)
a. “I met him just now,” said Luke. [後位] (Christie, Murder Is Easy)
(ついさっき彼と会いましたよ」とルークが言った)
b. He has just now turned 25. (最近25歳になったばかりだ) [中位] (Google)
安藤貞雄 『現代英文法講義』(開拓社、2005年)

b.の引用例がGoogleとだけあるのはちょっと気にはなりますが、ちゃんと、現在完了形と共起するjust nowの位置の制約も書いてありますので。

「実用書」の大御所として、日本の某英語学者からはボロクソに言われていたMichael Swanの語法書では次の通り。

a. in the end-position, usually with a past tense.
I telephoned Anna just now.
b. in the mid-position with the verb, with a present perfect or past tense.
I(‘ve) just now realized what I need to do.
Practical English Usage, 4th Edition (Oxford、2016年)

比較的新しい語法書であるCOBUILD English Usage (Collins, 2019年)では、興味深い指摘があります。
まず、副詞のjustでは、米語法では、現在完了形ではなく、通例(= usually) 過去形と共起、として用例を載せています(p.280)が、just nowに関しては、nowの項目に注記があり(pp. 351-352)、just nowが過去形と共起する例のみを示しています。私が興味深いと思ったのは、最後の注記。(p. 351)

! BE CAREFUL
Don’t use ‘right now’ or ‘just now’ in formal writing.

という件の書/話やフォーマル/インフォーマルに関しては、日本の辞書や文法書ではあまり指摘されてこなかったところでは?

ということで、ツイッターでも貼っていた、オンラインコーパス等での「ざっくり」とした検索結果をこちらにも。

検索の便宜上、中位のみです。

COCAで話し言葉と、TV&Movieコーパスで検索

米語法に限らない、という検索結果

これをみる限りでは、辞書の注記にも修正が必要なのではないかと感じています。

『ウィズダム英和(第4版)』(三省堂)
『ジーニアス英和(「第6版)』(大修館書店)
『O-LEX英和(第2版)』(旺文社)
『コンパスローズ英和』(研究社)
の記述から抜粋して引用。

just nowの位置の制約に関する注記は必須。米語法と限定するのは適切とは言えないのではないかと。

SKELLでの100万語辺りの出現頻度は 0.07 と出ました。

この0.07というのは、英語の魚が棲む大海原に網を投げて、100万匹の種々の魚を捕ったときに、そこにそのお目当ての魚(=語)が何匹いるか、というような目安と捉えています。

  • 少数なんだから、低頻度。そんなものを教える必要はない。

という向きもあるでしょう。

比較の対象として、つぎのようなものの数値を確認しておきましょうね。

助動詞として用いられる<used to原形>の否定でよく見られる <did not used to 原形>が、 0.07 です。

一見破格ですが、よく見る言い回しの This despite が、0.36 です。一ケタ違いますね。

私が「知っておいた方が良い」と言って、高校生には教えている because of the way が 1.0 です。2ケタ違いますよ。

受験対策では、みんな大好き(主語がデカイ!)な nothing is more important than は、0.05 です。

この最後の例だけ、比較級という形式ではなく、more importantという語彙項目にしているところは、まあ狡いといえば狡い比較なのですが、

  • 「最上級相当の意味内容を比較級で表す」際の用例

としては、このmore importantが典型例という印象です。

最近改訂版が出た、『アップグレイド英文法・語法問題(四訂版)』(数研出版、2023年)は、過去28年の大学入試問題を徹底分析し、悪しき「受験英語」を排し、「実用英語」にターゲットを当てていることを謳っています。
そこでも、<nothing is + 比較級>で取り上げられている問題では、このimportantが使われていました。

現代の実用英語という観点からも、この表現が重要なのであれば、頻度の目安から言って、just nowが現在完了形と一緒に中位で用いられるものも同等かそれ以上に重要なのでは?

  • 「過度の一般化は慎重に!」

ということは本当にうんざりするくらい言ってきましたけれど、 「ルールではないもの」を「ルール」であるかのように扱い、それをテストして、英語が分かる分からない、英語ができるできない、の品定めをするのは下品だと思っています。


今、「意識高い系」の私立高校の入試では、かつての大学入試英語の前倒しのような語彙項目、文法事項の出題が増えてきた印象です。
その問題を「過去問」として解説する、学参や問題集の記述が心配でなりません。
そして、英語が教科として、小学校に降りて、中学の入試で英語が問われ始めました。
私が何を問題視しているか、心ある英語指導者には感じて欲しいと思います。

本日はこの辺で。

本日のBGM: POISON〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜 (反町隆史)

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2024年度 個別オンライン受講生を若干名募集します

tmrowing英語研究会主宰の松井孝志です。

2023年度のオンラインでの「英語」の個別指導が終わりますので、2024年度4月以降の日程で若干名を募集します。
スケジュールのご都合がつく方はお問い合わせください。

対象は主に高校生〜大学受験生を想定しています(ただし、私の出講している高校に在籍する方は不可となります)。
2023年度は、高校生・受験生だけでなく、一般の方も受講されていました (一般の方はD講座が中心です)。
教員採用試験に向けて準備されている方で英語の総合力のアップに、と受講されていた方もいました。
現職の英語教員の方からのリクエストもあり、スケジュールが合えば対応させていただきます。

まずは、リクエストをお寄せいただき、スケジュールや、ご希望の講座内容、目標などをガイダンスで確認させていただきます。
必ずしもご希望に沿えるわけではないことはご承知おき下さいますよう、お願いします。

A. 主な指導メニュー

  • 1. 四角化ドリル+チャンクでの語彙学習
  • 2.「診断テスト」+英作文
  • 3. テクストタイプ別英文ライティング

B. オンラインでの指導の流れ
概ね以下の通り。

  • ①Google Meet Session:(前回の講評)新教材・課題配信とガイダンス90-120分
  • ②受講者が各自取り組む → 課題の指示に応じて必要があれば事前提出
  • ③Google Meet Session:Google Meetを用いた対話型の指導が90-120分。
  • ④そのフォローとしての課題のやり取り、メールでのやり取り。

ガイダンスを経て基本的に曜日と時間帯を固定して進めます。

C. 受講料
受講料は受講者とのガイダンスを経て、現在の英語力と目標に応じて指導内容・時間と併せて決定しますが、60分換算で7500円を基準とします。

D.スケジュール
現時点でオンラインで指導可能な曜日と時間は、
月曜日 16:00-18:00  (19:00以降は応相談)
水曜日 13:00-15:00 16:00-18:00   
     (19:00以降は応相談)
木曜日 13:00-15:00 16:00-18:00
     (19:00以降は応相談

となっています。※抹消線の時間帯は既に埋まっています。
受講を希望される方は、メールで
tmrowing.ELTアットマークgmail.com
まで、お問い合わせください。

メールのやり取りだけでなく、Google Meetを使った個別のガイダンスを経て、最終的に受講を決めていただければと思います。
お問い合わせの際には、氏名、高校生の場合は学年を、高校卒業以上の方は年齢を並記の上、上記Aの受講内容の希望とDのスケジュールの希望
をお知らせください。追って、ガイダンスの候補日と時間帯をお知らせします。

お問い合わせの段階から、皆様からお預かりした個人情報は、tmrowing英語研究会主催のワークショップ・セミナーの運営に関する情報管理のみにて使用させていただきますことをお約束致します。

以下、受講内容の参考に、

1. 四角化ドリル+チャンクでの語彙学習   

三省堂『チャンクで積み上げ英作文』を使っている高校生は、その教材に関する著者自らの痒いところに手が届く指導助言を行います。この教材を使用していない高校生や大学受験生は、オリジナル教材で、英語のチャンクの捉え方を踏まえた、理解&表現で使える語彙力増強と英語のセンスの向上を図ります。
noteで、公開している

note.com
note.com

を見ていただくとどのようなチャンクを扱い、拡充していくのか理解できるかと思います。


2.「診断テスト」+英作文
noteで公開しているマガジンの「診断テスト」

初級編
note.com
中級編
note.com

のうち、受講者のレベルと目標に応じて、どちらか(または両方)をメインテキストにして、更なる「英作文」の力を養い、鍛えます。

3. テクストタイプ別英文ライティング
講師・松井孝志の本領が遺憾なく発揮される講座となるでしょう。
シラバスは決まっていますが、教材・課題は受講者のレベルに応じてカスタマイズして進めて行きます。
拙著の高校編などをお読みいただければ、指導の理念や重点は理解していただけると思います。

www.taishukan.co.jp

拙著以外でも、このブログ「英語教育の明日はどっちだ!」の検索窓を利用して、英文ライティングやつながり、まとまりに関する記事を検索していただければ、松井がこれまでに実践してきた具体的な指導や評価の中身も知ることができます。


ご検討よろしくお願いします。

記録更新!

今年に入ってから、既に28本の記事を書いていました。
2023年が12本
2022年が14本
でしたから、既に過去2年分以上の記事を書いたことになります。
私に残された時間も少ないので、思いついたことをまとめられるよう過去のツイートなどをこまめに整理するようになりました。

今日のエントリーは、告知から。

直近のオンラインセミナーのお知らせ二つ。

3月30日(土) 午後 は指導者対象の「文字指導&handwriting指導法(初級)」です。

passmarket.yahoo.co.jp

新年度の実践を考えると、同僚の方との受講が吉。
文科省の英語系担当者、大学の教職担当の方、自治体の指導主事の方など、指導者を指導する立場の方の受講も大歓迎です。


3月31日(日) 午後 は指導者に限らず受講可能な、辞書活用法のセミナーです。
アプリ辞書の活用法
手持ちの辞書の持ち味を知る
など、画面共有で実際の操作もお見せする濃密な3時間です。

passmarket.yahoo.co.jp

よろしくご検討下さい。


さて、
いつものように、ツイッター英語ニュース引用RT140字紹介&詳解をしていて、こんな事例を取り上げたので、こちらで整理しておきます。

Malaysia targets a record 5 million Chinese visitors in 2024 as part of its efforts to accelerate post-pandemic recovery


Malaysia welcomes Chi­nese tourists back in droves af­ter pan­dem­ic slump | Tourism | Al Jazeera

私の解説はこちら。

#比較級含意動詞 #最上級相当のrecord a record 5 million Chinese visitors in 2024 recordが単独で形容詞として数量をイメージしやすい名詞(ここではvisitors)を修飾して「記録更新の;最高記録の(≒unprecedented)」の意を表す用法を確認。 accelerate 「加速する→促進する」は比較級含意動詞。
https://twitter.com/tmrowing/status/1771004207753200033

この書き方では、記事の内容そのものも、recordの語法自体の説明も不十分でした。
記事の内容についての補足が次のツイート。

記事本文の見出しは Malaysia sees Chinese tourist boom in the offing after pandemic slump 名詞boomとslumpも #比較級含意ファミリー! in the offing は成句で upcoming; just around the cornerと同様に「すぐそこにある;間もなく生じる」。 ここでは「良いこと」を見越していることを確認。
https://twitter.com/tmrowing/status/1771005997647340028

次のツイートでは、オンラインコーパスの結果を貼り付け、recordの語法の補足をしていました。

この形も「素晴らしき2週間」と同じパターンで整理するのが吉。 昔ながらの用法だと a record snow a record crop などの不可算扱いの名詞の前の a recordとか、 a record highに注意だったけれど、今ではa record highsを見るだけでなく、多様な数量+複数名詞を修飾していますのでその積もりで。
https://twitter.com/tmrowing/status/1771010952747688409

こちらがその検索結果。

NOW

GLOWBE

COCA

この項目は2年ほど前のツイートでも一度取り上げていました。

Statistics show a record 4.3 million referrals for those of all ages, up 15% since before the pandemic

当時の解説がこちら。

「統計によれば…」の典型Statistics show …。名詞句は「素晴らしき2週間」の変種で a record 数詞+複数形名詞「記録的な; これまでの最高記録となる」。不定冠詞で始まることに注意。referralは「専門医、専門の医療機関へと移すこと」。since before …「… 以前から」での比較・差分を確認。
https://twitter.com/tmrowing/status/1503946178580267011

私が「昔ながら」の用法と区別して「record単独」と最初のツイートで書いたのが、この現象の説明としては適切ではなく、誤解を招いたかもしれません。
これまでにもかなり広く用いられていて、辞書の用例でも多く収録されているのは、recordの形容詞的用法で、

a record harvest 「記録的収穫高 [量 ]
a record rainfall 「記録的降雨 l降水量]
reach a record high 「最高記録に達する」

などの単数扱いする名詞を修飾するものです。

先月この地域では記録的な降雪があった
There was a record (amount of) snow in this area last month. (O-LEX和英)

公園は記録的な人出だった
There was a record number of people in the park. (ウィズダム和英)

のように名詞句の修飾にも広がっていて、さらには、

Crude oil prices hit record highs of more than $70 a barrel. (OALD)

のように名詞highに同格のofで数詞付きの名詞句が続くものを経て、

The strike went on for a record 140 days.
ストライキは140日間にわたる記録破りのものだった (ランダムハウス英和)

に見られるように、highなどの名詞抜きで、直接数詞付きの名詞を修飾することがあります。ランダムハウスは原著が1980年代の編集で古いといえば古いものですが、このような例は、辞書ではなかなか見つけ難かったのでした。

最近では、

The US trade deficit ballooned to a record $167 billion.
米国の貿易赤字は1670億ドルと,記録的な額にふくれ上がった(Oxfordコロケーション辞典)

石油価格は過去最高の1バレル75ドルに達した.
① Oil prices ⌈hit [reached] a record high of $75 a barrel.
② Oil prices ⌈hit [reached] a record $75 a barrel.
(英語の数量表現辞典)

のように、金額・価格などの例では、わかりやすい用例が収録されるようになっていますが、冒頭で引いたvisitorsや過去ツイのreferralsのように「多様な名詞」を修飾する例は、辞書ではまだまだ見つけることが難しいのです。

ということで、この機会に、大学入試の素材文で出てきたものから採取した例を見ておこうと思います。
例によって、出題校名は示しませんが、例のソフトをお持ちの方はすぐ見つかるでしょう。
私はそれほど入試問題のデータには詳しくありませんが、2000年以降では、00年代の後半くらいからは、この用法が見られるようになっているのではないでしょうか?

次の例などは00年代半ばの出題で見られたもの。注意するべきは、出題年とその英文自体が書かれた年代とは必ずしも一致しないということです。

Tokyo is a showcase of how “heat island” can make its mark on a city. Tokyo had a record 67 days in 2000 that hit 30°C or higher.
東京は「ヒートアイランド」がいかに都市に影響を与えるかを示す典型的な例である。東京では2000年に30℃を超える日が67日間もあった。

以下、比較的新しい年代で出題されたものから抜粋。

A record 30,000 tickets were sold for the Women’s FA Cup5 final between Arsenal and Chelsea at Wembley in May.
5月にウェンブリーで開催された女子FAカップ5決勝、アーセナル対チェルシーのチケットは過去最高の3万枚を売り上げた。

The exact figure was a record 20,113,000 people, compared to 16,316,000 for the same period in 2015.
正確な数字は過去最高の20,113,000人(2015年同期は16,316,000人)だった。

According to the National Police Agency’s white paper, a record 26.7 million items were reported to police departments nationwide in 2015, excluding cash.
警察庁の白書によれば、2015年に全国の警察署に届け出られた物品は、現金を除いて過去最高の2670万点に上った。

Eighty years later, when the 2004 Summer Olympics returned to Athens for the first time in more than a century, nearly 11,000 athletes from a record 201 countries competed.
それから80年後、2004年夏季オリンピックが1世紀以上ぶりにアテネで開催され、過去最高の201カ国から約11,000人の選手が出場した。

The average length of a cruise in 2006 was 7.0 days. CLIA estimates that a record 12.6 million passengers will take a cruise in 2007.
2006年の平均クルーズ日数は7.0日だった。CLIAは、2007年には過去最高の1,260万人がクルーズを利用すると予測している。

In 2017 a record 37,329 second-hand flats were sold in Tokyo, a 31% increase on ten years earlier.
2017年、東京では過去最高の37,329戸の中古アパートが販売され、10年前に比べ31%増加した。

With a record 2.5 million foreign residents living in Japan in 2017, you are likely to become friends with an immigrant as a classmate, co-worker, or neighbor in the future.
2017年には日本に住む外国人が過去最高の250万人に達し、将来、同級生、同僚、隣人として移民と友達になる可能性が高い。

バリエーションも少々。

According to statistics from the Iwate Prefectural Government, the number of foreign tourists visiting the prefecture has been steadily rising since the 2011 earthquake, and reached a record-breaking 163,230 people in 2016, up 41,739 from the previous year.
岩手県庁の統計によると、県内を訪れる外国人観光客数は2011年の震災以降、着実に増加しており、2016年は前年比41,739人増の163,230人と過去最高を記録した。

※こちらの <a record-breaking 数詞 +複数形名詞>の方が古くから見られる印象です。

NOW

COHA

The number of non-Japanese children at public schools who are lacking in Japanese language skills and who need remedial lessons hit a record 34,335 as of May last year, the latest survey by the education ministry showed Tuesday.
日本語能力が不十分で補習が必要な公立学校の外国人児童生徒の数が、昨年5月時点で過去最高の34,335人に達したことが、火曜日、文部科学省の最新の調査で明らかになった。

※先行文脈で numberとchildrenで「人数」だと分っているので、言わなくていいものは言わずに済ますもの。

この<a record + 数詞 + 複数形名詞>は、数量表現で、増減或いは不変化を示す文章であれば、比較に関する他の表現形式と一緒に使われる可能性があるので、特殊で例外的な表現形式だと思わず、知っておいた方がよい表現形式だと思っています。

例えば、次のような文脈。

Asians have surpassed Hispanics as the largest wave of new immigrants to the United States, pushing the population of Asian descent to a record 18.2 million and helping to make Asians the fastest-growing racial group in the country, according to a new study by the Pew Research Center.
ピュー・リサーチ・センターの新しい調査によると、アジア系はヒスパニック系を抜いて米国への最大の新規移民の波となり、アジア系人口を過去最高の1820万人に押し上げ、米国で最も急成長している人種グループとなった。

「素晴らしき2週間 (a beautiful two weeks)」のパターンに関しては、過去のツイートでも、何回も取り上げています。

The U.S. is heading for “a tough few weeks to months” as the omicron variant of coronavirus rapidly spreads, Dr. Anthony Fauci said.

#素晴らしき2週間 a tough few weeks to months 「厳しい数週間から数ヶ月」 <不定冠詞+形容詞+数詞+複数形名詞>はお馴染み。その複数形名詞に「幅」のある例。 #asの前景後景 前景はis heading for の進行形で「見込み&推移」に焦点。後景のas節は比較級含意のspreadの現在形で「急増」。
https://twitter.com/tmrowing/status/1472720146615910405

動画内キャプションより。 "While some fires happen naturally, humans still play a huge part. Researchers show that humans are responsible for an estimated three quarters of all wildfires." 一般に「責任の所在」で用いられる be responsible for が「占める割合」で用いられる背景も得心。
https://twitter.com/tmrowing/status/1311051446301921280

An estimated 230,000 people have been displaced by fighting in Myanmar and need assistance, the UN said


#受け身の動作主を表すbyに続く動名詞に見える無冠詞の名詞 displaceは通例受け身で「本来の住処を追われる;移住を余儀なくされる」という被害を表す。ここでのby は「手段」ではなく、受け身の動作主の名詞句を導くもので、fightingは「闘うこと」ではなく、無冠詞で不可算扱いの「戦闘;交戦」。
https://twitter.com/tmrowing/status/1408498306158796802
an estimated 230,000 people の、一見破格に見える<不定冠詞と形容詞と数詞+名詞>の「素晴らしい二週間」パターンはもうお馴染みですね。
https://twitter.com/tmrowing/status/1408498306158796802

この「素晴らしき2週間」の項目に関しては、名古屋大学大学院の大名力先生のスレッドが参考になると思いますので是非、スレッドの最後までお読み下さい。(因に、この大名先生の連ツイは2017年のものなんですよ)


本日はこの辺で。

本日のBGM: レコードの日 (クレイジーケンバンド)

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『偶然と必然の間』

今日のエントリーも、「気になる語法」シリーズに入れておいて下さい。
英語ニュースで時折見聞きする表現形式というか言語「事実」だとは思うのですが、英語ニュースの解説本を書いてくれるような有識者も全くと言っていいほど触れてくれない項目という印象を持ち続けてきました。

先日、久しぶりにこの表現を取り上げたので、この機会に少し実例をまとめて眺めておきたいと思います。

Ukraine Says Destroyed Russian Military Boat In Black Sea


www.ndtv.com
報道文体の S + says + 動詞 (またはwii/wouldなど助動詞) はソーシャルメディアでも見られます。 It is said that SV S reportedly V と同じ感覚なのかとも思ったのですが、実際には、 S says ready [willing] to 原形 S says seem to 原形 があるので、動詞の時制の原理原則がよくわからない。
https://twitter.com/tmrowing/status/1764948929823879403

上述の見出しの表現は、
Ukraineが主語、Saysが伝達動詞で、本来は名詞節などが続くはず。ところがそこに、他動詞の過去形であるDestroyedが来て、目的語に相当するRussian Military Boatが続いている、という「環境」になっているのです。報道文体でよく言われる、be動詞の省略では説明できない言語「事実」でした。

これまでにも、この類いの伝達動詞saysに続く、文法的には「破格」に見える言語事実は、ツイッターの「英語ニュース引用RT140字紹介&詳解」でいくつか取り上げていました。

EU says willing to give AstraZeneca more time for vaccine deliveries


https://www.reuters.com/world/europe/new-eu-legal-case-against-astrazeneca-over-vaccine-supplies-gets-underway-2021-05-11/
#メディア系文体での名詞節でのSV省略 本来はA says that it is willing to 原形でしょうが、A says willing to 原形と端折るのは、ニュースだけでなくソーシャルメディアでも見られるようになってきた印象。readyが多いかとは思いますが、willingやhappy でも見られて、seemがくることもあります。
https://twitter.com/tmrowing/status/1393848672496939010

No red lines in responding to Israeli aggression: Hamas
Hamas' military wing says ready to sacrifice everything to protect holy city, Al-Aqsa


No red lines in responding to Israeli aggression: Hamas
別記事別媒体でのreadyの例。 sayの伝達文の用法として辞書で取り上げているものはあるのかな?
https://twitter.com/tmrowing/status/1393848672496939010

Coronavirus in Uttarakhand: CM of Uttarakhand says – ready to face the third wave of Corona


別記事別媒体で、伝聞で現在形のsaysに続いて、ダッシュで表記されたreadyの例。
https://twitter.com/tmrowing/status/1394026454409564161

Nigeria's Okonjo-Iweala says 'ready to go' on day 1 as WTO boss


別記事別媒体で、引用符での表記例。
https://twitter.com/tmrowing/status/1394026454409564161

この「引用符」が、解決の糸口になりそうな気はしています。

https://www.reuters.com/world/middle-east/un-chief-says-israel-gaza-fighting-utterly-appalling-2021-05-16/
Reutersから別記事最新版。 記事本文の見出しはこう。
U.S. says ready to help Israel, Palestinians if they seek a ceasefire

Colonial Pipeline says experiencing network issues


https://www.reuters.com/technology/colonial-pipeline-says-experiencing-network-issues-2021-05-28/
#見出しの伝達文でのSVの省略 ロイター! 記事本文のリードはこういう英語。
Colonial Pipeline, the nation's largest fuel pipeline, on Friday said it was experiencing network issues, just weeks after a ransomware attack crippled fuel delivery for several days in the United States.
https://twitter.com/tmrowing/status/1394026454409564161

In Tokyo, Biden says would be willing to use force to defend Taiwan


https://www.reuters.com/world/biden-meets-japanese-emperor-start-visit-launch-regional-economic-plan-2022-05-23/
メディア文体で頻出の伝達文中で主節の主語と共通するS(V)の省略。本来は <Biden says that he would be willing to 原形>とでもなるべきところ。 バリエーションとしては says ready [willing/happy] to 原形 や says seem to 原形 もあり。 一般人の投稿にも見られるので最早止められない?
https://twitter.com/tmrowing/status/1528660964509290496

French minister says will not pay for Twitter's blue checkmark


https://www.reuters.com/technology/french-minister-says-will-not-pay-twitters-blue-checkmark-2022-11-06/
メディア文体で頻出の伝達文中で主節の主語と共通するS(V)の省略。 ここではsays will not pay for のsays とwillの主語が同じと言うこと。 ロイターでよく見る気がするのは気のせい?
バリエーションは
would
seem to
ready to
happy to
willing to
など「これから」に言及する心的態度が多い印象。
https://twitter.com/tmrowing/status/1589334610860965890

Austria does not plan on repeating a controversial summer campaign in which festivalgoers were offered one year's free public transport passes for a tattoo, officials said Friday.


#報道文体での伝達動詞に続く主語の省略 写真のキャプションに注目。 Austria says it won’t repeat ,,, となるべきところで、同じ主語を言わないで助動詞のwon’t が伝達動詞のsaysに続いて Austria says won’t repeat … となっているのを確認。 報道の見出しではタイポではなく時に見られるもの。
https://twitter.com/tmrowing/status/1717953768023798054

次のような、接触節での連鎖での見た目の “says will” などとは異なるので念の為。

Is self-checkout checking out? Target is limiting self-checkout to 10 items or less — a move the company says will improve efficiency and customer experience. This comes as other retailers are phasing out self-checkout altogether.

The Jamaica Labour Party is calling for Leader of the Opposition Mark Golding to retract statements he made on Sunday which the party says seem to encourage the casting of ballots in the name of deceased voters.


その後採取した例も示しておきましょう。

Hero Alom says unwilling to continue case against Rizvi


https://www.newagebd.net/article/208847/hero-alom-says-unwilling-to-continue-case-against-rizvi

ここでは、伝達動詞で三単現のsaysに否定の意味を持つunwillingが続いています。少し長くなりますが、記事を引用。

Social media content creator Ashraful Hossen, popularly known as Hero Alom, on Monday filed a case with Dhaka Metropolitan Magistrate Court against the main opposition Bangladesh Nationalist Party senior joint secretary general Ruhul Kabir Rizvi for making ‘defamatory’ remarks about him.
Alom, however, later told the court that he had forgiven the BNP leader and did not want to continue with the case.
Alom told New Age, ‘I informed the court that I am not willing to continue the case. I asked the court to pardon the BNP leader.’

最後の文で引用されている本人の発言は、 “I am not willing” ですが、その内容が要約されて、記事の見出しのunwillingになっていることがわかります。

Swedish PM says ready to fortify crucial Baltic island


Sweden ready to fortify crucial Baltic island, says PM

Brazilian mining giant says willing to participate in China's decarbonization and green transformation, which has made substantial headway over the five decades


Interview: China's high-quality development contributes to global energy transition-- Brazilian mining giant-Xinhua

Minister says happy to help Sunak wife’s company in UK - a new VIP lane? Sunday Mirror


Tuesday's national newspaper front pages | UK News | Sky News

Fed says unlikely to cut rates without 'greater confidence' inflation nearing goal

Eversendai says unable to give value breakdown on RM5.4b projects due to NDAs


Eversendai says unable to give value breakdown on RM5.4b projects due to NDAs | EdgeProp.my

このようなsaysに不定詞を取る形容詞群が続くものは、主語が同じで、be動詞とともに省略された、という見方をすることが可能でしょうが、では、なぜそれが可能なのか?その理由(基準/環境/条件?)がよく分かりません。

次のような例は、どう説明できるでしょうか?

Macron says would take 'decades' for Ukraine to join EU


www.youtube.com

先ほどの最後の例と同じく、フランスの公共放送の英語記事です。そして、この見出しの表現は、動画でも同じです。
そもそもbe動詞を使っていませんので、名詞節中の主語だけが省略されている理由は、他の基準に求める必要があるでしょう。ニュースで日記文体?

この表現も、つぎのような「連鎖」で生じる、見た目の “says would” とは異なるのでご注意を。

French lawmakers have adopted amendments that Macron’s government, which has spent years pitching France as business-friendly, says would send the wrong signal to investors

今回私が争点としているのは、こちらの構造(環境/現象/言語事実)です。

Dominican Republic’s president says will never accept setting up refugee camps, when asked about Haiti situation

こちらでは、 “says will never 原形”となっています。

今日のエントリーの冒頭で示したような、that節中にいきなり時制を持った一般動詞が来る例は稀だという印象です。

Smaller companies in Germany cope well with #energy price fluctuations - survey Increasing share of companies only spend small fraction of sales on energy, and large majority says managed to reduce consumption


Smaller companies in Germany cope well with energy price fluctuations - survey | Clean Energy Wire

ここでは、 “says managed to原形” と一般動詞のmanageの過去形が続いています。

時折目にする次の例などが、このsays に時制を持った一般動詞が続くことを説明するヒントとなるかもしれません。

What does it mean when it says failed to authenticate your connection?
www.thewindowsclub.com

ここでは「エラーメッセージ」をsaysが引用しています。
もともとのエラーメッセージで、主語が省略されているので、saysに、時制を持ったfailedが直接続いた形となっています。

ここまでに見てきた「報道文」のsaysも、発言者を主語として、その発言内容を引用や要約をしてsaysに続けている、とは言えるでしょう。

ただ、ここでのsaysそのものの意味は希薄で、「発言者ですよ」「情報源ですよ」くらいの扱いという印象。

副詞で言えば、

The mine reportedly had an accident rate triple the national average.
伝えられるところによると,その鉱山は全国平均の3倍の事故率があった.(COBUILD米語英英和)

His van allegedly struck the two as they were crossing a street.
男が運転するトラックが横断中の2人をはねた模様です.(COBUILD米語英英和)

などで用いられる真偽の断言を控える文修飾で、コメントを挟む

  • reportedly
  • allegedly

などと働きとしては似ているように感じます。

しかしながら、一連の <says + 伝達内容>で、伝達内容中の主語(とbe動詞)が省略されることの理由(根拠/基準)はよく分かりません。

使用例によっては、be動詞も時制を持つ場合には省略されず使われているものがあります。

He says has been in a battle with Landsec, who own the building, since February, demanding clarification on the building's EWS1 certificate and any planned works to satisfy the requirements.
www.walesonline.co.uk

ここでは、“has been” という現在完了形の時制(相)にこそ、伝達すべき意味内容があるので、省略はできないと考えられます。
では、なぜ、主語だけ省略されるのか?

私にとっては依然として謎です。

※2024年3月20日追記:
因みに、twitterでの “says ready to 原形” の初出は、2007年の4月11日、私の印象を裏付けるかのように、「ロイター」の投稿でした。

NOWコーパスで “says ready to 原形“ が目立つようになったのは、それよりもかなり後で、2016年以降、という印象です。

先行研究などご存知の方がいらっしゃいましたら、こっそりと情報をお寄せ下さい。

上述のallegedlyに関しては、COLLINSの語法注記に興味深い指摘がありましたので引用しておきます。英語を使う人の心情が少し慮れるかもしれません。

Usage
In recent years it has become common for speakers to include allegedly in statements that are controversial or possibly even defamatory. The implication is that, by saying allegedly, the speaker is distancing himself or herself from the controversy and even protecting himself or herself from possible prosecution. However, the effect created may be deliberate. The use of allegedly can be a signal that, although the statement may seem outrageous, it is in fact true: He was drunk at work. Allegedly. Conversely, it is also possible to use allegedly as an expression of ironic scepticism: He’s a hard worker. Allegedly.

次のような環境では、saysに続くthat節中に、仮定法過去完了の条件節相当の<had S 過去分詞>が来ているので、<says had>の見た目が、<says +一般動詞過去形のhad>なのか、<says +助動詞の過去形のhad>なのかが分かりにくいだけで、今回、争点としている言語事実は全く異なりますので、老婆心ながら示しておきます。

The 28-year-old says had a complete stranger not come to her rescue, she dreads to think what could have happened.
www.manchestereveningnews.co.uk

COCA系で分かることもまだ限られていますが、実例を少し補足しておきます。

says ready

says unlikely

says will はノイズを排除するのが大変なので、分かりやすい少数の例で。

says wouldで2度目のslow query警告が出ました!

本日はこの辺で。

本日のBGM: Hard to say (小坂 忠)

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