楽しい食事

最近、会社の人が近所の中華料理屋で晩飯を食べたところ、不味い段取り悪いのダブルパンチで散々な目に遭ったと聞いて思い出した話。


昔住んでいた家の近所に、なかなかのハイスコアを叩き出す不味い中華料理屋があり、初めて入った時にはあまりの不味さに自分の味覚を疑った。
今ではマイアミの豪邸に住んでいる僕もその当時八畳ぐらいのワンルームマンションに後輩が居候していて、後輩も近所に不味い中華料理屋があると言い出したので自分の味覚が海原雄山ばりの正確さだということを証明出来たのを思い出した。


何度か怖い物見たさにそこの中華を食べたが、やっぱり怖い目に遭い、その都度お金をドブに捨てた。


そして何年か経ち、数年に一度掛かるかどうかの風邪により菌が胃にまで到達し、何も食べられなくなり、食べても胃の痛みが酷くなるループになり、3、4日ウィダーインゼリーとポカリスウェットと時々カロリーメイトのフルーツ味で生き延びた。
胃痛も治まり食欲が出てきたので、このタイミングなら何を食べてもそこそこ美味くなるのではないかと思い、問題の中華料理屋に向かい、普段からどこの中華料理屋でも必ず注文するチャーハンと餃子を注文した。正確には病気が良くなった記念であんかけチャーハンを注文した。


数分待って出来上がったあんかけチャーハンと餃子を見て小躍りしたが、その希望もすぐにゴミ以下に変わってしまう。
餃子は相変わらずブヨブヨで不味い、あんかけチャーハンに至っては何か半透明な何かと不味いチャーハンでしかなかった。
病気が大分良くなり、やっと口にしたご飯らしいご飯が死ぬほど不味い。一応そこそこの年齢の男子としては普段なかなか泣く事がないが、確か前に涙したのは戦争が終わってホッとした時に涙を流した記憶があるぐらいだが、その時は本当に目頭が熱くなった。


本当にお腹が減った時には何を食べても美味いの理論が破綻した。どんな時でも不味いものは不味い。


その後、彼女と歩くたびに、店の看板の
「日本一美味しい餃子をどうぞ」
を悪意を込めて
「日本一不味い餃子をどうぞ」
と読んでいたが、彼女は人間が出来ていたので、そういう事は言うなと言われた。
さすがにカチンとは来なかったが、上の事件も含め、今度奢るので一緒に食べに行こうと連れて行ったが、その時付き合ってた彼女はご飯を残さないのが良いところだが、ちょっと食べてから
「ご飯残してもいいかな」
と申し訳なさそうに耳打ちし、体調不良以外で初めてご飯を残した事はいつまでも忘れられない。
また、普段からおとなしい彼女が本当に黙ってしまい、帰りの道のりが暗くなってしまった。


その後何年かして彼女には振られてしまったが、これもあの中華料理屋が原因ではないかと考えている。