レビュー:『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』〜少女たちは傷つきながら、夢を見る〜
本日公開のドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』を観てきました。
すごく良い映画だったので今日はブログにもレビューを書いてみたいと思います。
※ネタバレ注意です
1作目
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前作では2010年のチーム組み替えを軸として、彼女達が人生をどのようにこの世界へと捧げていくのか、その道しるべとなるものを見出す過程が描かれていました。「どうしようもなく若い女の子」な彼女達が自らをより高みへと売り出す為、あるいは売れていくAKB48の為に何をすべきなのか。
あるいは、自分の人気の伸び悩みをどう受け入れ、どう努力するべきなのか。AKB48における自分の価値・立ち位置は何なのか。
あるいは、4年近くも慣れ親しんだ劇場で一緒に頑張ってきたチームメンバーと離ればなれになり新たなスタートを切らなければならないときに、リーダーとしてメンバーとして、どうチームを盛り上げていけばいいのか。
デビューから数年が経ち大きくなりつつある自分達の名前の前で、”葛藤する年”であったのだろうと思う。
それから一年、今作の舞台は2011年。
あれからさらに名前も規模も大きくなり、まさに「日本一のアイドルグループ」として進化してきたAKB48にとって、2011年はまさに”成長する年”だったのでしょう。
僕がこの作品を観ながらふと思い浮かんだのが、「プロ意識」と「プロ根性」という二つのキーワードです。
そんな二つの間に挟まれながらも止まることなく突き進むAKB48の怒涛の2011年を丁寧に描いた映画、というのが第一印象です。人生を捧げたこの世界にいることはどういうことなのか、それを分かった上で振り落とされずに努力する覚悟があるのか。そう問いかけるような一年だったのでしょう。
彼女達はその人生の全てを捧げるつもりでこの世界に飛び込んできました。前作のような葛藤こそあれ、それなりの覚悟を持ってここまで頑張ってきたのは言うまでもありません。それははたからは見えないかもしれませんが、前作を観て確信しました。
そんな「プロ意識」を持った「どうしようもなく女の子」な彼女達ですが、AKB48の名前は彼女達の想像を遙かに超えたところまで大きくなってしまっていました。海外ツアーなんかをやり、空港で出待ちをする大量のファン・屈強なボディーガード、そんなものを目の当たりにした彼女達自身がとても驚いたようでした。
しかしそれだけAKB48の看板は重く彼女達にのしかかってくる。どんどんと突き進むAKB48の一員として、そんな重圧に耐えながらも必死にしがみついていかなければならない。「プロ根性」でそれこそ死ぬ覚悟で一生懸命努力しなければならない。
名前がどんどん売れていくなかで、彼女達にはその意味が完全に把握出来ていなかったようです。
そんな怠慢が表に出てしまったのが、埼玉スーパーアリーナでのライブ初日でした。
今までに見たこともないような大きなステージに戸惑い、セットリストに若干の心細さも感じながら、それでも何となくでステージに立ってしまった彼女達。舞台裏はグダグダ、曲の出だしに登場が間に合わない人まで出てくる始末。
秋元先生をして「おそらくAKB48史上最低の出来だった」と言わしめるほどのライブをしてしまって初めて、彼女達はAKB48という看板の重さ、それを支えていかなければならない自分達の責任を感じ取りました。
ところで、そんなAKB48の看板を誰よりも早くから、そして誰よりも重く受け止めていたメンバーがいます。それが前田敦子でした。
総選挙で一位から二位へと転落し、ネット上での色々な誹謗中傷もあり、すごく辛い思いをした一年だったでしょう。それでも彼女はAKB48を支える大黒柱として、グループの象徴的存在としての自覚を持って頑張ってきました。個人としてではなく、グループを売る為に何をすべきなのか。色々思い悩んだでしょう。
2011年の総選挙で彼女は一位の座を取り戻したわけですが、その時のコメントはニュース等でも取り上げられ話題となっていました。当時の僕は大してAKB48を注視しているような人間ではなかったので、彼女が言わんとしていることがよく分かりませんでしたが、この映画を観ていると、その内に秘めた叫びが痛いほど伝わってきます。
”ほんとうに嬉しいです。この一年間はいろんなコトを考えていました。沢山の方に応援していただいて、支えてもらったことを感謝しています。私のことが嫌いな方もいると思います。私のことが嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください。”
彼女がAKB48という「日本一のアイドルグループ」の看板を受け止め、一番に頑張ってきたなによりの証拠たるコメントだと思います。僕よりも年下の女の子がここまで過酷な世界でこんなにも苦悩してきたのを観ているとグッとくるものがあります。すごいことです。
件の埼玉でのライブ初日を終え、前田敦子以外のメンバー達にもAKB48というグループの存在の大きさがリアルに感じられるようになってきました。そこで彼女達を引っ張っていくのはやはり、グループのリーダー、高橋みなみでした。
すぐさまメンバーを呼び集め自分達の責任の重さを説くとともに、ライブ2日目にすべてをかけることを皆で誓います。
実際の2日目のライブ舞台裏を第三者として観るならばまさに、「怒濤」でした。実際、前田・大島含めメンバーがどんどんと倒れていきます。
それでも力を振り絞ってステージに踏み込んでいく姿は尊敬を通り越して、もはや観ているのも辛い感がありますが、それがAKB48たる覚悟だったのかもしれません。まさに「死ぬ覚悟」です。
そんな中でも印象に残ったのが、結局立てなくなってしまいストップをかけられ1曲出て行けなかった前田が、それでも静止を振り切ってアンコールの「フライングゲット」が始まる直前に出て行くというシーン。
ステージに上がってもふらふらとしていて、まともにMCも出来ずに立っているのがやっとといった感じの彼女が、照明が落とされてからイントロが始まるまでの間であっという間に「プロの顔」になってセンターポジションに立っているんです。曲が始まったらもう普通の前田です。本当は立っているのもやっとなのにあれだけのダンスをこなす彼女こそ、「プロの意識」そして「プロの覚悟」を身につけたアイドルのお手本なのかもしれません。
〜少女たちは傷つきながら、夢を見る〜
肉体的にも精神的にも傷つき、それでも努力してきた彼女達の2011年、それをしめくくるのは2011年大晦日でした。
この日、「フライングゲット」がレコード大賞に選ばれましたが、これはもう取るべくして取ったといって間違いないでしょう。この一年の努力が認められた結果として。
しかしAKB48はとどまることをしらないかのように先へ進み続けます。その後もすぐNHKで紅白歌合戦があります。今の彼女達はAKB48のメンバーである限り立ち止まっている暇はないのかもしれません。
Show must go on.
それでもレコード大賞を受賞し、NHKで出番の前に円陣を組む彼女たちの顔には、明らかに以前とは違う「何か」が現れていました。それぞれが自分なりに頑張ってきたしるしのような覚悟があることでしょう。
とてもカッコ良かった。
僕はAKB48についてあまり詳しくないのですが、ファンの人達がこの映画をどう観るのか少し気になります。
それにここでは語ってない見所もまだまだいっぱいあります。ここでの話はあくまでもドキュメンタリーの軸のひとつに過ぎません。おすすめの映画です。皆さんも是非観に行きましょう(;´Д`)