Hatena::ブログ(Diary)

東京から飛んで学校図書館を考える

2017-12-05

何を読んだらいいのか,何を薦めるか

 いやあ,今朝,ビル・ゲイツのブログのエントリの多くが,彼が読んだ本の紹介だっていうことにやっと気づきましたよ。今日のエントリは,これなのだけれど,同じ内容を肉声で話して素敵なムービーにしてyoutubeにもあげてるのね〜。いいわ〜いいわ〜。こういうメディア自由に飛びまわるかんじ,いいです。しかし,彼もいかにもシニアって感じになってきちゃってますねえ,昔からこの人そうなのかな,この現実と過去をしっかり見つめている感じ。もちろん,アメリカ人らしい,ビジョンのもち方もしているけど。イーロン・マスクが毎日,自身が想像する未来について語っているのと比較すると,かなり姿勢が違う(いちおう,イーロン・マスクに影響を与えた本を整理したウェブページも示しておきますわ)。本を紹介するという行為も,現代の若者からしたら,シニアの行為って感じじゃなのかなあ。紹介している本も,ベトナム(戦争)関連が複数含まれていたりして,世代が透けて見えるしなあ。日本のシニアが今,学生運動のころについての本を書いたり読んだりしてるのと同じ感じですかね。
 だけど,ビルゲイツがこうやって,じょうずに本を紹介しているのを見て,何冊か読もうかなと私は思ったから,やっぱりこういうのってじょうずな人がやると意味がありますね。何を読んだらいいのかわからない人って,自分はなったことがなかったけど(読みたい本が多すぎる),英語の本の世界となると,アメリカの本屋さんや図書館に日常的に出入りできるわけでもないし,どこに手をつけていいやらという感じがするから。(でも,これって,ライブラリアンのプロフェッションとしてのバランス感覚ある本の推薦,とは違うよね。)

 実は,今年度いっぱいで特任教授の上田修一先生がご退職で,来年度春,司書課程は新しい先生をお迎えして,またもや変化の一年になりますのです。それに関連して現時点で私にとって重大なのが,来年度の担当授業のシラバス書きなのですね。2014年に上田先生がいらっしゃったときに担当を離れた「図書館情報資源概論」を改めてもつことになり,最近ずっと,常になんとなく,そのことを考えています。あと,新規に担当することになる「図書館サービス概論」。新規であるこっちの方がほんとうは問題なのかもしれないが,なぜか「図書館情報資源概論」の方が大きく気になるんだよなあ...
 というのは,2013年ころの情報メディアコミュニケーションの状況と来年,2018年の情報メディアコミュニケーションの状況とが違いすぎる。そんなの知らないだろう若者には声を大にして改めて言うが,ほんとうに違う!何を薦めたらいいのか,そもそもこれからの図書館ライブラリアンは本を選び,集め,評価し,薦めるべきなのか?

 話は変わるが,先日やっと,Hidden Figures(英語のHP)を観たのですね。ちなみにこの映画,ドリーム(日本語のHP)という邦題ですけど,それ,非常にmisleadingですからヤメテイタダキタイ。Hidden Figuresというのは,二重の意味があって,というか,アメリカの映画のタイトルはほぼすべて,二つの意味をもたせてあると思います。と,ここまで偉そうに書いたが,わたくし,Hidden Figuresについて言えば,その二つの意味のひとつ(obviousな方)しかさいしょわからなかった。人に教えてもらったのです,ハハハ(笑)。私が最初に理解したのは,隠れていた人たち,ってことですよね。figuresは人物って意味。もうひとつは,figuresには「数字」って意味があったのだねえ!そうでしたそうでした。数字がこの映画でどういう意味かを知りたい方は,ぜひとも映画を観てくだされ。
 いやあ,もしかしたら私にとって人生の一作かもしれん,というくらいの映画でした。フォレストガンプもめちゃくちゃ好きですので,やっぱりこの時代のアメリカを描いた映画が私は好きなんだなあ。Hidden Figuresもはじまって数分から,映画の最中ずっとグスグスと。最初は,主人公のアフロアメリカンの女性たちが1960年代南部アメリカで経験している境遇のきびしさに泣いて,後半に向かうにつれ,主人公たちの強さと白人たちに少しずつわかってもらえていくプロセスが続いて泣ける。ううう...今もまた泣けそう(笑)。今年,Academy Awardsの作品賞受賞作で見たのは,今のとこLa La LandとMoonlightとHidden Figuresだけなのだが,三作かなり色合いが違って,ハリウッドの力がしみじみわかるような。La La Landは,やっぱりミュージカルの映画っていうのがすごいし,ライアン・ゴズリングの力を思い知らされる。Moonlightは,自分の偏見に気づかされた。マイノリティマイノリティという存在がそれこそ,hidden figuresだった,私にとっては。で,長くなったのだけれど,とにかくHidden Figuresが感動だったので,もう原作を読むしかないと思って,久しぶりに英語の一般書を買ったわけですね。
 いやあ,もう,ほんと,やっぱり英語で一般書も読まないとだめだね,って改めて。英語はやっぱり時間かかるし,専門書だって読むべきものが読みきれていない状況だから,一般書,特に小説はまったく読んでいなかった。でも,英語の会話力って,一般書,小説を読まないと伸びないですね,ゼッタイ。
 ちなみに,英語の原作を読もうと思ったのは,これの前は,The Big Short(英語の予告編)邦題マネー・ショート 華麗なる大逆転(日本語HP)だったのだが,こりゃもう金融の専門用語がわからなすぎてどうにもならなかった。英語の一般書について言えば,私の生涯で,数千冊読むということはないだろうなあ。やっぱり読むものを選ばないといけない。ムズカシイ

2017-11-30

連続公開シンポジウム「司書教諭資格付与科目の教育実践を検討する」全5回記録公開

 みなさま、とうとう、記録集にまとめることができました!立教大学学術リポジトリRootsからも見ていただくことができます(こちら)。豪華執筆陣ですぞ!!
 巻頭言に書いた以下が、私の今の思いです。

 周知のとおり、司書教諭資格付与については、学校図書館法および学校図書館司書教諭講習規程に定められておりますが、これらは日本が独立を回復した直後、1953 年と1954年に制定されたものです。それぞれ 1997 年および 1998 年に改正されたものが、現在の司書教諭資格付与課程について定めています。学校図書館法はその後、2014 年に再び改正され、「学校図書館の専門的職務を掌らせるため」の司書教諭の他に、「学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員」であるところの学校司書が定められることとなりました。その後、調査研究協力者会議の検討を経て、2016 年 11 月に文部科学省は「学校司書のモデルカリキュラム」を公開して、大学に対して、学校司書の養成への協力を求める通知を行ないました。日本の学校図書館には二職種が置かれ、養成が期待されるところとなっています。このモデルカリキュラムは、従来は教員免許状取得を前提にしていた司書教諭資格のための科目を、教員免許状取得を目指していない学生にも履修可能とすることとなっています。各大学が、「学校司書のモデルカリキュラム」を開講する場合には、教育の根本、前提が大きく変わることになります。
 
 司書教諭の資格付与の教育の検討がこれまで十分に行なわれてきたとは思われません。学校図書館について長年、モデルのように参照されてきたアメリカ合衆国では、養成教育の質の管理がさまざまな形で行なわれている一方で、日本では、資格付与科目の開設、変更、廃止にあたって文部科学省に対する届出の義務があるのみで、そのほかに“質”を点検する機会は設けられていません。本シンポジウムを企画し実施しはじめた頃には、「学校司書のモデルカリキュラム」は想定外でしたが、結果として、戦後の、「学校司書のモデルカリキュラム」との併置が検討される以前の、司書教諭資格付与課程の教育の実態の一面をここに記録することができました。
 
 最後になりましたが、シンポジウムの企画、実施を学外から熱心に支援してくださった足立正治先生に感謝申しあげます。また、貴重なお休みの週末に参加してくださった方たち、熱心に議論に参加してくださった方たちにも、御礼申しあげます。ありがとうございました。

2017-11-15

図書館・文書館の国際動向 2017

 もう来週に迫っていますが,以下,公開で実施します。
 2017年の夏に開催された図書館文書館に関する国際会議,研修会に参加した3名が,その場の議論や実践現場の国際動向を報告します。質疑応答の時間も長めに取りたいと考えていますので,ふるってご参加ください。事前申込不要,無料です。
  日時: 2017年11月24日(金) 18時20分から20時20分
  場所: 立教大学池袋キャンパス11号館2階 A203教室

  キャンパスマップはこちら。11号館はこの地図の右下に見えます。

【報告内容・報告者】
 第83回国際図書館連盟年次大会
 International Federation of Library Associations and Institutions World Library and Information Congress
  ポーランドヴロツワフにて,2017年8月19日から25日に開催 
  報告者:中村百合子(立教大学教授)

 第81回米国アーキビスト協会年次大会
 81st Annual Meeting of the Society of American Archivists
  オレゴン州ポートランドにて,2017年7月23日から29日に開催
  報告者:古賀崇(天理大学教授)

 台湾図書館研修2017
  台北高雄にて,2017年9月13日から16日に開催
  報告者:原修(立教大学図書館利用支援課課長)

2017-10-11

ヴァーチャル・リアリティと図書館

 今朝,通勤時に,スマホを見ていたら,フェイスブックCEOのザッカーバーグがプエルトリコの件で謝ったという記事が流れてきていた。フェイスブックは,ヴァーチャル・リアリティ(VR)にずいぶん投資しているそうなんですよね。でも,こういう記事に出ているように,現時点ではVRの装置の売れ行きはよろしくない。まあ,それでかね,ザッカーバーグは必死なのかなって思います。もちろん,フェイスブックがすべてVR化されたら,おもしろいだろうけれど,そこにいきなり行くって状況じゃないのかね。で,フェイスブックはデモでプエルトリコのハリケーン・マリアの被害を体験できるものを作って公開し,VRは「共感」を広めるとザッカーバーグが言った。だけど,そのデモの最後にザッカーバーグと同社のレイチェルっていう役員アバターが交わす会話が以下。

“Do you want to teleport somewhere else?” Zuckerberg’s VR avatar asked as he wrapped up his conversation about Puerto Rico. “Yeah maybe back to California?” another executive answered.

つまり…プエルトリコについての会話をまとめるにあたって,ザッカーバーグアバターが「どこか他のところにテレポートする?」と聞く。「そうね。カリフォルニアに戻りましょうか?」と役員が応える,と。ずいぶん気楽にプエルトリコの大変なところに行ってたもんですね,と誰でも感じるのでは?
 「これどうよ。倫理観ゼロ」とある人にこの記事のリンクを送って意見交換していたら,相手方から,「<カタルーニャ>独立宣言は保留 中央政府との対話を模索へ」という新聞記事へのリンクが送られてきた。で,私が言ったのが,「バルセロナ独立運動ににぎやかしでVRで参加したらおもしろいかもね」(注:ジョアンとは昨年,バルセロナから本学に来ていた彼であります。彼から,先月末に,300年のスペインによる支配を終わらせる云々というメールが来ていた)って,これぞまさに倫理観ゼロ発言。要するに,VRみたいな新しいコミュニケーションテクノロジーが私たちに要求しているのは,ほんとうに倫理観であり,倫理教育なんだと思ったわけです。共感をVRが育てるか,よく研究したり,議論したりする必要がありそうです。

 先週の木曜日にハーッシュ先生が来日され,翌日には学内で講演会を開催,おとといの月曜日には学生たちと"Conversation with Dr. Hirsh"という自由な会話の場をもちました。来週の19日には,学内講演会とほぼ同内容を予定している公開講演会を開催(詳しくはこちら),20日には学内で学生たちと"Conversation with Dr. Hirsh"その2をいたします。で,先日の講演会の中で,VRの話も出てきたのですね。軍の訓練では導入されて久しい,とかね。これも倫理観に関わってきますよね。軍の訓練で,実際に戦場にいるかのような臨場感をもって,銃を撃つ練習をしているとかっていうことですので。でも,VRは,私は,避けられない,テクノロジー発展の方向かなと思ってます。この夏,IFLAの会議でも,VRと図書館の関係についての発表を聞きました。その内容については,11月24(金)夕刻に本学で公開でまたイベントをする際,少し私から報告しようと思っています。

2017-09-26

サンドラ・ハーッシュ先生

 このたび、立教大学司書課程では、サンノゼ州立大学情報学研究科長のサンドラ・ハーッシュ(Sandra Hirsh)先生を本学の招聘研究員としてお招きすることができました。10月の三週間、日本に滞在されます。
 彼女は、『Information Services Today』という本を書いて、世界的にも著名になった方ですが、図書館勤務経験に加えて、10年ほどシリコンバレーで働いた、そのうえで図書館情報学教育の世界に入られた方で、アメリカ図書館情報学研究者・教育者たちの間でもちょっと目立つ経歴の方だと思います。企業勤務経験者は日本の図書館情報学みたいに少なくは、アメリカはないですが。
 学内で学生向けに3度、イベントを開催しますが、学外でも、本学司書課程の前・特任教授の永田治樹先生が所長を務めておられる未来の図書館研究所で、10月19日(木曜日)の午後に公開講演会を開催する運びとなりました。今朝、私の手元にスライド案が届いたのですが、すごく魅力的です。日本でこういう話をできる図書館情報学者はいないのじゃないかなって思います。し、これがこれからの図書館の方向性だろうなと思います。公開講演会は事前申込み制なので、こちらから申し込んでくださいませ。ちなみにこの研究所の、こちらから読めます「動向レポート」はおもしろいです。
 サンドラは、今、お話を聞くべき、世界の図書館情報学者の筆頭の人物だと思ってます。正直、彼女の考えているようなことを聞くと、日本の学校司書だなんだの話って、ほんと近未来のメディア環境を無視しているのではという気がしてならないですわ。