Hatena::ブログ(Diary)

東京から飛んで学校図書館を考える

2017-02-19

上海での調査

 上海弾丸ツアーで調査に行ってきました。 The Western International School of Shanghai(WISS)というインターナショナル・スクールのヘッド・ライブラリアンの方へのインタビュー調査でした。彼女はスコットランドの出身で、post-graduateのライブラリアン資格(学部卒業後に取得できる資格です)を持って仕事をしていらっしゃるということで、彼女のキャリア・ディベロップメントについて聞いてきました。彼女はなんと今、同校の執行部メンバーでもあるのです。IB(インターナショナルバカロレア)制度に基づいた学校で、どうやら世界的にも関心が寄せられているらしく、先日も日本に呼ばれたと仰っていました。
 学校図書館はガラスを多用していて、入口から入ってすぐが小さな子どもたち向けで、この写真の右奥の、後から増築したスペースが、今回お会いしたヘッド・ライブラリアンの方が担当する、中等教育向けになっていました。
f:id:to-yurikon:20170214124234j:image:w360:right見通しがよく、管理しやすいということでした。 
 彼女のキャリア・ディベロップメントについては、5月に発行する立教大学司書課程紀要SPLに報告を書きますので、ここでは、彼女が仕事の時間をどのように使っているかという話について、報告します。ちなみにスタッフは、入ってすぐの小学校までの子どもたちのための図書館ライブラリアンとヘッド・ライブラリアンである彼女に加えて、3名のフルタイムのアシスタントがいます。資料はなんと、(教科書を除くと)3万冊くらいしかないそうで、特に中等教育は、インターネットデータベースがもっとも重要な情報源になっているとのこと。リサーチの課題も、まずはインターネットに向かう、ということです。いっぽうで伝統的な本のコレクションの多くは、入手にさまざまな困難があることも影響しているのだと理解しましたが、基本的に読書推進のためのもの、という位置づけだそうです(もちろん、それらの本がリサーチに使えないなんて言うつもりはありませんが)。生徒の国籍が多様なので、読書推進の資料も複数言語で、日本語の資料もありました。各言語を母語とする保護者たちや、教員たちが手伝ってくれて、コレクション形成をしているそうです。小学校までの子どもたちはクラスで定期的に図書館に来るけれど、中等教育はflexible schedulingつまり、必要に応じて図書館に来るということです。
 ヘッド・ライブラリアンの彼女の仕事は、レファレンス対応とティーム・ティーチングがひとつのカテゴリのような話しぶりで一番大きいそうで、そのほかに資料選定・発注およびコレクション形成、管理職としての業務(学校の管理職として、また図書館の管理職として)、そして近年力を入れているのが、教員向けのワークショップの企画・実施ということでした。教員たちに図書館の使い方、いかに使えるかを知ってもらうためのワークショップを年に3〜4回は実施しているそうで、それの効果もあって、ライブラリアンとのティーム・ティーチング以外でも頻繁に教員たちが学校図書館を使うようになっている、ということでした。資料の整理・受入業務配架という業務は、話しぶりから、アシスタント・ライブラリアンたちの仕事と理解しました。
 おもしろかったのが、インフォメーション・リテラシーインストラクション(情報リテラシー教育と訳した方がわかりやすい?)という言葉はそれほど意識していない、という彼女の発言。いろいろ言葉を変えて問いかけて確かめたのですが、いわゆるプロセス・モデルは小学校までに学んでいると思うので、中等教育レベルでは、状況に応じて教えている、ということでした。だから、上記のように、レファレンス対応とティーム・ティーチングがひとつのものとして彼女には見えているのだと思いました。私は、やっぱりそうかあという思いでいっぱいでした。私は、「学習指導と学校図書館」の授業ではプロセス・モデルをいかに教えるか、ということを学生たちと考える作業をもう十何年もしてきているのですが、ここ数年、WISSの彼女の考え方と同じようなことを考えるようになっていました。インフォメーション・リテラシーインストラクションの近年の実践の動向を、遠くない将来、アメリカで調査したいと思っています。インフォメーション・リテラシーインストラクションの実践を大量に見たのは、私はハワイ留学中ですから、つまり、正直に言って、20年近く前なのです。あとは主として文献、そして国際会議での実践報告からフォローしてきたので、なにか違和感を感じる今日このごろです。集中して、山ほど、実践が見たいなあと最近、すごく思います。サ、サバティカルぅぅぅぅ…
 
 さて、調査後は、上海で最近ちょっと有名らしい書店、衡山坊(Hengshanfang)の書店(こちらに紹介あり)と上海図書館公共図書館)に行ってきました。前者はアート系の書店。大きくは無いのですが、アート系の世界的なトレンド把握にはもってこいという感じでした。こういう書店はある意味、日本っぽいような、、、f:id:to-yurikon:20170214135833j:image:w360:left
 上海図書館は、基本的に住民向けということでありまして、入口のゲートで利用者カードを通す必要があり、中には入れません。けっこう多くの人の出入りがありました。まあ、都立中央図書館と同じようなイメージかな。ちなみに、上のリンク先の上海図書館HPの一番上を見ていただきますと、中国語・英語・日本語・ロシア語・繁体中国語のページがあって、かつ、无障碍辅助工具条という操作ができるらしいことがわかります。无障碍辅助工具条って、なんらかの障害でうまくHPが見られない人は、ソフトウェアで見え方を変えられるようでした。

 そういえば、ヘッド・ライブラリアンの彼女は、上海インターナショナル・スクールのライブラリアンたちとの研究交流グループを立ち上げた人物で、このグループで毎月、執筆家を呼んだ研究会等々を実施しているそうで。その話を聞いて、日本からも学校図書館関係者が毎月行って交流してっていうのもありかなーと一瞬夢想したのですが、学校を出て、上海の道路に立った瞬間に、空気がなあ〜となってしまった。汚染、けっこうすごかったと思います。

2017-02-01

立教大学司書課程の科目等履修生制度

 先日、白百合女子大学で、司書課程・司書教諭課程の今井福司先生が実施してくださった、Joan Portell Rifà先生の公開講演会、大変内容が充実しておりまして、現在、youtube版、文字起こし版の作成中です。どうぞお楽しみに〜。Portell先生は、立教大学客員研究員として3ヶ月間、日本に滞在して日本の児童文学や読書推進活動に関する調査をされ、1月下旬、帰国されました。彼の調査を受け入れてくださった図書館や児童書出版社のみなさま、お忙しい中、ほんとうにありがとうございました。

 さて、今日はもうひとつ、まったく別の報告もしたいと思います。2018年度から、立教大学司書課程(図書館司書コースおよび学校図書館司書教諭コース)では、立教大学卒業生以外の方も、科目等履修生として受け入れることになりました。これは、立教大学司書課程の受講生に多様性をもたらすものと確信しています。ただし、学校図書館司書教諭コースは、教員免許状をすでにもっておられる方が対象になります。詳細は、資料をお取り寄せください(こちらに選考試験要綱等配布についての説明があります)。立教大学司書課程はすばらしい兼任講師の先生方にご出講いただいていますので、教育内容には満足していただくことができるだろうと思っています。
 多様性という意味では、これから、司書資格、司書教諭資格の付与課程のあり方も、大学によって、だいぶ多様性が出てくるのではないかなと思います。これまでも多様であったのかもしれませんが、なかなか見えなかっただけかもしれません。立教大学司書課程では、来年度は課程独自のウェブページの立ち上げをしたいと考えています。今、大学では、ディプロマ・ポリシーの制定が求められています(文科省によるガイドラインこちら)。司書課程もこれを明らかにしていくべきなのだろうと思っています。来年度はこれに取り組もうと思っています。

2016-12-13

バルセロナからの客員研究員

 2012年度にバルセロナに調査に行きました。バルセロナ自治大学の教育学・文学系の学部バルセロナ大学の図書館情報学部が合同で提供している、学校図書館と読書推進の修士号プログラムについての調査、というのがメインの目的でした。国立青少年教育振興機構資金を出していただいて実現し、『子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」【外国調査ワーキンググループ】報告書』の第5章に調査結果を報告しました(口頭での報告もしました)。(この旅のことは以前も書いてます(こちら)。)
 そのときに出会った方たちのご紹介で、この10月末から2017年1月末までの3ヶ月、客員研究員として、絵本作家、編集者、児童文学の評論家のJoan Portell Rifà(ジョアン・ポルテル・リフ)博士を、本学にお迎えしています。(ちなみに、Joanがお名前で、苗字にあたるのがPortell Rifàになります。Portellというのは父方の(父の)姓、Rifàが母方の(父の)姓だそうです。)
 この彼も含めて、けっこう大きなグループで、10月末に、いっしょに気仙沼に行きました。Ristexこのプロジェクトに参加したりしました。そして、先日は、板橋区保育園で、読み聞かせをしました(板橋区からのプレスリリースこちら)。そのほかさまざまごいっしょしていて、楽しいのですが、彼と私は英語ですべてをやりとりしているので、どうしてもコミュニケーションに限界がある感じなのです。そこで、彼の母語カタロニア語での講演会を、白百合女子大学の今井福司先生にご相談して、企画しました。すでに今井先生のブログでは告知しています。
 2017年1月23日(月) 18:00〜19:40@白百合女子大学です。演題は、「スペイン児童文学児童に対する図書館サービス」で、彼の研究テーマを正面からお話いただきます。こちらのサイトからお申込みができます。白百合女子大学関係者以外は、事前のお申込みが必要ですので、お願いいたします。
 彼のブログはこちら国際子ども図書館いたばしボローニャ子ども絵本館の訪問記ももう掲載されています。といっても、カタロニア語ですが。カタロニア語は、google翻訳だと、日本語にすると大混乱ですが、英語にするとけっこうすっきり読めちゃうようになります。
 ちなみに、ジョアンの本は、日本の図書館にほとんど無かったのですが、今回、本学の図書館に、日本で購入可能な限り受け入れていますので、ご関心のある方はどうぞ本学図書館にいらしてください。amazon.com(アメリカのアマゾン)で検索すると、さすがにけっこう出てきますけれど。
 あ、そうでした。大事なことを書き忘れるところでした。カタロニア語が、来年(2018)のボローニャ国際児童図書展の特集というのか"honor guest"に選ばれたそうです。国ではなくて言語が選ばれたのははじめてだそうですよ。来年以降、カタロニア語児童文学への関心が世界的に高まるかもしれませんねーー

2016-11-10

シンポジウム最終回+アメリカ大統領選挙

 前回のブログエントリで書きましたが、連続公開シンポジウムが来週11月20日(日)午後で最終回になります。大阪教育大学天王寺キャンパスにて。実践共有は、家城清美先生(同志社大学非常勤講師)、足立正治先生(元・甲南高等学校教諭;元・大阪樟蔭女子大学非常勤講師)、中村(立教大学)より。最後に、コメンテータとして、全5回に参加してくださった山本敬子さん(小林聖心女子学院司書教諭)に、お話いただきます。17時終了ですが、天王寺にて懇親会を予定しておりますので、参加していただける方は、ぜひ中村までご連絡ください♪

 さて、昨日のアメリカ大統領選挙...朝から学生たちと図書館総合展に行っていた私は、お昼ご飯時にネットニュースを見て、いやもうびっくりというか、呆然というか。オハイオ州が決まった時点で、「終った...」という連絡がスマホに来て、その後、フロリダがダメで、さすがの諦めの悪い私も、こりゃだめだと。夜は、ヤケになって、サイボクハムで高い豚肉買って帰って、常夜鍋ワインガブガブといたしましたとさ。
 昨晩からずっと、なぜ負けたのかを考えていました。住んでいる日本の政治の動向だって理解できない私が、アメリカの政治の謎解きができるわけもないのですがね。
 でも、今朝になって、Hillary氏の敗北宣言(concession speech)を見て、いや、ほんとこれがアメリカだわ、そうだとしか思えないし、思いたくない、と。日本語だとこれがいい記事だと思いますが、ぜひともスピーチの英語原文(例えばココ)を見ていただきたい。ただ、昨日「終った...」と連絡してきた御方にスピーチの話をしたら、「なぜこういった演説が最初からできなかったのか、、、」とな。確かにナア。Hillary氏ってスピーチするときいっつも余裕がなくて、感動したことなかった。でも、今回はわたしは泣いちゃったよ(笑)。まるで、キャンペーン中のスピーチ・ライターと違うライターを雇ったんじゃないかと思うほどイイ。以下の部分が一番いいかな。(ちなみに、このスピーチの前に、Hillary氏を紹介したのが、副大統領候補だった、Tim Kaineだったから、"as Tim said"。)

   I have, as Tim said, I have spent my entire life fighting for what I believe in.
   I’ve had successes and setbacks and sometimes painful ones. Many of you are at the beginning of your professional, public, and political careers — you will have successes and setbacks too.
   This loss hurts, but please never stop believing that fighting for what’s right is worth it.
   It is, it is worth it.
   And so we need — we need you to keep up these fights now and for the rest of your lives. And to all the women, and especially the young women, who put their faith in this campaign and in me: I want you to know that nothing has made me prouder than to be your champion.

 このスピーチの間ずっと、左にダンナさんのBill、右にTimがいるのよね。で、二人とも、特にBillがさ、ずっと泣きそうなの。これがねえ。。私は、案外いい夫婦じゃないのと、映像の最初からずっと、チラチラ見てしまった。本気で、応援してたんだな、って私は感じました。やっぱり、女性の社会進出は、パートナーがどれだけencouragingな人かにだいぶ依存しているのだと思うよ(生育期に見た親の後姿やかけられた言葉、職場の環境も大きいだろうが)。Hillary氏がダンナさんの閣議にいつも臨席していたとか、さまざまな要職を務めたことについて、批判はあると思う。私も近くにいたら、心底キライ、公私混同だ、と批判したのじゃないかと思う(笑)。でもねーーー、こうなって見ると、そういう状況でなければ、アメリカにおいてすら、女性が大統領の最後の2人の候補にまではなれなかったのかな、って気もします。
 Hillary氏が、いつも余裕がなく見えていたのも、常にfightしている気もちだったんだろうな、と今になって思う。今回の大統領選挙の最後、女性だからということでHillary氏が負けたということなのかどうか、それもわからないことではあるが、彼女の人生がfightし続けてきたものであったことはわかった(笑)。そして、ダンナさんのBillはそんな彼女を、誰よりも尊敬しているのだなということもこのビデオには明らかかなと。あっ、ビデオはyoutubeにいっぱい上がってるかと思いますが、私はこれを見ました。冒頭の40分くらいは会場風景だけで何も起きないのですが〜
 はあ、とにかくこのスピーチは歴史に残るわ。少なくとも私の記憶に残る。
 学生たちと話していると、親にこう言われた、おじいちゃんにこう言われた、というのをよく聞く。「無理って言われた」「今の時代は…って言われた」というようなものがほとんど。なんで若者をdiscourageするのかな、と思う。年をとっていけばとっていくほど、後輩たちをencourageするのが、男女関係なく年長者の責務になっていくのですよ。前向きなアドバイスならともかく、discouroageするなよ!!話がずれますが、ここ数ヶ月、アメリカの学校図書館研究者のおばあさまとメール交換をしていて、頼みごとをしている。彼女は常に、私をencourageするために、返事をくれるのですよ。あなたを応援するために、私にできることならなんでもする、と言ってくれる。師弟関係も何もない。ただ、1度会っただけの関係。いや、ほんとうに、これこそが、年長者が後輩に対してするべきことだと、私は改めて学びましたよ。年を取れば取るほど、自分のために活動しちゃだめです。他者のために活動すべし。(自らへの戒めとして記しておきます。)
 Hillary氏のこのスピーチの後半は、後輩の女性たちに向けてのもの。FacebookのSandberg氏のベストセラーLEAN INも、タイトルの意味するところは、前のめりになってという感じだよね。そうやって、アメリカの女性たちは、今ある女性の社会での活躍をリードしてきたのだと思う。そんな彼女たちが、fightとか、lean inとかって表現するような気もちでがんばってきたことに対して、賞賛と感謝の気もちをもつことができない人(特に女性)がいるだろうか。当然、Hillary氏のすべてを知っているわけではまったくないし、自分がすごく好きなタイプの人間に私の目に見えているかというと正直違う。でも、このスピーチはほんとうにすばらしいと思うよ。(スピーチ・ライターがいるにしても)彼女は、本気で言ってると思うなあ。
 数年のうちに研究休暇を取らせてもらってアメリカに行きたいと思っているわたくしですが、さて、どうなることやら。でも、繰り返すけど、このスピーチはすばらしい(笑)。
 あっ、そうでした。昨夜のトランプ氏の勝利宣言のスピーチの後ろにいる二人の顔見て!この二人の顔を見て、Hillary氏の後ろの二人の顔と比べるだけで、スピーチの重みが違うと思うわぁ。

2016-09-12

連続公開シンポ「司書教諭資格付与科目の教育実践を検討する」ファイナル

 いよいよ、最終段階にきました。以下のとおり、2度、大阪教育大学天王寺キャンパスにて開催いたします。

2016年9月24日(土曜日)13:15-15:50
「情報メディアの活用」の教育実践@天王寺キャンパス西館第9講義室
パネラーは、今井福司先生、中島幸子先生、森田英嗣先生です。

この日、懇親会を梅田で予定しております。ご参加いただける方は、なるべく事前に、holisticslinfoあっとgmail.comに一言、ご連絡くださいませ。
 
 そして、最終回は以下のとおり。

2016年11月20日(日曜日)13:15-17:00
「学習指導と学校図書館」の教育実践@天王寺キャンパス中央館416教室
パネラーは、足立正治先生、家城清美先生、中村です。
この日は、いつもの進行の後、公開シンポジウム複数回参加者1〜2名にこれからお願いして、問題提起もしていただきたいと思っています。