ぶろぐ・とふん

扉野良人(とびらのらびと)のブログ

「百年のわたくし」 巻二 Poetry Reading Event in TOKUSHOJI

 Poetry Reading Event in TOKUSHOJI
「百年のわたくし」
  モノとカタリの地平から




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日時:20171123日(木/祝日)

   15:00~17:00

  (開場:14:00/開演:15:00/終演:17:00)



会場:徳正寺 - 本堂  


〒600-8051 京都市下京区徳正寺町39,富小路通四条下る西側




定員:70



入場料: 1,500



申し込み窓口:メリーゴーランド京都

     TEL/FAX 075-352-5408
     Mail:mgr-kyoto@globe.ocn.ne.jp
        〒600-8018
        京都府京都市下京区
        河原町通四条下ル市之町251-2
        寿ビルディング5F
     営業時間: 11:00〜19:00
     定休日:木曜日


     *参加人数とご連絡先(メールアドレス、電話番号)をお伝えください。



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出演者(敬称略):



荒木みどり(あらきみどり)
1952年、長崎市生まれ。73年より京都在住。78年、ヨシダミノルとともに「恋心の本業」を実践(現在に至る)。1979-90年、京都アンデパンダン展に毎年出展。同展に特記されるパフォーマンスに「きりこときこりの生涯」(80-83年)、「爆発的凝縮のカプセル」(86年)、「叙情は暴力」(87年)がある。1981年-現在、GOOD ART展に出展。同展にソロインスタレーション「時空喰散」(12年)、「9×9×9」(12年)など。1982年、ヨシダミノル、吉田省念とともに美術館で生活(美術劇場@兵庫県立美術館)。2000年より、ヨシダミノル、吉田省念吉田朝麻と現代家族カルテットを結成。2001年から「現代家族」に継承。


cello: 吉田省念(よしだしょうねん)
1980年、京都市生まれ。13歳、エレキギターに出会い自ら音楽に興味をもち 現在に至る迄、様々な形態で活動を続ける。2008年、「songs」をリリース。同年、吉田省念と三日月スープ を結成。09年、アルバム「Relax」(吉田省念と三日月スープ)。11 - 13年くるりに在籍。14年から地元京都の拾得にてマンスリーライブ「黄金の館」 を主催。 16年、ソロアルバム「黄金の館」、17年、「桃源郷」をリリース。




季村敏夫(きむらとしお)
1948年、京都市生まれ。詩集『膝で歩く』(書肆山田)、『神戸のモダニズム?』(ゆまに書房、編著)、『生者と死者のほとりー阪神大震災・記憶のための試み』(人文書院)ほか。




ぱくきょんみ
1956年東京生まれ。詩集『何処何様如何草紙』(書肆山田)、エッセイ集『いつも鳥が飛んでいる』(五柳書院)、絵本『れろれろくん』(小学館)、共著『女たちの在日』(新幹社)。ふだんは韓国の伝統音楽、ポジャギなど民族芸術に心ときめかせている。



藤原安紀子(ふじわらあきこ)
1974年京都府生まれ。2002年、現代詩手帖賞受賞。詩集に『音づれる聲』(書肆山田・歴程新鋭賞)、『フォ ト ン』(思潮社)、『ア ナザ ミミクリan other mimicry』(書肆山田・現代詩花椿賞)。詩誌『カナリス』同人。



山崎佳代子(やまさきかよこ)
ベオグラード在住。今夏より半年、37年ぶりの日本に長期滞在。詩集に『みをはやみ』(書肆山田)他、エッセイに『ベオグラード日誌』(書肆山田)他、翻訳書に『若き日の哀しみ』(東京創元社文庫)他など。



扉野良人(とびらのらびと)
1971年、京都生まれ。僧侶。りいぶる・とふんを主宰。書物雑誌『sumus』『四月と十月』同人。著書に『ボマルツォのどんぐり』(晶文社)、『Love is 永田助太郎と戦争と音楽』(季村敏夫との共著)ほか。


かりきりん
京都のバンド〈薄花葉っぱ(はっかはっぱ )〉の下村よう子(ボーカル、鍵盤)と宮田あずみ(ウッドベース、ボーカル、)によって2007年誕生したデュオ。1948年創刊の児童誌『きりん』に投稿された詩を音楽に乗せて歌う。


下村よう子(しもむらようこ)
大阪府島本町生まれ。〈薄花葉っぱ〉のボーカル、〈かりきりん〉や5人の女性の独特なハーモニーを主調とするオルタナティブバンド〈Colloid(コロイド)〉に参加、2010年に下田逸郎とニューヨークで共演するなど京都を拠点に広やかに活動。下田逸郎プロデュースによるソロアルバム『だんだんワンダフル』(2015年)、薄花葉っぱでは『薄花ドロップ』(オフノート、2004年)、『朝ぼらけ』(2009年)、『唄の実』(オフノート、2014年)などがある。


宮田あずみ(みやたあずみ)
大分市生まれ。〈薄花葉っぱ〉のベーシスト(WB)、ボーカルを経て、〈かりきりん〉、2011年、「むうとん : うたとギター / あずみ : うたとベース / やすよ : うたとドラム 」によるスリーピースガールズバンド〈数えきれない〉を結成。「ファンタジックで、サイケデリックで、オルタナティブ。さらにマスロック」な1stアルバム『数えきれない』をリリース(2015年)。また下村よう子、にしもとひろこ、イガキアキコ、池田安友子と共に〈Colloid(コロイド)〉で活躍。



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「百年のわたくし」について:

モノとカタリの地平


 徳正寺に古い陣太鼓が一張伝わっています。黒塗の胴部に雲と龍の文様が刻まれ、皮を張る鉄鋲も力強く、一目見て陰影に富んだ太鼓です。片側が破れて和紙で修繕されてはいるものの、破れのない皮面を手で叩くと低い音が響きます。
 わたしは子供のころ、寺に生まれた母から、蔵の中に豊臣秀吉朝鮮侵略のときに持っていった陣太鼓があると聞かされていました。しかし母は、そう語りながら、侵略に使われた陣太鼓なんて「とんでもない」と言って振り向こうともしませんでした。わたしも太鼓自体、本当にあるのかどうか、子供心に気になることはあっても、蔵の中は立ち入ってはならない場所のように感じていたものです。
 今年(二〇一七年)に入り、わたしはある出来事がきっかけになって、おおよそ五百五十年ある寺の歴史を調べ始めました。由緒や古い地誌にあたったりしています。
 『拾遺都名所図会』(天明七〈一七八七〉年)に徳正寺の紹介があり、宝物として「秀吉公朝鮮発向乃軍鼓あり」と、例の陣太鼓が出てきます。近世の名所案内記の類には、必ずと言ってこの陣太鼓が、寺の珍宝として取りあげられているのです。かつて境内には太鼓堂があって、そこに吊られて刻を告げていたのかもしれません。
 寺の幾種類かある由緒書のひとつには、「太閤秀吉公ヨリ朝鮮軍【いくさ】ノ土産ニ陣太鼓 皮羊/クワリン ドウ(「花梨 胴」のことか-引用者)」という記述を見つけることができます。陣太鼓は朝鮮から持ち帰られたのでしょうか。「土産」ではなく「略奪」だったとも考えられます。羊皮が使われているというのも大陸由来のように考えられます。
 いずれにあっても、この軍鼓、陣太鼓は十六世紀末の半島の地を転々としたのだろうと、その案内から思うのです。

 秀吉の朝鮮出向の事実を、日本では文禄・慶長の役と呼び、朝鮮では壬辰(・丁酉)倭乱と呼びならわしています。それぞれ言う立場から、その性格を朝鮮侵略朝鮮出兵、朝鮮征伐などと称してきました。戦後民主主義のなかに育った母が、朝鮮侵略の陣太鼓の存在を「とんでもない」とする見方も、立場のひとつです。わたしも長い間、母と同じく寺に伝わる「負の遺産」だと思っていました。

 三年前、シロアリが蔵の柱から梁にかけて蟻道を作り、寺宝が虫害の危険に晒されたことから、おおよそ八十年間、家人からほとんど放置されていた蔵の封印を解きました。寺史を調べ出したきっかけはシロアリでした。
 古い太鼓は蔵の奥深くに眠っていました。
 陣太鼓はそうして現れたのです。これを手に取ったとき、モノ自体は何も語らないのに、われわれは自分の立場からそれがどうあるべきか、何も見ないまま語り、それがどのように語られるべきかばかりを気にしすぎて来たのではないでしょうか。
 陣太鼓をドンと手で鳴らしたとき、語るのは太鼓のほうでした。モノがあって、カタリが生まれる、そんなことを暗い蔵の中に立って思ったのです。
 「昔たとえば『今昔物語』の頃はモノとカタリがひとつであった」と語ったのは多田道太郎さんです。小田原の海岸の網置き小屋に起居して小説を書いた川崎長太郎について書かれた文で、さらに「一九二〇年代、モノとカタリとはずれ行く地層のように分離しだした」と続きます。
 陣太鼓の音を聞いたとき、この音はモノとカタリの蜜月時代から届いた音ではないかと思った。我々はもちろん、今尚、モノとカタリがずれて行くなかに生きています。

 日頃から親しむ親鸞の「浄土和讃」に、

  解脱の光輪きはもなし
  光触かふるものはみな
  有無をはなるとのべたまふ
  平等覚に帰命せよ

 という一首があります。この三句目、「有無をはなるとのべたまふ」の、「有無を離れる」場所が、じつのところ、われわれにとってモノとカタリの接点なのではないでしょうか。
 軍鼓を手で打ったときの、暗い蔵の中に響いた音が、あたりの文物に働きかけて、いっせいにわたしをモノとカタリの世界に連れ出したのは確かです。モノがウタいだしたとでもいいましょうか。

 モノとカタリの触れあうオトが、暗い歴史の闇から聞こえてくるようでした。




扉野良人


プログラム:



・オープニング14:55


  声明



・詩の朗読15:05


  ぱくきょんみ
  季村敏夫
  山崎佳代子
  藤原安紀子
 
 (各自10分程度)



・対談15:55


  ぱくきょんみ
  山崎佳代子

 (20分程度)



・詩と音楽15:55


  かりきりん + 扉野良人
  荒木みどり + 吉田省念

 (各組10分程度)



・エンディング16:55



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物販:
出演者の著書、作品、CDなどを販売いたします。
リーフレット『百年のわたくし』vol.2(りいぶる・とふん) をあわせて刊行します。


協力:徳正寺 書肆山田 メリーゴーランド京都