追想特急〜lostbound express

    東良美季の不定期更新webコラムです。どんな平凡な人生にも見るべきモノはある──、そんな慈悲深い眼差しで読んで頂ければ幸いです。日刊更新の毎日jogjob日誌もよろしく。ゴッド・ブレス・ユー。
プロフィール

tohramiki

東良美季(Miki Tohra)。1958年11月13日生まれ。川崎市出身。國學院大學文学部哲学科卒。雑誌編集者、AV監督、音楽PVディレクター、グラフィックデザイナーを経て現在は執筆業。最新刊『猫の神様』(新潮社)

 | 

2004-10-29 冬の愉しみ、冬の哀しみ

tohramiki2004-10-29

 たまには日記っぽいことも書こう。

 

 月の後半に訪れる恒例の仕事のヤマが終わりました。

 今回は少し忙しかった。

 

 月曜日は5時に起きて正午まで原稿を書き、午後二時から取材。夕方5時に帰って来て夜の11時までテープ起こしをした。火曜日は少し余裕があったので、朝6時に起きて原稿の内容を考えながら公園を約80分ゆっくりジョギングをして、夜の10時まで原稿を書いた。一昨日も6時に起きて原稿を書いてレイアウトをして、メールで送ったのが夕方6時前。編集者にチェックしてもらってすべてが終了したのは8時前だった。

 

 他の、ごくフツーの同業者の人ならたいして忙しくもない、いやむしろ余裕のあるスケジュールかもしれないが、売れないヒマなライターの僕としたらけっこう忙しい一週間だった。忙しいと、なんか楽しい。

 

 一昨日は夕方から気温が下がったような気がしたので、この秋初めてフリースを出して部屋の中で着た。昨日は良く晴れたのに気温が上がらず、チャリで買い物に行く時、半袖のTシャツの上に薄手のダウンジャケットを着た。天気予報によると例年の11月下旬の気温だったらしい。

 今年は、冬が来るのが早そうだ。

 

 僕は両親ともが関西人という家庭に育ったので、冬はみそ汁ではなく粕汁です。馴染みのない人もいると思うので書いておくと、ゴボウやニンジンなどの根菜と鮭を具にして酒粕をといた、味噌と塩味のおつゆ。野菜がたっぷしとれて栄養豊富。酒粕は身体を暖めてくれるし、何しろ美味しい。夜中にネコがフトンに入って来ることと並んで、冬の愉しみのひとつであります。

 

 冬の夜になると、ネコは鼻先でつんっとフトンを押し上げて入ってくる。毎年思うのだけど、ネコは不思議な生き物だ。

 人間というのは横になると、両手の間、脇の下から足の間にどうしてもちょっとした空間が出来る。ネコはその隙間にすっぽりと、まるで測ったようにぴったりと挟まる。まるで、僕という人間の足りない部分を埋めてくれるかのようだ。僕は冬が来るたびに、倉橋由美子の訳したあの童話の、自分のかけらを探して転がり続ける丸い玉になったような気分になる。

 

 当然、ネコはふわふわとして気持が良い。そしてネコ自身も暖かいフトンの中が気持良いのだろう。ゴロゴロと、喉を鳴らす。この時、ネコの体内からは大量のベータエンドルフィンが分泌されているという説がある。人間を癒し、精神を緩め、時に麻痺させてれる物質だ。そして我々──ネコと人間──は、やすらかに眠りに落ちる。

 

 かつて、外国の動物園で飼育係がじゃれてきたライオン(ネコ科です!)に後ろから頭をガブリと噛まれたことがあったそうだ。大怪我をしたのに関わらず、その飼育係は不思議に痛みを感じなかったという。その時、ライオンはすごい大音量でゴロゴロと喉を鳴らしていたのだ。

 

 僕は約11年間、二匹のネコと暮らしてきたけれど、残念ながら今年の三月に片方の相棒が死んだ。生まれつき身体にちょっとした障害を持っていたからそう長生きは出来ないだろうと覚悟はしていたが、それでも10年と7ヶ月一生懸命生きた。僕が家の中を移動するたびに後をついてくるような、甘えん坊で心優しいヤツだった。今は僕の実家のある川崎の、山の中の高台にあるイヌネコ墓地でやすらかに眠っている*1

 

 今年は人間一人とネコ一匹の、少し寂しい冬だ。その寂しさを抱きしめて、残った我々も、今夜眠ることになる──。

 

 さて、仕事も一段落したし、粕汁でも作ることにしましょう。作り方はいたって簡単。

 まずはダシ。鮭のアタマやアラで取るのが本来だが、僕はアッサリめが好きなのでカツオブシです。ブタ肉のコマきれや切り落としで豚汁風に、というのもイケます。 

 野菜はゴボウ、大根、ニンジンの順に入れる。切り方は短冊切り、銀杏切り、お好みで。何度も煮返して食べることになるのでニンジンは煮すぎないように。入れてから5、6分、少し固いかなという辺りにしときましょう。続いてコンニャクですが、切れ目を入れてねじるのも良いが僕は小巻シラタキを代用するのをオススメします。良く味が染みて美味。そしてメインの具は鮭。ブツ切りにして熱湯にさっと湯通しして入れる。そのお湯にも旨味が出ているので捨てずに入れましょう。さあいよいよ酒粕投入。モノの本によると酒粕はすり鉢で練ってだし汁と合わせ溶く、とか書いてありますが煮立った鍋に適当にちぎって火を止め、フタをしてしばらく待てばオタマでキレイに溶くことが出来ます。白味噌を隠し味以上、味付け未満程度に入れ、塩で味を調える。最後に湯通しした油揚げを細切りにして入れれば出来上がり。

 

 出来れば一晩寝かせて翌日の朝、寒い冬の朝にハフハフ言って食べたい。コツは出来るだけ、大鍋にたくさん作ること。僕のような一人暮らしのひとでも、鍋ごと冷蔵庫につっ込んでおけば余裕で一週間は持ちます。食べる時に七味唐辛子は有効。ぜひ、おためしください(最後は東海林さだお風にキメた!)。

*1:写真は今年三月の終わりに永眠した我が家の愛猫ぎじゅ太。どう見てもぬいぐるみのクマにしか見えないがレッキとしたネコでした。

 |