花澤香菜さんのターニングポイント〜棒読みと言われて〜


 棒読みの声優について度々話題になっているが、棒読み声優は決して悪くはないと僕は思う。何故なら、声優さんの演技の成長を一緒に体験できるからだ。棒読み声優の多くは駆け出しの声優さんであり、まだ成長しきってない彼/彼女の演技の成長を見届ける事は格別な楽しみではないのだろうか。





 ここで、僕が好きな声優の一人、花澤香菜さんを例に挙げたいと思う。





 現在、「かんなぎ」でざんげちゃん役を演じている花澤香菜さん。声優として彼女が初めて演じた役は、2003年の「LAST EXILE」ホリー・マドセイン役だった。まだ、この時点では彼女が大きく声優として注目されることはなかった。彼女が初めて注目されることになったのは、2006年に放送された「ZEGAPAIN」でのヒロイン、カミナギ・リョーコ役である。この時、注目されたのは彼女の演技が素晴らしかった訳ではなく、彼女の演技が、あまりにも棒読みだったために注目されたのであった。同時に本作品の主人公であるソゴル・キョウを演じた浅沼晋太郎さんの演技も棒読みに近かったために、この二人の演技は最初、非難を浴びることになる。当時の2ちゃんねるでのゼーガペインスレでも、放送当初彼と彼女の演技の酷さを指摘され、話題になっていた。特に花澤香菜さんが集中して叩かれていた記憶が僕にはある。しかし、回を増すごとに彼女の声質*1が評価されていくことになる。でも棒読みだと根強く叩いている方も相当数おり、「良い棒」と彼女を評価している方たちよりも多く存在していた。「ゼーガペイン」を熱心に視聴していた僕はカミナギ・リョーコを演じる花澤香菜さんの素朴で透明感のある声質に強く惹かれていた。この時から、僕は花澤香菜さんの声優の演技を追うことになる。「ZEGAPAIN」で叩かれた彼女が次に出演した作品は、2007年1月に放送されたの「月面兎兵器ミーナ」・羽蝉ナコル役である。この時、彼女の演技は少しばかり上達していたが、それでも棒読みに近い演技だった。まだこの時点では、彼女の演技が人気を博することはなかった。





 2007年の7月期に花澤香菜さんにとってのターニングポイントなる2作品が放送されることになる。その作品とは、「ムシウタ」と「ぽてまよ」である。「ムシウタ」ではヒロイン・杏本詩歌役を演じることになり、主人公・薬屋大助役の浅沼晋太郎さんと主人公・ヒロインのタッグを再び組むことになる。この「ムシウタ」は彼女にとって重要な作品であると思うが、それ以上に重要な作品が一つある。



 それが、彼女を再び注目させるようになった最も重要なアニメ作品ぽてまよである。



ぽてまよ 1 [DVD]

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 ぽてまよという言語を喋らず、「ほにほ〜」という言葉を発する役を演じた彼女の演技は、人々の度肝を抜いただろう。何故なら、今までの棒読みに近い演技ではなく、感情の起伏が豊かな演技、抑揚をうまく使いこなしている発声、今までの彼女とは想像がつかない程演技が上達しており、目を見張る程の演技の飛躍があったからだ。演技の上達には共演した辻あゆみさんの影響が強いと思われる。辻あゆみさんに演技の指導を受けたことを語っており、彼女の演技上達に一役かったのはではないのだろうか。この「ぽてまよ」によって、花澤香菜という名が一躍広がるようになる。この2007年は、声優が多く所属しているプロダクション「大沢事務所」に移り、他にも「ひぐらしのなく頃に解」智美役、「スケッチブック 〜full color's〜」梶原空役を演じていた。ここで、もう一つ彼女にとって重要な作品が、「スケッチブック 〜full color's〜」の主人公・梶原空役である。「ぽてまよ」によって名を広めたと僕は思っているが、多くの人はこの梶原空役によって彼女の名前を知ったのかもしれない。ここでの演技も素晴らしく、素朴でどこか引っ込みがちで弱弱しい梶原空に彼女の声質がぴったり合致し、梶原空役を見事に演じてみせた。後にこの作品の制作会社であるハルフィルムメーカーの作品でまた主人公を演じることにもなる*2。2007年、花澤香菜を人気声優に持ち上げたのは、「ぽてまよ」と「スケッチブック 〜full color's〜」の2作品で間違いはないだろう。特にターニングポイントとなった作品「ぽてまよ」は彼女を語るのにとって外せない重要な作品だと僕は思う。





 その後、2008年の彼女の活躍は言うまでもないだろう。「GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-」・アンジェリカ役、「狂乱家族日記」・乱崎優歌役、「To LOVEる -とらぶる-」・結城美柑役、「ブラスレイター」・エレア役、「魔法遣いに大切なこと 〜夏のソラ〜」・鈴木ソラ役、「ストライクウィッチーズ」・諏訪天姫役、「セキレイ」・草野役、2008年で爆発的に出演数を増やした彼女だが、その中でも乱崎優歌役のはっちゃけぶり、特に次回予告での暴走ぶりは一聴の価値がある。また鈴木ソラ役での田舎娘の素朴さ爆発の演技も外せない。






 当初、棒読みと言われた花澤香菜さんであるが、その後の演技の上達を視聴者である僕たちは一緒に体験してきた。演技の成長を楽しむということは、格別な楽しみなのではないだろうか。棒読み声優と呼ばれていたとしても、それは一瞬で過ぎ去ってしまう。その時の一瞬を楽しむことはできないものだろうか。





追記


 ブクマコメントでご指摘された通り、「屍姫」を例えにしたのは不適切だと思い、修正させていただきました。また「良い棒」についての記述がごっそり抜けていた点についても本当に申し訳ありません。ブクマコメントにもあるように回を追うごとに花澤香菜さんはみんなに愛されていきました。しかし、初期の頃はかなり叩かれていて、しかも最終回近くまで根強く叩いてる方が結構な数いたんですよね、ホントに。当時僕は、「花澤香菜さんは良い」と言っていた側だったので、叩いている方と言い争いみたいなものもあったり・・・。それに加えて、この「ゼーガペイン」という作品は最初の方で視聴を切っている人が相当数いて、回を増すごとに作品も花澤香菜さんも良くなっていくんですけど、その事を知らない人が花澤香菜さんや作品を・・・と話がかなり長くなりそうなのでちょっとやめときます。追記じゃなくなってしまうんで。ラジオに関しても書きたかったのですがあまりに長くなりそうなので、アニメ作品に絞りました。



 

*1:演技に関しては、あまり褒められるものではなかった

*2:魔法遣いに大切なこと 〜夏のソラ〜」